【解説】NLPコーチングとは?
1.NLPコーチングとは?
コーチは「乗員を目的地まで送り届ける」馬車が語源です。
コーチ(coach)とは、本来は「馬車」という意味です。馬車の役割といえば、乗員を目的地まで運ぶことですよね。コーチングにおけるコーチの役割も同じです。「クライアントが目標に到達することをサポートする」のがコーチングなのです。
一方でNLP(Neuron Linguistic Programming・神経言語プログラミング)は、脳の機能や構造、さらに人の心理的な要素までを論理的に体系化したものです。NLPの各スキルや考え方は、もともと三人の天才心理療法家のカウンセリングを徹底的に研究し、そしてモデリングすることにより生まれました。その三人の天才が、催眠療法で有名なミルトン・エリクソン氏、家族療法の母であるバージニア・サティア氏、そしてゲシュタルト療法の創始者フレデリック・パールズ氏です。
三人のカウンセリングと、心理学、言語学を基に、NLPとして体系化したのが、ジョン・グリンダー氏とリチャード・バンドラー氏になります。
このNLPのスキルがコーチングに取り入れられることによって、他者のモチベーションを高め、パフォーマンスを発揮し目標達成に大きな影響を与えるだけではなく、嫌な記憶やネガティブな自動思考を止める効果、コミュニケーションスキルを大きく向上する効果が期待できるようになるのです。実際に、NLPコーチングは、戦争体験者などの重いPTSDに苦しむ人に対しても、改善性や有効性を示しています。 つまり、「従来のコーチング」と「NLPコーチング」はまったく別なものであり、コーチングが、より発展したカタチがNLPコーチングであると考えられます。
2.NLPコーチングとコーチングとの違い
より広い範囲でクライアントをサポートできるのがNLPコーチング。
従来のコーチングでもメンタル面のサポートは行っていましたが、クライアントをポジティブにする手法は学ぶものの、その背景や要因までを深く探ることはできませんでした。そのためマニュアル通りのパターンであれば対応できるのですが、個々の状態の変化にまでは適切な対応ができていなかったのです。
「脳の取扱説明書」と言われるNLP
コーチングが日本で用いられるようになったのは今から15年ほど前になります。すでに一定の効果を発揮していましたが、その反面、個々の状況に対し適切な対応が取りにくく、コーチングだけではどうにもならないという行き詰まりも起きていきます。
そんな状況を打開するため、2007年ごろからコーチングを習得したコーチたちもNLPで学び始めます。コーチングの効果について、より論理的な部分を学ぶためです。そしてその知識やスキルをコーチングに活用していくようになったのです。
「感情」のコントロールに効果的なNLPコーチング
チェアワーク
自分の価値観ばかりを優先していると、相手を理解することが難しくなります。
とにかく結果を出すことを目標にして働いている人は、残業も労働時間もあまり気にならないでしょう。そして目標も達していないのに定時に帰宅する人が許せないという気持ちになります。相手の価値観を理解できないと、次第に人間関係は悪化していくのです。
そこで、椅子を2つ用意し(または3つ)、相手の立場に立って考える手法を「ポジションチェンジ」と呼びます。「わだかまりや、苦手意識を解消」する大切なチェアワークです。
まずは左の椅子(自分の立場)に座り、相手に伝えたいことを紙に書きます(思い描くだけでもOK)。そして次に右の席に座り相手の立場に立ってその内容を受け止めるのです。相手の立場から見えるものや感じるものはまた違うでしょう。その思いをまた紙に書きます。(第三者の椅子を用意する手法もあります)
こうして相手の立場で考えるきっかけを作っていくのです。相手への理解が深まると、その後の好意を得るためのポジティブな行動にも繋がっていきます。
タイムライン
人は時の流れを一本の線のように捉えています。これが「タイムライン」です。左側の過去から、右側の未来に時間が流れていく人は、一般的に、客観的に自分を見ることができるので計画性に優れていると言われています。また、過去が後ろで、未来が前になっている人は主観的で、今に集中するあまり時間にルーズになりがちという側面があります。
このタイムラインを辿って過去にさかのぼり、「ネガティブな体験やイメージを上書きしていく」のが「タイムラインを使ったワーク」です。NLPは心理学の要素を取り入れているため、潜在意識への働きかけも巧みです。潜在意識から変えていくことで、「癒し」の効果をもたらし、好ましい変化を起こすことができるのです。
この潜在意識の扱い方が、従来のコーチングとNLPコーチングの決定的な違いになります。
フォビア
過去の強い恐怖体験や不安な出来事は、心的外傷(トラウマ)として潜在意識に刻み込まれます。この時、ストレス性のアドレナリンを過剰に分泌するため、それが脳に刺激を与え、記憶に強く残ることになります。ですから人知れず幼い頃のトラウマに悩まされている人もいるのです。
この「トラウマを緩和する治療」に「フォビア」と呼ばれるワークがあります。これも潜在意識の操作です。
まずはトラウマを言語化し、次に逆に心地いい体験を言語化します。さらに心地いい体験の映像を白黒でイメージし、そのシーンを観ている自分を客観的に見つめます。
今度はトラウマとなっている映像を白黒でイメージし、最後の5秒間だけ逆回しにします。そして、さらにその映像をカラーに替えて逆回しにするのです。最後に今後同じような出来事があった際にベストな対応をするイメージをします。
逆回しをすることでトラウマとなった記憶を壊すことができ、一瞬でカラー化することで、記憶から消去する効果があります。さらに好ましい反応をイメージして潜在意識を上書きしていくことで、トラウマを緩和していくことができるのです。
3.NLPコーチングを学ぶメリット~役立つ5つの場面~
人間関係や目標達成の心強いツールとなるNLPコーチング
①職場における人材育成
社会人のルールも会社の規定も、右も左もわからないような新入社員には基礎から教え込むティーチングが必要です。ただし一定の経験を積んだ経年社員をさらに成長させるためには、ティーチングだと受け身の姿勢や依存性を強くしてしまい伸び悩みます。ここから成長するためには、自ら問題に気付き、その解決策を自ら模索できるようにならなければなりません。そのために必要な「自分で考える」ためのコーチングを行うことで、様々な場面で活躍できる自発的な人材を育成することができます。
②目標達成
目標もなく漠然と仕事をしている場合、パフォーマンスを発揮することは難しいでしょう。目標を明確にすることで、モチベーションも高まり、そのために今何をすべきかが見えてきます。目標を定めることや、その目標を達成するための的確なサポートができることが、「ライフコーチング」の醍醐味です。
③人間関係のストレス耐性
自分の視点を変えることによって、相手の言動をどう受け止めるかも変わってきます。必要以上にネガティブになっているケースでは、NLPコーチングで視点を変えて、ポジティブに受け止められるようすると、人間関係によるストレスも劇的に軽減されます。
④良好な夫婦関係の維持・改善
自分の思い込みによって夫婦関係を悪化しているケースがあります。夫婦であっても、自分の都合のいいように相手を変えることはできません。変えることができるのは自分自身です。そして自分を変えることで、人間関係は改善され、結果として相手を変えることができます。自分を変える手助けをNLPコーチングはできるのです。
⑤問題解決・判断力の向上
コーチングによって身に付く力は、自分で問題に気付き、自分で問題を解決するという自主性です。これはリーダーとしての判断力の向上にも繋がります。経営者や新しいリーダーの育成にNLPコーチングが有効活用されているのはそのためです。
4.NLPコーチング最大の特徴~Well-FORMED GOALS~
「目標を達成するための目標」を明確していくのがウェル・フォームド・ゴールズ。
Well-FORMED GOALS(ウェル・フォームド・ゴールズ)とは?
プロコーチがNLPコーチングを駆使することによって、クライアントは「適正に形成されたビジョン(ゴール)」に向って着実に前進していくことができます。自分自身が描く望ましいビジョンを明確に設定することで、そこに到達するまでに、今の自分にはどのような行動が必要になるのかもまた明らかになります。そして小さな目標を乗り越えて、最終的なビジョンを実現するのです。
このような目標設定を「Well-FORMED GOALS」と呼びます。ただ単純に目標を決めればいいわけではなく、NLPコーチングでは「脳を味方につける」ことも重要視しているため、ポジティブな状態で目標達成に向けて行動に移すことができるようになるのです。
5.Well-FORMED GOALS~5つのステップ~
目標達成するための5つの注意点とは?
NLPコーチングでは、プロコーチが5つの問いかけをして、クライアントのビジョン(ゴール)や、まず乗り越えていかなければならない小さな目標を明確にします。
①目標は肯定的な言葉で表現する
人の脳には「RAS」(網様体賦活系)という、情報フィルターの役目をする機能が備わっています。目標を設定すると、このRASが働き、日常生活において必要な情報に対して敏感になるのです。それだけでも目標達成へ一歩前進していることになります。
ただし、目標設定をする際に「~しない」というのは否定的な言葉なので避けるべきです。逆にネガティブな情報に敏感になってしまい、やる気や行動力が高まりません。目標設定する際は「肯定的な言葉」を使用しましょう。例えば「人見知りしない」ではなく「積極的に話しかけていく」という表現にすることが大切です。
②他人の行動や状況に依存しない
目標は「他人の行動や状況に依存しない」ものにしましょう。「子供を志望大学に入学させる」「部下がもっと積極的に仕事に関われるようになる」といった目標は、相手の変化であり、自分の変化ではありません。変えられるのはあくまでも自分です。「主体的な目標設定」にしましょう。
大学合格に貢献したいのであれば、「子供に毎日笑顔で接し、栄養のある食事を作る」とか、部下の自主性を育成することに貢献したいのであれば、「毎週二回はコーチングによる研修を行う」といった目標が、具体的で効果的な行動に繋がります。
③ワクワクするような感覚を大切にする
少しの努力ですぐに達成できるような最終ビジョンでは、今の自分を本気で変えたいとは思わないでしょう。潜在意識は変化よりも現状維持を優先する傾向が強いからです。
どうすれば叶うのかわからなくても、本気でなりたい自分、叶えたい夢を最終ビジョンにしましょう。「最高にワクワクするような目標」です。イメージしている時のワクワク度とドーパミンの分泌量は比例しますので、このような目標達成をイメージすることで、脳も達成に向けた思考を始めることになります。
④今の自分も大切にしながら達成できる方法を見つける
潜在意識を上書きする際に用いられるのに「アファメーション」(肯定的宣言)があります。鏡の映った自分の目を見て毎日はっきりと宣言することが重要ですが、ここでポイントになるのは、脳はポジティブなことよりもネガティブなことに強く反応するということです。
「今の自分はミスを怖れているが、どんどんチャンレンジできる人になる」という宣言をすると、今の自分を否定していることになるので肯定的宣言ではなく、ミスを怖れている自分にスポットが当たり、潜在意識の上書きができず、目標達成が難しくなってしまいます。
「私は今、慎重さを大切にしながら積極的に挑戦し、成功する途中にいる」というように、今の自分をポジティブに受け止めながら、さらに必要となる行動や思考を付け加えていくのが効果的です。
⑤外部環境に上手く適合する未来をイメージする
脳がイメージできないことは目標達成ができません。いくらワクワクする目標が重要とはいえ、現実的に実現不可能な目標では、最終ビジョンに到達するための小さな目標が見つけられず前に進めなくなってしまいます。
例えば、20歳過ぎてさほど野球が上手くないのに「メジャーリーガーになる」というような突拍子もない目標はNGです。野球の世界の実情や、現状の自分の実力を考慮すると到底達成できません。
あくまでも「外部環境に上手く適合する未来」という範囲の中でイメージするということを意識してください。
まとめ
このようにNLPコーチングのプロコーチは、クライアントの潜在意識に上手く働きかけ、変化を促すことができます。そのため、どうしても自分に自信が持てない、相手と良好な人間関係を構築できないといった悩みも解消することができるのです。
確実に自分を変え、本当に自分を求めるビジョンを実現するために、NLPコーチングは最も効果的な手法ではないでしょうか。