『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 14

●5月15日



小山田さんは「そこまでして記事が形にならないのは……」と言ってくれ、

ライターの僕のために、レコーディングに入っていたにもかかわらず、

二度目の取材に応じてくれた。

まず、小山田さんに会い、村田さんのその後のことを報告した。

「でもパチンコ屋の店員って、すっげー合ってるような気がするな。

いわゆる……根本(敬)*1さんで言う

『いい顔のオヤジ』*2みたいなのに絶対なるタイプって言うかさ」



―――もし対談できてたら、何話してますか?



「別に、話す事ないッスけどねえ(笑)。

でも分かんないけど、今とか会っても、

絶対昔みたいに話しちゃうような気がするなあ。

なんか分かんないけど。

別にいじめるとかはないと思うけど。

『今何やってんの?』みたいな(笑)。

『パチンコ屋でバイトやってんの?』なんて(笑)。

『玉拾ってんの?』とか(笑)。

きっと、そうなっちゃうとおもうんだけど」



―――やっぱ、できることなら会わないで済ましたい?



「僕が? 村田とは別に、あんま会いたいとは思わないけど。

会ったら会ったでおもしろいかなとは思う。

沢田に会いたいな、僕」



―――特に顔も会わせたくないっていう人は、いない訳ですね?



「どうなんだろうなあ? これって、僕って、いじめてる方なのかなあ?」



―――その区別って曖昧です。



「だから自分じゃ分かんないっていうか。

『これは果たしていじめなのか?』っていう。

確かにヒドイことはしたし」



―――やましいかどうかっていう結論は、自分の中では出てない?



「うーん……。でも、みんなこんな感じなのかもしれないな、

なんて思うしね。いじめてる人って。

僕なんか、全然、こう悪びれずに話しちゃったりするもんねえ」



―――ええ。僕も聞きながら笑ってるし。



全然消息のつかめなかった、朴さんの事も報告した。

「今、なんか『朝鮮のスパイだった』って噂が流れてて(笑)。

『俺ら殺されるわ』とか言って。

ホントにいなくなったっていうのは、僕も誰かから聞いてたんですよ。

誰も連絡とれなくなっちゃったって。

だから噂が流れて」



―――いま会ったら、何話します?



「あやまるかなあ、スパイだったとしたら(笑)。

とりあえず『ごめんなさい』って。

でもそんな朴とか、一緒に遊んでたからな。

あやまるっていう程でもないかな」



bibokj.hatenablog.com

bibokj.hatenablog.com

*1:根本敬特殊漫画家。

*2:例えば、山谷・寿町・西成などにいる、昼間から酒を呑んでる男の人などを指す。詳しくは根本敬著『因果鉄道の夜』KKベストセラーズ刊。