『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 8

いじめ談義は、どんな青春映画よりも僕にとってリアルだった。

恋愛とクラブ活動だけが学校じゃない。

僕の学校でも危うく死を免れている奴は結構いたはずだし、今でも全国にいるだろう。

小山田さんには、いじめられっ子の二人目、村田さん(仮名)の話もしてもらった。


毒ガス攻撃

「村田は、小学生の頃からいたんですよ。

こいつはちょっとおかしいってのも分かってたし。

だけど違うクラスだったから接触する機会がなかったんだけど、

中学に入ると、同じクラスになったから。

で、様々なな奇行をするわけですよ。

村田っていうのは、わりと境界線上にいる男で、

やっぱ頭が病気でおかしいんだか、ただバカなんだか、

というのが凄い分りにくい奴で、体なんかもちっちゃくて、

それでこいつは沢田とは逆に癇癪が内に向かうタイプで。

いじめられたりすると、立ち向かってくるんじゃなくて、

自分で頭とかを壁とかにガンガンぶつけて、

『畜生、畜生!』とか言って(笑)、ホントにマンガみたいなの。

それやられるとみんなビビッて、引いちゃうの。『あの人、やばいよ』って。」



「お風呂に入らないんですよ、こいつは(笑)。

まず、臭いし、髪の毛がかゆいみたいで、コリコリコリコリ頭掻いてるんですよ。

何か髪の毛を一本一本抜いていくの。

それで、10円ハゲみたくなっちゃって、そこだけポコっとハゲててルックス的に凄くて。

勉強とか全然できないし、運動とかもやっぱ、全然できないし」



「段ボールの中に閉じ込めることの進化形で、

掃除ロッカーの中に入れて、ふたを下にして倒すと出られないんですよ。

そいつなんかはすぐ泣くからさ、『アア~!』とか言ってガンガンガンガンとかいってやるの(笑)。

そうするとうるさいからさ、みんなでロッカーをガンガン蹴飛ばすんですよ。

それはでも、小学校の時の実験精神が生かされてて。密室ものとして。

あと黒板消しはやっぱ必需品として。"毒ガスもの"として(笑)」



「村田は、別に誰にも相手にされてなかったんだけど、

いきなりガムをたくさん持ってきて、何かみんなに配りだして。

『何で、あいつ、あんなにガム持ってるんだ? 調べよう』ってことになって、

呼び出してさ、『お前、何でそんなにガム持ってるの?』って聞いたら、

『買ったんだ』とか言っててさ。

三日間ぐらい、そういう凄い羽振りのいい時期があって。

そんで付いて行って、いろんなもん買わせたりして。

そんで、三日間くらいしたら、ここに青タン作って学校に来て。

『おまえ、どうしたの?』とかきいたら、『親にブン殴られた』とか言ってて(笑)。

親の財布から一五万円盗んだんだって。

でも何に使っていいか分かんないから、ガム買ったりとかそういうことやって(笑)。

だから、そいつにしてみればその三日間っていうのはね、人気があった時代なんですよ。

一五万円で人が集まって来て。

かなりバカにされて、『買えよ』って言われてるだけなのに。

全然、沢田なんかよりも普通に話せるしね。

普通に話とかも全然できるしね。

体がおかしいとか、障害があるような、そういうタイプでもないっぽいんですよ」



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