いじめ談義は、どんな青春映画よりも僕にとってリアルだった。
恋愛とクラブ活動だけが学校じゃない。
僕の学校でも危うく死を免れている奴は結構いたはずだし、今でも全国にいるだろう。
小山田さんには、いじめられっ子の二人目、村田さん(仮名)の話もしてもらった。
毒ガス攻撃
「村田は、小学生の頃からいたんですよ。
こいつはちょっとおかしいってのも分かってたし。
だけど違うクラスだったから接触する機会がなかったんだけど、
中学に入ると、同じクラスになったから。
で、様々なな奇行をするわけですよ。
村田っていうのは、わりと境界線上にいる男で、
やっぱ頭が病気でおかしいんだか、ただバカなんだか、
というのが凄い分りにくい奴で、体なんかもちっちゃくて、
それでこいつは沢田とは逆に癇癪が内に向かうタイプで。
いじめられたりすると、立ち向かってくるんじゃなくて、
自分で頭とかを壁とかにガンガンぶつけて、
『畜生、畜生!』とか言って(笑)、ホントにマンガみたいなの。
それやられるとみんなビビッて、引いちゃうの。『あの人、やばいよ』って。」
「お風呂に入らないんですよ、こいつは(笑)。
まず、臭いし、髪の毛がかゆいみたいで、コリコリコリコリ頭掻いてるんですよ。
何か髪の毛を一本一本抜いていくの。
それで、10円ハゲみたくなっちゃって、そこだけポコっとハゲててルックス的に凄くて。
勉強とか全然できないし、運動とかもやっぱ、全然できないし」
「段ボールの中に閉じ込めることの進化形で、
掃除ロッカーの中に入れて、ふたを下にして倒すと出られないんですよ。
そいつなんかはすぐ泣くからさ、『アア~!』とか言ってガンガンガンガンとかいってやるの(笑)。
そうするとうるさいからさ、みんなでロッカーをガンガン蹴飛ばすんですよ。
それはでも、小学校の時の実験精神が生かされてて。密室ものとして。
あと黒板消しはやっぱ必需品として。"毒ガスもの"として(笑)」
「村田は、別に誰にも相手にされてなかったんだけど、
いきなりガムをたくさん持ってきて、何かみんなに配りだして。
『何で、あいつ、あんなにガム持ってるんだ? 調べよう』ってことになって、
呼び出してさ、『お前、何でそんなにガム持ってるの?』って聞いたら、
『買ったんだ』とか言っててさ。
三日間ぐらい、そういう凄い羽振りのいい時期があって。
そんで付いて行って、いろんなもん買わせたりして。
そんで、三日間くらいしたら、ここに青タン作って学校に来て。
『おまえ、どうしたの?』とかきいたら、『親にブン殴られた』とか言ってて(笑)。
親の財布から一五万円盗んだんだって。
でも何に使っていいか分かんないから、ガム買ったりとかそういうことやって(笑)。
だから、そいつにしてみればその三日間っていうのはね、人気があった時代なんですよ。
一五万円で人が集まって来て。
かなりバカにされて、『買えよ』って言われてるだけなのに。
全然、沢田なんかよりも普通に話せるしね。
普通に話とかも全然できるしね。
体がおかしいとか、障害があるような、そういうタイプでもないっぽいんですよ」