沢田の"プライマル・スクリーム"
―――休み時間は、どこに?
「僕は、休み時間は、他のクラスの奴とか仲いい奴いたから、
何かどっか外行ったり、そういう感じだったけど。
沢田は、……っていうか、こういう障害がある人とかって言うのは、
なぜか図書室にたまるんですよ。
図書室っていうのが、もう一大テーマパークって感じで(笑)。
しかもウチの学年だけじゃなくて、全学年のそういう奴のなぜか、
拠り所になってて、きっと逃げ場所*1なんだけど、
そん中での社会っていうのがまたあって。
さっき言った長谷川君っていう、超ハードコアなおかしい人が、
一コ上で一番凄いから、イニシアチブを取ってね、
みんなそいつのことをちょっと恐れてる。
そいつには相棒がいて。耳が聞こえないやつで、すっごい背がちっちゃいのね。
何か南米人とハーフみたいな顔をしてて、
色が真っ黒で、そいつら二人でコンビなのね。
で、そいつら先輩だから、ウチの学年のそういう奴にも威張ってたりとかするの。
何かたまに、そういうのを『みんなで見に行こう』『休み時間は何やってるのか?』とか言ってさ。
そういうのを好きなのは、僕とか含めて三、四人ぐらいだったけど、
見に行ったりすると、そいつらの間で相撲が流行っててさ(笑)。
図書館の前に、土俵みたいなのがあって、相撲してるのね。
その長谷川君っていうのが、相撲が上手いんですよ。
凄い、足掛けてバーンとか投げる技をやったりとかすんの。
素人じゃないの。
小人プロレス*2なんて比じゃない! って感じなんですよ、もう(笑)。
で、やっぱりああいう人たちって……ああいう人たちっていう言い方もあんまりだけど……何が一番凄いかって、
スクリーミングするんですよ。
叫び声がすごくナチュラルに出てくる。『ギャーッ』とか『ワーッ』とかいう声って、
普通の人ってあんまり出さないじゃないですか、
それが、もう本当に奇声なんか出てきて、すごいんです」
「その中で沢田って、その人たちからしてみれば、
後輩なんだけど、体とかデカい、でも、おとなしいタイプなのね。
フランケン・タイプっていうか。
だけど怒らすと怖いって感じで。で、その軍団でたまに食堂で食うんですよ。
リーダーの長谷川君がラーメンとか頼むと、箸ちゃんと持てないから、
半分は口に入るんだけど、半分はお盆に落ちるのね。
そうすると、また、こうやって(お盆に口をつける)食ったりしてるの。
その中で一回、ケンカになっちゃったの、食堂で。
沢田に対して長谷川が何かをやったかなんかで、沢田があんまり切れないんだけど、
久々に切れて、お茶があるじゃない、それをかけちゃったんですよ」
―――学校って図書室とか用務員室とか、
もの凄いはっきりとした"場所"がありますよね。
理科室とか、体育倉庫とか。何かが起こりやすい*3。
「太鼓クラブとかは、もうそうだったのね。
体育倉庫みたいなところでやってたの、クラブ自体が。
だから、いろんなものが置いてあるんですよ、使えるものが。
だから、マットレス巻きにして殺しちゃった事件*4とかあったじゃないですか、
そんなことやってたし、跳び箱の中に入れたりとか。
小道具には事欠かなくて、マットの上からジャンピング・ニーバットやったりとかさー。
あれはヤバイよね、きっとね(笑)」