インタビュー中心の雑誌で、二二の時に創刊して、
もう二年が過ぎた。
今までにインタビューしたのは、爆弾製造青年、
五年間顔を合わせたことのない隣人、
日本語学校の生徒、駆け出しの探偵、等々。
特に決まったジャンルとかは無いので、
今は閃いたことを全部やるようにしている。
インタビューをしてると、
相手が「マンガみたいな現実」を語ってくれる時がある。
例えば、爆弾製造青年が高校の時に友達から
「不良にからまれるから爆弾作ってくれ」って言われたとか、
「探偵が学校に潜入する時は用務員のフリをする」とか、
そんな話にはメチャクチャシビレる。
関係ないけど「スティービー・ワンダーは必ず綺麗な女を選ぶ」とか
「ビーチ・ボーイズはメンバー全員カナヅチだ」とか、
「火葬場はやはり火事がおこりやすく、
職員が焼け死ぬことがよくある」*2とか、
そんなエピソードも大好きだ。
そんな僕にとって、"いじめ"って、昔から凄く気になる世界だった。
例えば
*ある学級では"いじめる会"なるものが発足していた。
この会は新聞を発行していた。
あいつ(クラス一いじめられている男の子)と
あいつ(クラス一いじめられている女の子)はデキている、
といった記事を教室中に配布していた。とか、
*髪を洗わなくていじめられていた少年がいた。
確かに彼の髪は油っぽかった。
誰かが彼の髪にライターで点火した。
一瞬だが鮮やかに燃えた。
といった話を聞くと、
"いじめってエンターテイメント!?"
とか思ってドキドキする。
だって細部までアイデア豊富で、
何だかスプラッター映画みたいだ。
僕自身は学生時代は傍観者で、
人がいじめられるのを笑って見ていた。
短期間だがいじめられたことはあるから、
いじめられっ子に感情移入する事は出来る。
ぶっ飛ばすポジティヴさを感じる。
小学校の時にコンパスの尖った方で背中を刺されたのも、
今となってはいいエンターテイメントだ。
「ディティール賞」って感じだ。
どうせいじめはなくならないんだし。
去年の一二月頃、新聞やテレビでは、
いじめ連鎖自殺が何度も報道されていた。
「コメンテーター」とか「キャスター」とか呼ばれる人達が
「頑張って下さい」とか「死ぬのだけはやめろ」とか、
無責任な言葉を垂れ流していた。
嘘臭くて吐き気がした。
それに、いじめた側の人がその後どんな大人になったか、
いじめられた側の人がその後どうやって
いじめを切り抜けて生き残ったのか、
これもほとんど報道されていない。
誰かこの観点でいじめを取り上げないかな、と思っていたら、
昔読んだ『ロッキング・オン・ジャパン』*5の小山田圭吾インタビューを
思い出した。
*1:現在六号「特集・隣人にインタビューする」発売中。本誌"インディ・マグ紹介"のページ参照。
*2:猪瀬直樹・著『日本凡人伝・死を見つめる仕事』(新潮文庫)参照
*3:一九八五年一一月、東京中野区の中学校で起きた。いじめられっ子がみんなで弔いの言葉を寄せ書きし、本人に贈呈したというもの。机には寄せ書きの他に、穴を開けて火のついた線香を刺した夏ミカン、花を挿した牛乳ビン、アメ玉等も添えられていた。寄せ書きには担任も参加した。この後、いじめられっ子は本当に自殺する。
*4:ビデオ屋ではホラー・コーナーに並べられているアメリカ映画『悪魔の毒々モンスター』シリーズは、いじめスプラッター映画として必見。
*5:一九九四年一月号