カイコのサナギから経口ワクチン　手軽に接種、錠剤・カプセルタイプ実現に期待　鹿児島大チームが特許出願

　鹿児島大学と九州大学、ベンチャー企業の研究チームが、カイコのサナギの体内で作られるタンパク質を利用した経口ワクチン製造に関する特許を出願したことが１４日までに分かった。新型コロナウイルスなど感染症のワクチンについて、「注射型」ではなく、錠剤やカプセルとして手軽に接種できるタイプの実現が期待される。

　カイコは人工飼育で容易に増やすことができ、大量生産に向いているという。豚などの家畜用のワクチンを３年以内、ヒト用を５年以内の事業化を目指す。

　鹿大農学部の宮田健准教授（４６）＝食品化学、１００年以上前からカイコを用いた研究を続ける九州大、ベンチャー企業「ＫＡＩＣＯ」（福岡市）の共同研究。

　九大の日下部宜宏教授（５５）＝昆虫分子遺伝学＝は、カイコの体内で効率よくタンパク質を作る人工の「バキュロウイルス」を開発。バキュロウイルスに新型コロナの遺伝子情報を組み込んでカイコに注射することで、新型コロナのワクチン候補となるタンパク質が得られた。

　当初、５センチほどの幼虫を使い、体内からタンパク質を取り出して、不純物を取り除いた上で、注射型ワクチンを作ることを想定していたが、宮田准教授らは１．５センチほどのサナギを使用する方法を模索。ワクチン候補のタンパク質を多く含んだサナギをそのまま利用できることを見いだした。粉末にし錠剤などにするという。

　特許取得後、実用化に向けた研究開発、臨床試験に進んでいく。宮田准教授は「コロナを受けて新しいタイプのワクチン開発が急激に進んでいる。鹿児島の畜産業にも貢献できればうれしい」と語った。