報告書を小松弥生県教育長(右)に手渡す県いじめ問題調査審議会の佐世芳会長=14日午後、さいたま市浦和区 |
昨年4月に県立高校2年の女子生徒=当時(16)=が自殺し、交際相手の男子生徒とその妹が会員制交流サイト(SNS)上で行った誹謗(ひぼう)中傷が原因だという遺族の訴えを受け、県いじめ問題調査審議会(会長・佐世芳弁護士)は14日、事実関係や再発防止策についての調査報告書を小松弥生県教育長に提出した。報告書では、2人の書き込み行為がいじめにあたると認め、情報モラル教育の重要性などを指摘した。報告書は県のホームページで公開している。報告書では、いじめ防止対策推進法の定義にのっとり、一連の書き込み行為がいじめに当たると判断。ただ、自殺に至る明確な理由が確認できなかったため「直接的に自殺を引き起こす行為とまでは言えないが、いじめで自殺を考える精神状態に至った」とした。
■女子生徒の父親「自殺と関係認めて」 SNSの教育訴え
自殺した県立高校2年の女子生徒=当時(16)=に対するいじめ調査報告書が提出されたことを受けて、父親(47)が14日、埼玉新聞の取材に応じ、「いじめを認定してくれたことは評価しているが、いじめと自殺の因果関係や、いじめが自殺の直接の原因だということをはっきり言ってほしかった」と不満をあらわにした。
調査は両親の意向を受けて第三者調査審議会が行った。父親は「1年かかって報告書が上がってきた。やっと受け取ってひと区切りついたが、何かが変わったわけでもない。何か新しいことが分かるかもしれないと思ったが、あまりなかった」と話した。
両親によると、女子生徒はSNS上でのいじめが始まる前日まで、家族の誕生日を祝うなど楽しそうにしていた。しかし、その後は口をきかなくなり、食事も食べられなくなったという。父親は「いじめがなければ死ぬことはありえなかった」と考えている。
両親は、いじめが自殺の原因として、加害者の男子生徒側や県を相手取り、慰謝料など約9650万円の損害賠償を求めた訴訟を、さいたま地裁に起こしている。4月に第1回口頭弁論が開かれ、県側は請求棄却を求めた。
両親は娘が亡くなった後も、いじめ加害者の生徒らが日々の生活の様子をSNSに上げるのを見て、「うちの娘も人生が続いていたはずだった」と心を痛めているという。
父親は「SNS絡みで同じことが起きないように学校全体で考えてほしいし、生徒によく教えてほしい。そうしないとSNSでのいじめは永遠になくならない」と訴えた。