報告書を小松弥生県教育長(右)に手渡す県いじめ問題調査審議会の佐世芳会長=14日午後、さいたま市浦和区 |
昨年4月に県立高校2年の女子生徒=当時(16)=が自殺し、交際相手の男子生徒とその妹が会員制交流サイト(SNS)上で行った誹謗(ひぼう)中傷が原因だという遺族の訴えを受け、県いじめ問題調査審議会(会長・佐世芳弁護士)は14日、事実関係や再発防止策についての調査報告書を小松弥生県教育長に提出した。報告書では、2人の書き込み行為がいじめにあたると認め、情報モラル教育の重要性などを指摘した。報告書は県のホームページで公開している。
報告書などによると、昨年3月下旬、当時1年生の女子生徒のツイッターの裏アカウント(非公開)に自分への不満が書き込まれていることを知った3年の男子生徒と2年の妹は、協力してうその書き込みをした上、妹が裏アカウントの内容を一部暴露。「どんな顔して学校に来るのか楽しみだ」「女の味方はいなくなる」などと書き込んだ。
女子生徒は、2人に裏アカウントの内容をインターネット上で拡散されたことに精神的苦痛を受け、いじめ行為が終了した約2週間後、他人の視線が気になるといった内容のメモを残し、自宅で首をつった状態で発見された。
審議会は昨年6月から11回にわたる会合を開き、関係者からの聞き取りや女子生徒が自殺した経緯の調査をした。
報告書では、いじめ防止対策推進法の定義にのっとり、一連の書き込み行為がいじめに当たると判断。ただ、自殺に至る明確な理由が確認できなかったため「直接的に自殺を引き起こす行為とまでは言えないが、いじめで自殺を考える精神状態に至った」とした。
学校の対応については、女子生徒本人が一連のトラブルをいじめではないと否定したことから「学校がそれ以上対応を図ることは難しい状況」と指摘。一方、女子生徒が転学を考えていたことから「いじめの重大事態に該当する可能性も考慮して対応する必要があった」とした。
再発防止に向け、学校で生徒向けに行うインターネットに関する講演会に保護者を招くなど「学校と保護者が一緒になって生徒を指導することが大切」などと提言。佐世会長は「SNSいじめは見つけにくく、ささいな書き込みが人を自殺に追い込んでしまう危険性を秘めている。周囲の人が何ができるか考える必要がある」と述べた。