連日の猛暑日が続き、あまりの暑さに人間が悲鳴をあげているが、クルマにとってもそれは同じ。できればクルマが悲鳴をあげる前にエンジンオイルを代えたいところだ。
そこで、今回は普通のガソリン車と違って、ハイブリッド車、ディーゼル車に乗っているユーザーに向けて、それぞれ専用のエンジンオイルは必要なのか、解説していきたい。
ハイブリッド車は当然ながら純エンジン車と比べてエンジンが動いている時間が短く油温が上がりにくいため、0W-8W、0-16Wといった超低粘度オイルが使われている。
ディーゼルエンジンは燃料圧力が主要部品にかかるため、それを支える油膜の負担も大きいため、ディーゼルエンジン専用のエンジンオイルが使われている。
ディーゼルエンジン専用エンジンオイルには、PM(黒煙などの粒子状物質)などの不純物や酸性物質も発生するため、それを中和するための清浄分散剤がガソリン用より多量に配合されている。そのため、ガソリンエンジン用のオイルは使えないということになる。
こうしたハイブリッド車、ディーゼル車専用のエンジンオイルについて、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/トヨタ、日産、マツダ、Adobe Stock(アイキャッチ写真は@RS-Studios)、ベストカー編集部、ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】猛暑前に換えておきたいエンジンオイル なぜ専用オイルが必要か?その謎に迫る!!
■交換しておきたいエンジンオイルと冷却水
全国各地で連日猛暑日を記録しているが、この凄まじい暑さはクルマにとっても当然過酷なものとなる。
ここまで暑くなると、室内は冷房の効きを強めればいいだけだが、エンジンルームはサウナを超えた灼熱地獄となる。そうなる前に行なっておきたいのがエンジンオイルとクーラント(冷却水)のメンテナンスだ。
クーラントはスーパーLLCを採用しているクルマなら5年間(新車時は7年間)は無交換で使えるから、リザーバータンクの中身を見て、濁りやオイルの浮きなどがなければレベルゲージに合わせて精製水を足してやればいい。問題はエンジンオイルだ。
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑を行なっているだけでなく、冷却、つまり熱交換も行なっている。エンジンオイルがエンジン部品の高熱を吸収して他の温度の低い部分に伝える、それとクーラントにも伝えることで、エンジン全体の冷却が実現している。
クーラントの水路が入っているのはシリンダーブロックとシリンダーヘッドの一定部分だけなので、アルミブロックの熱伝導の高さを考えても、水路だけでは冷却すべてを賄うことはできない。むしろオイルが熱分布(温度のムラ)を穏やかにしてくれるから、水冷が成り立っているのだ。
ところがエンジンオイルが劣化してくると、いろいろと具合が悪くなる。汚れそのものは、分散剤によってオイル内でオイルに包み込まれるから、潤滑性能自体をいきなり低下させるようなことはない。
しかし走行によりオイルの分子鎖が寸断されると粘度低下を起こしていくだけでなく、スラッジを発生させる。スラッジが多くなると逆に粘度が高まることもあるが、それは低温時の見せかけの粘度なので騙されてはいけない、劣化が進んでいる証拠だ。
放っておくとスラッジはエンジン内部にへばりつき、オイルの流動性やエンジンの熱伝導性を低下させていく。オイル交換を怠ると油圧経路が動脈硬化のように機能を低下させてしまう。人間でいうと心筋梗塞や脳梗塞。大動脈瘤乖離などの血管が詰まる病気と同じ。
冒頭の通り、真夏のエンジンルームはオイルにとって厳しい環境だから、半年近くオイル交換をしていないなら、真夏になってクルマを本格的に使う前にオイル交換することをお勧めする。
■ディーゼル車に専用エンジンオイルを使う理由
エンジンオイルを交換する際に気になるのは、どんなオイルを使えばいいのか、という問題だ。純正オイルでもいいが、もっとエンジンにいいオイルを使いたいという人や、オイル交換の費用を抑えたいから純正以外のオイルを使いたい、という人も少なくない。
こうした人の考えの根底にあるものとして「純正オイルは安くないのに性能はイマイチ」という固定概念があるように思われる。
だが、最近は純正オイルもロングライフを優先して、かなり高性能なベースオイルを使うことが増えている。さらに車種によっては専用オイルを開発してまで、省燃費を実現している
ただし安いからと、怪しげなルートで販売している純正オイルを購入するのは、気を付けたほうがいい。過去にも自動車メーカーの純正オイルは粗悪な偽物が出回ったケースがある(純正オイルだけではないが)。
また新品オイルを購入したハズが、中身を出してみたら廃油が入っていたという詐欺事件もフリマアプリでの売買では起こっている。
またエンジンの種類によるオイルに求める特性についても知っておくといい。
ガソリンエンジンは、圧縮した空気とガソリンの混合気にスパークプラグで点火して燃焼させるのに対し、ディーゼルは空気だけを圧縮して軽油を噴射することで自己発火させて燃焼させる。
燃焼プロセスは違ってもレシプロエンジンの基本的な要求は変わらない。ということはエンジンオイルに求められる要素は大きくは変わらない。
しかしディーゼルは高い燃焼圧力により主要部品により大きな力が掛かり、それを支える油膜の負担も大きい。そのため粘度もガソリンエンジン用より高めになっている。
またPM(黒煙などの粒子状物質)などの不純物も発生する。PMとは黒煙、つまり燃料の燃えカスで燃焼ガスの吹き抜けと共に、微量ずつエンジンオイルに取り込まれていく。
それがエンジンオイル内の添加剤と化学反応を起こして硫酸カルシウムや硝酸カルシウムなどの酸性物質に変化していくから、ディーゼルエンジン用のオイルはガソリン用より高い清浄性が求められるのだ。
つまりガソリンエンジンよりディーゼルエンジンのほうが、オイルに対する要求が厳しいのだ。
つまり粘度などの条件が合えば、ディーゼルエンジン用のエンジンオイルはガソリンエンジンにも使える(ガソリンエンジン用の認証を取っている)が、逆はNGということ。
なお、APIサービス分類でガソリンエンジン用は「SJ、SL」といった具合に「S」から、ディーゼルエンジン用は「CE、CF」といった具合に「C」から始まる記号でグレードが表記されている。