横浜・一本松小学校産の食材使い 高齢者と食事会
<生きる証し>育てる、野菜も絆も 障害児と地域結ぶ校内菜園

社会 | 神奈川新聞 | 2017年3月30日(木) 12:33

育てた野菜を地域で販売する一本松小学校個別支援学級の児童と、食事会の材料として購入する高齢者ら(松元教諭提供)
育てた野菜を地域で販売する一本松小学校個別支援学級の児童と、食事会の材料として購入する高齢者ら(松元教諭提供)

 障害・高齢といった属性も、支援や交流といった大義名分も一切存在しない。横浜市立一本松小学校(同市西区)に通う障害がある子どもたちは、近くで暮らすお年寄りたちと大の仲良しだ。つなぎ役となったのは校内の畑で採れた野菜。児童が生産を担い、高齢者が食事会を企画する。互いに支え合いながら、今日も地域を盛り上げている。

ADVERTISEMENT



親睦深め「成長する姿、楽しみ」

 学校近くの自治会館で、地域の高齢者約20人と同小個別支援学級2~6年の児童6人が温かい料理を囲む。高齢者主催の会費制食事会に並んだメニューは、ふろふきダイコンに葉の炒め物、きんぴらに中華丼…。メイン素材は、近所の神社で児童たちが手売りした新鮮なダイコンだ。

 高齢者は児童が育てた作物を購入して食事会を開き、児童は売上金で会への参加費を工面する。「障害児が金銭をやりとりすることに批判もあるかもしれないけど、自分でお金を稼ぎ、社会の中で使うありがたみを児童たちは学んでいる」。担任の松元真一郎教諭(58)が力説する。

 初夏はジャガイモ、冬はダイコン。年2回の野菜販売と食事会は回を重ねるごとに雰囲気が和らいでいく。自分から話すのが苦手な子も、お年寄りの優しいまなざしを受けて満面の笑みを浮かべている。

 きっかけは4年ほど前。地元の高齢者数人が、知的障害がある男子児童の登下校にボランティアで付き添った。米岡美智枝さん(73)は「障害があるからといって特別な気負いはなく、ただ手をつなぐだけでうれしい気持ちになれた」。個別支援学級の教室を当たり前のように高齢者が訪れる日々。他の児童も親しみを深めていった。

 やがて、松元教諭と児童たちが「生活」の授業で小学校敷地内の畑で野菜を栽培していることを知った米岡さんが、「せっかく育てた野菜。販売したら面白いのでは」と提案。ユニークな取り組みが始まった。

 今では互いを名前で呼び合い、手紙のやりとりや行事の応援など飾らない付き合いを続けている。5年の三田昌竜君(11)は「敬老会の皆さんと一緒にヨモギ団子を食べて、とても楽しかった」。4年の安藤俊太君(10)は「ジャガイモをまた売りたい」と笑顔を見せる。

 高齢者も「かわいくて仕方がない」「孫みたいな存在」と目を細め、山田トシ子さん(84)は「会うたびに成長する姿を見るのが楽しみ」と頬を緩める。

 市は「ほとんどの小学校に障害児が在籍しているが、表面的な交流の機会しかない場合も多い。地域の人たちと継続的なつながりを持ち続けるケースは珍しく、とてもすてきなこと」と太鼓判を押す。

 ごく自然に、少しずつ培われてきた結びつきが、地域に根付いている。

高齢者に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

新型コロナ藤沢で10歳未満含む17人感染 いずれも軽症

新型コロナ相模原で10歳未満含む37人感染 22人が経路不明

やまゆり園 事件考【共に生きる】障害者と介助者 支え合う、人は不完全だから

東京五輪コロナ禍の五輪開幕へ 横浜で先行開催 知事「自宅観戦を」

川崎・承諾殺人未遂、被告に猶予判決「妹の冥福祈って」

還付金詐欺の件数・被害額3倍以上に 神奈川県警が対策強化