五輪開閉会式ディレクターの小林賢太郎氏を解任 組織委
東京オリンピック(五輪)の大会組織委員会は22日、東京五輪で開閉会式のディレクターを務める小林賢太郎氏(48)を解任したと発表した。組織委によると、小林氏は演出全体の調整役を務めていた。
小林氏はお笑いコンビ「ラーメンズ」として活動し、現在は舞台作品などの企画・脚本を手がけている。ラーメンズ時代のコントで「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」と発言した動画がインターネット上で拡散し、批判が集まっていた。
組織委は同日、「過去に、歴史上の痛ましい事実を揶揄(やゆ)するせりふを使用していたことがわかった」と解任の理由を説明した上で、「開会式が目前に迫る中、このような事態となり、多くの関係者、都民・国民の皆さまにご迷惑・ご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とするコメントを出した。
この後、記者会見を開いた組織委の橋本聖子会長は、過去のコントでの発言を把握した21日深夜から22日朝にかけて協議したと説明。「外交上の問題もある。早急に対応しなければいけないということで解任ということになった。大変反省している」と述べた。
小林氏は組織委を通じて、「不快に思われた方々に、おわびを申し上げます。申し訳ありませんでした」とするコメントを発表した。
この問題を巡っては、米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が21日、小林氏が過去に「ナチスによるユダヤ人虐殺をネタにしたコントを披露していた」として、非難する声明を出していた。団体は「どんな人にもナチスの大量虐殺をあざ笑う権利はない。この人物が東京五輪に関わることは600万人のユダヤ人の記憶を侮辱している」としている。
- 鵜飼啓朝日新聞オピニオン編集長代理=国際2021年07月22日12時36分 投稿
【視点】 五輪のプログラムに関わる人たちをめぐり、次から次へと問題が出てきます。組織委員会の企画立案段階で問題があったと考えざるを得ません。今回の問題では、大きな影響力のあるユダヤ人人権団体が声明を出したため、組織委も迅速に対応せざるを得なかったのでしょう。
小林氏の過去の振る舞いについては、歴史や国際関係への無理解があると思います。ナチスに迫害されたユダヤ人らが南米などに逃れることができるよう、本省の指示に反してリトアニアで渡航許可証を発行した日本人外交官、杉原千畝氏の存在がよく知られています。「命のビザ」の発給を受けたユダヤ人の多くはシベリア鉄道で極東まで行き、ウラジオストクから船で敦賀に到着。そこから世界各地に逃れました。ニューヨークにも多くのユダヤ系の人たちが住んでおり、日本の外交官には「あのとき日本が助けてくれなかったら、私はこの世に存在していなかったかもしれない」といった感謝の声が今でも多く寄せられるそうです。それだけに今回のような問題が起きるのは非常に残念です。…続きを読む