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「エマ!見て見て!エマの好きそうなお花を持ってきたよ!」

「エマ、今とても可愛い子猫がいたよ」

「エマ~何で俺の所に来てくれなかったの?」

「あ、エマ、その草は触っちゃダメ、かぶれるよ」

「エマー」
「エーマー!聞いて!」

「……エマ」
同級生のヴィクが哀れんだ顔でこちらを見ている

「何も言わないで」

「いや、流石に構いに来すぎじゃない?なに?エマの息子か何かなの?」

「怒られるよ……」

げんなりと若干引いた様子で私にひそひそと話し掛けるヴィクに注意するが、言いたいことはよく分かる。

全学年合同魔法合宿が始まってからというもの、レオンはやたらと私の元に遊びに来ていた。レオンは幼なじみでこの国の第2王子様なのだ。だからこんなわがままも周りも目をつぶって許されている。
こんなに遊び回っていても優秀なのだから、さすが王子様と言ったところだろう。

最初、レオンは課題とか指示されて動くのとか嫌いそうだし、真面目に課題に取り組むよりは私を構って好きに遊んでいたいのかと思っていた。

だけどその割に、やる事はきちんと終わらせているし、気分が乗っているのが大前提だけど自分のクラスの課題クリアに十分貢献している。

レオンの器用さとか意外と状況をよく見て動いているところとか、そういう普段は気まぐれな部分に隠れて見えにくいレオンの凄いところを改めて認識することも多かった。

凄い、偉い、流石。語彙力が少ない分、心からの言葉でレオンに賞賛の言葉を送っていたら気を良くしたのか何なのか、そのうち私の隣は殆どの時間をレオンが陣取っていた。

あれ見てこれ見てと小さな子供みたいに、自分の興味関心を引くものを指差して私に共有しようとする。
正直すごく微笑ましいし許されるなら一緒に遊びたいけれど、今はわたしも、課題クリアの為に頑張らないといけない。
かと言ってレオンを適当に扱いたくもない。気まぐれなレオンがこんなにも自分に構ってくれる機会を逃したくないと思うのは、彼に恋をする一人の女として、どうしても捨てきれない打算だった。
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