「平井大臣が『使わないと入国させない』と言っていた五輪アプリが全然作動しなくて、途方に暮れました」
こう語るのは、東京五輪の取材で来日した海外在住ジャーナリストだ。
来日する五輪関係者向けの健康管理アプリ「OCHA」。その契約を巡り、平井卓也デジタル相(63)が「NECを干せ」などと指示したことでも物議を醸した。
「実際、機能縮小に伴って事業費が約38億円に削減された結果、NECが契約から外される一方、平井氏が接待を受けたNTTは約23億円分の受注を確保。さらに、平井氏と親密な豆蔵グループの企業が再委託先として6.6億円で受注するなど、調達の過程に不透明さが指摘されています」(政治部記者)
そんな疑惑の五輪アプリだが、グーグルプレイなどの公式ストアには、「登録しようとすると動かなくなる」などのレビューが相次いでいる。冒頭の海外在住ジャーナリストが嘆く。
「五輪アプリを起動させるには、まず組織委員会から送付されるメールに従って、『ICON』というシステムに登録し、パスワードなどを設定する必要があります。ところが、それが容易ではないのです」
例えば、組織委から送付されたあるメールには、十数ページに及ぶPDFファイルが3種類、動画やパワーポイントも添付されていた。こうしたメールが何通も送られてきたという。
「資料が膨大で、パスワードの設定方法が全然分かりませんでした。組織委のサポートセンターに電話しても繋がらない。知人に聞いて、1週間以上かけ、パスワードを設定できました。でも、この先に更なるハードルがあったのです」(同前)
来日中の行動計画をメールで組織委に提出し、承認を受けなければならないのだ。承認後に「アクレディテーション(参加資格)」が発行され、ようやくアプリは正常に動く。ところが、
「行動計画を送付しても何の返事もなく、そのまま日本に向かいました。すると、羽田空港で組織委の担当者から『確認を忘れていましたので承認出来ません』と言われた。アプリの設定のために空港で数時間も留め置かれ、やっと参加資格を得られました」(同前)
政府は、来日前の14日間はアプリ上で体温を記録してもらうことで、水際対策も徹底できるなどと自信を見せていたが、
「アプリを作動できないまま、来日している関係者が大勢いるのが現実です。来日後、仮にアプリが作動できても、体温を自己申告で適当に入力している人も多い。私は発熱した際、その通り入力しましたが、『条件を満たして下さい』と表示されるだけ。感染の疑いがあっても、簡単に外出できます」(五輪担当記者)
平井氏に見解を求めたが、
「組織委員会にご確認ください。なお、現時点で特段の不具合があるとの報告は受けておりません」
使い物にならない五輪アプリ。一体誰のために、38億円もの税金が投じられたのか……。
source : 週刊文春 2021年7月29日号