微生物発酵により代替タンパク質を開発するNature’s Fyndが、米国の食品安全性に関するGRAS認証について、FDAから「異議なし」の回答を受け取った。
これにより、同社の発酵タンパク質Fyの安全性が、FDAに評価されたことになる。
Nature’s Fyndが米国FDAよりGRAS認証を取得
GRASとは、Generally Recognized As Safe(一般に安全とみなされている)の略語で、米国における食品安全に関する独自の認証制度。
製造業者が米国で食品素材を販売するには、まずGRAS自己認証を行う必要がある。
製造業者によるGRAS物質のFDAへの通知は強制ではなく、自主的なものとなるが、GRASに該当する物質がFDAへ通知され、FDAが異議を申し立てない場合、通知した物質はGRAS物質として「GRAS Notice Inventory」に掲載される。
CEOのThomas Jonas氏 出典:Nature’s Fynd
今回の報道の概要は要するに、Nature’s Fyndが2020年1月15日にGRAS自己認証に関するレターをFDAに提出し、FyプロテインがGRASの定義にあてはまることを通知(GRAS通知)。
これに対し、FDAからGRAS通知に対し「異議なし」という回答が得られたことになる。
つまり、Nature’s FyndのFyプロテインの安全性が、FDAから「お墨付き」をもらったことになる。
Nature’s FyndのFyプロテインは既に、FDAの「GRAS Notice Inventory」のリストに掲載されている。
FDAはレターの中で、
「Nature’s Fyndが提供した情報、ならびにFDAが入手した他の情報に基づくと、Fusariumタンパク質は意図された条件で使用されればGRAS(=一般に安全にみなされるということ)であることに異議はない」
と回答している。
極限環境微生物から作られる代替タンパク質「Fyプロテイン」
Nature’s Fyndは、シカゴを拠点とするスタートアップ企業。
ビル・ゲイツ氏、馬雲(アリババ創業者)、アル・ゴア氏(元米副大統領)など名だたる人物から出資を受けており、これまでに約163億円を調達している。
同社のはじまりは、NASAの研究プロジェクトに参加していたMark Kozubal氏が極限環境で生息する微生物を発見したことにさかのぼる。
Nature’s Fyndはアメリカのイエローストーン国立公園の熱水泉に生息する極限環境微生物を使用。
イエローストーン国立公園の熱水泉 出典:Nature’s Fynd
極限環境微生物とは、極限環境でのみ増殖できる微生物のことをいう。
具体的には、Fusarium strain flavolapisと呼ばれる極限環境微生物由来の菌類(真菌)を発酵させてFyプロテインをつくる。
同社は、独自の発酵技術で菌類に栄養を与えて発酵させる。
わずか数日で、細糸が織り交ざって筋肉繊維のような層が形成される。これを収穫して、蒸す、圧搾、洗浄、スライスといった加工を施し、Fyプロテインにする。
こうしてできたFyプロテインは固形、液体、粉末に形状を変えることができ、さまざまな食品に使うことができる。
菌類を発酵させてFyプロテインを作る 出典:Nature‘s Fynd
FDAによる回答にも、Nature’s FyndのFyプロテインが、代替肉、代替乳製品、果物・野菜ジュース、穀類・パスタ類、焼き菓子、スープなどの原料として安全に使用できることが示されている。
Fyの発酵は、シンプルなトレーをタワー状に積み重ねて行うため、省スペースで、生産効率が良い。
公式サイトによると、適切に管理された環境下であれば、同社のFyプロテインは宇宙でも生産可能だとしている。
GRAS自己認証のレター(p9)によると、Fyプロテインは、固形分が20-30%で、乾燥させると固形分95%の粉末状にできる。
粉末状では、タンパク質を45%以上、食物繊維を25-35%、脂質を5-10%含み、9つの必須アミノ酸、食物繊維、カルシウム、ビタミンを含んでいる。
2月に発売された新作は即完売
Nature’s FyndはFyプロテインを使った商品を今年2月に数量限定で発表した。
この時は、Fyプロテインを使ったクリームチーズ、代替肉パテを発表したが、わずか1日で完売となった。
出典:Nature‘s Fynd
今回のFDAによる「お墨付き」を得て、Nature’s Fyndは製品の市場投入を加速していくことが予想される。
Green queenの報道によると、同社は香港・中国本土での販売に向けて、規制当局に働きかけていることを以前明らかにしている。
動物の飼料にするための植物の栽培には数ヵ月、動物を育てるには数年かかるが、微生物をベースとすれば、数時間で倍増させることができるうえ、年間を通じて同じ生産量を維持できる。
何より、Fyプロテインの生産には、従来の牛肉生産と比較して、使用する土地・水がそれぞれ99%、87%少なく、温室効果ガスの排出量が99%少なく、生産に必要な資源が極めて少ない。
Nature’s Fyndのように微生物を発酵させて代替タンパク質を作る領域は、代替タンパク質の第3の柱と呼ばれ、近年、投資額・参入企業ともに急増している。
この2年、発酵タンパク質企業が急増している 出典:GFI
Nature’s Fyndのほかには、菌糸体を使ってステーキ肉を開発するMeati Foods、ベーコンを開発するAtlast Foodなどがいる。
微生物を活用して代替タンパク質を開発する企業の半数以上はこの2年に登場していることからも、この領域の注目度の高さがうかがえる。
参考記事
Nature’s Fynd receives GRAS no questions letter from FDA for ‘Fy’ nutritional fungi protein
Nature’s Fynd Gets FDA GRAS Approval For Its Yellowstone Park Fungi Protein ‘Fy’
農林水産省令和2年度輸出環境整備推進委託事業 (食品規格等調査)調査報告書 アメリカ合衆国
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アイキャッチ画像の出典:Nature’s Fynd
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