一人でいること
- 拒絶されたときの認知と感情について考え,対処法を検討しましょう。
- 孤独について理解し,対処するための方法を学びましょう。
孤独は性加害の重要な要因のひとつと考えられています。この記事では,孤独の経験と寂しさを感じないで一人でいることについて考えます。
孤独感や寂しさを感じているときに拒絶されると,それが性加害に結びつく怒りと孤独感の引き金となる場合があります。
ここでは,拒絶の理解から始めます。
- 孤独と拒絶と性加害の間にはどのような関係があるでしょうか?
- 犯罪は,拒絶されたと感じた後に起きたのでしょうか?
- 性加害は,孤独の直接的あるいは間接的な結果なのでしょうか?
拒絶
全ての拒絶を避けることができるでしょうか。
拒絶されることは,人間関係においてつきものであり,人生の現実です。わたしたちが何をしても,自分の人生をどんなふうにうまくやろうとも,拒絶されるときには拒絶されます。
わたしたちはすべてのパーティーに招待されるわけではないし,申し込んだ全ての仕事を契約できるわけでもありません。知り合いになりたい人全員に受け入れられることもありません。つまり,誰かに拒否されたり拒絶されるという体験は,人生の現実であり,全ての人にとって共通に起きることです。
拒絶について考えるときは,どのように拒絶を避けたり防いだりするのかではなく,拒絶されたときに「傷つけられた」と感じないで受け入れる方法や,感情や行動に悪い影響を与えないようにする対処方法について考えるようにしましょう。
- 拒絶されたとき,どんなことを考えますか?
- その時,どのようなセルフトークをしていますか? 怒りをましたり,自分や相手を傷つけるようなセルフトークはありませんか?(例:「私は嫌われている」「私には価値がないんだ」「彼女は馬鹿なやつだ」「自分はのけ者なんだな」)
- 拒絶されたとき,性加害に結びつくようなセルフトークはありましたか?(例:「女はみんな俺を無視する」「拒絶しているが,本当はやりたいくせに」)
- 拒絶されたときに,どんな感情になりますか?
- 悲劇的,絶望的だと感じたり,怒りや孤独感をふだんから感じやすいですか?
- 拒絶されたときに,気分を和らげてくれるものはありますか?
- 人との交流において,どうやったら拒絶の体験を上手に受け入れたり,対処したりできますか?
孤独
孤独を考えるとき,大切なのはそれが否定的な体験なのか,肯定的な体験なのか区別して考えてみることです。そして,一人でいる状況でも安心していられるようになることです。
また,パートナー関係がなく,一人でいることについて,人として不完全であるという認識を持っている人は,それを問い直す必要がありそうです。
- 「一人でいること」と「孤独であること」はどのように違うでしょうか?
- 人と一緒にいる状況でも,まだ孤独を感じますか?
- 孤独を感じる状況をいくつか挙げ,なぜそうなるのか考えてみましょう。
- どのようなセルフトークがありましたか?
- 孤独を感じる原因をどこに向けていますか?
- 新しい町に引っ越して一時的に友達がいなくなる「ちょっとした孤独」と,長期間を過ごした恋人や家族と別れる「情緒的な孤独」の違いは何でしょう。
- 「情緒的な孤独」を感じていたとき,他にどのような感情がありましたか?(愛されていない感じ,無価値感,不満足感,嫉妬など)
- 一人でいることについて,どのような信念や態度,感情を持っていますか?
- 一人でいることを否定的に受けとることと,肯定的に受けとることの違いはなんでしょうか。
自分自身が一人でいることを選ぶこと,一人の時間を自由に楽しく過ごすことは,孤独ではなく,自分を元気づけ,肯定する大切な体験です。
孤独に向き合い,受け入れる人は,大きな達成感や安心を感じて,自分を圧倒するような孤独を恐れることがなくなります。孤独であることから逃げたり,一人でいることを避けようとする人は,自分が孤独に対処できると思っていませんし,個人的成長の大切な機会を見逃しています。
特に刑事施設からの出所後には,一人になりがちで孤独を感じる機会が多いと予想されますので,孤独に対処することは非常に重要です。
孤独感・寂しさの対処方法
- 孤独を受け入れる
多くの人が,時々寂しさや孤独を感じていますが,それが短い間であれば,受け入れることができるものです。
たとえば,いつも週末に友達と出かけていたとします。しかし,友達みんなに予定があり,一人で過ごさなければいけない週末があるかもしれません。よくあることではないので,否定的に感じたり,孤独や寂しさを覚えることもあるかもしれません。それがどの程度であっても,そういう状況で再犯につながるようなサインが出ていないか,立ち止まって検証してみる必要があります。
もし孤独感があなたの再加害を推し進める行動ステップになっているのであれば,孤独を感じるときにどう対処するか,検討しなければなりません。
- なぜ孤独なのかを検討する
どうしてあなたは孤独を感じるのでしょう?例えば,あなたが憂鬱になりやすいなら,あなたの孤独な気持ちが本当に憂鬱なのかどうかを検討して,あなたの孤独の原因を探ってみることが必要です。
また,あなたが孤独を感じるときと感じないときの状況を特定し,孤独が性加害のリスクを高めるかどうかについて分析する必要があります。もしそうであるなら,あなたの考え方や感情,信念,認知の歪みなどを分析し,あなたをサポートしてくれる人にすぐに助けてもらえるような体制を作りましょう。
- 時には孤独になることを想定して,それに対処するための計画を立てる
時々は孤独を感じることを受け入れ,孤独を感じたときにどう対処するかについて計画を立てましょう。これをするためには,感情と認知をチェックして,なぜ孤独を感じるのかを理解する必要があります。さらに,自分の気分を変える方法を見つける必要もあります。
例えば,週末や休日があなたにとって孤独な時間なら,計画を立て,誰かと一緒に楽しめることをするか,楽しめる趣味や活動を準備します。楽しめる趣味を持つと,孤独な時間がくつろぎと楽しみの時間に変わります。散歩のような身体を動かすことも,孤独やよくない気分に対処するための優れた方法です。それは,身体の変化が本当にあなたの気分をよくしてくれるからです。
- 感情が持続するときには助けを求める
いつも孤独や憂鬱を感じると気付いたり,孤独や憂鬱が長く続いていると気付いたら,カウンセラーや医師,保護観察官,保護司,ケースワーカーなど,サポートしてくれる人に早めに相談をしましょう。
再犯防止のために焦ってパートナーを得ようとする必要はありませんが,友人や地域の支援者などとの様々な人間関係を持つことは,性加害の再発を防ぐためにとても重要です。
「さなぎの樹」では様々なプログラムを用意するとともに,普段からスマホなどを使って簡単に相談できる体制を用意しています。こうしたコミュニティサイトを利用することも是非検討してください。