親密性について
①親密性について理解しましょう
②「愛着のスタイル」が人間関係に与える影響を理解しましょう
人間関係において親密性が満たされないことや,それによって孤立感を感じることは,性加害に結びつくと考えられています。
また,親密性をどのように形成していくかについては,親との関わり方でどのような「愛着のスタイル」を身につけてきたかに関係していると言われています。
ここでは親密性についての理解から始めましょう。
親密性ってなんだろう?
親密性とはどのようなものだと思いますか?次のことについて考えてみましょう。
●親密性とは?
●親密性と性加害の違い?
●親密性を阻むものとは?
- 自己認識の不足(自分が何を求めているのか,相手に何を差し出せるのかがよくわからない)
- コミュニケーション力の不足
- ストレス状態
- 自信/自尊感情の低さ
- これまでの人間関係における辛い経験
- 文化的な違い(育ってきた環境の違い)
愛着のスタイル?
愛着とは
愛着とは,親密な人を求め,その関係を維持するための振る舞い方のことです。愛着は子ども時代に親との関係の中で育まれ,大人になった現在の人間関係に強い影響を与えています。
愛着のスタイルの発達
愛着の発達を考える際には,これまで自分自身が,家族や友人,配偶者,セックスパートナー,子ども,権威を持つ人(先生など),色々な人と交流してきたことを振り返り,自分がどのような認知をして,どのような感情を体験し,どのような行動をとってきたかを考えてみる必要があります。
こうしたことを考えてみることで,現在の自分自身が,周りの色々な人との関係の中で,どのような認知や感情があって,どのような行動を取ってきたかが理解しやすくなります。そして,時に感情が性加害の一因になっていることも理解出来るようになるでしょう。子ども時代の体験が,大人になった現在の感情と行動,そして人間関係に影響を与えていることが多いのです。
愛着のスタイルのパターン
下の図は,よくある愛着のスタイルを4つにまとめたものです。右上に安全な愛着のスタイルがあり,それ以外は安全ではない愛着のスタイルを表しています。
自分はどれに当てはまるでしょうか。
安全な愛着のスタイルを持っていれば,自分についても他人についても肯定的に考えることができます。そのため,自信を持って友人を作ったり,他者と交際したりできますし,他者を純粋に好きになったり,感謝したり,信頼したりすることができます。こうした愛着のスタイルを持っている人は,他人を支配しようとしないし,バランスがとれた人間関係を築くことができます。何か問題が発生しても,適切な方法で建設的な解決をすることができます。
夢中になりやすい愛着のスタイルでは,他人を肯定的に評価する一方で,自分を否定的に考える傾向があります。このスタイルを持った人は自信に乏しいので,何か問題があると,必要以上に大きな問題に感じて,「できない,無理」と安易に人に頼りがちです。このような人は,感情的に大げさになりやすく,極端で,人間関係においてはいいなりになってしまったり,逆に相手を支配しようとすることが起きやすくなります。また,絶えず人との関わりを必要とし,夢中になりやすいわりに頻繁にパートナー(配偶者や恋人,仲間)を変える傾向があります。
臆病な愛着のスタイルは,自分を否定的に考える一方で,他者も否定的に見やすい傾向があります。臆病な愛着のスタイルの人は,自信に乏しく,何か問題があると自分を責めたり,「自分はダメだ」と落ち込んだりしやすいのです。このようなタイプの人は,助けを求めたり,他人を頼ったりすることを怖いと感じがちです。自分の気持ちに気付いても,それを表現することがなかなかできません。このような人は,人間関係において受け身になりがちです。
無視する愛着のスタイルは,自分を肯定的に考え,非常に強い自信を持っている一方で,他者を否定的に見て,他人が何を考えようと気にしないという傾向があります。このような人は,他人からの私事や助けを求めようとしません。感情を体験しないように自分をごまかしていて,自分の気持ちを他人に伝えることもできません。ストレスを感じると,他人を避ける傾向があります。ですから,人間関係において強い(激しい)感情を体験することがほとんどありません。
自分自身の愛着のスタイルはどうでしょうか?
「人間関係が煩わしい」「人を信用できない」「人とあまり関わらない」「パートナーに対して強い不満がある」といったことに心当たりがある人は,もしかしたら安全ではない愛着のスタイルを持っているのかもしれません。この他にも,安全ではない愛着のスタイルの特徴としては,「嫉妬心が強い」「極端に感情的な反応をする」「度を超した愛情を持つ」といったものがあります。
また,安全ではない愛着のスタイルは,性加害に関連すると言われています。
例えば子どもに対する性加害は,「臆病な愛着のスタイル」または「夢中になりやすい愛着のスタイル」と関連する傾向があり,強姦は「無視する愛着のスタイル」と関連する傾向があります。
「さなぎの樹」のグループワークでは,自分自身の人間関係の親密性のレベルや,親密性を妨げる要因について,話し合うプログラムを実施しています。
他者の目を通して自分を見ることで,自分自身に対する理解が深まります。