性犯罪につながるリスク③　動的リスク（その2）

性犯罪に繋がるリスクは，動的リスクと静的リスクに分けられます。静的リスクは変化させることができませんが，動的リスクは，治療や練習によって変化させることが可能です。

前回は変化させることができるリスク要因の前半をチェックしていきましたが，今回はその続きです。繰り返しになりますが，ここに書かれているリスクは，変化させることが可能なリスクです。変化させられるリスクを低下させて，再犯のない生活を送りましょう。

粗暴性とは，暴力を振るう傾向のことです。ちょっとしたことですぐに人を殴ったり，壁を殴ったり，ものを壊すというような乱暴な振る舞いが多いほど，再犯のリスクが高まります。

薬物の不正使用や，適量を超えた飲酒は再犯リスクを高めます。また，薬物の不正使用や飲酒の影響で性加害を行ったり，暴力的になった経験がある人は，再犯リスクが高いと言われています。

ここでいう薬物の不正使用とは，法律で禁じられている薬物（覚醒剤や大麻，シンナーなど）だけではありません。医師の処方を受けていない精神薬の使用や，マジックマッシュルームなどの麻薬類似品も含みます。また，医師から処方された薬でも，用量用法を超えた使用は薬物の不正使用に入ります。

ある種の感情に見舞われたときに，再犯リスクが高くなることがあります。否定的な感情だけでなく，肯定的な感情が性加害につながる場合もあります。

過去の性加害を振り返り，その原因についてよく考え，理解しようとする準備が不足している人は，再犯リスクが高くなると言われています。

• 自分の責任を否定すること
• 他人のせいにすること
• 事件をごまかそうとすること
• 現実や過去を見ようとしないこと
• 自分を変えようとする気がないこと

ストレスの解消が下手なことや，複雑な問題に対処する能力が不足している人は再版リスクが高まります。

たとえば，恋人や配偶者との不和（けんか）といったストレスから，性加害を起こす人がいます。他にも離婚や妻の妊娠，失業，借金，職場での不和などのストレスに適切に対処できずに性加害に及んでいる人は再犯リスクが高くなるといわれています。

住む場所や働き口を世話してくれる人がいるかどうか，相談に乗ってくれる人が身近にいるかどうかといったことが，再犯リスクに影響します。

家族だけでなく，友人，職場の人間関係，カウンセラー，自助グループなどからのサポートが不足していたり，用意されていても本人が活用しようとしなかった場合に再犯リスクは上昇します。

被害者になりそうな人に近づくことは再犯リスクを高めます。被害者になりそうな人を手懐けようとすることや（これを「グルーミング」といいます），被害者になりそうな人と会う機会が作れそうな活動に参加して，犯行の機会を作ることなども含まれます。

• 女性を誘って強姦するようなパターンを持つ人が，女性が集まるクラブに出かける。
• 幼児や児童に性加害をする人が，通学時間に通学路をうろうろしたり，子供が遊んでいる公園に行ったりする。
• 満員電車で痴漢を繰り返している人が，満員電車に乗る。
• 夜道で女性に近づき接触するひとが，夜間にコンビニに出かける。

再犯防止を実現していくためには，自分の中にあるリスクに気付くことが非常に大切です。再犯に繋がるリスクにはたくさんの種類がありますが，多くの人は複数のリスクを抱えています。どれかひとつを修正すれば全てのリスクが軽減されるというものではありません。一つ一つのリスクを良く見極め，一つ一つに丁寧に対処していくことが必要です。

次回は変化させられるリスクの最終章です。