変化させることができるリスク要因(3回目/全3回)
性犯罪に繋がるリスクは,動的リスクと静的リスクに分けられます。静的リスクは変化させることができませんが,動的リスクは,治療や練習によって変化させることが可能です。
今回は変化させることができるリスク要因の最終回です。繰り返しになりますが,ここに書かれているリスクは,変化させることが可能なリスクです。変化させられるリスクを低下させて,再犯のない生活を送りましょう。
性加害パターン
性加害のパターンがはっきりしている場合,再犯リスクは高くなります。似たような状況で,似たような加害を繰り返している場合,性加害のパターンができあがっている可能性があり,再び性加害に及ぶ可能性が非常に高いといえます。
一方で,長期間にわたって同じパターンの行為が繰り返されていない場合,パターンからの離脱も早いと考えられています。
衝動性
衝動性とは,「思い立ったらすぐ」行動に移したり,人に話したりすることです。普段から他の可能性を検討することなく,目の前の状況だけで判断し,拙速に行動に移す人は再犯リスクが高いといわれています。再犯のリスクを考えるときには,事件に繋がる直接的な行動だけではなく,普段の行動や思考のパターンをよく検証することが必要です。
性加害を悪いと思わない
性加害行為を,それをど悪いことだと思っていない人は,再犯のリスクが高いといわれています。
- 場合によっては力尽くでもセックスしていい
- 減るものじゃないのだから,身体を触るくらいどうってことない
- 盗撮はばれなければ相手に被害を与えない
保護観察の軽視
保護観察を軽視し,保護司への訪問をしないなど,遵守事項違反をするひとは再犯リスクが高くなります。
性的嗜好の偏り
性的な行為の好みが偏っている人は,再犯リスクが高くなるといわれています。性的嗜好の偏りとは,次のようなものに強い性欲を感じることを指します。
- 子供を対象とした性行為
- 同意がない性行為の強要
- 暴力
- 性器の露出
- 下着など物に対する性的執着(フェティシズム)
- 苦痛を与える行為(サディズム)
- 苦痛を受ける行為(マゾヒズム)
- 痴漢行為
- のぞき
- わいせつ電話
親密性の不足
身近な人との親密な関係が不足していることは,再犯リスクを高めます。親密さが不足した状態とは,親しい人間関係が長く続かない状態の人や,家族や恋人との関係で,次のような状態になっている時を指します。
- けんがが多い
- 言葉を交わさない
- 本音を言わない
- 嘘をつく
- 嫉妬している・嫉妬されている
- パートナーとの間に性的なことに関するトラブルがある
- 長期的な別居
自分のリスクが低いと考えること
自分のリスクが低いと考えることは,再犯リスクを高めます。リスクが低いと考えると,油断が生まれ,より高リスクの状況に陥るような行動を安易に選択する可能性が高くなります。
ここまで,全3回19項目にわたって,「変化させられるリスク」をチェックしてきいました。再犯に繋がるリスクにはたくさんの種類がありますが,多くの人は複数のリスクを抱えています。どれかひとつを修正すれば全てのリスクが軽減されるというものではありません。一つ一つのリスクを良く見極め,一つ一つに丁寧に対処していくことが必要です。
そして,リスク低減のためには,独自の方法では上手くいかないことがほとんどです。なぜなら,リスク低減のためには,しっかりとした「方法」が必要だからです。逆から言うと,どんな人でも「方法」を学び,コツコツと実践をしていけば,リスクの低減は可能です。
多くのリスクを低減させるのには長い時間とエネルギーが必要ですが,新たな被害者を出さないために自分ができる努力をしていきましょう。その努力は,結果的に自分の自信を高め,社会のなかで適応的に暮らし,充実した人生を歩む力につながっていくことでしょう。