ー寮 部屋ー
「ふわぁ~…んん…」
「あら?おはよう、よく寝れた?」
「うん…」
「そう…って!ウララさん、髪の毛がぐちゃぐちゃよ!こっちに来なさい。整えてあげるわ」
「ありがとう、キングちゃん」
ハルウララはベットから離れてキングヘイローの前にある椅子に腰をかけた。キングヘイローが髪の毛を解かしていく。
しばらくして…
「はい、綺麗に整ったわ!」
「ありがとう。キングちゃん、上手だね」
「一流として当然の事よ。さあ、そろそろ時間よ。行きましょう」
「うん」
ハルウララとキングヘイローは授業の準備をして、トレセン学園に向かった。
ートレーナーの部屋ー
トレーナーはハルウララを走らせてあげるにはどうしたら良いのか考えていた。
「(どんな風にウララにレースの事を伝えようか、トレーニングをさせたいのだが…きっといきなり、「走ろう」なんて言ったら、嫌に決まっている…何か、走ってくれる様になるきっかけがあるといいんだけど。…でも、まずはウララと信頼関係を築く所からやろうかな)」
トレーナーは考えた末に思いついたのが、まずはウララとの信頼関係を築く事だった。
「(でも、どうしよう。食べ物で信頼関係を築こうにも、それはただの餌付けだし。って!なぜ、先に食べ物を考えた…?うーん…そうだ!お出かけに行こう!お出かけをすれば、ハルウララも楽しんでくれるはず!)」
ーショッピングモールー
トレーナーは授業が終ったハルウララと近くのショッピングモールまでお出かけに行った。
「ウララ、何か欲しいのあったら遠慮なく言っていいよ?」
「いいの?」
「うん」
「じゃあ…アイスが食べたい」
「それじゃあ、サー○ィワンが近くにあるから行こう。確か、新しい味ににんじん味があったよ」
「にんじん…!」
ハルウララの耳が「ピョコ」っと上に上がったのがわかった。トレーナーは喜んでいるハルウララを見て、とても嬉しい様子。サー○ィワンに行って、ハルウララはにんじん味、トレーナーは苺味を買った。フードコートで椅子に座りながら、食べる。ハルウララがパクパクと美味しそうに食べる。
「美味しい?」
「美味しい」
「良かった!僕のも食べるかい?」
「いいの?」
「うん!どうぞ」
「ありがとう」
ハルウララはお礼を言うと、淡々とアイスを食べ続けた。トレーナーはその姿を見ながら、食べ終るのを待つ。
「次はどこに行きたい?それとも何かやりたい?」
「ゲームセンターに行ってみたい」
「わかった!ほら、アイス溶けちゃうよ?早く食べちゃいな」
ハルウララがアイスを食べ終わり、クレーンゲームの出来る、ゲームセンターに向かった。ゲーセンに着いた後は、クレーンゲームを見ながら、歩いていると…
「…」
「どうしたんだ?ウララ」
「ううん…何でもない」
ハルウララが見ていた物はにんじんの人形。
「これ、取ってあげようか?」
「いいの?」
「ああ!ウララはにんじんが本当に好きなんだな。よし!任せて!」
取ろうと頑張るトレーナー。ハルウララもそわそわしながら見る。24回目で…
「やっと、取れた!はい、どうぞ」
「ありがとう、トレーナー」
ハルウララはにんじんの人形を「ギュ…」っと抱き締める。その後もダンスゲームをしたり、一緒にご飯を食べたり、服屋を見て回ったりして楽しんだ。トレーナーとハルウララはだんだんと仲を深める。時間はそろそろ、夕方になりかけていた。
「そろそろ帰ろうか!」
「うん!今日は楽しかった!ありがとう!トレーナー!」
ハルウララはとても楽しんだ様子。ハルウララの笑顔と声の明るさが以前のハルウララに戻ってきた。トレーナーとしてはこれほど、嬉しい事はない。トレーナーは笑顔なハルウララを見て、涙目になる。
「俺も…楽しかったよ」
「泣いてるの?」
「い、いや…気にしなくていいよ!」
「あっ!そろそろ時間だ。寮に帰るね!じゃあね!トレーナー!」
「じゃあね」
トレーナーはハルウララが寮に行くのを見送って、自分も部屋に戻っていった。
ー寮 部屋ー
「ただいまー!」
「えっ!ウララさん?」
「なに?キングちゃん?」
昨日のあまり感情的ではない姿を見たキングヘイローは今日のハルウララを見て、少し困惑した様子。
「見て!トレーナーに取って貰ったんだ!」
そう言うとハルウララはトレーナーに取って貰った、にんじんの人形をキングヘイローに見せた。
「そう…良かったわね」
「キングちゃんも抱き締めてみる?とっても気持ちいいよ!」
ハルウララが人形をキングヘイローに渡す。
「(なにこれ…!すっごいモフモフ!)」
あまりの柔らかさに驚くキングヘイロー。抱き締めてみると…
「(まるで雲に抱きついてるみたい…!)はわぁ~」
「キングちゃん?」
「ハッ!ごめんなさい、ウララさん!返すわ!」
「気持ち良かったでしょ!」
「ええ。まるで雲に抱きついてるみたいだったわ」
「良かったね!にんじんさん!」
「にんじんさんと遊ぶのもいいけど、勉強は終ったの?」
「あっ!忘れてた!」
「しょうがないわね。私が手伝ってあげる」
「本当!ありがとう!キングちゃん!」
夜…
「…」
キングヘイローがハルウララの方を見る。
「(今日は…)」
「えへへ…にんじんが…いっぱい…むにゃむにゃ」
「(大丈夫そうね)」
ハルウララが起きる。
「んん…おトイレ…」
ハルウララがトイレに行く。
「(寝ようかしら)」
キングヘイローが寝る準備にはいる。トイレからハルウララが戻ってくる。
「(これでゆっくり寝れるわ)」
次の瞬間、ハルウララがキングヘイローのベットに潜りこむ。
「えっ!?ちょっと、ウララさん!」
「すぅ~…」
「寝るの早過ぎ!」
それから、数十分とハルウララを起こそうとするが失敗した。あきらめて、2人で寝た。
次の日…
ートレーナーの部屋ー
「ガチャッ」と部屋のドアが開いた。入ってきたのはハルウララ。
「入るよ!トレーナー!」
「授業は終ったのかい?」
「うん!今日は何するの?」
「実はこれをやろうと思って」
トレーナーがゲーム機とゲームのソフトを机に置く。
「ゲーム?」
「うん。ウララもやるかい?レースゲームなんだけど。僕のお気にいりなんだ!」
「やりたい!」
「じゃあ、隣においで」
ハルウララがトレーナーの座るソファーの隣に座る。
「よーし!負けないぞ~!」
トレーナーとハルウララは何時間かやりこんだ。
数時間後…
「やった!やった!一位!」
「くっ!負けた!ウララは強いね!」
「本当?」
「ああ!本気でやったのに!負けちゃった!」
「えへへ…やった!」
「このゲーム初めてなのによくこんな短時間で上手くなったね」
「だんだん慣れてきちゃった!ねーねー、もう一回やろうよ!トレーナー!」
「よし、次は負けないぞ!」
その後、何戦かして…ハルウララが勝ち続けた。
「また負けた!」
「やった!やった!また一位!」
「(これが才能か…ハルウララ、恐ろしい子…!)」
「……」
「?」
さっきまでの明るさがなかったかの様にハルウララがゲーム画面を見つめる。
「どうした?」
「ねぇ、トレーナー…」
「ん?」
「わたし…1着になれるかな……」
「…」
「わたし、走るのはまだ恐いけど…いつか、レースに出て、1着になりたい…」
ハルウララの夢は「1着」になる事。しかし、トラウマが夢の邪魔をする。トレーナーはどうしたら良いのかわからない。ハルウララの夢を叶えさせたい、トレーナーはハルウララのトラウマを克服できる様に手助けする事しかできない。克服するには本人の勇気が必要なのだ。
「絶対になれるよ!ウララなら!」
「本当…?」
「ああ!絶対に!」
「わたし、頑張ってみるよ。トレーナー!」
ハルウララは明日からトレーニングをやると言ってくれた。1ヶ月後はレース。トレーナーとハルウララの夢は叶うのだろうか…
(続く)