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裁判

維新信者8アカウントをまとめて退治した事件の発信者情報開示仮処分(サンプルファイル有り)

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ツイッター上で匿名アカウントから誹謗中傷を受けた場合、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行い、住所氏名を明らかにしなければいけません。しかしその弁護士費用は約100万円にも上ります。

そのため多くの人が「誹謗中傷は辛いけど、100万円を出すのは無理」と諦め、発信者情報開示請求を行いませんでした。そのため匿名アカウントが調子に乗り、ますます誹謗中傷が増えてしまっています。

そんな無法地帯と化したネットの闇の部分が最悪の形で現れたのが木村花さんの事件だと思います。

僕はこんな状況を変えるべく、弁護士に依頼しなくても安価(約1万3000円)でツイッター社への発信者情報開示請求仮処分を行う方法を紹介して来ました。

<自分で行う方法>

ツイッター社(TWITTER,INC.)への発信者情報開示請求を自分で行う方法「ひな型ファイル有り」

しかし自分で発信者情報開示仮処分を繰り返す中で、発信者情報開示の難しさも実感して来ました。

自称フェミニストから「痴漢野郎」「ブサイク男」と言われた事件の発信者情報開示仮処分(サンプルファイル有り)

上の記事の事件「令和3年(ヨ)第74号」でわかる通り、裁判所は「侮辱」に対しては「相応の受忍限度がある」と簡単には開示を認めません。匿名アカウントから執拗に「ブサイク男」などと誹謗中傷を受け続けても、その法的責任を問う事は難しいのです。

裁判官には「侮辱の場合は、『キ○ガイ』と言われても開示を認めなかった最高裁判例がある」とも言われました。しかし「ブサイク」「キ○ガイ」などと言われ続ける事に耐えられる人間はいません。この状況ではとても正常な言論空間は形成できません。

そこで僕はとあるツイートを見かけたのをきっかけに

「著作権侵害でも発信者情報開示ができるのでは?」

「ツイートのスクショも著作権侵害に該当するのでは?」

と考えて、僕の写真やツイートのスクショを無断でツイートしていた維新信者どもを著作権侵害で発信者情報開示してみる事にしました。

それが自分でも想像以上に明確な権利侵害を認められ、発信者情報開示仮処分に成功しました。

この記事で紹介する事件「令和3年(ヨ)第22017号」こそ、「1つのツイートのスクショで発信者情報開示が認められる」という画期的な判断を獲得した事件なのです。

そしてこの事件での裁判官とのやり取りを元にアップデートさせて完成させたのが

「ツイートのスクショの著作権侵害」でツイッター社(TWITTER,INC.)への発信者情報開示仮処分を自分で行う方法「ひな型ファイル有り」

なのです。

発端は「ぴーたー」という維新信者による悪質な著作権侵害

今回の事件の発端になったのは、「ぴーたー」という維新信者でした。

僕は2020年8月からダイエットを始めて、2021年1月時点で10kg以上のダイエットに成功していました。

パテントマスターのダイエット秘話(8月・95kg→11月・83kg)

そして正月に富山の実家に帰省し、親友のS・Uにダイエット途中の体を見せて「普通になったな」とこれ以上無く嬉しいコメントを貰いました。

その後もダイエットを続け、1月25日には81kgまで体重が落ちていました。その成果をツイートしたのです。

僕自身、何ら恥る事の無い写真です。「部屋が汚い」とは良く言われますが、物が多いだけです。もちろん、正面切って「部屋が汚い」と言われれば「申し訳ない」とか「頑張って片付けます」とも返しますけど、陰でコソコソと他人のおもちゃにされる様な、そんな卑怯な真似は許せません。

そんな卑怯な真似をして、僕の怒髪天を突いたのが「ぴーたー」という維新信者です。「ぴーたー」は2021年1月28日の早朝から1月30日に掛けて、僕のダイエット写真を無断転載し、50近い誹謗中傷を繰り返したのです。

僕はこの僕の写真を無断転載し、ありとあらゆる誹謗中傷を繰り返した「ぴーたー」と、群がっている維新信者を「絶対に許さない」と決めました。

しかしこの内容で不法行為を問うならば「侮辱」になります。侮辱の場合、「ブサイク」や「キ○ガイ」でも発信者情報開示が認められません。侮辱でこの維新信者どもの発信者情報開示に成功するのは困難ではと思いました。

しかし、改めて「ぴーたー」のツイートを見なおすと天啓の様な閃きが降りて来ました。

「この最初のツイート、僕の写真を無断で使用しているから著作権侵害だろ。著作権侵害も立派な不法行為でしょ」

2021年2月10日(水)に東京地裁民事第9部に書類を提出

という訳で、僕はこの「ぴーたー」の著作権侵害ツイートを筆頭に、多数の維新信者が行っていた著作権侵害の証拠を揃えました。これを用いて発信者情報開示仮処分の書類を揃えて、2021年2月10日(水)に東京地裁民事第9部に書類を提出に行きました。

僕はこの時点で「室賀豹馬」「Neconomics」と「xx」「青さン、ご主人様は神対応抗日デス」という合計で4件のツイッター社への発信者情報開示仮処分に成功していました。

しかし、これらは全て「名誉棄損」「侮辱」という「人格権の侵害」です。著作権の侵害で発信者情報開示仮処分を行うのはこれが初めてでした。

結論から言うと、めっちゃ直しました。

なので最初に提出したファイルや途中で修正したファイルは参考にならないので、今回は載せません。この記事ではこの仮処分を通じて指摘・指示された修正事項を反映した完成版をサンプルファイルとしてダウンロード可能にしています。

まずそもそも提出先が違っていました。すっかり「仮処分は民事第9部が担当」と思い込んでいたんですけど、著作権侵害など知的財産に関わる仮処分は知財を担当する専門の部署が担当するのです。

任天堂とコロプラの特許訴訟は「東京地裁民事第40部2B係」が担当していると訴訟資料の取材で知っていましたので知財部が有るのはわかってましたけど、仮処分は民事第9部が行うものとばっかり思い込んでいました。

そして東京地裁には民事第29部、民事第40部、民事第46部、民事第47部と4つの知財部が有るのですが、仮処分の窓口は民事第40部になります。

そのため民事第9部で受付はして貰えたのですが、「後で民事第40部に回しておくから」とだけ言われて、その日は帰りました。

東京地裁民事第40部が担当になり、双方審尋の日程調整(サンプルファイル有り)

そして2日後の2月12日(金)に東京地裁民事第40部から電話が有り、今後の進め方について打ち合わせを行いました。

まず、担当部署が4つの知財部のどこになるかは僕には決められないのですが、偶然にも窓口であった民事第40部でそのまま担当してもらう事になりました。

そして民事第9部と違って、知財部では債権者面接は必須では無いと言われました。

そのため、電話で僕が「これまでに何度もツイッター社への発信者情報開示仮処分を行っていて、日程調整の手続きは把握している事」を伝えると、「ではそのまま双方審尋の日程調整を行ってください」と言われましたので、債権者面接は無しで日程調整を行いました。

日程調整のやり方は「知財部での発信者情報開示仮処分」に書いた通り、「第9部での発信者情報開示仮処分」と同じです。

まず2月12日の夜9時に長島・大野・常松法律事務所にメールをしました。

そして2月15日(月)に長島・大野・常松法律事務所から「担当者が決まり次第、日程調整のご連絡を差し上げます」との連絡を貰ったので、その日の内に期日保留の上申書をFAXで民事第40部に提出しました。

そして2月18日(木)、これまで3回と全く同じA弁護士からメールが有り、双方審尋の期日候補を提示されました。それが、

3/10(水)10:30~12:00、14:30~16:00

3/11(木)14:30~17:00

3/12(金)10:30~12:00

となっていました。これを受けて僕は民事第40部に期日指定の上申書をFAXで提出しました。

すると、その日の内に民事第40部から電話が有り、

「私達は新型コロナ禍でのツイッター社との発信者情報開示仮処分に慣れていないし、申立書の中身についても相談したい。なので一度、面接をしたいのですがいかがでしょうか?」

と言われました。ちょうど翌日は予定が何も無かったので、

「わかりました。それでは明日、2月19日(金)の午後でいかがでしょう?」

と僕は答えました。

そして2月19日の午後(正確な時刻は忘れました)に、裁判官と面接を行う事になりました。

2021年2月19日(金) 東京地裁民事第40部裁判官による心証開示

2月19日の午後に東京地裁民事第40部に出頭した僕はM書記官に準備室に案内されて、M裁判官と債権者面接を行いました。

実は僕自身、申立てを起こした段階では「1件のツイートのスクショでは著作権侵害とは認められない」と考えていました。そのため最初の申立書では124件もの著作権侵害を訴えました。

M裁判官はまず、「著作権侵害を審理するためにはまず、著作物かどうかを判断が必要になる。そのため、著作物の特徴について説明を行った資料を追完して欲しい」と指示しました。それで作成する様になったのが「本件著作物」です。

また、124個全ての著作権侵害についてその場で心証開示を行ってくれました。1つ1つ丁寧に「これは著作物とは認められない」「これは著作物と認められる」と区分けを行ってくれました。

さらにM裁判官は、

「申立書の訂正、補充を行わないと双方審尋は行えない。しかし仮処分という性質上、急いでいる事は理解する。そのため、まずは双方審尋の日程を仮に『3月10日(水)11:00~12:00』とし、債務者代理人に連絡して欲しい」

「申立書の訂正、補充をこちらが受領し、双方審尋が行えると判断すれば正式に双方審尋の日程を決める。」

と指示しました。そこで僕はまず、2月22日に仮日程を長島・大野・常松法律事務所のA弁護士にメールし、訂正、補充するための追完書類の作成を行ないました。

そして著作権侵害を訴えるツイートを当初の半分以下の55個に絞りました。それを2月24日に民事第40部に提出しました。

双方審尋の期日が決定(サンプルファイル有り)

追完書類を提出した2日後、2月26日に「双方審尋の日程が正式に『3月10日(水)11:00~12:00』に決まった」と連絡が有りました。

そこで長島・大野・常松法律事務所のA弁護士に、その旨をメールしました。また3月1日には期日受書を提出しました。

この様に、初めての著作権侵害での仮処分は双方審尋までの3週間、やる事が一杯で大変でした。

2021年3月10日(水)午前11時00分 双方審尋

そして3月10日午前11時、双方審尋の期日が来ました。やっぱりA弁護士は今回もリモートでした。

本当、毎回毎回思ってるんですけど、

「ツイッター社側がリモートで良いんだったら僕らもリモートにさせてくれよ。ツイッター社を相手にすると東京地裁だけが管轄だから、遠方の人は来るの大変なんだぞ」

ですよね。

M裁判官「それでは双方審尋を始めます。まずはツイッター社として反論は有りますか?」

A弁護士「はい。本件著作物ですが、まずダイエットの写真については、特に工夫の無い構図で写真を撮影しただけであり、著作物性は否定されると考えます。また、ツイートのスクショについては非常に短文でありふれたものであり、著作物性は否定されると考えます」

僕「あの、ダイエットの写真についてはツイッターに著作権侵害で通報した所、『著作権侵害である』と返答が有り、該当アカウントが規約違反で一時凍結されたんですけど、なぜツイッターの代理人であるA弁護士が『著作権侵害ではない』と主張するのですか?」

A弁護士「ツイッター運用上の判断と、仮処分での判断は異なります」

M裁判官「裁判所としては事前に検討を進めて来ましたので、「16’.」、「17’.」、「34’.」、「38’.」、「47’’.」、「53’’.」、「61’’.」、「127’.」の8つの投稿記事で投稿された著作物について著作物性を認め、著作権侵害を認めます。債務者代理人においては反論は有りますか?」

A弁護士「裁判所の判断に従います」

M裁判官「了解しました。、「16’.」、「17’.」、「34’.」、「38’.」、「47’’.」、「53’’.」、「61’’.」、「127’.」の8つの投稿について発令を認めます。担保についてはいかがなされますか?」

A弁護士「無担保でお願いします」

M裁判官「それでは債務者代理人から「無担保での発令を求める」と回答が有りましたので、無担保での発令とします」

僕「A弁護士、委任状は届きましたか?」

A弁護士「いえ、新型コロナの影響で届く見込みが立っておりません」

僕「M裁判官、こういう場合はどうしたら良いのでしょうか?」

M裁判官「今回は債務者代理人を立てず、仮処分発令を行います。債務者代理人においては債権者から仮処分決定正本のコピーを受領し、任意での開示をお願いできますか?」

A弁護士「わかりました。それで大丈夫です」

M裁判官「はい、それで大丈夫です。それでは双方審尋を終了します」

こうして初めての著作権侵害での双方審尋が終了しました。この著作権侵害を認められた、「16’.」、「17’.」、「34’.」、「38’.」、「47’’.」、「53’’.」、「61’’.」、「127’.」が、最終的な「本件投稿記事」の投稿1~8になっているのです。

この結果を踏まえた、完成版のサンプルファイルがこちらです。

「無担保上申書」「目録(2部)」「特別送達保留の上申書」を提出 (サンプルファイル有り)

そして双方審尋が終了した後、その場で無担保上申書を提出しました。心証開示の段階でトータルで仮処分発令が認められるのは確信していたので、予め作成して持って行ったのです。

そして帰宅してすぐ、著作権侵害を認められた、「16’.」、「17’.」、「34’.」、「38’.」、「47’’.」、「53’’.」、「61’’.」、「127’.」の権利侵害を取下げる取下げ書と、それに対応した「当事者目録・発信者情報目録・対象アカウント目録」を作成しました。

そして翌日の3月11日に「目録(2部)」を提出しました。

なぜ2部で良いかと言うと、ツイッター社から委任状が届いていないため債務者代理人に仮処分決定正本を裁判所が送付する事ができないからです。そのため裁判所用と、債権者用の2部だけで良いのです。

債務者代理人には債権者である僕の方で仮処分決定正本をスキャンしたPDFをメールし、任意でログインIPとタイムスタンプを開示してもらう事になります。

ただ、当事者目録にアメリカのツイッター本社が記載されている以上、仮処分が発令されると裁判所はアメリカのツイッター本社に仮処分決定正本を送付する必要が出て来ます。

これは意味がないので、「ツイッター社への特別送達は保留してください」という「特別送達保留の上申書」を提出する事になりました。

すると、その日の内に仮処分決定正本を作成いただき、少し待った後、無事に仮処分決定正本を受領しました。

「目録と上申書を持ってくればその日の内に仮処分決定正本が出せる」とは双方審尋の日に聞いていましたので、事前に受書も準備していました。

そして、今回はこれで終わりでは有りません。

委任状が無い状態で仮処分が発令され、特別送達を待ってもらっている状態です。そのため上申書に記載した様に、ツイッター社からログインIPとタイムスタンプが開示されたら、仮処分そのものを取下げる必要が有るのです。

僕はまず3月11日の夜にはA弁護士に仮処分決定正本をスキャンしたPDFを送付しました。そして3月17日にツイッター社からログインIPとタイムスタンプを記載したメールを受領しました。

これを受けて、3月25日に取下書を民事第40部に提出しました。

こうしてようやく、僕の初めての著作権侵害での発信者情報開示仮処分が終わりました。今回はある意味、初めてのツイッター社への仮処分以上に疲れました。とにかく量が多かったです。

ただ、その効果は有りました。頑張った分、悪質な維新信者8人を一網打尽にしたのですから。

「1つのツイートのスクショで著作権侵害」という画期的な、悪魔的な判断

しかし今でもこの仮処分の判断は画期的で、悪魔的だと思っています。

そもそも僕は「1つのツイートのスクショで著作権侵害」を訴えた訳では有りません。訴える前の僕は「1つのツイートのスクショだけでは著作権侵害は認められない」と考えていました。

投稿5はこの他にも5回にも渡って同じスクショをツイートしていましたし、投稿6は4つのスクショを含んでいましたし、投稿7もこの他にも6回にも渡って同じスクショをツイートしていました。

僕は「複数のツイートのスクショならば著作権侵害が認められるかも」と思って、仮処分申立てを行ったのです。

しかしM裁判官の心証開示で

「著作物ではないスクショを、何回ツイートしても著作権侵害にはならない」

「著作物であるスクショなら、1回のツイートで著作権侵害になる」

と伝えられました。投稿8はこの1回のツイートでしかスクショの著作権侵害を行っていないのですが、M裁判官の心証開示を受けて追加したものです。そしてそのまま認められました。

またM裁判官は6回投稿していた投稿5について、7回投稿していた投稿7についても「1つのツイートだけで著作権侵害になるから、他は取り下げて良い」と判断しました。

「1つのツイートで著作権侵害になり、発信者情報開示仮処分が認められる」

これは僕が発案したものではなく、東京地裁知財部の判断によって生まれた画期的な判断なのです。

しかし同時に悪魔的です。正直、僕自身も「1つのツイートのスクショでは著作権侵害にならない」と思っていましたので、これまでに自分もツイートのスクショは何度も行っています。

それに何より、ツイートのスクショなんて誰もが日常的に行っている事です。これで発信者情報開示が認められたら、ほとんどの匿名アカウントは丸裸でしょう。

ま、大いに結構です。僕はそもそも実名アカウントでやってるので発信者情報開示されても問題無いですからね。

そもそも他人が削除したツイートを勝手に公開するなんて、削除した本人の意思を踏みにじる愚劣な行為です。なので僕は「消せば増える」なんて言葉が大嫌いでした。こういう愚劣な行為が違法としっかりと認定された事は良い事だと思いますよ。

しかし皆さん、ツイートのスクショは止めましょうね。やるにしてもちゃんと出典であるURLを記載しましょう。

   
                           



                            

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author : 宮寺達也

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