カレー機関 > グッズ > パン食品表示法違反事件

+目次

最初にまとめ

  • 担当者は個人として食品表示法違反の可能性。
    (第18条/2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科)
  • 法人としては食品表示法違反の可能性。
    (第22条/1億円以下の罰金)
    • 「可能性」とついているのは、犯罪は成立しているものの、刑事事件として扱うかは保健所や警察が決めることだからです。
  • 食品衛生法に違反しているかは未確認。
  • 株式会社C2プレパラートは法律を守りましょう。
    別に商売をするなとは言わないので、やらないといけないことはやりましょう。
  • 対策をしたからといって、既に行った犯行は消えません。



きっかけ

カレー機関が2020年2月6日にtwitterで「オリジナルパンを開発中」としていた。
https://twitter.com/C2_STAFF/status/1225261740272676872

その後、実際に持ち帰りグッズとして販売を始めたのがC2機関パンと、カレー機関カレーパンである。
https://twitter.com/c2_staff/status/1322019792673337349

それに違和感を感じて目を付けたのが発端である。

今回の事件以前の販売時の様子は以下の項目を参照。

このパンに関しては、以前から「誰が製造しているのか?」「狭い店内にも関わらず、店舗内でスタッフが作っているのか?」と疑いの目が掛けられていた。
もし店内で作っている場合は【食品衛生法】により「菓子製造業」の営業許可が必要である。

そこで、9th Sequenceが始まった2021年7月4日、改めてSNSであがっている画像を確かめたところ、パンに貼られているラベルに様々な問題が見つかってしまったのである。

このあたりの当時の様子は、 21夏~秋 のページにまとめられているので確認してほしい。



食品表示法とは

食品表示法】とは、食品の品質事項・衛生事項・保健事項をまとめたものであり、消費者にも事業者にも安心・安全でわかりやすい表示をするための基準を作った法律である。
簡単に言えば、お店で売っている商品のラベルに、何を書かなければならないか、どのように書かなければならないか、何を書いたらいけないのかなどを定めている。

東京都福祉保健局 食品衛生の窓 食品表示法の概要
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_summary.html

消費者庁 食品表示法等(法令及び一元化情報)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/



食品表示法の解説・紹介サイト

ここで幾つか挙げておくが、他にも多数あるのでお好みのサイトを探してほしい。



【食品表示をしなければならないお店】 らくらくシェフ 利用ガイド
http://www.rakuchef.net/wp/?p=404

東京都福祉保健局 食品の表示制度
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/




問題のパン画像

SNSであがっているURLを幾つか例示する。
他にも多数あるのだが、多すぎて紹介しきれないので『カレー機関 パン』でGoogle画像検索なりtwitter検索なりしてみてほしい。



内容を検証

はじめに

※1 のツイートがアップ画像で見やすいので、これを参考に解説していく。
他のツイートでも、8thより前の画像でも基本的に同じなので、どれでも好きなものを見てほしい。
もしお手元に現物があるのなら、それを見ると良いだろう。

画像検索でカレー機関のパンの画像を探してみると様々なパターンがあるが、実はほとんどが違反である。
法令・条例の他、運用ガイドラインにも準じて確認しているので、やや厳しめの採点になっていることはご注意を。

個包装されており、ラベルがある

【OK】

食品表示法では、個包装されているパンに関してはラベル表示をする義務を課している。
一方、街のパン屋でトレイとトングを使って、むき出しで置かれているパンを選んでいき、最後にレジで清算して袋に詰めるような場合はラベル表示を免除している。

このパンは個包装されており、商品ラベルを貼っているので、この点はOKである。

印刷がかすれていて読めないのは不可

【判別不能】

当たり前の話である。
これは非常に怪しい部分であるが、元々のラベルが悪かったのか、持ち歩きで擦れてしまったのかは写真だけではわからないので、ここでは追求しない。

JIS規格に定められる8ポイント以上(表示可能面積が150平方センチ以下のものは、5.5ポイント以上)の活字で書かれている

【判別不能】

これは運用ガイドラインで定められている基準である。

「表示可能面積」とはシールの面積ではないことに注意してもらいたい。
シールを貼り付けることができる商品面積である。

オフィスなどのソフトで文字サイズを8ポイントに設定しても、JIS規格とは一致しない場合があるので、作る場合は少し大きめの設定にしておくべきだろう。
また「活字」と書いてあるので手書きは不可である。

これも写真だけではわからないので、ここでは追求しない。

名称

名称:C2機関パン(21式)

【違反】

早速だが違反である。

この『名称』の項目に書くべきものは、パンの場合は食品表示基準の定義に基づいて「食パン」「菓子パン」「パン」の3種類が基本。
食品表示基準では「パン類」「その他のパン」といったものも定義されています。
「その内容を表す一般的な名称を表示する」なので「調理パン」「カットパン」といった一般的な商品分類でも構いません。
厳密なようで、意外と緩い部分もあります。

ただ、少なくとも「C2機関パン」のように個別の商品名を書いてはいけません。

つまり正しい記載は『菓子パン』『調理パン』などとなる。

原材料名

北海道産小麦、北海道産くるみ、クリームチーズ、チェダーチーズ、北海道産バター、卵、砂糖、塩、とかちの酵母
(原材料の一部に乳成分、卵、小麦、大豆を含む)

【違反】

ここに書く順番には決まりがあり、重量の大きいものから順番に書かなければならない。
しかしそれを確認する術がないので、いったんそれは置いておこう。

ラベルが古いのか擦れてしまったのかはわからないが、「原材料名」である。
「原材料」と書いてはいけない。
ここはクリアしているようだ。

さて、よく考えてみればわかると思うが、「北海道産小麦」というものが世の中にあるだろうか。「北海道産くるみ」というものがあるだろうか。
そんなものはない。
正しい記載は「小麦」「くるみ」「バター」となる。

原産地を特にアピールしたい場合に「小麦(国産)」、「小麦(北海道産)」などと書くことは認められている。
その場合、北海道産と書いていながら輸入品を使用した場合は産地偽装、品質の優良誤認表示となり、別の法律に抵触することは注意が必要である。

一番最後の「とかちの酵母」であるが、これは日本甜菜製糖株式会社の商品名である。
複合原材料(複数の原材料からなる原材料、例えばチョコレートなど)は、材料名の後ろに()を付けてその構成材料を書くことはあるが、使った商品名を書くことはあり得ない。
「牛乳」と書かずに「森永のおいしい牛乳」と書いているようなものである。
正しい記載は『パン酵母』『ドライイースト』などとなる。

最後の部分に(原材料の一部に乳成分、卵、小麦、大豆を含む)とある。
これは特定原材料というアレルギー物質表示であり、必ず書かなければならないと定められている。

書こうとしたことは立派(といっても当たり前)なのだが、惜しいことに書き方が間違っている。
(原材料の一部に~)という書き方は認められておらず、(一部に~)と書かなければならない。
また、材料の区切りに「、」は認められておらず「・」を使用しなければならない。

つまり『(一部に乳成分・卵・小麦・大豆を含む)』が正しい表記となる。

食品添加物が入っている場合は別途ルールがあるのだが、(書かれている内容を信じるならば)入っていないようなので省略する。

内容量

内容量:1個

【OK】

このラベルで唯一の信用していい部分である。
透明の袋なのでまさかないと思うが、もし2個入っていたら違反である。

今回の商品は異なるが、スーパーの売り場を見て見ると「200g」などと体積で表示しているものもある。
この場合は、計量に使用している計量器を2年に1回の頻度で定期検査をしなければならないと定められている(計量法第19条)。

賞味期限

賞味期限:

【違反】

今回の一件で一番騒がれた項目である。
まさかの未記載。
誰の目から見てもダメとわかるもので、論外である。

勘違いしないでいただきたいのですが、全ての商品で書き忘れているということはなく、中には書いてあるものもありました。
「7/4」と手書きで。

まず、消費期限と賞味期限であるが、最低でもどちらか一方の記載が必須である。
通常、すぐに傷んでしまうもの(概ね5日以内)は消費期限、ある程度保存がきくものは賞味期限が記載されることが多いが、どちらを使用するかは任意となっている。
(アイスクリームのように、消費期限・賞味期限が存在しない商品も存在するが割愛)

先述のとおり、手書きは運用ガイドラインで不可とされている。
100均で売っているような日付印でいいので、活字での記載が求められている。

消費期限・賞味期限が3か月以上の場合は、「年月」を記載しなければならない。
消費期限・賞味期限が3か月未満の場合は、「年月日」を記載しなければならない。

記述する時の書式は次の通りである。
わかりやすくするため、2021年7月5日が期限だった場合を例にとる。

(西暦で記載する場合)
2021.07.05
21.07.05

(和暦で記載する場合)
令和3年7月5日
03.07.05

欧米では日月年の順番で記載するパターン(05.07.2021)が見られるが、日本では一般的ではないので認められていない。
年・月・日付の間を「/」で区切る書式(2021/7/5)も認められていない。
機器の都合で、「.」が印字できない場合の省略は認められている。

というわけで、記載漏れをしていなかった手書きで「7/4」のパンに関しても違反となるのである。

保存方法

保存方法:直射日光、高温多湿を避けて保存して下さい。開封後は消費期限にかかわらずお早めにお召し上がりください。

【違反】

何が問題なのかと言うと、『開封後は消費期限にかかわらずお早めにお召し上がりください。』の一文である。
「さっき賞味期限だったのに、こっちは消費期限じゃねーか」という点ではない。

これは賞味期限・消費期限にかかる内容あって、保存方法の話ではないので、賞味期限・消費期限の欄に書くか、ラベル下部あたりに諸注意の欄を設けて別途記載するべき内容なのである。

この欄に開封後の取り扱いを記載してしまうのは、他の事例でもよくあるミスなので、同業他社も注意したい。

製造者・販売元

製造者・販売元:カレー機関 東京都千代田区神田須田町1-24-27

【違反】

そもそもの話として、このパンを焼いたのはこの店舗内なのだろうか。
他の場所で焼いて納入したのなら、製造者として焼いた責任者の氏名・名称・住所を書いて、販売元がカレー機関となるのだが。
面倒になるし確認しようもないので、書いてある内容を信じ、店舗内で焼いて、売っているものとしよう。

何が悪いのかというと、「カレー機関」というのは屋号であり、このままでは情報が不足しているのである。
必要なのは「株式会社C2プレパラート」という法人名。
屋号はおまけなので、むしろこちらをメインにしなければならないのである。

『株式会社C2プレパラート カレー機関』という感じにすればよい。



問題の影響

この事件は2021年7月4日の夜には愚痴スレを発端にしてSNSへ拡散、緩やかなソーシャルでチャーリーも気づいたようだ。
翌日の7月5日販売分には賞味期限を「7/5」とペンでしっかりと手書きで記入して、記載もれはなくなったようだ。
ただ、先述の通り手書き&書き方がNGなので、何の解決にもなっていない。

今回の一件がSNSで話題になっていたことで、「賞味期限は書いてある!」と店舗で購入した方が次々と画像を投稿。
どれもこれも、手書きで「7/5」となっていたことで、違反の答え合わせとなってしまった。

更なる追及を恐れたのか、カレー機関は7月6日からパンの販売中止とした。
同時期に神戸牛商標権侵害事件も発生したため、問題はあっという間に多くの方が知るところとなった。



カレー機関の対策

2021年7月8日、カレー機関は対策を講じてパンの販売を再開した。

その対策とは、『個包装をやめて、カゴいっぱいに入れた状態で売り場に持ってきて、注文を受けたら袋につめて渡す』という、街のパン屋さん形式にしたのである。
違いはお客が掴むか、店員が掴むかの違いである。
https://twitter.com/uzumeamano/status/1413065993962737669

前述のとおり、個包装をしていない場合は、ラベルは不要となる。
だから間違いではない。間違いではないのだが……。

新型コロナウイルスが東京都内で急速に広がっていて、飛沫感染に注意をしなければならないというのに、ラベルを作り直すのではなく個包装をやめるというのはどうなんでしょうかね?
修正したラベルを上から貼り付ければいいだけなのに。



今も解決していない問題

先述の通り、このパンはこの店舗内で作られているようである(少なくともラベルではそうなっていた)。
では、店舗内のどこで作ったのだろうか。

一番最初に書いた通り、パンを焼いて売るには「菓子製造業」の営業許可が必要である。
これは食品衛生法で定められており、許可を得るのは面倒くさい手続きが必要である。

基準を作って許可をだすのは都道府県なので、自治体によって基準が異なるが「製造室の床から1mまでは耐水性材料を使用し、清掃がしやすいこと」など様々な規定が存在する。

菓子製造業の許可について | 食品営業許可安心取得センター
https://shokuhin-k.net/food-manufacturing/sweets/

また、間取りも重要で、トイレから最低2つ以上の壁・戸・窓の仕切りが必要である。
製造室にトイレが隣接していると、戸が1つなのでNGとなる。
ただ、この条項については、東京都の基準に入ってなければ義務ではない。

さらにパンの製造室と、その他の調理室は別に用意しなければならない。
つまりパンをオーブンで焼いている隣で、カレーを温めている状況はNGなのである。
これに関しては例外があり、パンを製造する時間と、その他の調理の時間を完全に分ければよい。
開店準備で仕込み作業をする前に、その日に使用するパンを予め全て作り終え、冷蔵庫やケースに入れておくのならばクリアとなる。
やはり東京都の基準に入ってなければ義務ではないが。

以下、東京都の基準にも存在した場合の話となるが、1日のうちに複数回の客の入れ替えがあるが、製造室・調理場が完全に分離しているなら、その入れ替えの時間で並行作業も可能である。
もし一部でも共用しているのならば、「パンを焼くか、仕込みをするか」のどちらかを選ばなければならない。

参考として、東京都における食品関係の営業許可を得る際の手引きを記載する。

東京都福祉保健局|食品関係営業許可申請の手引(PDF)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyokatodokede/files/kyoka_tebiki2021.pdf

果たしてカレー機関がそこまでやっているのかどうか。
それを確認する手段がなく、追及ができないという状況である。



本件に関する確認・通報先

消費者庁 食品表示について パンフレット
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pamphlets/

消費者庁 食品表示法の相談・被疑情報の受付窓口
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/contact/

千代田区ホームページ 千代田保健所
https://www.city.chiyoda.lg.jp/shisetsu/hokenjo/chiyoda-hokenjo.html
最終更新:2021年07月18日 00:06