昔のキネマ旬報には「邦画新作状況」というページがあったが、買わなくなって久しいので今もあるかどうかはわからない。このページでは企画段階の新作まで紹介されていて、製作が見送られたため「幻の企画」になったものも結構ある。『ネッシー』や『続・日本沈没』などは当ブログでも紹介済みだ。
そのページで紹介されながらも実現しなかった企画の中から、「観たかったなぁ」と思う作品をいくつかピックアップしてみよう。
【1976年2月上旬号】より
アメリカのカイザー財団を主宰するヘンリー・カイザー三世という金持ちが大の「座頭市」ファンで、勝新太郎が主宰する勝プロに「100万ドル出すから、海外向けのザトウイチを作ってくれ」と依頼してきた。勝新太郎とカイザー三世は共同でアメリカに映画配給会社を設立し、製作費3億円で「海外向けザトウイチ」を製作、全米公開の後に日本に逆輸入する予定……。
どこまで本当なんだか眉唾ものだが……とでも言ったニュアンスで書かれている通り胡散臭い話だ。いかにも勝新太郎的と言うか、何というか、大風呂敷を広げてしまった感じ?
同じページに紹介されているのが「石原裕次郎デビュー20周年記念映画」として企画された『犬』。石原プロの製作で、裕次郎が原作・監督・音楽・主演を兼ねる刑事アクションだとか。共演予定が三船敏郎、勝新太郎、渡哲也、山崎努と豪華絢爛。これはぜひ実現してもらいたかったが、「20周年記念映画」そのものが実現することはなく、石原プロ自体、映画らしい映画を撮れないまま、テレビドラマ専門プロダクションとして今日に至っているのは周知の通り。
【1976 5月下旬号】より
大ヒットしたスピルバーグの『ジョーズ』にあやかって企画されたのが、日本版ジョーズならぬ、東映の『大冒険活劇・海魔神』。タイトルがいかにもチープで、当時の「東映臭さ」がプンプンする。人食い巨大鮫に対抗しようと持ち出してきたのが沖縄の伝説的巨大海へび「シーサーベント」。こいつに息子を食われた海洋開発センター技術者が戦いを挑むというストーリーで主演は千葉真一。海底で奇怪なウツボや凶暴なトラザメとも格闘予定だとか。 「日本初の本格的懐中撮影を予定している」との記載があるが、確かに、日本の特撮ものの大半はスタジオのプール撮影ばかりでしたっけ。
【1977 7月上旬号】より
日活の「お盆映画」として企画されたのが『電線軍団・にっほん昇天』。テレビのバラエティ番組で人気を博した「電線音頭」のデンセンマンを主役にした喜劇で、「ナンセンス超爆笑映画の決定版にする!」と書かれているが、どんなものになったか容易に想像できてしまうのは、『下落合焼き鳥ムービー』を見ちゃってるからか……。でも、その気になれば和製ミュージカル・コメディとして実現できた企画。
【1980 9月下旬号】より
「アラン・ドロンと菅原文太が夢の共演!」と紹介されているのは『スーパーゴリラ』というアクション映画。任侠映画のプロデューサーとして名を馳せた俊藤浩滋(寺島純子の父で、寺島しのぶの祖父)が設立する独立プロ「藤映」の第一作として企画されたらしい。(東映と藤映ね)
ヨーロッパで多発する誘拐事件をヒントにした原作を小説家の小林久三が執筆中で、アラン・ドロンが誘拐団のボスを演じ、文太が組織を追いつめる刑事(?)のような役。当時の№1スターのドロンを悪役にしてしまう発想が実現可能の確率を低くしているのは確実なのに、ギャラや条件面でドロンとは合意に達していると言うからオドロキ。監督は当時の東映のエース監督・深作欣二。
ヨーロッパ・ロケが70%で、10月には撮入予定、12月末にお正月映画として公開予定とあるが、実に現実味の乏しいスケジュールだ。8月の段階で原作を執筆中なのに、10月から撮影開始ということは、シナリオ執筆期間が一ケ月しかないって……東映育ちのプロデューサーらしい発想だけど、アラン・ドロンがそんな日本のプログラムピクチャー的スケジュールで出演するとは思えない。もちろんその後はタイトルすら聞かなくなった。ちなみに、お正月映画として公開されたのは……『サイボーグ009・超銀河伝説』というアニメでした。トホホのホ。
冷静に考えれば無理な企画ばかりだけれど、最近の「テレビドラマ風映画もどき」に比べると映画的スケールやロマンだけは感じさせてくれたものです。
そのページで紹介されながらも実現しなかった企画の中から、「観たかったなぁ」と思う作品をいくつかピックアップしてみよう。
【1976年2月上旬号】より
アメリカのカイザー財団を主宰するヘンリー・カイザー三世という金持ちが大の「座頭市」ファンで、勝新太郎が主宰する勝プロに「100万ドル出すから、海外向けのザトウイチを作ってくれ」と依頼してきた。勝新太郎とカイザー三世は共同でアメリカに映画配給会社を設立し、製作費3億円で「海外向けザトウイチ」を製作、全米公開の後に日本に逆輸入する予定……。
どこまで本当なんだか眉唾ものだが……とでも言ったニュアンスで書かれている通り胡散臭い話だ。いかにも勝新太郎的と言うか、何というか、大風呂敷を広げてしまった感じ?
同じページに紹介されているのが「石原裕次郎デビュー20周年記念映画」として企画された『犬』。石原プロの製作で、裕次郎が原作・監督・音楽・主演を兼ねる刑事アクションだとか。共演予定が三船敏郎、勝新太郎、渡哲也、山崎努と豪華絢爛。これはぜひ実現してもらいたかったが、「20周年記念映画」そのものが実現することはなく、石原プロ自体、映画らしい映画を撮れないまま、テレビドラマ専門プロダクションとして今日に至っているのは周知の通り。
【1976 5月下旬号】より
大ヒットしたスピルバーグの『ジョーズ』にあやかって企画されたのが、日本版ジョーズならぬ、東映の『大冒険活劇・海魔神』。タイトルがいかにもチープで、当時の「東映臭さ」がプンプンする。人食い巨大鮫に対抗しようと持ち出してきたのが沖縄の伝説的巨大海へび「シーサーベント」。こいつに息子を食われた海洋開発センター技術者が戦いを挑むというストーリーで主演は千葉真一。海底で奇怪なウツボや凶暴なトラザメとも格闘予定だとか。 「日本初の本格的懐中撮影を予定している」との記載があるが、確かに、日本の特撮ものの大半はスタジオのプール撮影ばかりでしたっけ。
【1977 7月上旬号】より
日活の「お盆映画」として企画されたのが『電線軍団・にっほん昇天』。テレビのバラエティ番組で人気を博した「電線音頭」のデンセンマンを主役にした喜劇で、「ナンセンス超爆笑映画の決定版にする!」と書かれているが、どんなものになったか容易に想像できてしまうのは、『下落合焼き鳥ムービー』を見ちゃってるからか……。でも、その気になれば和製ミュージカル・コメディとして実現できた企画。
【1980 9月下旬号】より
「アラン・ドロンと菅原文太が夢の共演!」と紹介されているのは『スーパーゴリラ』というアクション映画。任侠映画のプロデューサーとして名を馳せた俊藤浩滋(寺島純子の父で、寺島しのぶの祖父)が設立する独立プロ「藤映」の第一作として企画されたらしい。(東映と藤映ね)
ヨーロッパで多発する誘拐事件をヒントにした原作を小説家の小林久三が執筆中で、アラン・ドロンが誘拐団のボスを演じ、文太が組織を追いつめる刑事(?)のような役。当時の№1スターのドロンを悪役にしてしまう発想が実現可能の確率を低くしているのは確実なのに、ギャラや条件面でドロンとは合意に達していると言うからオドロキ。監督は当時の東映のエース監督・深作欣二。
ヨーロッパ・ロケが70%で、10月には撮入予定、12月末にお正月映画として公開予定とあるが、実に現実味の乏しいスケジュールだ。8月の段階で原作を執筆中なのに、10月から撮影開始ということは、シナリオ執筆期間が一ケ月しかないって……東映育ちのプロデューサーらしい発想だけど、アラン・ドロンがそんな日本のプログラムピクチャー的スケジュールで出演するとは思えない。もちろんその後はタイトルすら聞かなくなった。ちなみに、お正月映画として公開されたのは……『サイボーグ009・超銀河伝説』というアニメでした。トホホのホ。
冷静に考えれば無理な企画ばかりだけれど、最近の「テレビドラマ風映画もどき」に比べると映画的スケールやロマンだけは感じさせてくれたものです。