「兄弟で愛し合うなんて、ほら、いけないことだろ」

口汚く争う仲なのか。それとも禁断の仲なのか。

ノエル・ギャラガー37歳、リアム・ギャラガー32歳。二人は常に恵まれた環境にいたわけではない。斜に構えコカインをキめたクール・ブリタニア。1997年、彼らの3rdアルバム「Be Here Now」が発売された時から、USでのプロモーションは縮小し始めた。すぐにRadiohead、のちにはColdplayが彼らの記録を塗り替え、さらに2000年の「Standing On The Shoulder Of Giants」、2002年の「Heathen Chemistry」は、かつての素晴らしさの面影程度は残していたものの、OASISのもはやセルフパロディと化した「世界一のバンド」という必要条件を満たすものではなかった。

それでもギャラガー兄弟はバンドを続け、そして現在もそのショウビズ精神に則って、彼らは妙な社会的地位を築いている。かつて評論家から、ビートルズ狂と揶揄されたが、2005年現在、OASISの多大なる影響力は明らかだ。USツアーにサポートバンドとして参加したJetは、昨年200万枚のアルバムセールスをあげている。

バンド内での幾度もの小競り合い、自動車事故、カメラマンや酔っぱらったイタリア人達との殴り合い、パッツィ・ケンジットとの波乱の結婚生活、Blurとの応酬、ケイト・モスとの夜遊び、ボーンヘッドやギグジーなどギャラガー家ではないオリジナルメンバーの脱退を乗り越えたOASISはいつしかストーンズのような地位を得ていた。父親となったことで、二人は物事を客観視する力をつけたようだ。6thアルバム「Don't Believe The Truth」は、ちょうどブリットポップ復活の兆しに合わせたかのように、発売された。USで成功を収めた最後のレコードは、9年前の「Champagne Supernova」であるにしろ、OASISのギグチケットはかつてのように完売し始めている。

ポップ界の奇材だからこそ影の薄くなった時代を経て、彼らは再び奇材ゆえに音楽界を生き延びようとしている。OASISが単なるロックバンドだった試しはない。ロックの哲学なのだ。もし彼らに「マッド」になれるのなら、その哲学がわかるだろう。哲学が気に入ったなら、哲学に乗ることができるはずだ。もしも鼻につくようなら、遠慮なく足蹴りを食らわせてやればいい。

ギャラガー兄弟のことを、ダーウィンやスウィフト、ワイルド、そしてモリッシーの後を継ぐ偉大なる思想家と表現した人がいる。今回、人生や芸術、朝食後に二度寝する楽しみなどについて語った二人の会話から名言の数々を抜き出してみた。ここからギャラガー流の機知と知恵を学ぶのもいいかもしれない。

リアム:ノエルと俺は話さないんだ。たぶんそれが一番なんだよ。お互いを視野の中に認めはするけど、話すことは何もない。あいつも同じだ。一緒に音楽を作って、それでいいのさ。それか一緒に飲んで、終わり。俺はそういうのが好きだな。ノエルは俺とは根本的に違う。俺もあいつとは全然違う。ノエルは違うものの見方をする。俺もそう。でも意見が合わないのと嫌いあうのは、違うだろ。やつとは上手くいってるよ。兄弟だから。別れはしない。ファッキンファミリーだから。

ノエル:うーん、そうだな。今日リアムを見かけたけど、何もなかった。昨日も良い感じだったな。いつでも壊れる危険はあるけど。いつでも。

リアム:ロックンロールだよ。10年前は遊びに出てベロンベロンになっても、音楽のことを全然構わなくてもいいと思ってた。「だって他のやつがやるだろ」ってさ。今は自分で音楽を書いてる。なんていうかもっと...何て言うんだ?知らねえけどさ、責任っていうの?良い曲ってのは、最初からわかるもんなんだよ、わかんだろ?それが力強いメロディになっていくんだ。歌詞はそこまではいかねえな。言葉を操るのは苦手だ。歌詞を書くのは難しい。書くとなると、愛について書く。神について書く。俺について書く。あいつについて書く。みんなについて書く。俺達のことも書くぜ。人生のことも書く。な?クソみてえな出来のこともあれば、良い時もある。クソ深えことはできれば書きたくねえな。

ノエル:俺達は、人生のありふれたことを曲にするんだ。何もしなかった一日とか、ミルクを買うために列に並んだこととか。

リアム:俺はミック・ジャガーとは違うんだ。歌を歌うシンガーが何でギターを弾かなきゃなんねえんだ。馬鹿みてえだぜ。

ノエル:俺は、曲を書くことの面白さに改めて気づいたよ。人生の意味を5分にまとめなきゃなんて思わずにね。そういうのはColdplayに任せた。あいつらの方が上手くやるだろ。

リアム:時々は遊んで酔っぱらって馬鹿なこともするさ。でも俺にとっての人生の楽しみは、家でギターを弾くことなんだよ。

ノエル:15歳くらいの子供に会って、「なんだってOASISなんか好きになったんだ?」と聞くと、みんな口をそろえて「Definitely Maybeだよ」と言う。「でも発売された時はまだ5歳だろ」と聞くと「うん、でもママやパパがいない時、兄貴と一緒にずっと聴いてたんだ」と言うんだ。こういう風に、バンドの若いファンが増えていくんだろうな。

リアム:いいよな。みんなまだ俺達に興味をもってくれるんだ。でも俺が自分自身にいまだに飽きてないってこともすげえよな。

ノエル:90年代にも、そのくらいのファン達に会ったんだ。OASISを聴いてバンドを始めたって連中さ。そいつらは今25歳で、ミリオン級のセールスをあげてる。OASISのおかげでな。とても良い気分だよ。

リアム:OASISが今でも演奏することに飽きてないってことも良いよな。だって演奏しなかったら、みんなをここまで惹きつけられないだろ。

ノエル:「Definitely Maybe」と「Morning Glory」は色あせないんだよ。「Champagne Supernova」や「Morning Glory」「Wonderwall」「Don't Look Back In Anger」「Live Forever」「Cigarettes And Alcohol」「Rock N Roll Star」。演奏して飽きることなんてない。俺達には基本だな、ほんとに。

リアム:「Cigarettes And Alcohol」はT.Rexの「Bang A Gong(Get It On)」のパクリだろって?ああ、そのとおりさ!

ノエル:ブリットポップの時代は完全にイカれてたね。「Be Here Now」を出した後、俺はちょっとした落ち目に入った。曲を書くことに興味を持てなくなったんだ。レコードは売れず、それがどうしてだか俺にはわからなかった。気にもしなかった。もう十分だって感じさ。バンドを思い通りに管理するのに飽きたんだ。つまり、21歳の時なら、服の入ったスーツケースとギターさえあって、セックスとドラッグとロックンロールがあれば生きていけるんだろう。生きて、息をして、音楽で腹一杯になる。俺の人生で最高の時だったよ。でももう続けられないって時がやってくるんだ。

リアム:俺は「Be Here Now」がそこまで悪いとは思わねえ。あれに文句があるのはノエルだけだろ。こいつが書いたんだから、こいつの問題だ。俺はみんなが気に入ろうがそうでなかろうが、かまわねえんだ。

ノエル:発売当日に買って聴けば、確かに圧倒されるだろうさ。でも今はもう何の魅力もない。曲はクソ長すぎるし、歌詞もぞっとする。このタイトルがこのアルバムを良く表してるよ。「その時に聴く」べきだったんだ。発売したその週のうちにね。

リアム:みんないつもこう言ってくる。「ああ、アメリカで失敗したOASISだ」。俺は人生で失敗したことなんて一度もない。ガキの頃からの夢だったファッキングレイトなバンドにいて、Madison Square Gardenでギグをするんだぜ。ぶったまげるよな!

ノエル:Madison Square Gardenのチケットが1時間で完売した時、みんな「すげえ!何てこった!ワオ!」って感じでさ。俺は「まだギグは始まってないんだぜ。だからお前らさっさと黙って、祝うならギグの終わった後にしてくれ」と思ったもんさ。

リアム:21歳の時、アメリカに行くってだけで頭がおかしくなりそうだったよ。あまりにでかくてさ。ただただ圧倒された。L.A.は「おいおい、何なんだここは?」って感じで、でも最近は好きになってきたな。

ノエル:このレコードはそのL.A.で2ヶ月かけてレコーディングしたんだ。南カリフォルニアの習慣が身についたかって?朝飯を済ませてまたベッドに戻る生活くらいかな。

リアム:バンドをやるってのは、簡単さ。バンドをやめて、生活のために働くほうがきつい。こんなのなんて楽しいもんだぜ。歌を歌ってさ、な?ドラッグやってギグをやって酒飲んで、わかんだろ?毎日休日みたいなもんさ。

ノエル:ギグに行ったんだ。Razorlightの。早めに着いてね。VIPバーにはまだ誰もいなかった。俺と彼女だけさ。ものすげえバカみてえだった。だから俺が「二階にあるバーにでも行こうぜ」と言うと、彼女が「たぶんキッズでいっぱいよ」と言う。俺は「知るか」って思ってさ。行ってみたら、ティーンエイジャーの女の子軍団が現れた。そのうちの一人が俺を見つけて「ワオ!あなたってこれまで会った中で一番クールな男性だわ」と言う。めちゃくちゃクールなこと言うじゃねえかと思ったのも束の間、「男性?」と思ったよ。それってパパ世代に使う言葉じゃないかってね。俺はいつそういう世代になったんだ?ここに来た時は、まだ「男」だったはずだぞ。

リアム:ロックンロールがあれば、魂と心は老いない。あとのことはわかんねえ。まあ、体は壊れるかもしんねえな。

ノエル:俺達はエリック・クラプトンでもサー・エルトン・ジョンでもサー・ポール・マッカートニーでもない。好きではあるけどね。サー・ミック・ジャガーでもないさ。去年の夏にバッキンガム宮殿に何かで招かれたけど、結局行かなかった。王族ってのは - 俺の理解の範疇を超えてるんだ。彼らがどこからやってきたのか、何をしてるのか、どういう役割なのか、そもそも何様のつもりなのかわかんねえよ。

リアム:30になったら、二日酔いが長くなるよな?

ノエル:OASISのどのメンバーも、もう大したドラッグはやってない。完全にラリったりファッキンパウダーを吸いっぱなしのやつもいない。もう飽きたんだよ。その当時の取り巻き連中もみんなつまんねえ、つまんねえ、つまんねえ。ああ、今でも飲みに出て騒ぐこともあるさ。でもギグがあるにも関わらず朝の7時まで出歩くくらいなら、ちゃんとした時間に眠るほうを選ぶね。だからといってスリッパ履いてパイプをふかすスタイルじゃないぞ。

リアム:俺は今この瞬間ロックしてんだ。良い気分だぜ。

ノエル:ポーランドのラジオ局がニューシングル「Lyla」をリークしちまった。世界の終わりってわけじゃない。ビッグバンドなら日常茶飯事だろ。電話がかかってくるんだ。「ポーランドでニューシングルが流れてるぞ!」「そりゃいい!」「全然良くないよ」「ん?どうして?」「だって、インターネットにアップされるんだぜ!」「そんなの知るかよ」ってさ。そこまでいったらもう俺の領域じゃないからな。インターネットが何なのかもわからない。コンピュータがないからさ。だから知ったこっちゃない。もうレコード業界がどうなってるかもわからないよ。レコード会社にアルバムを渡すと、6ヶ月待ってもまだ発売されないんだ。完成したらできるだけ早く出した方がいいのにさ。1週間以内に店に並べろっての。本当はできるはずなんだよ。それなのにファッキンAnastasiaとやらのレコードリリースと重なるから、順番を待たなきなんねえんだぜ。大したもんだな。世界の危機だろ?

リアム:「Don't Believe The Truth」。タイトルの意味がわかんねえな。マリファナ吸ってるやつのことかな?マリファナだよ。わかんねえけど。何か強いメッセージが込められてるな。俺は好きだぜ。

ノエル:ニュース番組はよく見るんだ。対イラク戦争の時とかアメリカの大統領選挙の時、TVで流れるガセネタはひどかったね。Fox Newsが一番の原因だな、俺が思うに。見てると、何を信じればいいのかわからないって気分になる。何か事件が起きたときに、たとえば大量破壊兵器の発見とかさ、すぐに新聞の見出しを読みに走るだろ。陰謀説があふれてそのどれもまことしやかに語られる。そうだな、たとえばケネディの暗殺。リー・ハーヴェイ・オズワルドが、ケネディに向かって銃弾を3発発射したってのも本当らしい。でもCIAが黒幕だってのも本当らしいし、カストロが関わってるってのも同じくらい本当らしい。だから結局は「もう何を信じればいいかわからない」って気分になるんだ。それで今アフガニスタンやイラクでも同じことが起こってるんだ。そのままイランや韓国にまで侵略して、ジョージ・ブッシュは国連に大量破壊兵器のことで嘘をついた。もう「何を信じればいいかわからない」だろ。このアルバムのタイトルは「政治の上での真実を信じるな」という意味じゃないんだ。真実はたった一つだけさ。それは自分にとっての真実。それを信じるべきなんだよ。

リアム:俺は今でもセイウチかって?(Beatlesの楽曲I Am The Walrusにかけて)俺はセイウチじゃねえ。ノエルがセイウチだ。俺は俺だ。

ノエル:この前アメリカに行った時、自動車事故にあったんだ。たぶん今回は何もかも順調に行って、家に帰ったら「ファッキングレイトなツアーだった!」と言えるだろう。

リアム:みんな俺のことを態度のでけえアホだと思ってる。あまり話さねえからそう思うらしいが、違うんだよ。俺はステージで「みんな愛してるぜ」とか言うのは得意じゃねえ。歌うためにステージに立つ。大きな愛を見せつけるためじゃない。むしろ一人一人に伝えるほうが好きだ。俺が喋らねえと、また偉ぶりやがってと思うかもしんねえけど、それが俺の生き方なんだよ。

ノエル:リアムが最近信心深くなっちまってさ。ほんと面倒だぜ。あいつは自分のことを何だか知らねえけどアベルだと思ってるみたいだ。「Guess God Thinks I'm Abel」という新曲を書いたんだよ。最初俺はAble(~できる)だと思ったんだけど、あいつが書いたやつを見ると「Abel(アベル)」になってる。それで「なるほど。自分のことをアベルだって言うんだな。ってことは自動的に俺はカインだ。カインはアベルを殺すんじゃなかったか?」と思ってさ。でも最初の歌詞が「お前は俺の恋人になれる」だろ。それが全然納得いかねえんだよ。いけないことだろ?いけないさ。兄弟で愛し合うなんて。世間体がある。