呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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第二十話  新たな親友達

 

 

 

 

「──────龍已久しぶりだなっ!!」

 

「会いたかったぜ親友!!」

 

「おぉー、その変わらない無表情!落ち着くわぁ……」

 

「僕はこの前会ったけど、訓練で忙しかったもんね。だからここは敢えて久しぶり龍已!」

 

 

 

「あぁ……久しぶりだな、皆。会えて嬉しい」

 

 

 

「……へへっ。俺達もだっつーの!」

 

 

 

京都姉妹校交流会が終わってから一ヶ月が過ぎたある日。龍已はメールで久しぶりに遊ぼうと誘われて、久しぶりとなるケン達に会いにやって来た。電車やバスを使って長い道のりを進む。少し暇な時間だったが、久しぶりの親友達と遊べると考えると暇な時間すらも楽しく感じてしまう。

 

特級呪具『黑ノ神』を虎徹に造ってもらい、受け取りに行くのと試運転をするのに一度来ているが、そこまで長居が出来ていた訳でも無く、呪詛師殺しの仕事も受けたりと忙しかったので、結局帰ってきてもケン達に会う事は無かった。実に半年ぶりの再会である。

 

日帰りは流石に嫌なので二日間の休日届を提出してから来た龍已に死角は無い。緊急の任務で呼び出しが掛からない限り、龍已は久しぶりの親友達と遊ぶ気満々である。

 

泊まり用の着替えや歯ブラシ、寝間着などをキャリーケースに入れて帰ってきた龍已を見たケン達は我先へと駆け出し、龍已を抱き締めてくれた。3人で一気に飛び付けば倒れるかと思ったが、龍已はものともしなかったので、流石だなと言われつつ、笑い合った。龍已は雰囲気がとても楽しそうだった。

 

肩を叩き合ったり頭を撫で繰り回されたりしながら半年ぶりの再会を喜んでいると、虎徹が早く家に入ろうと提案し、虎徹の豪邸の、変わらない龍已の部屋へと皆が上がって行った。それからは龍已が呪術高専で何があったのか、という話をした。同級生の話や任務、先輩に京都姉妹校交流会。話している龍已とは別に、話を聞いているケン達はとても楽しそうに聞いてくれた。

 

 

 

「巌斎だっけ?そいつは脳筋ゴリラと見た」

 

「いや聞いていてそう思わない人居ないでしょ……」

 

「拳でクレーター作るってホントに人間?ゴジラかなんか?」

 

「音無って奴はケンちゃんと気が合いそう。主に女の子好きだけど全く振り向いてもらえないって意味で」

 

「どういう意味だコラァっ!!」

 

「ケンちゃんが今狙ってるアイドルにスカウトされてるっていう他校の白羽さん、A組の月島栄一(イケメンヤリチン)とヤったって、つるんでる女子グループと話してるの一昨日聞いたよ」

 

「女ってクソ。はっきり分かんだね。……ダメだ。あのクソヤリチンゴミ野郎縊り殺してくる」

 

「はーい虎徹ストップですっ。龍已お願いね」

 

「あぁ」

 

「離せぇっ!!離してくれェっ!!大体なんで高校一年でヤってんだよ!!頭沸いてんのか!代われッ!!」

 

「キッショッ!!本音がポロッと出て来やがった」

 

 

 

暴走したケンが立ち上がり、何処かへ向かおうとするのに虎徹ストップが入り、龍已による羽交い締めが入った。暫くは暴れていたが、落ち着きを取り戻したようで大人しくなったケン。何時ものやり取りに胸を温かくしている龍已だったが、ある事に気が付いた。

 

ケンを羽交い締めにしていた時、半年前と殆ど代わらない力に疑問符を抱いた。3人が中学でサッカー部に入っているのは当然のこと知っている。なので高校でも続けていて筋肉が更に付いたと思っていたのだが、そうでも無かったので疑問を感じたのだ。

 

その事を龍已が聞くと、ケン達は少し笑いながら教えてくれた。どうやら3人は高校で部活に入っているのではなく、バイトをしているのだそうだ。部活をやってしまえば放課後は遅くまで練習。バイトをする時間が無くなってしまう。しかし遊んだり何かを買うお金が欲しいということで、サッカーは中学で辞めてバイトをする事にしたという。

 

虎徹は龍已のために造る呪具以外は適当に思い付いたものを造って売りに出し、莫大な金を得ているので財布は最も厚い。龍已も高専に出される任務に報酬が設けられていて稼ぐ事が出来、夜に黒い死神として呪詛師殺しをしているのでかなりの金が入っている。実は長年使っている口座がとんでもないことになってきているのだとか。

 

そんな2人に対してケン達は一般家庭の子なので、財布事情はそこまで潤っているわけでは無い。お小遣いやお年玉などをもらって遣り繰りしていたのだ。しかし高校生になればバイトが出来る。つまり収入を得られるのだ。それを自覚してからはケン達はサッカーを捨てた。何の躊躇いも無かった。

 

 

 

「そうだ!ちょうど昼頃だし、何か食いに行こうぜ!」

 

「折角会えたんだから、龍已に何か奢ってやるよ!」

 

「今日の龍已の気分は……辛いものだな。何処が良い?」

 

「遠かったら車を出すから何処でも良いよ!」

 

「そう……だな。では『赤鬼』に行きたい」

 

「おっと??」

 

 

 

龍已が言う赤鬼というのは、龍已達の地元で超激辛ラーメン専門店で有名なラーメン屋である。辛さを自由に選べることが出来るのだが、最上級の赤鬼を完食した者は未だ居らず、テレビでも取り上げられた事があり、辛さに自信のある芸能人が挑みに掛かって返り討ちにしたという伝説すらもある。

 

辛さの階級を一番下に下げれば、一般人でも美味辛として食べられるので人気なのだ。それに普通に美味しい。なので辛い気分でそこへ行きたいという龍已の気持ちは分かる。普通ならばすぐに行こうぜというが、ケン達は違う。龍已の親友であり、雰囲気で気分を当てられるケン達は、龍已が激辛を求めていることを察している。そう、龍已の目的は最上級の赤鬼。なので困惑した。死ぬ気か?……と。

 

まあ何処へでも連れて行ってあげると言った手前、拒否はしないので取り敢えず『赤鬼』まで行って入店する龍已達。店内は少しスパイシーな臭いがあるが、美味しそうな香りが鼻腔をくすぐり、途端に空腹感を刺激した。案内されるままにテーブル席に座ったケン達は、各々メニュー表からラーメンを選び、決まったら店員さんを呼んで注文をしていく。

 

 

 

「俺ニンニク味噌で、辛さ1で」

 

「ネギ豚骨。辛さは2で」

 

「醤油のチャーシュー麺で、辛さは1で」

 

「僕は特製付け麺の辛さを1でお願いしますっ」

 

「──────『赤鬼』」

 

 

 

「「「「──────ッ!!」」」」

 

 

 

「……なるほど。『赤鬼』のお客様は時間が掛かりますので少々お待ち下さい」

 

 

 

どよめく店内。辛いものが好きでやって来る客は数知れず、中には度胸試しであったり悪ふざけで頼んだりする人が極稀に居るが、龍已にそんなつもりはない。至って本気で食べようと頼んでいるのだ。注文を聞きに来た店員さんはスッと目を細めてから営業スマイルを浮かべ、注文を確認してから厨房へと下がっていった。

 

どよどよとした話し声の中には、あの『赤鬼』を頼むとは、一体どれだけの猛者なんだ?やら、命知らずとも言う他の客も居た。そこまで辛いものに対して耐性が無いケン達は、ピリ辛程度の辛さしかない1や2を選んだが、龍已のそれは度を超えている。

 

作るのにも時間が掛かってしまう赤鬼を頼んだ龍已は、ラーメンが来るのが遅い。その間にケン達のラーメンが先に届き、龍已のラーメンが来るのを待っていても麺が伸びてしまうので先に食べた。辛さ1は少しのピリ辛程度の辛さなので食べていて美味い。

 

 

 

「初めて来たけど、このラーメン普通に美味いな!」

 

「辛いのオンリーっていうから来なかったけど、これなら何回来ても良いかも」

 

「醤油味に辛さは要らないと思ったけど、合うわこれ」

 

「付け麺も美味しいなぁ」

 

「キョウそれ少し頂戴」

 

「うんダメ」

 

「お、サンキュ……ダメなのかよ!ならなんで最初うんって言った!?」

 

「俺はあげても良いけど、ラーメンが嫌だって」

 

「俺ラーメンに嫌だって言われてんの!?」

 

 

 

ふざけながらもラーメンを交換し合って違う味を食べるケン達を、龍已は楽しそうな雰囲気で見ていた。高専の同級生である妃伽と慧汰とも数え切れないくらい同じ飯を食べているが、やはり長年一緒に居た親友達と食べると無条件で楽しい気持ちになる。決して妃伽達では楽しく感じない、なんて訳では無く、収まりが良いという話だ。

 

ラーメンを美味しそうに食べているケン達を見ていると、何だか妃伽達の事が気になってきた。3日はこっちに居るつもりだったので忘れていたが、妃伽達は龍已が作った料理を基本口にしており、外食などは殆ど行かなくなった。つまり味を占めてしまった。その龍已が居ないとなると……餓死しないだろうな、まさか。という考えになってくる。

 

気が付くと、とても気になってきた。何だかんだ、妃伽達は龍已の中で大きな存在になっていた。呪霊が見えて、戦える同級生は初めてである。虎徹を除いた、見える側の人間。歳も同じで基本無表情の自身にも気軽に接してくれる、数少ない友達。片手で数えられる友人が、両手で数えなければならないくらいになった。

 

一緒に居て楽しいと感じていたし、戦いの連携も抜群に良くなった。それぞれを信頼しあって言葉無しでも求める動きが出来るようになった。お互いにお互いを励ましたり、時には喧嘩したりもする。それでも、毎日賑やかに過ごしていた。料理をしていると必ずやって来て、最初から3人分作った飯を食べて他愛ない話をする。

 

なんだ、自身には新たな親友が2人も増えているじゃないか。気付いたら胸が温かくなって、帰ったらうんと飯を作ってやろう。そんな気持ちになった。

 

 

 

「はいお待ちどおさまです──────赤鬼ですよ」

 

 

 

「……器、俺達と同じだよな?」

 

「……なんか、グツグツ言ってねぇ?」

 

「……出てる湯気が目に沁みるんだけど気のせい?」

 

「……僕が食べたらし確実に死ぬと思う」

 

「……表紙より辛そうだな」

 

 

 

胸が温かくなっている感覚を味わっていたら、喉の奥が焼けてしまいそうな物体がやって来た。ガスマスクを装着してシュコーシュコー言いながら来た店員さんが、龍已の前にこの店最強の激辛ラーメンを置く。いや、絶対に人の食べ物では無いと直感したケン達は、知らず知らずの内に、口内に大量の唾液が分泌されていた。

 

食べなくても分かる、辛いやつやん。その位置フレーズが頭を過ぎ去り、見た目から伝わってくる辛さの濃密さに口が唾液の分泌を止めない。食べれば最後、死が待ち受けているだろう。そう思わせる、絶大な赤だった。その赤はまさしく鬼の如し。なるほど、確かに赤鬼だ。

 

店内に居る他の客すらも、遠目から見てゴクリと喉を鳴らす。そんな視線の暴力の中、龍已は割り箸を手に取って2つに割り、右手に持った。左手にはレンゲ。上に添えられた白ネギだけが唯一の異色とも言える圧倒的赤の中にレンゲを沈ませ、マグマのようなスープを持ち上げる。顔に近付けるだけで汗が噴き出た。これはガスマスクが必要な訳だ。

 

 

 

「ムリムリムリムリムリムリムリムリ。死ぬって。マジ絶対確実オフコースに死ぬって」

 

「えぇ……これラーメン?マグマ専門店じゃない?」

 

「湯気いって!?マジで目がクソ痛ェッ!!」

 

「龍已大丈夫?念の為に水いっぱい置いておくね?」

 

「あぁ、ありがとう。……良し、いただき水をくれ大量に今すぐ」

 

「ほらぁ……」

 

 

 

レンゲに掬われた赤き煉獄のスープに口を付けて、ほんの少し口にの中に含んだ瞬間、辛味の神が口内で核爆発を引き起こした。龍已は見たのだ。一瞬とはいえ……白い雲の上でこっちにおいでと手招きする。一番行ったらダメなやつ。

 

優しい表情でこちらを見る母の弥生を見たら泣きそうになった。しかし父の忠胤に静かに首を横に振られ、ハッと意識を取り戻す。そうだ、自身にはまだやることがある。呪詛師を一匹残らず殺してこの世から消すことと、赤鬼退治である。そして気が付いた。泣きそうなのは辛い所為だった。

 

 

 

「はッ…はッ…はッ……んぶふッ……!?」

 

「うげぇ……マジかよ食うのかい」

 

「無理しなくて良いんだぞ……?」

 

「ぉ……おいしい……げほッ」

 

「いや味分かんねーだろ絶対」

 

 

 

皆が見守る中で龍已は食べ始めた。本気で舌というか口の中全体が異常な熱を持ちながら激痛が奔るがそれでも食べた。手が震える。本気で震える、マグマのようなスープを落とす為に麺を振っているのではない。辛さで手が純粋に震えていて、結果的に麺が震えているだけだ。

 

しかし食べる手は止まりはしなかった。固唾を呑んで見守られる中で食べ進めていく龍已は、実のところ既に凄いのだ。殆どの者達が一口二口、いっても十口だったのに対し、龍已はもう麺を殆ど食べてしまった。胃の中がグルグルしている。燃えるように食道が熱い。しかし止まらない。

 

真夏でもないのに大汗を垂らし、差し出される水を時折口に含んで休ませながら食べ進めていくこと20分。龍已は麺を食べ終える事が出来た。それで終わった。そう普通は思うだろう。しかしそこで終わる事は無く、龍已はどんぶりに手を掛けた。まさかと戦慄した。

 

龍已は飲み始めたのだ。塩分過多や高カロリー摂取等の言葉を二の次にし、辛さの塊であるスープをどんぶりに口を付けて飲む。龍已の喉がゴクリ、ゴクリと音を鳴らしながら嚥下運動を繰り返し、空となったどんぶりをテーブルに置いた。完食したのだ。未だ誰も完食した事の無い、超絶激辛ラーメンを、スープすらも残さず。

 

 

 

「すげぇ!!すげぇよ龍已ッ!!正直無理だって思ってたけど、食いやがった!!」

 

「見てるだけで口の中痛ぇけど、マジでヤバいぞ龍已ッ!!」

 

「湯気で沁みた目がまだ痛ェッ!!」

 

「よく頑張ったね、龍已。はい、最後の水だよ。……龍已?」

 

「─────────────。」

 

「………………ケン君」

 

「はー、マジスゲェ……ん?何?」

 

 

 

「龍已ね──────気絶してる」

 

 

 

「目開けながら!?」

 

 

 

正面を見ているのだと思ったら、まさかの気絶をしていた龍已。なんと龍已、人生初めての気絶である。どんなに厳しい稽古でも気絶はしなかった龍已は、伝説の激辛ラーメン『赤鬼』の完食と共に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ……腹が歪んでいる気がする」

 

「いや当たり前だから」

 

「完食は本気でスゴいけどね」

 

「俺は無理。逆立ちしても無理。金くれるならやる」

 

「やるのかよ」

 

「はい、アイス」

 

「ありがとう、虎徹」

 

 

 

ラーメン屋から帰ってきた龍已は、ベッドに腰かけながら虎徹に手渡されたバニラアイスを食べている。熱を持っている舌が何時まで経っても冷めない状態が続いているのだ。バニラやヨーグルトが辛いものを食べた後に良いと聞いたのに、一向に聞いている気がしない。

 

心なしか涙目で棒アイスを頬張っている龍已は、今日の気分である激辛を制覇出来たので満足である。当分は辛いものの気分は来ないだろうが。

 

舌の上に広がるじんわりとしたバニラの優しい味と、バニラの冷たさを噛み締めていると、ふとあの地獄のマグマのような激辛ラーメンを食べる前、思い出した妃伽達の事。高専でできるとは思わなかった親友達の事だ。そんなことはないと信じたいが、大した飯も食べずに自身の帰りを待っていたりするのだろうか。

 

心配のし過ぎだろう。しかし気になる。そんな気持ちを抱えていると、ケン達が全員自身を見ていることに気が付いた。如何したと聞けば、とても優しい口調で話し掛けられた。

 

 

 

「高専の友達が気になるんだろ?」

 

「音無と巌斎だったよな」

 

「いいんだぞ、帰っても。俺達は何処か消えるわけでもねーし」

 

「僕達は付き合いそのものが長いからね。少し離れていても大丈夫!それにメールも電話もあるからね!」

 

「だが、折角こっちに来れたというのに、初日に帰るのは……」

 

「友達は大事にするべきだぞ、龍已。いいか?俺達はお前が音無と巌斎を大切に思ってる事くらい知ってるんだよ。俺達を誰だと思ってんだ?お前の親友だぞバカタレ。こっちに帰ってきてあっちが気になるのもお見通しなんだよ。帰ってくるのはまた休みがまとまった時で良いから、今日は大人しく帰って、残りの休みを一緒に遊んだりして過ごせよ」

 

「ホントになー。バレて無いとでも思ってたの?全部お見通しだからな?ケンちゃんですらお見通しなんだから俺達は余裕だっつーの」

 

「俺ですらってどういう意味だ!!」

 

「ケンちゃんうっさい。……大丈夫だよ。今日だっていっぱい話したし、一緒に飯食ったろ?それでも後ろ髪引かれるなら、次帰ってきた時は飯奢れよ。それでチャラにしてやっから」

 

「ほらほら、早くしないとあっちに着くまでの電車が途中で無くなっちゃうよ?」

 

「お前達……」

 

 

 

実のところ、ラーメン屋で龍已が違うことを考えている事に気が付いていた。長年親友をやってきたケン達にとって、龍已の考えている事などお見通しだ。況してや悩んでいることなんて。だから帰りたいと思うならば帰ってもいいと言ったのだ。

 

半年ぶりの再会なので、本音はもっと遊びたいし語り合いたいが、龍已の高専で出来た友人も大切だろう。それに龍已が別の誰かをここまで気にするほどの相手だ。きっと親友という括りになっているに違いない。

 

龍已も成長しているんだな、と。友達は親友である自分達しか居らず、ケン達が居てくれれば、それで良いと口にしていた龍已。このまま片手で足りる程度の友人で完結してしまうと、密かに心配していた。しかし、もう杞憂のようだ。龍已も自分達の知らないところで友達を作れるようになった。良い先輩にも巡り会えている。

 

長く親友をしているから、少しずつ羽ばたいて行く龍已に寂しい気持ちもあるけれど、永遠の別れが有るわけでも無い。遊ぼうと思えば今回のように遊べるし、こちらから会いに行ってもいい。だから今は、出来たばかりの親友と友情を育んで欲しいのだ。ケン達は龍已の持ってきた止まりグッズを纏めて、龍已に手渡した。

 

 

 

「ケン、カン、キョウ、虎徹……本当にすまない。この埋め合わせは次回、必ずさせて欲しい」

 

「ふはッ、わかったよ。……行って来い」

 

「気を付けてな!」

 

「乗り換えミスんなよ!」

 

「待ってるからね、龍已」

 

「あぁ、またな。……行って来る」

 

 

 

龍已は見送られながら虎徹の家を出て行った。キャリーケースを引きながら駅へ向かう龍已の背中を見て、寂しい気持ちを胸に抱えながら、笑顔で手を振ってあげた。大好きな親友の門出を祝して。そしてまた遊ぶ日を思って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、遅くなってしまったな……」

 

 

 

出た時間も出た時間なので、高専に着いた時には辺りは真っ暗になっていた。殆どの灯りを消している高専を見て、妃伽と慧汰に会いに行くのは明日にして、今日はもう部屋に戻って寝ようと考えた。しかし、昼に食べた激辛ラーメンが記憶に新しいので、何か適当に作って食べようと考え直し、龍已は荷物を寮の自分の部屋に置いてから食堂へ向かった。

 

そうして向かっていく途中、龍已はある事に気が付いた。食堂の電気が点いていて明るいのだ。他の電気は消えているのに、唯一と言って良い明るい食堂。まさかとは思いつつ、足を少し早めて中を覗き込んでみると、テーブルに突っ伏しているのが2つ。そしてその2人の間のテーブルの上に置かれた皿が2つ。

 

1つは完全に炭の塊と評すべき物体X。もう1つは辛うじて肉と野菜の炒めものと思えるもの。しかし殆どが焦げていて、食べたら苦味が襲ってきそうな代物だ。そしてテーブルに力無く倒れかかっているのが、妃伽と慧汰だった。

 

外食すればいいものを、態々出来ないと分かっていながら料理をしていたらしい。結果1人は食い物とは言えない物体Xを錬成し、もう1人は慣れない料理で存分に焦がしたようだった。

 

はぁ……と、恐れていた事態に片脚突っ込んだ状態に溜め息が出ると同時に、いつも通りの2人に心温まる感覚。やはりこの2人も、自身にとっては大切な友達で親友なのだと、そう思った。さて、何を作ってやろうかなと思いながら、食堂の中へ入ると、妃伽と慧汰は見知った気配を感じ取ってガバッと顔を上げて振り向いた。

 

 

 

「え、ぇえ!?なんで龍已が!?3日は帰らないんじゃ……」

 

「なんだ!?任務でも入れられたのか!?」

 

「……お前達の事が心配になって帰ってきた。予想は……当たっているようだが」

 

「あ、はは……いやぁ、店のものじゃない手料理の味を忘れられなくて……それで2人して作ってみたらこの有様です……」

 

「折角地元に帰ってたのに……悪ぃ」

 

「気にするな。大切な親友達の腹事情なのだからこの位は安いものだ。何が食べたい、今から作ってやる」

 

「ホント!?俺オムライス!オムライスが食べたい!!…………んん?」

 

「私はやっぱりアスパラのベーコン巻きだろ!?あと豚バラの塩ネギ炒めのやつ!………………んぁ?」

 

「その位ならすぐに作れるから待っていろ」

 

 

 

さっさとキッチンの方へ行って黒いエプロンを付けて冷蔵庫から必要なものを取り出す。リクエストされた料理の材料は揃っていたので安心し、料理の難易度からしてそこまで時間は掛からないだろうと判断して、フライパンを取り出して油を引き、熱する。

 

すぐに料理の準備を整えて料理を開始した龍已とは別に、慧汰と妃伽は顔を見合わせてコソコソと何かを話していた。どちらかが聞いて答えて。またどちらかが聞いて答えてを繰り返した後、妃伽と慧汰は椅子から勢い良く立ち上がり、真っ直ぐキッチンへ駆け出した。

 

大きい豚肉を手頃な大きさに切っていた龍已は、突然すっ飛んできた妃伽と慧汰の2人に無表情で驚きながら、嫌な予感がしたので包丁を持った右手と、肉を掴んでいた左手を上げた。すると、2人はがら空きになった龍已の体に突進するように抱き付いてきた。ギュウッと抱き締められて、2人の体と龍已の体の間に隙間は無かった。

 

 

 

「龍已!ねぇさっき親友って言った!?言ったよね!?」

 

「聞き逃さねーぞ!?絶対言ったろお前!!」

 

「危……ないなお前達。……ダメだったか?少なくとも俺はそう思っているのだが」

 

「ダメなわけ無いよ!やったー!龍已の親友になれた!」

 

「お前……っ!おっせーンだよバカが!こんだけ一緒に居て親友にならねー訳ねーだろうがアホ!!」

 

「分かった分かった。お前達にも親友だと思ってもらえて嬉しいが、今は料理中だ。少し待て」

 

「「──────嫌だッ!!」」

 

「我が儘か」

 

 

 

コアラみたいに抱き付いて離れないように全力で抱き締めてくる2人に溜め息を吐きながら、心臓が早鐘を打っていた。親友では無いと言われたらどうしようかと思ったのだ。少し不安になっていたが、熱くキツい抱擁を受けたので同じ気持ちだったのだと知って安心した。

 

暫く龍已は2人の抱擁を受けていた。感極まったのだろう。5分はそのままだったが、流石にこの状態がずっと続くのも仕方ないので離れてもらい、今度こそ料理をし始めた。その間、妃伽と慧汰はテーブルに戻り、料理をする龍已の姿を見て嬉しそうに笑っていた。

 

ずっと感じる視線に気恥ずかしい気持ちになりながら、龍已はさっさと料理を終わらせて、完成した料理を妃伽達に提供した。それを食べた妃伽と慧汰は美味い美味いと言いながら食べた。龍已も一緒に食べて何時ものように他愛ない話をした。

 

 

 

「龍已、親友だって言ってくれてありがとう。すごい嬉しいよ!」

 

「しょうがねーから親友になってやるよ、龍已」

 

「妃ちゃんだって嬉しいクセにー」

 

「マジで嬉しいけどなんだよ?」

 

「え、すっごい潔い……」

 

 

 

「……これからもよろしく頼む──────親友」

 

 

 

「「──────こちらこそよろしく」」

 

 

 

親友となった事を祝して、冷蔵庫にあったコーラをカップに注いで頭上に持ち上げて乾杯をした。それから暫くの間、3人で適当なお喋りをし、仲良く食堂で寝落ちして次の朝までぐっすり眠っていた。

 

 

 

 

 

 

龍已は新たに手に入れた親友達と、楽しくて心温まる時間をこれでもかと享受したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004年12月。東京██廃病院内にて2級呪霊1体を『窓』が確認。後に巌斎妃伽2級術師、音無慧汰3級術師を派遣。以降5時間以上の音信が途切れ、帰還が無いものを緊急事態と判断。

 

出張から帰還した黒圓龍已1級術師に応援を要請。その2時間後、両面宿儺の指(副右腕薬指)を取り込んだ特級呪霊と『窓』が見落としたとされる双子型特級呪霊二体を発見。

 

 

 

黒圓龍已1級術師により全て祓われる。

 

 

 

生存者・黒圓龍已1級術師

 

 

 

死亡者・巌斎妃伽2級術師及び音無慧汰3級術師。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






黒圓龍已


俺は何時も、大切なものが失ってから辿り着く。









すこし………………つかれてしまった……。









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