呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

19 / 36


最高評価をして下さった、羅叉 斑鳩になりたいアヒルの子 565656chan あき!! 毛沢東 鳩の餌やり係 ハル吉★ へーわー 子猫猫猫 ビブリア づま ジルベスター すだまる ノボットMK-42 アルジェントルゥー れみにゃん もさ ヤイチ 白海 銀 さん。 

好評価をして下さった、狼皇 マッチ一本 バルディッシュ2795 名無しの古代魚 聖徒 みーさる L&M くらーく カナハナ 缶詰伽哩 おくしん 冥想塵製 ももたんとん slei 山羊になりたい羊 影政 ささがも Reiku シルクワーム me-00 AwaKa_KS VZ 2020 ウルブラ


さんの皆さん、ありがとうございます!




第十九話  勝敗

 

 

 

特級呪具を幾つも世に出している、呪具師の家系で名家中の名家、天切家。その天切家に一人息子として、天切家の歴代で最高の頭脳、最高の才能。そして呪具師として最強の術式を持って生まれた、最年少特級呪具作製者……天切虎徹は語る。

 

 

 

「──────僕が造った呪具の中で本当の最高傑作は何か?そうだね、取り敢えずその唯一の最高傑作は『黒龍』『闇夜ノ黒衣』『黒山』『黒曜』のどれでも無いよ」

 

 

 

真っ白で一目で高価だと、素人目からでも分かる椅子に座る虎徹は、皿の上に置かれたカップを持ち上げて中身の紅茶で唇を潤す。事前に男であると把握していなければ、絶世の美少女にしか見えないその見た目は、値段の付けられない絵画のように美しい。

 

ニコリと優しげに微笑む。だが虎徹の瞳は、執着の炎に塗れていた。特級を個人に無償で与えてしまうという、聞く人が聞けば失神するだろう事案。だがそこに躊躇いは無く、葛藤も無い。与えて当然としか捉えていない。何よりイカレているのが、それを異常だと自身で理解している部分だろう。

 

質問をしている者がゴクリと喉を鳴らす。良すぎる見た目に目が眩む暇なんて無い。異常だと理解しながら異常の道を進む彼に、理解という概念が懸命に首を横に振って拒んでいる。

 

 

 

「製作者である僕が、敢えて最高傑作と名付けてあげるとすれば──────『(くろ)(かみ)』……この子以外に最高傑作は有り得ないね」

 

 

 

初めて聞く銘だった。先までの話の中で、一度も出て来ていないものだ。まあ造った特級呪具のどれでもないと言っていたのだから、違う名前が出て来たとしても不思議では無いのだが、どんなものなのか一切情報が無いので、正直に言えば何だそれはというものだ。

 

答えた虎徹は詳細を話す前に、ティーポットの中にある紅茶をカップに注ぎ、また一口飲んで唇と喉を潤した。そして虎徹は、その最高傑作を造った時のことを思い出しているのか、とても複雑そうな表情をしていた。

 

 

 

「あの子は僕が間違いなく最高傑作と評せるものさ。けど同時に、最も手を焼かされた子だよ。まあ、使い手になる龍已の認識を改めさせるのと、使った時の訓練……そして有り得ない程高度な術式の付与に手を焼かされたってだけなんだけど……ん?どんな力を持っているのか?あぁ、付与した術式を知りたいんだね。まあ知られたところで()()()()()()()()()()()ものだから教えてあげる。あのね、『黑ノ神』の術式はね──────」

 

 

 

──────存在を存在させない術式だよ。

 

 

 

え?と思った。一体何を言っているのかと。しかしそんな困惑を余所に、虎徹の語りは終わらない。

 

造るのには本当に苦労したよ。素材は何時もの超特殊金属。だけど今度は重くさせる訳にはいかないから、軽く出来るように改良したよ。そしたら、僕呪具を造る事に関しては世界の誰よりも天才だから、()()10㎏にまで抑える事が出来たよ。これが一番苦労したかな。あとは全く同じものを()()造るのにも苦労した。

 

呪具はね、そもそも造るのが難しいんだ。だから同じものはこの世に2つと存在しないと言われているんだよ。特級ともなれば尚のことだよ。だけどさ、考えてみてよ。他の人には出来ないことを、僕が出来ないと思う?まさかだよ。況してや提案したのは僕の親友なんだから。日本列島吹っ飛ばす結果になっても造ったよ。で、完成した。

 

 

 

「6つで一つの特級呪具。一つ一つが宙を変幻自在に飛び回り、呪力を放出する独立ユニット。ほら、偶にアニメとかで使用者の回りを飛んで攻撃する変なのあるでしょ?アレみたいなやつ。つまり、龍已が遠隔操作で操れる銃のユニットを6つ造ったの。6つで一つと言えるくらい完璧に同じものをね。そして術式は存在を存在させない術式。つまり、誰にも認識出来ないんだよ、そこにあるって。だから風の乱れも分からないし、気配も分からないし、呪力だって読めない。呪力を撃ち出すまで攻撃されると分からなくさせてあるんだよ。だから誰も『黑ノ神』が何処にあるかなんて分からないし、存在しないから見えない。『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にこの呪力の砲撃邪魔ッ!!」

 

「呪具弾き飛ばされるし最悪だ!!」

 

 

 

「何だろう……交流会楽しい……」

 

「歌姫ちゃん!左の奴、懐に三本の飛び道具持ってる!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「何でバレた!?」

 

 

 

歌姫は楽しかった。相手は2人居て、後輩は後ろから術式を使ってサポートしてくれる。本当だったら二人を相手にするなんて厳しいものがあるが、何処からともなく撃ち出される呪力の光線が、相手が拳を打ち込もうとする腕を弾き、逃げようとすれば背中から撃って強制的に元の位置に戻させ、飛び道具を投げても投げた瞬間に撃ち砕かれる。

 

言われた通り、防御も回避も考えなくていい。只管相手の事を攻撃し続ければいいのだ。聴いて報せてくれる後輩。攻撃を許さない謎のナニカ。そのサポートあってこその戦いだが、歌姫はここまで楽で楽しい戦いを、交流会を知らない。

 

術式を使おうとすれば衝撃を与えて強制解除させ、歌姫から距離を取らせない。歌姫は超絶優位な状況をこれでもかと利用し、相手している二人の顎を掌底を打ち込んで気絶させた。軽く決まった攻撃に、口の端が知らず知らずに持ち上がる。そして気分が乗ったので、サポートしてくれたナニカに頭を下げてお礼をした。そこにあるかは分からないが。

 

2人を倒し終えた歌姫と慧汰は引き続き、京都校に放たれた呪霊を探して、見つけ次第祓っていく。見つけて祓った数は既に6体。居るのは13体なので、あと一体倒せば勝ちが確定する。全滅しない限りだが。まあ、歌姫の頭の中に全滅の文字は無い。これは最早虐めのレベルの戦いへと発展しているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────何なのよこのガキ共ッ!あの女は人を石ころ見たいに殴り飛ばすし、黒圓は後ろからの援護射撃が邪魔ッ!!また一人やられて私ともう一人しか居ないじゃない!……もう良いわ。認める。このガキ共は強い。だがその要を担っているのは、確実にあの黒圓ッ!全てアイツの仕業だッ!!

 

 

 

「あなたは後ろから狙撃してくる黒圓を狙いなさい!私はあの女をやるわ!」

 

「了解です!」

 

 

 

奏が叫んで、残る一人となった仲間に指示を出した。先までは3人居たというのに、龍已の狙撃によって鳩尾をゴム弾を撃ち込まれ、血反吐を吐きながらダウンした。アンチマテリアルライフルの衝撃は尋常じゃない。呪力で防御していたのに、たったの一撃で気絶させられてしまったのだから。

 

目の前で怪力無双をしている妃伽は奏が抑える。だから後からあまりに一撃が重い正確無比な狙撃をしてくる龍已を狙うように言ったのだ。指示に従って走り出した3年に、奏は妃伽が作った獣道の奥に居ると教えた。スタート地点から動かずに狙撃体制に入った龍已は、確かにそこに居る。だが、勝てるかどうかは別問題だ。

 

狙撃を警戒して京都校の3年は、倒壊されていない木の隙間を縫って龍已に近付いていく。それをスコープで見ていた龍已は、『黒曜』をそのままにして立ち上がり、レッグホルスターから『黒龍』を二丁抜いて近接の構えを取る。

 

向かってくる男子生徒の3年は、懐から拳銃を二丁取り出した。奇しくも戦闘スタイルが同じだった。そして近接格闘が最も強いのも、この京都校3年の男だった。

 

 

 

「お前をここで潰す」

 

「出来ないことを口にするな」

 

 

 

二人は銃を二丁相手に向けて発砲した。殺さない為に弾は全てゴム弾ではあるが、撃てるように改良されているので当たれば骨折するだろう。それが二丁から飛び交い、銃弾が弾き合う。ぱきんという音を出しながら目には見えない速度で出鱈目方向へ飛んでいく両者のゴム弾。しかし3年生は冷や汗を流した。

 

撃ったゴム弾が弾きあうようには撃っていない。何故なら龍已よりも先に撃ち始めたからだ。つまり、ゴム弾が衝突して弾きあっているのは……龍已が後から撃って3年生のゴム弾を撃っているからだ。弾を目視しているというのか。例え目視しているとして、それを正確に撃ち落とすなんぞ、どういう射撃技術なんだ。

 

そう叫びたいが、弾切れだ。スライドが引かれたままなので弾が無くなったのだ。二丁持っていると両手が塞がり、リロードが上手く出来ない。3年生は仕方ないので一丁を口に咥え、手に持っている銃のマガジンを外して、腰から付けているマガジンを取ろうとした。そこで3年生は目を剥く。

 

龍已はマガジンを外しながら駆け出し、『黒龍』を上へと放り投げた。そして両手を後の腰へ持っていき、取り付けられている『黒龍』専用のマガジンを外して手に持って、放り投げた『黒龍』が落ちてきて手の中に納まる寸前でマガジンを上に投げ、カチャンとマガジンを装填して『黒龍』を手にする。映画でしか見たこと無い絶技に唖然とし、接近を許してしまった。

 

ほぼ零距離で向けられる『黒龍』の銃口。受けるわけにはいかず、手の甲を使って龍已の手を弾いて射線を外させる。リロードが出来ない銃は最早邪魔なので龍已の顔目掛けて投げると、下からゴム弾を撃って上へと弾き飛ばした。

 

片方だけとはいえ、弾くのに下から上へ撃った。つまりもう片方をどうにかすれば隙が出来る。龍已が使ったのは左。なので右を抑え込もうと手首に手を掛けると、腕を回されて手首が捻られ、無理矢理外させる。そのまま銃口が眉間に向けられ、咄嗟に顔を横に逸らすとゴム弾が頬を擦った。危なく撃たれるところだったと思ったが、顔をずらした所為で死角が生まれ、腹に膝がめり込んだ。

 

まるで小さなトラックが突っ込んできたことをイメージしてしまう程の重い一撃だが、叩き込んできた脚を両手で抱き抱えた。取った。このまま無理矢理持ち上げて寝技に持ち込む。そう思った時、3年生は空を見上げていた。あれ、何で上を向いているんだろう。そんな素朴な疑問が頭を過ぎ去り、遅れて理解する。

 

脚を抱き抱えられた龍已は、抱えられた脚を固定されているものとして、もう片方の脚を使って跳び上がりながら膝で今度は自身の顎を打ち抜いたのだ。だから何時の間にか上を向いていた。状況を整理して納得した3年生だが、龍已はまだ止まっていない。脚を解放されて地面に着地すると、両手の『黒龍』でそれぞれ左右の脚の太股へ発砲した。

 

ばきりと大腿骨が折れただろう音が響き、激痛が奔る。反射的に折れた脚を押さえようとした腕の、上腕部分を今度は撃たれて同じように骨折。四肢を封じられて地面に落ちていこうとする体を、龍已が前から後ろの襟首を掴む事で阻止される。左手で襟首を掴んでいるので、当然左手に『黒龍』は握られておらず、その『黒龍』は3年生の背後の虚空を飛んでいた。

 

後に引き摺られながら、右手に持っている『黒龍』の銃口が3年生の胴に向けられ、抵抗も出来ずに計8発撃ち込まれた。連続で間も開かず撃ち込まれたゴム弾に、肋骨が砕かれる。痛みと衝撃で呼吸が儘ならなくなっていると後ろへ放り投げられて地面に背中から倒れ込む。その3年生の腹に、体重を乗せないようにしながら馬乗りをし、虚空を飛んでいた『黒龍』を頭上に来たタイミングで、左手で捉えて3年生の眉間へ銃口を押し付けた。

 

 

 

「降参しなければ撃つ。頭蓋骨がどうなっても知らんぞ」

 

「か……ひ…ゅ……っ……ま…ぃっ……た………」

 

 

 

こうしてまた一人、京都校の生徒が脱落した。残るは、京都校交流会メンバーのリーダーをしている奏だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────それがお前の術式か?」

 

「そうよッ!!私の植物操術は呪力でマーキングした植物を意のままに操る事が出来るのよ!」

 

「だーから私が薙ぎ倒してない森の中に引き込んだ訳だ」

 

 

 

木々が生えている中、妃伽は奏から向けられる太い木の枝の攻撃を避けていた。伸ばされるのは、地面を割って出て来た木の根。それが向かってくると同時に太さを変えて、意志を持つようにうねりながら向かってくるのだ。しかし太くして範囲を広げる為に速度が落ちている。身体能力を増大させている妃伽を捉えるのは難しいだろう。

 

だが奏の植物操術は呪力でマーキングさえしていれば、呪力が尽きない限り幾つでもストックしておく事が出来る。つまり、妃伽は早く奏を倒さなければみるみるうちに逃げ場を無くしていくことになる。奏は走って呪力を纏った手で木々に触れている。その瞬間から奏の植物操術の範囲内になる。

 

驚異的な速度で伸びてくるこの根を避けて凌ぐ妃伽は、次第に避けることが面倒になり、その場に留まって木の根を殴り壊すことに変更した。だが悪手だった。止まってしまったことで妃伽は操られた木々に囲まれ、逃げ場を失った。

 

伸ばされた木の枝と根が円を描いてリングを作る。唯一の逃げ場だった空も枝が蓋をしてしまい、囲まれた。小さな隙間から入ってくる太陽の光だけが頼りの薄暗い木の檻の中、妃伽は全方向からやって来る木の枝や、飛んでくる木の礫を殴り蹴り、打ち壊す。しかし少しずつ対応が間に合わずに被弾し、小さな切り傷を全身に負っていく。だが浮かべた笑みだけは何時まで経っても消えないのだ。

 

人の顔程度の隙間を開けて中を覗き込む奏。そしてその表情は苦々しいものだ。これだけのことをやって、追い詰めている筈なのに妃伽の楽しそうな、余裕の表情が崩れないのだ。恐怖し、恐れ慄く顔を見たいというのに……!

 

だが悠長に妃伽だけを相手にする訳にはいかない。ここへ現れない歌姫と慧汰だ。あの二人が此処に助けにも来ないということは、呪霊を今も尚探して祓っているのだろう。戦闘は妃伽と龍已の二人だけに任せて。奏が胸に抱くのは失望だ。元々自身の実力よりも格下の相手である歌姫に期待なんかはしていない。だがまさか、1年に戦わせて自身は楽な呪霊狩りとは。

 

つまらない、実に。だから、妃伽を瀕死に追い込んで、それを見たときの歌姫の顔を拝むとしよう。奏は妃伽をさっさと始末するために、囲わせている木を一気に使って物量で押し潰そうとした。その時だった。木の檻の一部に6つの穴が開けられた。膨大な呪力による光線によるものだ。

 

 

 

「──────ッ!?一体何!?」

 

「……へへっ。やっぱアイツは最高だな!そして()()()()ッ!!」

 

 

 

開けられた6つの穴を塞ぐ前に、新たな呪力の光線が木の檻を撃ち貫き、妃伽は手薄となった部分に突進して無理矢理脱した。奏は舌打ちをした。一体何処から飛んできた呪力の光線なのかは検討もつかない。突然何も無い所から発せられたのだから。撃ち出されて初めて知り、対応しようとするときには既に、木の檻に穴が開けられていた。

 

妃伽は木の檻から脱出した。折角人間離れした動きをする妃伽を捕らえられ、掌の上だったというのに。だがもう脱出されてしまった以上は今何を言っても仕方ない。なので今度こそは逃がさず、確実に仕留める。その為にはまず、妃伽の驚異的な速度を出す要因となる脚を奪うことから始めなくてはならない。

 

そこで気が付く。脱出したはずの妃伽が何処にも居ない。奏は周りを警戒しながら見渡しはすれど、目的の妃伽は居ない。気配を探ってみても居ない。呪力で探してみても居ない。一体何処へ消えたというのか。苛立ちが表情に浮かび上がり、舌打ちをしようとしたその時、背後から何者かに腰を両腕で抱き締められた。思わず息を呑む。小さな傷が刻まれた腕。妃伽の腕であった。

 

 

 

「……ッ!!一体何処に……ッ!!」

 

「龍已に隠密行動を覚えろって仕込まれてンだよ。そんじゃ、空の旅を楽しんで来いやァッ!!」

 

「──────ッ!?きゃぁああああああああッ!!」

 

 

 

あれだけ荒々しい気配と呪力を撒き散らしておきながら、全てを悟らせない程の隠密行動を出来るとは思わなかった。その所為で、妃伽の何かがキマってしまっているかのような存在感と、隠密行動時の存在感の差が激しくて上手く索敵が出来なかった。

 

びゅうびゅうと鼓膜を刺激する風の流れる音。凄まじい速度で上空に打ち上げられたのだと理解させられる。女とはいえ人一人を上空へぶん投げるなんて、どれだけの腕力なのだと愚痴りながら、京都校の全体を見渡せられるほどの高さまでやって来て、勢いが弱まった。

 

人間とは思えない腕力に驚きはした奏だが、目的が解らなかった。落ちて地面に激突するとでも思っているのだろうか。術式で木を操って降りる事も出来るし、呪力で肉体を強化するだけでも着地可能だ。甚だ理解に苦しむ。困惑した表情をする奏。だが下を見て、ある場所を見て固まる。東京校のスタート地点。そこに立って黒い狙撃銃の『黒曜』を持ち、こちらへ銃口を向けている龍已。

 

そういうことかと察した。先程奏が居たのは木々が周囲に生えていた、謂わば狙撃不可能の場所。だから援護射撃を気にすること無く、妃伽だけを相手にすることが出来た。だが今は遮蔽物の無い上空。奏はまさしく、狙撃手にとっての格好の的だった。

 

 

 

「こンの……ガキ共がぁあああああああああああッ!!」

 

 

 

「──────俺の狙撃は一撃必殺。チェックメイトだ、九重奏」

 

 

 

呪力の弾丸なんて生易しいものではなかった。放たれたのは青黒い極太の光線。それが上空に居る奏一人に向けられた。光線は奏よりも高い所で漂っていた白い雲を穿ち、大気圏をも突き抜けていった。

 

そしてそれが放たれたと同時に、歌姫と慧汰の二人が、13体目の呪霊を祓った。完全無欠。一人の欠けも出させなかった、ワンサイドゲームの終了である。

 

 

 

『呪霊13体を東京校が祓い、京都校が全滅したことにより──────団体戦勝者は東京校とする』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイッ土・下・座!ハイッ土・下・座!あれだけバカにしてた東京校を一人もやれずに負けたクソザコ筆頭九重奏サマの土下座だよォッ!!ほら見ていった見ていったァッ!!録画?オッケーッ!!」

 

「殆どの骨折られちゃってる人も居てカワイソウだけど仕方ないよね?その人が縛りを結んじゃったんだもん、全員で……って」

 

「正直話にならなかった。咄嗟の判断をしたのは良いが、内容が雑だ。俺を取りに来たのは一人だけ。巌斎に殴り飛ばされた者に関しては開始20秒も経っていないし一撃だ。耐えることすら出来ない。歌姫先輩の方へ向かわせたのは大した実力の無い二人だけ。呪霊を祓うつもりは毛頭無く、それ故に作戦は丸わかり。だから巌斎の奇襲に驚いて動きが止まった。……本当にこの日の為に特訓を積んだのか?疑問点だらけだ」

 

「奏……あんた……っ」

 

「ぐ…っ……笑うなら笑えばいいじゃない!!歌姫のクセに生意気よっ!!」

 

 

 

妃伽にこれでもかとクソムカつく顔でバカにされながら、女の子が好きで大体の子には優しい慧汰からは冷たい目で見られ、龍已からは冷静に問題点を指摘される。そして極め付けが歌姫が懸命に笑うのを我慢している事だ。

 

龍已の呪力による光線の一撃。確実に人が無に還ると思われる一撃に見えたが、奏が死ぬことは無かった。だが死ぬほど恥ずかしい目に遭っている。

 

チャイナドレスのような改造された服は見るも無惨な事になり、服の機能を放棄してしまって中の下着が見えている。真っ赤な大人のブラとパンティーを身に付けている奏を見た時、歌姫は思わずおぉ……と感動した。これが勝負下着か……と。そしてもう一つは、まるで実験の爆発に巻き込まれた後のように黒く煤汚れたようになり、頭がボンバーになっていることだ。

 

いくら口が悪くて性格が終わっている女といえども、顔立ちはそれなりに整っているし、華の18歳で乙女である。こんな格好は恥ずかしすぎる。だが縛りがあるので、全員でしている正座をやめられない。体を……というか下着を隠したいのに手は膝の上だ。土下座なのだから当然だろうと言われてしまった。

 

そして奏は恥ずかしさと同じように憤りを感じているのが、黒く薄汚れているとはいえ、自身の下着姿を見て白けた顔(その内の一人はずっと無表情)をしている東京校の男子2人だ。少しくらい見ろ!何故チラリとも見ない!逆にムカつく!!

 

 

 

「はー、おもしろ。うし、テメェ等のその姿見飽きたからさっさと頭下げて地面にデコ擦り付けろよ。ほらほら、センコーが来て止めさせられるぞー?縛ってンだぞー?やらなかったら何が起きても知らねーからなー?」

 

「「「──────誠に申し訳ありませんでした」」」

 

「……っ……ひっく……た、偶々だもん……今回は偶然負けただけだもん……」

 

「うっわ泣いた」

 

「正直あれだけ悪く言われたんだ。何とも思わん。寧ろ惨めだな」

 

「……っ……ゔぅ゙ぅ゙ぅ゙……すみません……でした」

 

「あー……うん。許してあげるわよ。ただし!また侮辱するような事を言ったら本当に許さないし、あんたがこの子達にどんな目に遭わされても助けないから!いい!?」

 

「…っ……わ、わかったわよ……」

 

「……はぁ。取り敢えず写真は撮らせてもらったから顔を上げて、龍已に骨を折られてる子は早く医務室に行きなさい」

 

「写真撮ったの!?ねぇちょっと!!」

 

 

 

京都校の教員だろう人に担架で運ばれていく重傷者を眺めてから、勝負下着丸見えの奏が土下座をしている写真を見てクスリと笑う歌姫。あれだけ侮辱してきた相手が泣きながら頭を下げている姿は、少し可哀想だと思ったけれど、自業自得だろうと考えてもう気にしない。

 

後ろでワーワー言っている奏を無視し、龍已達を連れて東京校生徒の控え室に向かう途中、歌姫が肩を突かれた。何か用だろうかと振り返れば龍已が後ろに立っていた。何か用事かと問えば、龍已は何も言わずに右手を挙げた。そしてその後に居る妃伽と慧汰もやって来て同じように右手を挙げる。

 

何がしたいのか意図を察した歌姫は、仕方ないなぁとでも言うような表情をしているが、心はとても温かかった。最後にはニッコリと笑って同じく右手を挙げ、全員とハイタッチをした。

 

 

 

「──────団体戦、私達の勝利よ!」

 

 

 

「「「「──────いえーい!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、重傷者を除いた個人戦を行ったが、東京校は全員対戦相手に勝利を収める事が出来た。慧汰も近接戦がそこまで得意ではない相手と偶然当たって勝ちをもぎ取り、個人戦には参加することになっていた冥冥も危なげなく相手に勝利した。

 

妃伽は開始と同時に相手を殴り飛ばして気絶させて勝利。龍已は『黑ノ神』を使って開始と同時に頭に呪力の波動を叩き込んで脳を揺らして気絶させた。背後からの一撃だったが、機体が存在を消しているので解るわけが無い。

 

それぞれがしっかりとした動きを見せ、強さを知らしめた。それにより、呪術師階級を上げてもらえる事が出来たのだ。歌姫は2級が準1級へ。慧汰は4級から3級へ。妃伽は3級から2級へ。龍已は2級から1級へと上げられた。龍已の場合は査定期間が設けられたが、難なくクリアして晴れて1級となった。歌姫は抜かされてしまったと言っていたが、笑顔で祝福してくれた。

 

冥冥は元から1級にするという話だったので、龍已と同じく査定期間を設けられた後に1級となった。そして、烏を通して見ていたこともあり、龍已が個人で持っている特級呪具に興味を示していたし、見えない『黑ノ神』について探りを入れてきたが躱した。

 

個人戦が終わってから京都姉妹校交流会が終わり、自由な時間が出来たので、歌姫と冥冥も加わった京都観光をした龍已、妃伽、慧汰達。精一杯観光を楽しんで東京に帰り、また呪術について学びながら任務を熟す日々が始まる……筈だった。

 

 

 

龍已はあまりにも無謀過ぎたのだ。興味本位から手を出すべきでは無かった。だから……もう引き返せない所まで来てしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ龍已、流石にやめね?」

 

「普通のどんぶりだよね?なんでボコボコ言ってんの?魔女の錬金に使われてる大釜か何か?」

 

「待って湯気だけで目が死ぬ程痛い」

 

「大丈夫?ここら辺で一番辛いラーメンだよ?食べれる?お水いっぱい置いておくね?」

 

「安心しろ。今日は激辛ラーメンを食べたい気分だったんだ。……よし、いただき水をくれ早くくれ大量に」

 

「ほらぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

龍已は、久しぶりの親友達と……バカクソ辛いラーメンを食べに来ています!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






虎徹作、『黑ノ神』・特級呪具

予め呪力が籠めてある呪具だが、その時に龍已の呪力を籠めて完成させた、龍已専用の特級呪具。

これは銃である……と無理矢理認識させる特訓をしたことで可能となった、唯一の遠隔操作出来る6つの独立ユニット。操作は全て龍已が行っており、活動範囲は術式範囲である4.2195キロメートル。

存在を存在させない術式を付与しているので、そこにあるのが誰にも解らない。但し解除すれば普通に見える。色は黒。

飛ばすにも方向転換にも攻撃するにも付与された術式を使うにも呪力を使うので、莫大な呪力を持っている龍已でなければすぐにガス欠になる。というか龍已以外に使えないようになっている。

歌姫の周囲に居たのはコレ。妃伽が木の檻から脱出する手助けをしたのもコレ。

値段は一つ5億なので、合計30億。




歌姫

サポートしてくれた物は一体何なのか気になったので龍已に聞いたら『黑ノ神』を見せてもらった人。滅多に居ないからレアだね!

当分は土下座している奏の画像を見てニヤニヤする。

準一級になれました!ありがとう一年生達!




妃伽

うっわ、相手マジでクソザコしか居ねー。ゲロおもんな……。

あ、木の檻はやろうと思えば出れた。やらなかっただけ。

奏の勝負下着を見て、……黒いの買おうかな。って考えてしれっと京都で買った。後のお気に入り。

交流会個人戦の相手は奏。




慧汰

歌姫ちゃんのサポートしました!呪霊6体祓わせてもらったよ!しかも階級上がった!やった!

周りが強すぎて霞むが、入学してもう階級を上げた、やれば出来る子。




龍已

結構頭を使う特級呪具を作ってもらった。銃であると認識しないと使えなかったから、それらしいのが出る映画や漫画やアニメをしこたま見て解釈を無理矢理広げた人。何やっとるん……。

勘が鋭い呪詛師で練習してたのは『黑ノ神』でした!

1級に上がったし、よく任務に駆り出されることになった。いや、やりたいのは呪詛師殺し……。

ぶっちゃけ、妃伽ロケットスタートは出力ミスった。やっべ、強すぎた……?あ、生きてるな。よし、薙ぎ払え……ッ!!




九重奏

赤い大人の勝負下着を晒したのに誰も反応しないどころか土下座させられて、ギャグで爆発が起きて巻き込まれた後みたいにされた人。自業自得だわ!かーっぺ!




冥冥

戦況をモニターしていながら龍已の事を見ていた人。

黒圓無躰流は見れなかったけど、代わりに狙撃銃と不思議な呪具らしきものが見れたので良しとしよう。

あ、1級になったよ。






問題。

龍已は『黑ノ神』を使用中、どうやって見えない人の攻撃を的確に弾いたのでしょうか?

解る人は居るかな?


▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。