呪術廻戦───黒い死神───   作:キャラメル太郎

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第七話  依頼

 

 

「うっわぁ……腹の中身無くなっちゃってるぅ……」

 

「なるほど……これがコロコロされたクソ野郎の死に顔か。へっ、ザマァっ!!」

 

「そこらへんのB級ホラー映画よりリアルじゃん!!」

 

「いやケンちゃん、これリアルのだから当然でしょ」

 

「コイツ女の人襲ってワザと殺したんでしょ?はいはいワロスワロス。地獄に堕ちろクソがッ!!」

 

「女の人襲うとか、もう救いようが無いな」

 

「A組に居るテニス部のイケメン君、今ケンちゃんが気になってる東雲さんにキスして泣かしたらしいよ」

 

「──────ちょっとイケメンぶっ殺してくる」

 

「もう、君達ほんとにイカレてるよ。あ、龍已ケンちゃん止めてくれる?」

 

 

 

野郎ぶっ殺してやるっ!と、叫んでいるケンを羽交い締めにする龍已を振り解ける訳が無い。虎徹曰く『超人』の肉体を持っている龍已。そんな彼に対してサッカー部所属のケン。名前でも負けている。

 

今やっているのは、虎徹の家での鑑賞会である。何の?初めてやった呪詛師殺しのである。写真に納めた呪詛師の死体を、虎徹の家に置いてある超大画面テレビに映している。映るのは当然モザイクもクソもない大の大人が惨い死体を晒している画像だ。

 

普通は呪術界の、それも悪人とはいえ人殺しの仕事の証拠写真を、術式も呪力もない一般人に見せるべきではない。しかし龍已の親友はやはり親友、隠し事はしたくないし、何よりこういうことをしているのだと知ってもらいたかった。結果、こんな事になっているのだが、イカレた龍已や虎徹の近くに居たからかどうかは知らないが、ケン達もイカレていた。

 

モザイクも掛かっていない死体の映像を眺めながら、ケン達は虎徹に出されたお菓子とジュースを嗜んで見ていた。抵抗感も何も無い。龍已が呪詛師……人殺しの仕事を始めた事にすら何とも思っていないのだ。いや、思っているといえば怪我をしないようにというものだろうか。

 

 

 

「次の依頼とかってもう決まってんのー?」

 

「そうだな……3日後に群馬の〇〇で呪詛師を始末する」

 

「群馬かぁ。お土産よろしく!」

 

「あぁ。立派なチンゲンサイを買ってくる」

 

「いや、そこは焼きまんじゅうとかだろ!?なんでそこらへんのスーパーで売ってるようなの買ってくんだ!?」

 

「龍已の銃黒くてカッコイイな!」

 

「ちょっと持ってみてもいい?」

 

「片方で120㎏あるけど良いか?」

 

「……え?銃の話だよね?」

 

「聞けよッ!!」

 

 

 

ギャンッと吠えているケンは置いておいて、勿論龍已はちゃんとしたお土産を買ってくるつもりだ。いつものおふざけである。それはケンも解っているので本気にはしていない。今携帯に『お土産・焼きまんじゅう』と打ったメールが届いたが本気にはしていない。ほんとに。

 

龍已専用に作られた超重量姉妹銃『黒龍』がやはり気になるのだろう。カンやキョウが興味津々で見ているが、本当に超重量なので手軽に渡すことが出来ない。仮に渡したら重さに耐えきれず床に落とすし、床に穴が空く。若しかしたら銃に手を潰されてとんでもないことになってしまうかも知れない。それが解ってカン達は潔く諦めた。

 

 

 

「話変わるんだけどさ──────龍已のレッグホルスター巻いた両脚えっちくね?」

 

「変わるなんてレベルじゃねーわ」

 

「まあ言えてる」

 

「自分でもすごいの造ったと思ってるかなぁ……」

 

「………………。」

 

「いや龍已、恥ずかしがらなくていいから。無視して良いから。ていうか隠そうとして体育座りすると余計えっちくさいから」

 

「何だかんだでケンちゃんが最も見ている件について」

 

「それは草」

 

 

 

実は龍已の『黒龍』は剥き出しの状態にしている訳じゃない。納める場所が必要ということを失念していた虎徹は、翌日には『黒龍』を納める為のホルスターを造ってくれた。しかしそれはベルトのように上側を留め、足の部分にもあるベルトを締めることで固定する両脚装着型のレッグホルスターである。

 

実はこのレッグホルスターは歴とした呪具で、超重量の『黒龍』が重量そのままだと擦れて皮膚を痛めたり、流石に邪魔になってくるだろうと思ったので、術式を付与した。中に銃を納めると、その銃だけの重さをかなり軽減させるというものだ。これにより、『黒龍』はレッグホルスターに入れている時だけ2㎏程度の軽さになる。

 

黒圓無躰流で足技も使う龍已は、脚に何かを付けた事が無いので今一感覚に慣れず、納めた時の『黒龍』にも慣れる為に、何も無いときにもレッグホルスターを装着している龍已。だがそれが親友達曰く、えっちらしい。

 

龍已は身長が高い。まだ少しずつ伸びているが今174センチある。中学一年にしては大きい。そして稽古や鍛練によってスタイルが良い。父は筋骨隆々だったが、龍已は細いままに尋常じゃない筋肉が詰まっている。なので見た目以上に重いのだが、この際は置いておこう。兎に角、スタイルが良いのだ。そんなスタイルが良い龍已は脚も筋肉質ながらしなやかで長い。そこにピッチリとしたレッグホルスターである。実にえっちでセクシーだ。

 

本人はそんなつもりは全くないし、そもそも無表情がデフォルトなので無縁の話だと思う。しかし世の中には特殊な性癖を持つ者が居て、二丁拳銃を巧みに扱うスタイルの良い無表情美少女が好きだというものが居るのだ。特にレッグホルスターの巻かれている脚が……と。

 

 

 

「……外した方がいいか?」

 

「いや、付けといて。外さないで」

 

「無表情で長い脚にレッグホルスター……事案です」

 

「こんな親友持てて誇らしいぜ、俺ァよォ……」

 

「みんなテンションどうしたの??」

 

「……それ程このホルスターはえ、えっちなのか……?」

 

「待って耐性無いなら言わないで。今の言い方はマズい」

 

 

 

因みに、死体の画像は龍已が使っている部屋で見ているのだが、龍已はベッドの上で壁に背をつけ、体育座りをしている。脚を曲げた事で太腿の太さが変わり、レッグホルスターが太腿に食い込んで言い肉感を醸し出している。なのに無表情でありながら耳を少し赤くしながら聞いてくるのはズルい。親友だからいいものの、女だったら絶対鼻血出してた。恐ろしい子……!

 

気にするなと言われ、首を傾げながらそうかと言って何時もの状態に戻る。意外?かと思われるが、龍已は女子とのあれこれに耐性があまりない。というのも、小さな頃から稽古の毎日で、学校では敬遠とされていて女子とは殆ど話したことが無く、テレビも誘われない限りあまり見ないので耐性を付ける時が無かった。告白だってされたことが無い。なんなら、母親以外の女の人に触れた事すら無い。

 

因みに龍已の今日の気分はパズルなので、座りながらルービックキューブをカチャカチャと弄っている。気分次第じゃないと触らないので昔は一面揃えるのがやっとだったりしたが、今は熟練の達人のように素早く全面を揃えることが出来る。

 

 

 

「龍已、タイム計ってやろうか?」

 

「……特にタイムは気にしていないが、いいか?」

 

「まーまー。むしろ俺が気になってるからさ。本気でやってみて!じゃあいくぞ……スタート!」

 

「……出来た」

 

「えーっと、2秒41!結構早いんじゃね?世界記録とか知らねーけど」

 

 

 

※ルービックキューブ世界記録・3秒47。

 

 

 

「なー。腹減らねー?」

 

「何か食おうぜ」

 

「使用人に何か作らせる?」

 

「俺、龍已の作ったシーフードナポリタン食いたい!」

 

「あっ、じゃあ俺も!」

 

「俺も食いたーい」

 

「あぁ、あれか。いいぞ。少し待っていろ、作ってくる」

 

「龍已は偶に料理したい気分になるからね。しかもすっごい本格的なの作るし、楽しみだなっ」

 

 

 

最後にもう一度崩したルービックキューブを整えてからベッドから降りた。脚に巻き付いたレッグホルスターがガシャリと音を鳴らし、まだ慣れていないのか眉を顰めながら部屋を出て行った。今日は土曜日。昼時なので食べ盛りの中学生達は腹を空かした。何時もならば土曜日はケン達にサッカー部の部活練習があるのだが、この日は珍しく休みが入った。

 

日によって違う気分だが、料理をやりたい気分になると、ガッツリした料理やらデザート等、中学生にしては凝ったものを作る龍已。その手腕には天切家お抱えの料理人が驚くレベル。多芸多才だね龍已クン。

 

金持ちの虎徹の家には材料が山のようにあるので、作りたいなと思った料理は大体作れる。なのでアレを作ってくれとリクエストされれば、作った事の無い料理以外は作れる。余談だが、龍已が作った料理を食べた事があるのは、この世で親友達だけである。リクエストして無条件で作ってくれるのも親友特権なのだ。羨ましい。

 

 

 

「うんめっ!」

 

「さっすが龍已!クソ美味いぜ!」

 

「中学生で料理出来るのはウチの学校で龍已くらいじゃなーい?」

 

「本当に多才だよね、龍已って」

 

「……気分でやっていて出来るようになっただけだ。そこまで誇れるようなものでもないと思うが」

 

「いやいや、コレマジで金取れるレベルだから」

 

「じゃあケンちゃん金払えよ」

 

「ものの例えですぅ」

 

「うわその顔うっぜ」

 

 

 

リクエストにあったシーフードナポリタンを作って皿に盛り、提供すると、全員が顔を綻ばせながら美味い美味いと食べ進めた。気分で作るだけなのでそこまで美味しそうに食べて貰えると嬉しい気持ちになる。

 

美味しそうに食べる親友達を眺めながら、自分の分のシーフードナポリタンをフォークで巻いて食べる。自分で食べる分には味は普通なのだが、他人が食べるとすごく美味しいらしい。自分で作ったというフィルターを通しているからそうなのかは分からないが、取り敢えず親友達が喜んでくれているならば良いか、と考えてあっという間に完食した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学校が終わって放課後のこと。虎徹の家の使用人が運転してくれている車に乗って移動をすること数時間。依頼にあった群馬に辿り着いた。学校が終わってから直ぐに向かったが、辺りはもう暗い。運転手をしてくれた使用人に、近くの駐車場に車を停めて待機していてくれと言って車から降りる。

 

人通りの少ない道を行き、建物が多く並ぶ事で建物と建物の間にある路地裏に入り込む。そして着てきたフード付きの黒いローブをしっかりと身に纏っていることを確認し、フードを深く被って顔を隠す。ローブの中でレッグホルスターである『黒山』に納められている『黒龍』に触れて確認し、しゃがみ込んで大きく跳躍した。

 

5階建ての建物を一度の跳躍で跳び越えると、軒先に捕まって身軽に屋上へ着地した。夜の景色に建物の人工的な光が映ってとても綺麗だ。しかし今は仕事をしなくてはならないので先を急ぐ。頭の中で暗記した地図を広げて目的の場所まで走る。

 

屋上から屋上へと飛んで移動し、さながらパルクールのように設置されている室外機やパイプを跳び越え、フェンスに掴まると一瞬で登って侵入する。軽やかな身のこなしで普通の人では目にも止まらない速度で走りながら、依頼されている呪詛師に関する資料を思い出す。

 

 

 

「……ギャンブル依存症。他人の当たりが許せず、見つけると後を追って襲い呪う、無差別殺人を繰り返す呪詛師」

 

 

 

自分が外しているのに、何でお前みたいなのが当たるんだと自己中心的な事を考え、襲った者から金目の物を奪ってまたギャンブルに行くというサイクルを繰り返す。被害者は女性の夫。休みの日にパチンコに行ったら最後帰ってくることが無く、後日女性の夫は死体で発見された。

 

持っているとされる術式は加速術式。掌の中に納められる程度の大きさの物を高速で飛ばすことが出来る術式で、被害者の検死結果からして使用されているのはパチンコに使用されている玉。人体を貫通していることから弾丸相当の速度で撃ち出せると思われる。

 

顔はパチンコ屋に設置されていた防犯カメラに映っていたものを使用。身長172センチ。猫背。肥満気味。推定体重84㎏。眼鏡を掛けている。1日の大半をパチンコに費やし、時により競馬やボートレースにギャンブル先を変える。最後の目撃情報は群馬の〇〇で、拠点はまだ変えていない。

 

頭の中で呪詛師の情報を整理しながら、もう少しで目的の場所だと分かると、左の脚側の『黒龍』を抜いて前に構え、引き金を引く。しかし呪力の弾丸が出る訳でもなく、呪力の青黒い光線が放たれた訳でも無い。しかし龍已はそれだけで『黒龍』を『黒山』に納めた。

 

 

 

「──────見つけたぞ、呪詛師」

 

 

 

龍已は目当ての呪詛師を見つけた。どういう原理なのか。まだ屋上を飛び移りながらだというのに、依頼の抹殺対象である呪詛師を発見した。そして見つけた呪詛師の元へと進路を微妙に変えて走り抜ける。

 

走ること5分が経っただろうか。建物の上を移動して、大きなパチンコ店の電工看板の上に登った龍已は、もう一度『黒龍』を抜いてパチンコ店に向けて引き金を引く。するとまたホルスターに戻してその場で待機する。もう中に居ることは知っている。後は出て来るのを待つだけ。

 

一般人の車が駐車場に入ってきて、中へと入っていく。逆に店から出て来て車に乗り込み、駐車場を出て行く。暫くそうした光景を見ていた龍已は、一人の男が出て来た事で『黒龍』をホルスターから抜いた。目的の呪詛師である。それも呪詛師が出て来る前に、先に出て来た他の客の後ろをついて行っている。察するに勝った男を付けているのだろう。情報通りだ。

 

目的の呪詛師と龍已の距離は200メートル。人によっては顔すら見えない距離で、呪詛師であると確信する。何せ隠しきれない呪力の気配と、人を殺した事がある者特有の歪んだ気配が感じ取れるからだ。

 

帰ろうとしているのだろう。勝って機嫌が良さそうな男性がポケットに手を入れて、車の鍵を取ろうとした瞬間、呪詛師の呪力が握り込んだ手に集中したのを視て、龍已は構えた『黒龍』の引き金を引いた。バァンという重い発砲音が響き、青黒い呪力の弾丸が放たれる。

 

呪力の弾丸の方が、発砲の音よりも速い。なので呪詛師はまだ気付いていない。呪力の弾丸は真っ直ぐ直線に飛んでいき、呪詛師の左側頭部に命中。数瞬後、小さくパンッという音と共に、撃たれた呪詛師は眼球をそれぞれ出鱈目方向に向け、目の端、耳、鼻、口から血を流して倒れ込んだ。もう呪詛師の頭の中には知っている形の脳は無い。内部で呪力の弾丸が弾け、その威力で粉々になったのだ。即死である。

 

 

 

「──────俺だ。目的の呪詛師は殺した。〇〇というパチンコ店に居た。報酬は振り込んでおけ」

 

 

 

仲介人に仕事用の携帯で電話を掛けて報告する。電話の向こうで呆れたようにハイハイと返事を返されたのを聞いてから立ち上がる。がんかでは突然倒れた呪詛師に驚き、命を狙われていた見ず知らずの男性が必死に声を掛け、騒ぎを聞き付けた人が集まって人集りを作り、警備員や店員すらもやって来て騒ぎになっていた。

 

発砲音が聞こえたから、誰かから撃たれたのだろうと説明している男性と、それを聞いて辺りを見渡している警備員や避難誘導している店員が居る。辺りを見渡しても分かるはずが無い。そして偶然龍已が居るところを見ても、夜の闇に紛れて黒いローブを着ている龍已は見つけられない。

 

目的を達成した以上もう此処に居る必要は無い。前回は依頼を達成したということで証拠写真を撮影したが、次回からは良いとのことだ。何せ殺せばニュースになるし、お前の事だから確認するまでも無く確実に殺すだろうとのことだ。変に信頼されたものだ。

 

看板の上から来た道をそのまま通って、送ってくれた虎徹の使用人と待ち合わせしている駐車場を目指す。あれだけの騒ぎが起きていて騒がしかったが、龍已の足の速さによって騒ぎの声は聞こえない。屋根や屋上を跳んで進み、直ぐに目的の場所までやって来た。停まっている車のドアを開けて中に乗り込む。気配がなかったのに突然ドアが開いて驚いた表情をした女性の使用人だが、龍已がフードを取って顔を晒すとホッと溜め息をついた。

 

 

 

「龍已様、お仕事お疲れ様です」

 

「ありがとうございます。このまま直ぐに帰りたいところなのですが、友人にお土産を買って帰る約束をしているので、焼きまんじゅうが売っている店へお願いします」

 

「ふふっ。それなら待っている間に買っておきましたので大丈夫ですよ」

 

「……っ!なるほど、ありがとうございます。代金は後程お渡しします」

 

「分かりました。では出発しますね」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

女性の使用人が微笑みながら車のエンジンを掛けて出発した。虎徹の家の使用人は相変わらずやり手だと、内心拍手をしていた龍已は、暇潰し用に持ってきたクロスワードパズルの本を開いた。

 

こうしてまた一人、呪詛師が夜の闇の中で殺されたのだ。何も知らず、何が起きたのか分からないまま、意識が無くなる寸前、どこからか銃声だけが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゙ーーーーーー。サッカー部なのに何でずっと走り込みなん?体力必要なのは知ってっけど、今日ボール一回も触ってねーんだけど!!」

 

「俺は蹴ったぜ!」

 

「エラーボールを返す時に蹴っただけだろ」

 

「みんなお疲れ様っ」

 

「昨日買ってきたお土産の焼きまんじゅうがあるぞ」

 

「やっりぃ!晩飯前だけど腹減ったから食う!」

 

「あぁ、ケンにはチンゲンサイを買っておいた」

 

「クソ要らねぇ!?」

 

「お土産の前にお風呂入ってきなよっ。部活で汗いっぱい流したでしょう?大浴場はもうお湯張ってあるよっ」

 

「「「ありがとう虎徹ママ!!」」」

 

「ふふっ、はいはい」

 

 

 

部活が終わってから虎徹の家へやって来たケン達は、勝手知ったるように玄関を開けて入って来た。親友として何年も一緒に居るからか、部活が終わってから直ぐに家に帰らなくても、どうせ天切君の家に行ってたんでしょ?迷惑かけないでね、という会話で終わるのだ。

 

大汗を流して土まみれになっているケン達は、そこらの銭湯よりも広い金持ち特有の大浴場へと駆け足で向かった。さっさと風呂に入って、持ってきていた着替えを着て龍已の部屋にやって来た。一人で居るには少し広すぎる部屋に何時もの5人が集まれば、慣れ親しんだ空間へと早変わりだ。

 

 

 

「昨日は仕事だったんだろ?お疲れ様ー」

 

「怪我は無ぇ?大丈夫?」

 

「どうだったか聞きたいけど、学校だと誰が聞いてるか分からないからなー」

 

「依頼は無事達成した。怪我は無いから大丈夫だ、ありがとう。ほら、お土産」

 

「うぇーい!本場の焼きまんじゅうぅ!」

 

「ケンちゃん手出すの早すぎ!」

 

「あ、それ俺が取ろうと思ってたやつ!」

 

「早いもん勝ちー!」

 

「虎徹、『黒山』も『闇夜ノ黒衣』も素晴らしい出来だった。『黒龍』は言わずもがな」

 

「ふふっ。当然!何せどれも僕の最高傑作なんだから!」

 

 

 

ニッコリと笑って誇らしそうに笑う虎徹。自身の為に造られた武器は最高だった。漠然と思ったものを聞いて、呪具という形で叶えてくれる虎徹は、最も信頼する技術者である。とても中学生が造っているとは思えない、他の呪具と遜色ない出来である。いや、寧ろ虎徹の呪具は龍已が欲している性能をそのまま実現しているので、圧倒的に優勢だろう。

 

お土産で買ってきた焼きまんじゅうを取り合い、しょうもない喧嘩をしている3人を虎徹が窘め、その光景を龍已が見守る。やはり何時もの光景。龍已はこの光景が大好きだ。今は何よりも愛おしい。

 

 

 

 

 

 

 

龍已は焼きまんじゅうを巡って取っ組み合いに発展した3人を止めるために、腰掛けていたベッドから立ち上がった。やれやれと内心思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────龍已……っ!龍已ッ!!」

 

「おいおい……マジでやめてくれよ……っ!」

 

「大丈夫かっ!?しっかりしろっ!!」

 

「まさか……違うよね……?龍已……っ!!!!」

 

 

 

「……………────────────。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






龍已が身に纏っていたフード付き真っ黒なローブ

虎徹作、特級呪具『闇夜(やみよ)黒衣(こくい)

存在を完全に認識されない限り、呪力、気配、音、臭い、風の動きなどといったものを一切認識させない真っ黒なローブ。だがその場に残る残穢は消せない。

認識されていないならば、真後ろで大声を叫んでも気付かれない。夜だと暗闇に紛れて本気で見えない。

値段は6億円。




超重量姉妹銃専用レッグホルスター。

虎徹作、特級呪具『黒山(くろやま)

あまりにも重くて動きに支障が出ると思い、『黒龍』を納めている時だけ超軽量化させることが出来る優れ物。龍已専用に造ったので擦れないし、邪魔にならない。勿論黒色。

弾を入れる小さなポケットがあり、中は異空間となっているので弾ならばかなりの数が入れられる。後ろの腰辺りにマガジンが設置できる場所があり、空のマガジンを設置すると自動で望んだ弾を補給してくれる。

マガジンを取り替える時は、トゥームレイダーのアンジェリーナ・ジョリーみたいにかっちょよく変える。

値段は2億円。


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