億万長者の厳しい世界について執筆

(C)Meati Foods

最もおいしい代替肉の商品化に向けた競争が加熱している。菌類からブロック肉をつくる米スタートアップ、ミーティ・フーズ(Meati Foods、本社コロラド州ボールダー)はこのほど、シリーズBラウンドで5000万ドル(約55億円)を調達した。資金の大半は、2022年の製品発売に向けて建設する約7400平方メートルの生産工場に充てる計画だ。

ミーティは2019年に、地元コロラド大学ボールダー校出身のタイラー・ハギンズ最高経営責任者(CEO)とジャスティン・ホワイトリー最高技術責任者(CTO)が創業した。キノコの根にあたる菌糸体から、スライスしてサラダの上にのせられるステーキや、パン粉をまぶしてフライにしてサンドイッチにできる鶏むね肉のような、塊の代替肉を開発するフードテック企業だ。

「最終的に、当社はまったく新しいタイプの食品、全く新しいタイプのタンパク質をもたらすことになるでしょう」とハギンズは力を込める。

ミーティは菌由来肉を製造するために発酵技術を用いる。この技術は最近、投資家を引き寄せている分野だ。非営利団体のグッドフード・インスティテュート(GFI)によると、代替タンパク質を手がけるスタートアップによる2020年の資金調達額20億ドル(約2200億円)のうち、少なくとも4億3500万ドル(約480億円)は研究開発で発酵技術を利用している企業によるものだった。

米国には現在、発酵技術によるタンパク質生産の商業化に取り組んでいるスタートアップが20社以上ある。ミーティは業界で唯一の公益法人となっている。

菌類由来の製品に期待する投資家は、こうした製品は大豆やエンドウ豆由来の製品に比べ、原料が少なくすみ、加工もあまり必要なく、しかも栄養価は高いため、将来的に成功する可能性が高いとみている。もっとも、商品化に向けてはまだ多くの課題があり、創業3年のミーティには何社かの競合相手も存在する。

ミーティによると、同社の菌糸は「きわめて資源効率が高く」、工場では24時間で牛4500頭分にあたる代替肉を大規模生産する予定だという。これにより、工業型畜産による従来の食肉と同程度の価格を実現できるとハギンズは述べている。

今回の資金調達ラウンドはエーカー・ベンチャー・パートナーズとボンドが主導し、このほかプレリュード・ベンチャーズ、コングルーアント・ベンチャーズ、タオ・キャピタルが参加した。

編集=江戸伸禎

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ソニーグループ執行役専務 安部和志

ソニーからソニーグループへ。2021年4月に社名変更、グループ経営体制へ移行した同社の売上高の事業構成(19年度)は、ゲーム&ネットワークサービス24%、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション24%、金融16%、イメージング&センシング・ソリューション13%、映画12%、音楽11%と多様な事業展開をしている。直近の20年度第3四半期決算では、連結純利益見通しが過去最高を更新し、初の1兆円超と発表。

好業績を収める同社では「人」を、社会に「感動」という価値を創出し続けるための重要な経営の主体ととらえている。そして、人事のトップであるソニーグループ執行役専務の安部和志は、社員が活躍する基盤として「存在意義(パーパス)」「企業文化」の存在をあげる。なぜ、事業が多角化するなかでもソニーらしさは失われないのか。

──事業や組織が変化するなか、CHROが果たす役割とは。

企業の使命は社会に対して価値を創出し続けることだ。ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスにある通り、提供する価値は「感動」。そして、その感動という価値を創出していくために、テクノロジーや財務的な資本とならび、もっとも重要といえるのが「人」だ。CHROの役割は、ただ社員を支援するのではなく、その「人(社員)」が「価値を創造する」ことを支援することだろう。

──「パーパス」や「企業文化」を価値創出の基盤として重要視している。

11万人の多様な社員が価値創造に向けて、同じ価値観と方向性を共有しながら進んでいけるよう、上位概念としてのパーパスを定義した。社員の評価制度にも組みこみ、さらなる浸透に向けた取り組みをしている。

それを支える企業文化の存在も重要だ。創業以来、継承しているのが「社員の自立と挑戦を尊重する」、「型にはまらないものこそ創造性である」という個を重視する企業文化だ。最近、事業が好調な国内の音楽事業でも、「新しいことへの挑戦を社員間でうながす風土・仕組み」からヒットが生まれており、ソニーがもっていた理念や文化が生きている。中期経営計画策定の過程で、吉田(憲一郎会長兼社長CEO)や各事業の責任者たちと「戦略も大事だが、企業理念や文化に勝るものはない」と話をしている。

文=山本智之 写真= ヤン・ブース

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