IDCFクラウドが個人向けサービスを終了へ
クラウドサービスの本質を考えさせられるイベントだと思いました。
ソフトバンク配下のIDCフロンティアが運営するIDCFクラウドは、2018年12月11日を以て受付を終了し、サービスは2019年3月31日を持って終了することになりました。
個人としてIDCFクラウドを利用することはできますか。 | IDCFクラウド
Q) 個人としてIDCFクラウドを利用することはできますか。
A) 新規でご利用を検討されている個人のお客様:個人のお客様のIDCFクラウドサービスにおける新規契約は2018年12月11日を以て終了しました。
既にご利用いただいている個人のお客様:既にご利用中のお客様は、2019年2月からビジネス会員への移行期間を設け、ビジネス会員登録に同意いただいたお客様は継続してご利用可能です。同意いただけなかったお客様につきましては、2019年3月31日をもってサービス提供が終了となり、以後ご利用できなくなります。
既にご利用いただいている個人のお客様には弊社よりメールにてご連絡しております。対応については、以下FAQをご参照ください。
ビジネス会員になるためには、法人格での申し込みが必要です。登記しなければいけません。個人事業主は法人ではありません。
ざっくりいうと、独立後の売上が低い見込み(数百万円程度まで)の方は個人事業主、独立後1,000万円近い売上が見込める方や大きな投資をする予定の方は法人を選ぶといいでしょう。 法人は、設立するにも解散するにもお金がかかりますので、真剣にビジネスに取り組みたい人は法人からはじめ、気軽にやりたい方はまずは個人事業主で始めるとよいでしょう。
IDCフロンティア側から言えば、有象無象だった個人顧客をバッサリ切り捨て、法人顧客にターゲットを絞ってビジネスを行っていくという宣言です。
ツイッターで情報収集すると、この宣言は2018/12/11(昨日)に発表されたばかりとのことでした。
日本の企業は、本当にB2Cは全部やめてB2Bばかりになっていきますね。
ソフトバンクグループの中でも、B2C領域はファーストサーバーと重なっていたので事業整理と言ったところかもしれません。
クラウドサービスを選ぶときの見極め
昨今は、企業システムを納品する場合において、クラウドサービスを組み合わせてシステムを構築する場面が増えました。もちろんインフラから何から全てクラウドで解決する場合もありますし、オンプレミスだけれども、あるサービスはクラウドサービスにAPIを投げて結果を受け取るような仕組みもあります。何しろ全てオンプレミスで閉じて、というのはなかなか決心しないと作れません。クラウドサービスと言ってもインフラ(Iaas)、プラットフォーム(PaaS)、ソフトウェア(SaaS)など、いろいろな種類に分かれますがひっくるめてクラウドです。
そして、クラウドサービスは、今回のように事業者の都合で終了するのです。例えば、Microsoftは、2018年12月11日、Azure Container Service (ACS)の終了を宣言しました。
Microsoftは米国時間12月5日、コンテナの配備や維持管理を行うサービスである「Azure Container Service」(ACS)のサポートを2020年1月31日をもって終了すると発表した。なおACSは、2017年に導入された「Azure Kubernetes Service」(AKS)によって置き換えられる。
コンテナが次世代ランタイムだ、と意気込んで構築し納品したサービスがACS上で動いていたら、利用者はどう思うでしょう。初期構築費用を支払って構築したシステムがクラウドサービス事業者の都合で動かなくなるのです。ACSから後継のAKSへの移行は誰がやってくれるのでしょう。明らかにベンダー保守の範囲を超えます。
このように、クラウドサービスは常にベンダー側の理由で終了の可能性をはらんでいて、その場合どうするかも踏まえて運用設計をしなければいけないということを主張しておきたいと思います。
クラウドサービス選択のポイント
ここからは、私の経験からクラウドサービス選択のポイントを挙げていきます。
クラウドサービス事業会社の財務健全性や事業ビジョンのチェック
クラウドサービスを運用するためにはキャッシュフローが必要です。IaaSの場合はデータセンターやインターネット、サーバー機材など設備投資型のビジネスです。PaaSやSaaSは開発保守コストや、インフラの運用コストが必要です。
採算性が取れないとじわじわ資産を食いつぶしていく逆ストックビジネスになってしまいます。ビジネスですのでサービス停止も選択肢の一つです。
まずはクラウドサービス事業者の財務諸表や帝国データバンクの信用調査などを利用して、財務健全性を確かめるべきだと思います。
また、今回のIDCFのように、「個人向けをやめる!」という事業ビジョンの変更のように、利用クラウドサービスからの急な撤退がありえないかどうか、親会社も含めクラウドサービスの継続性を判断する必要があります。2018年もたくさんのサービス(特にSaaS)が終了となっているのを知っています。
AWSやAzure、Googleなどの大手が選ばれやすいのは、このあたりのチェックが不要であるからとも言えます。
IaaS(インフラ)を重視する
最近はOSにソフトウェアを実装して実現できることを、PaaSやSaaSで手軽に実装することが流行っています。もちろん、実装の速さは特筆ものなのですが、OS側で実装することが簡単なのであればそうするべきだと考えています。
例えば5年使う予定のシステムであるとして、5年間必ずPaaSやSaaSの仕様が変わらず安定的にサービスするかは保証がありません。OSの上に実装できるのであれば、何も触らなければ確実に5年間動き続けます。ソフトウェアの保守体制等が変わる可能性もありますが、システム自体は安定します。これはオンプレミスの考え方です。
もし、PaaSやSaaSを採用するのでしたら、バージョンや仕様の変化にどう対応するかを担保することが非常に大事です。
先進的な技術ほどすぐに変わる、できるだけ後ろからついていく
私もインフラに近い部分だけ見ても、Kubernetesからさかのぼって、Cloud FoundryやOpen Stack、Cloud Stack・・などなどいろんな技術トレンドの移り変わりを見てきましたが仕様が目まぐるしく変わります。
いろいろと逡巡して、結局は、普通に仮想マシン(EC2やVMwareなど)で構築したほうがよっぽど楽・・、というケースも十分にあります。
Kubernetesぐらい全てのクラウドベンダーが支持しているのであれば互換性は保たれていくとは思うのですが・・これすら一寸先はわかりません。
もちろん先進的な技術を無視してはいけませんので勉強やトライは欠かせません。しかし本番構築には慎重に慎重を重ね、人の後ろをついていくぐらいの気持ちで私はちょうどいいと思っています。
万が一、サービスが終了した時の可能性を書き留めておく
構築時に、利用しているクラウドサービスの一覧をまとめ、もし仮にサービス終了となった場合の対応策を書き留めておくことが重要です。
書きづらいと思ったサービスは要注意です。
他の環境へ移行できるかという概念は、ポータビリティーとも呼ばれますが、これが低いサービスを使うと大変な目にあう可能性が高くなります。
まとめ
と言うことで、クラウドサービスによって初期構築の生産性が抜本的に向上した分、長期運用の継続性が低下するリスクに見舞われていると思います。クラウドサービスを利用する際には、できるだけ終了の可能性がないサービスを利用すること。また、万が一無くなったときの移行方法を前もって想定することが重要ではないかと考えます。