東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長が11日のNHK「日曜討論」で、五輪が首都圏1都3県などで無観客開催となった経緯に関して、小池百合子都知事の「決断」が大きな流れをつくったとの認識を示した。大会運営収支の赤字は必至。財政負担を巡り早くも国と都がつばぜり合いを演じる様相を呈している。
無観客開催は8日夜の5者協議で決まったとアナウンスされているが、協議の過程はいまひとつ見えず、注目が集まった武藤氏の出演。緊急事態宣言について議論された番組前半で武藤氏は、五輪開幕が迫る中での発令決定の受け止めを聞かれたが「それを踏まえ、小池知事は東京都では完全無観客にすると決定された」といきなり無観客開催に言及。
五輪がテーマとなったのは中盤。武藤氏は収容定員の50%以下か上限5000人のいずれか小さい方とする国による宣言下の観客制限に触れ「五輪もこれに従うのが一つの合理的対処という意見を持ってやってきた」と無念さをにじませた上で小池氏の「決断」を強調。「そうなると近郊3県も同じ判断にならざるを得ないというのが3知事の判断」と、小池氏の意向が1都3県無観客開催の流れを決定付けたとした。
収支に関しては「チケット収入は900億円を想定していたが、ほんの何十億円程度に激減する」と指摘。「収支が整わないのは間違いない。大会後、どう処理するか重い課題について協議する必要がある」と述べた。
元財務省事務次官で収支合わせは最大の課題。「重い」というのは新たな税金投入を意味するためとみられ、今後は補填(ほてん)の在り方が大きな焦点。小池氏はこれまで「政府を含めた協議」の必要性を強調。新型コロナウイルス対応で都財政は火の車で国の支援を当て込んでいる。
同番組に出演した加藤勝信官房長官は、立候補ファイルに(1)都が補填(2)無理な場合は最終的に国が補填――と書かれた原則論に触れて小池都政をけん制。菅政権は「都の財政規模、自ら招致した経緯を踏まえれば、都が補填できない事態は想定できない。無観客を決めたのも都」とのスタンスで、協議にも否定的。政府・与党は今後、無観客に至る“小池主導カード”を効果的に使っていきそうだ。
《「ワクチンパスポート」26日から受け付け開始》加藤官房長官は同番組で、新型コロナウイルスワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」について、26日から市区町村の窓口で申請受け付けを開始すると明らかにした。対象者は「日本から海外渡航する際、入国時に防疫措置の緩和を必要とする人」と述べた。