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この作品「黒の姫君」は「モンスターハンターライダーズ」「MHR」等のタグがつけられた作品です。
黒の姫君/影光(カゲミツ)の小説

黒の姫君

1,782 文字(読了目安: 4分)

モンスターハンターライダーズのIF。
ラマーシュに黒の記憶石を埋め込まれ、光さえも射さぬ地下深くの部屋へ幽閉されたマリィ。
人ならざる姿にされ、絶望に打ちひしがれる少女にさらなる悪夢が襲い掛かる。

死亡ネタがあるので注意
挿絵は
twitter/lig_hnknさんから許可を頂いてお借りしました

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2021年5月24日 16:41
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 ーエルドラ王国跡地 遺跡中央部 黒の使徒本拠地ー

 漆黒の瘴気に包まれた遺跡の地下で2人の男女が相対していた。
「ネロ様、私の手のものから特派観測隊に関する新たな情報がありましたので報告に参りました」
 女が跪き、男を見上げて沈んだ声で淡々と話す。その瞳には一切の光がなく、果てしない闇が広がっていた。

 彼女は幻雷のルーナ。セレルカの首長ユーリの姉であり、かつて黒の使徒の傘下となったアンヘルに奪われた故郷と弟を取り戻すために仲間を集めて戦い、そして敗れた・・・
ネロの手によって小さな胸に埋め込まれた黒の記憶石に心を蝕まれ、憎むべき仇敵であるはずの彼に忠誠を誓い跪くその姿には、もはや大切なものを取り戻すために仲間たちと共に戦ったかつての彼女の面影は既になかった…


 玉座に座りながらルーナからの報告に耳を傾けるネロ。彼女からの報告は以下の通りであった。

・特派観測隊の指揮官の手によってラマーシュが処断され、その遺骸は儘滅されたこと。
・特派観測隊との激戦の末にイサイとエスメラルダが戦死し、また特派観測隊の隊員であるシノとハルシオン、フレデリカも戦場の露と消えたこと。
・ベルガーが黒の使徒を離反し特派観測隊についたこと。
・特派観測隊の指揮官を将軍とした大陸中のライダーによる大規模な討伐軍が編成されつつあること。

 これらの報告をネロは一切の姿勢を変えずに聞く。兜に素顔を隠した彼が仲間の死や裏切りに何を思うのか?それを知ることはできない。
「どうやら、決戦の時は近いようだな」
 玉座から立ち上がり、臣下を見下ろしながら呟く。
「ネロ様、僭越ながら私に考えがあります」
「言ってみろ」
 ルーナが一礼し、策を献ずる。
「私とキリンで特派観測隊の指揮官を討ち取って参りましょう。幸い私は彼の者と面識があります。彼さえ討ち取ってしまえば討伐軍は瓦解し、もう二度とネロ様に逆らう者が現われることはないでしょう」
 邪気の混ざった薄ら笑いが浮かべながら、感情の消えた声で淡々と策を述べる。
「ルーナよ」
「はい」
「その策は無用だ。我が反逆者に望むのは真の絶望と沈黙、決してあらがえぬ力の差を見せつけ、すべてを平伏させるのだ」
「承知いたしました、差し出た真似をお許しください」
 ルーナがネロに平伏し、しばらくしてキリンと共に黒王の玉座の間から退室する。

 再び玉座に座り、ラクアの絆原石の祠で相まみえた特派観測隊の指揮官の顔を思い浮かべる。
残酷な運命に翻弄されながらも、決して消えることのない意志を宿した瞳。
ラマーシュでさえも折ることができなかった強靭な心。
そしてなにより、かつてこの大陸で引き起こした大厄災を終焉に導いた仇敵ノア・レイナードを彷彿とさせる出で立ち・・・

 ー忌々しい!ー

 怒りがこみ上げ、たまらず玉座のひじ掛けを乱暴に殴る。
「まあよい、我の相手をするには強き者でなくてはならん。それに強き者であるほど壊しがいがある」
 そう呟くとネロはおもむろに隣の部屋の方向に顔を向ける。
「ラマーシュよ、そなたの遺した最後の『絆』、思う存分に使わせてもらうぞ」

 ネロが見据える扉の先。すべてを拒絶するかのように重く、固く閉ざされた黒い扉の先には黒炎王の鎧を身に纏い、床に両膝を付き、黒の記憶石にその身を蝕まれ、光の消えた目で静かに涙を流す少女の姿があった。


―――お願い・・・誰か私を殺して…

 外界と完全に隔絶された部屋の中で、かつてマリィであった少女はただただ涙を流し、自らの死を願う。
 小さいころから姉として慕っていたヒルダに裏切られ、傷つけられ、黒の記憶石を埋め込まれ、そしてネロによって決して光の射さない部屋に幽閉された。
 自分の半身であるリオレウスは同じ部屋で骸と化し、部屋を閉ざす重く冷たい扉は自らの力では開くことすら叶わない。
 そして扉の先から聞こえてきたネロとルーナの会話。
大切な相棒と信じていた者がヒルダを殺し、戦友であったハルシオンとシノとフレデリカも既にこの世にいないという残酷な報せは、絶望と悲しみに飲み込まれていた少女の心をさらなる絶望へと引きずり込み、破壊していくのであった...
 

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