Dr.イワケンの「感染症のリアル」
医療・健康・介護のコラム
新型コロナ「反ワクチン本」は「言論の自由」なのか
人の健康や生命を脅かす
多くの人はそういう「規制」を「表現の自由を奪っている」と反論することでしょう。しかし、事故を起こすような欠陥自動車を販売する「自由」が自動車メーカーや販売店にはないように、事実に反して人の健康や生命を脅かすアンチバクサーな書物を販売する「自由」は関係諸氏にはないんじゃないでしょうか。
ま、とはいえ。自由と規制のバランスはいつだってとるのが難しい。科学の世界にも決着がついていない問題は多々ありますし、「間違いなのか、新説なのか、判然としない」といったグレーゾーンもあります。現時点での学術界の常識から外れた見解を全て「非科学的」と否定してしまえば、むしろ学問の進歩が妨げられたりしかねません。
そこで、提案したいのが、「一方的な禁止」処分に変わる、「有害図書」のような指定です。
日本では一般的に、わいせつな内容で青少年の健全な育成を妨げるような雑誌や漫画を指していると思います。でも、ぼくは性教育をときどきやるのですが、「わいせつな」コンテンツが青少年の健全な育成を脅かした、という科学的エビデンスはありません。つまり、本当に(青少年にとって)有害かどうかは科学的には、はっきりしないのですが、一部の大人の価値観や気分によって、「それは有害だ」と指定されているのです。
一方、反ワクチンなコンテンツは、明らかに人の健康や生命を脅かします。どうせ指定するなら、こっちを先にするのが妥当な判断というものでしょう。
だから、国や自治体はこういう反ワクチンな本を指定して、一般の人達が読む時に注意するよう、働きかけたらよいとぼくは思います。
アマゾン社も「ベストセラー」「感染症」といったカテゴリーでこうした反ワクチンなコンテンツを売るのではなく、「陰謀論」「フェイク」「トンデモ」といったカテゴリーに指定したらよいでしょう。これで、「表現の自由」と「規制」のバランスはとれるはずです。(岩田健太郎 感染症内科医)
参考 Hotez P. COVID vaccines: time to confront anti-vax aggression. Nature. 2021 Apr 27;592(7856):661–661.
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