一刻も早いワクチン接種を求めて全国の大規模接種会場では行列ができている(時事通信フォト)

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「とにかくワクチン接種を」と国は大号令をかけている。だが、その裏では「350人超」という少なくない数の人が、副反応の疑いで亡くなっている現実を、新聞もテレビもほとんど報じない。

【写真】病名:心肺停止状態、症状:意識障害 などが、点や跳ねが繋がった大きさバラバラの文字で書かれた寛二さんの入院診療計画書。他、絵画の前に立つ寛二さん(生前)も

「夜ご飯のときに『おいしい』と言ってくれたのが、私に向けた最後の言葉になってしまいました……」

 神奈川県川崎市在住の小倉寛二さん(仮名)が、モデルナ社製のワクチンを接種した翌日の夜に急死した。71才だった。

 6月10日に亡くなり、まだ悲しみの淵から抜け出せない中、寛二さんの妻(66才)が亡くなった日のことを語る。

「20時半頃のことでした。いつもは寝る前に焼酎のウーロン茶割を1杯飲むんですけど、あの日は3口ほど飲んだだけで、あとは残していました。それから布団を敷いて、『トイレに行ってくるわ』と言ったきり、ちっとも戻ってこない。どうしたのかなと思って様子を見に行ったんです」

 妻がトイレに向かうと、そこには仰向けで倒れている寛二さんがいた。

「苦しそうな様子などはなく、最初は寝てるのかと思って“こんなところで寝たら風邪ひくよ”って声をかけたけど反応がなくて。よく見てみたら口から泡を吹いていたんです。

 慌てて救急車を呼び、“寛二さん! 寛二さん!”って必死に叫び続けました。起きると信じて“こんなところで寝たらだめだよ!”と呼びかけたけど、反応はなく、このまま寛二さんがいなくなるんじゃないかと思うと怖くて……」

 ほどなくして救急車が到着したが、寛二さんはすでに心肺停止の状態。心臓マッサージやAEDによる救命処置が施され、搬送先の病院でも手を尽くされたが、息を吹き返すことはなかった。

 突然の夫の死に対し、悲しみ以外にも、別の感情が湧いているという。

「それまで生活習慣病の薬はのんでいたけど、死ぬような状況じゃ全然なかった。それが、ワクチンを打った翌日に突然こうなった。ワクチンしかないと思うんですよ」

 妻の証言をもとに、接種した日から死の直前までを振り返る。寛二さんと妻が夫婦揃って川崎市内の大規模接種会場「NEC玉川ルネッサンスシティホール」を訪れたのは、亡くなった日の前日、6月9日午後2時頃のことだった。

「広い会場にいくつも接種ブースができていて、密になることもなくスムーズにワクチンを打ってもらえました。ただ、夫はすぐに腕が痛くなったようで、15分間の待機時間の間、ずっと『腕が痛いわ』と言っていました。私もちょっと痛みを感じたので、ふたりして『痛いなぁ』と言いながら家に帰ってきたんです」

 モデルナ社製ワクチンを接種した後に腕に痛みが出ることは「モデルナ・アーム」と呼ばれ、よく起こる副反応として世界中で報告されている。

 翌朝、妻の腕の痛みは治まっていたが、寛二さんは腕が上がらないほど痛みが増していた。とはいうものの、腕の痛み以外は体調に大きな変化はなく、ふたりは夕食の時間を迎える。

「夫は、食欲もありました。『里芋の煮っころがしが食べたい』と言うので、アジの開きと一緒に食卓に並べました。仕事を引退してから食事量は少なくなっていましたが、あの夕飯では『おいしい、おいしい』と言ってアジを2匹も食べていました」

 寛二さんは、3年前に仕事を引退するまで、大工として朝早くから夜遅くまで働きづめの毎日だった。川崎市内の2DKのアパートで過ごす、夫婦ふたりのゆっくりとしたリタイア生活は、3年間で突然幕を閉じる。

「夫は本当に優しい人で、周りから羨ましがられるほどでした。スーパーに買い物に行くのも、どこに行くのも一緒。本当に幸せな毎日でした。藤井聡太くんのブームに乗っかって、将棋を久しぶりに指し始め、『ゲームで200連勝した』と言って大喜びしていました。やっと趣味に時間を使うことができ、楽しんでいるなと思っていたんです」

 ワクチン接種に関しての抵抗はなかったと妻は振り返る。

「家族や周りに迷惑をかけないように、昨年から外出を控えていましたし、『早くワクチンを接種したいね』と、接種券が届くのを心待ちにしていました。だから接種券が届くと、すぐにふたりで同じ日に予約したんです。まさかこんなことになるなら打たなければよかった……」

厚労省の報告書に載っていない

 病院で死亡が確認された後、寛二さんの遺体は近くの警察署へとすぐに送られた。

「事件性はないけれども、コロナワクチンとの関連を調べたいということで、寛二さんの遺体は警察の検案に回されました」

 検案の結果、死因は心筋梗塞による突然死で、コロナワクチンの副反応とは無関係だと断定された。だが、それは遺族にとって受け入れがたいものだった。寛二さんの息子が話を継ぐ。

「父は高血圧や尿酸値を下げる薬はのんでいましたが、突然死するような状態ではありませんでした。むしろ、2か月ごとに律儀に通院して、薬を処方してもらい続け、健康を保っていたという認識です。毎年きちんと健康診断を受け、大病やけがもありませんでした。だから、どうしても父の死がワクチンと無関係だとは思えないんです」

 ワクチン接種後に副反応の疑いで亡くなった人がいる場合、発生を知った医療機関は、厚労省に報告するルールになっている。

 6月23日に開かれた厚労省の専門部会によれば、ワクチンの副反応の疑いがある死亡例は計355人(うち、ファイザー社製が354人、モデルナ社製が1人)。その報告書には、年齢、性別、接種日、接種回数、基礎疾患、そして接種から死亡までの詳細が記されている。モデルナ接種後に副反応の疑いで死亡した男性の報告もされているが、今回の寛二さんの死は、その報告書に書かれていない。つまり、本当はワクチン接種と関連性がないとは言い切れない翌日の急死にもかかわらず、報告書から漏れている死があるということである。

 寛二さんが搬送されて死亡が確認された病院に問い合わせると、以下の回答があった。

「そうした事実があるかないかも含めて、個人情報の観点からお答えできません」

 一方、接種可能の判断をした、かかりつけ医に遺族が経緯を問い合わせたところ、こう明かした。

「6月10日に亡くなられたと聞いて驚いております。約1年間担当しましたが、高血圧と尿酸値がやや高いけれども、5月に採血したときは、何も問題ありませんでした。心臓についても、過去に不調を訴えたり、私の方からカテーテルをすすめるようなこともなく、直近の心電図にも問題なかったですね」

 高血圧などの基礎疾患が、心筋梗塞またはワクチン接種の副反応に、影響を及ぼした可能性はあるのだろうか。クリニック徳院長の高橋徳さんはこう分析する。

「高血圧や糖尿病の人は心筋梗塞が出やすいです。また、ワクチンが血栓症を引き起こすリスクがあるといわれていますが、その場合、高血圧だと、より血栓ができやすい。そしてその血栓が心筋梗塞を誘発するのです」

「わかるところのご案内もできかねます」

 納得できない寛二さんの遺族は、厚労省にも説明を求めたが、その対応は曖昧なものだったという。

「厚労省のコールセンターには何度も連絡しました。国はワクチン接種で副反応が出たり、亡くなったりしたときのために、『予防接種健康被害救済制度』を定めています。でも、父の件について何度問い合わせても、明確な返答はまったくいただけません」(息子)

 予防接種健康被害救済制度とは、予防接種によって後遺症が残ったり死亡したりした場合、既定の額の給付を行う制度で、新型コロナワクチンに関しても適用される。死亡の場合、4420万円が各自治体から支払われることになっている。

 だが、寛二さんは検案で「副反応とは無関係」と断定されたため、このままでは救済を受けることができない可能性が高い。

「市の健康福祉局のかたとも話しました。『死亡診断書が出たら申請できます』と言われたのですが、『ワクチンとの因果関係の判断基準は市区町村ではわからない』とのことでした」(息子)

 そこで、遺族は再び厚労省のコールセンターに連絡を取って判断基準について聞いたが、「こちらではわかりかねます」との答え。そこで、「では、わかる部署を教えてもらえますか」と聞くと、「わかるところのご案内もできかねます」との対応しかされず、その後も何を聞いても、機械のように同じ答えしか返ってこなかったという。

 寛二さんの家族には不信感がいまも残る。

「2週間たって警察から戻ってきた夫の遺体は、もう一度しっかりと警察とは別の機関に調査してもらおうと思っています。そのため火葬はせず、いま葬儀業者に預かってもらっています。先日、夫の遺体に会いに行ったのですが、とても顔が白くなっていました。その顔を見て、“えらい男前やね”って声をかけてあげたんですが、それ以外は胸がいっぱいであまり覚えていません」

 調査が終わって、火葬した後は、生前に寛二さんが話していた願いを叶えようと考えている。

「お墓は生まれ育った奈良にあって、夫は『そこに入りたい』と言っていたから、そうしてあげたいですね。早く連れて行ってあげたいとも思うのですが、遺族として死の真相を明らかにしたいという思いもあるので複雑です」

 ワクチン接種後の突然の死。遺族は悲しみとともに、ひとつのことを決めた。

「2回目の接種が私には残っていますが、打ちません。打てないでしょう。寛二さんの兄弟も打つ予定だったのにやめたようです」

 ワクチン接種が推奨され続ける一方で、接種後の突然死がないがしろにされている。

※女性セブン2021年7月15日号