「黒の組織」っていったい何だ?!
『名探偵コナン 純黒の悪夢』(C)2016青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
「名探偵コナン」シリーズに登場する謎の組織「黒の組織」。漫画もアニメーションも長く続いていますが、その全貌はまだ明らかになっていません。「黒の組織」という呼称も構成員がみな黒い服を着ていることからコナンたちがそう呼んでいるだけで、正式名称ではありません。それすらいまだに不明なのです。
分かっているのは、非常に規模の大きな犯罪組織であること、拠点は日本だけでなく世界各国にあること、APTX4869という薬剤を独自に開発したこと、その薬は何らかの巨大プロジェクトの一部であること、構成員は酒の名前のコードネームを与えられていること……本稿ではコードネームが判明している者を中心に、黒の組織のメンバーについて解説していきます。
「黒の組織」のメンバー1:ボス / あの方
© 2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
「ボス」あるいは「あの方」とだけ呼ばれる、黒の組織の頂点。ベルモットによって「慎重居士な性格」であり「石橋をたたきすぎて壊しちゃうタイプ」と明かされていますが、声も姿もシルエットですら明らかにはなっていません。
コナンが意識をなくした振りをしてベルモットの車に同乗した際、彼女が携帯電話からメールを送信したプッシュ音が童謡の「七つの子」のメロディに聞こえたことから、メールアドレスが「#969#6261」だと割り出しています。
「名探偵コナン・ワールド」
この人物については、灰原哀が言うには「ただでさえ信じ難い人物が浮かび上がって来るかもしれない」、また組織の一員で高齢のピスコが言うには「長年仕えた」、バーボンが探ったところによるとベルモットと重大な関係がある……このような断片的な情報しかないのが現状。
2017年に原作者である青山剛昌から「あの方」の正体である人物の名が明かされましたが、作中ではまだ誰もその事実には辿りついていません。さて、青山氏の発言は事実なのでしょうか、フェイクなのでしょうか。
「黒の組織」のメンバー2:ラム
© 2013青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
黒の組織のNo.2で、「あの方」の側近。この人物も正体が定かではなく、組織のメンバーですら「屈強な大男」だという者、「女のような男」だという者、「年老いた老人」だという者などがいて証言がまちまちな上に、「それらがすべて影武者」だという者さえいます。
過去に何らかの事故で怪我をして、左右どちらかの目が義眼になっているらしく、その情報により隻眼であると考えられていましたが、その情報も正しいのかどうか分かりません。この情報が作中に表れた頃、ちょうど隻眼の人物が新しく登場していて怪しいのですが、その怪しさもミスリードかもしれません。
『名探偵コナン 純黒の悪夢』
映画『名探偵コナン純黒の悪夢』でははじめて声のみ登場。しかしこの声は変声機のようなもので加工された声で、男性の声か女性の声かすら判別できないものでした。姿はシルエットさえ見られないのは原作やTVシリーズと同様です。
『純黒の悪夢』では自らの片腕としてキュラソーを使い、NOC(Non Official Cover…組織の者として潜入している他組織の者)を洗い出すよう指示していました。キールとバーボンがNOCではないかと疑っていたのです。この疑いはコナンの機転で晴らされ、2人は間一髪処刑を免れたのでした。
「黒の組織」のメンバー3:ジン
「名探偵コナン エピソード”ONE”小さくなった名探偵」(c)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2016
「名探偵コナン」のストーリーがはじまり、現在も続く理由がジンです。トロピカルランドに遊びに行った新一が、ジンとウォッカが闇取引をしている現場を目撃。その口封じのためにジンは新一に毒薬を飲ませます。その薬がAPTX4869、本来毒薬のはずが体質の加減か、身体が幼児化してしまう者がときどき現れるという薬です。
ジン自身は毒薬として飲ませたつもりでいますから、工藤新一=江戸川コナンということを知りません。ストーリー中で時折、事実に気づきそうになり鋭くそこを突いてはいきますが、この点については不運なのか、いつもうまくはぐらかされてしまいます。
『漆黒の追跡者』-(C)2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
黒の組織では幹部クラスで、実行部隊のリーダーと言えます。「あの方」との距離も近く、直接連絡を取り合うこともあります。冷酷非情、仲間や無関係な者さえ組織に仇なすと見れば殺すことに躊躇がありません。組織と「あの方」に対する忠誠心は高く、命令があればどんなことも忠実に行います。
FBIからは「ジンを押さえれば一気にボスに辿りつける」と言われ、「あの方」が「Silver Bullet」と呼ぶ赤井秀一とは因縁がある様子。赤井を嫌っていますが、彼と同じ左利きです。愛車はポルシェ356A、ときどき詩的なことを呟きます。
「ジン」という酒は大麦やじゃがいもなどを原料とした蒸留酒です。ジュニパーベリーの上に流して香り付けをしているのが特徴です。ジュニパーベリーというのはセイヨウネズという植物の球果。球果とは松で言えば松ぼっくりみたいなものです。ジンはカクテルの材料として特に多く使われています。
「黒の組織」のメンバー4:ベルモット
© 2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
金髪碧眼の美女で、表の顔はハリウッド女優のクリス・ヴィンヤード。「あの方」と近しく、メールのやりとりもあります。「千の顔を持つ魔女」の異名をほしいままにする変装の名人で、さまざまな人物になりすましてコナンらを探ったり見張ったり、欺いたりします。
正体はクリスの母親でハリウッドのアカデミー賞女優・シャロン・ヴィンヤード。FBIのジョディ・スターリングは幼い頃に父をシャロンに殺害されています。その事件の年代から考えれば少なくとも40代を過ぎているはずですが、クリス・ヴィンヤードとして生きる現在、肉体年齢はクリスの年齢のもの。つまり20年以上前から年を取っていないのです。
正体はシャロンでありながらシャロンの葬儀は既に済ませ、現在はクリスとして生きています。コナン=新一の母で女優の工藤有希子とは懇意で、日本人の師の許でとも変装術を学んだこともあり、そのためか日本語は堪能です。
© 2011 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
過去にニューヨークを訪れていた新一に助けられたことがあり、それ以来新一=コナンを「Cool Guy」、蘭を「Angel」と呼んで、組織の手が彼らにまで届かないように配慮する風が見られます。「A secret makes a woman woman.」(女は秘密を着飾って美しくなる)を信条としているだけに秘密が多い存在。
「あの方」のお気に入りであり、ジンにも一目置かれる存在ですが、独善的な部分があり、また徹底的な秘密主義のため、同じ組織の中にありながら警戒されることも多いようです。組織内の者を見下した態度を取ることもしばしば。しかしラムには敬語を使いますから、このことからもラムがどれだけの実力者かが推し量られます。
「ベルモット」という酒は白ワインを主体にハーブやスパイスを配合してつくられるフレーバードワインです。食前酒などに用いられるほか、カクテルの材料として、また料理酒として使われます。イタリア生まれのスイート・ベルモットとフランス生まれのドライ・ベルモットがあります。
「黒の組織」のメンバー:ウォッカ
© 2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
ジンと常に行動をともにする体格がいい男性です。ジンを「兄貴」と呼んで慕います。少々注意力に欠けたところがあり、それがもとで失敗することもあり、たびたびジンに叱られています。この様子を見ると下っ端のように見えるのですが、ジンやベルモットとともに行動できる幹部の立場にあります。
銃器や自動車、ヘリコプターなどを扱う技術に長け、ジンの行動に必要なことは大抵こなしてしまいます。「殺した人間の顔と名前なんかいちいち覚えていられない」と言うジンの代わりに憶えていることも多々。
© 2011 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
仲間に対しては情が篤い面があるようで、『純黒の悪夢』ではキールとバーボンの処刑を命じられた際に「昔のよしみ」などと言って殺害を回避する素振りを見せました。ジンほども非情にはなりきれないようです。怜悧冷徹冷酷のジンと対照的と言えるうっかりした部分や情がある側面から、敵役といえどもまったくは憎めない人物です。
「ウォッカ」はアルコール度数が高いことで有名な酒。「ウォトカ」や「ウォツカ」、「ウオッカ」などと表記されることもありますが、「ヴォトカ」と発音するのが原語に近いようです。「ウォッカ」は日本語の慣例的な読み方。ジンと同様、大麦、小麦、じゃがいもなどを原料とした蒸留酒です。
「黒の組織」のメンバー6:キャンティ
© 2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会