・【映像】日本はスパイ天国? なぜ"スパイ防止法"がないのか
今年1月、元社員は不正競争防止法違反の疑いで逮捕され、当局はカリニン氏に出頭要請をするも、本人は外交特権を盾に拒否。翌月、多くの報道陣を尻目に堂々と帰国。東京地検は今月2日、「出国済みで再入国の見込みがない」として同氏を不起訴処分にした。「彼が情報を持ってカメラの前の通りながら帰っていった。誰も止めない、止められない。日本にはスパイ防止法みたいなものがない。もう完全にスパイ天国というのは確かだと思う」(山田氏)。
「2月には三菱電機がサイバー攻撃を受け、自衛隊が使用するレーダー技術の情報を盗まれた。10年前から日本企業を狙っていた中国の政府系ハッカーによるものと考えられるので、実際は以前から攻撃を受け、情報を盗まれていたのではないか。人事情報だけが盗まれたとしているが、中国は技術力のある人も欲しがっているので、“機密情報は盗まれていないから大丈夫だった”という話ではない。情報を盗まれ続けて倒産したあるカナダ企業の場合、最終的には20~30人の有能な社員がHUAWEIに迎え入れられている。僕が聞いたケースでは、新卒採用で入ってきた日本人が実はスパイで、辞める時に情報を持っていかれたというパターンもある。そのようにして、相手国の経済を支えるような企業の技術力を盗んで力を削ぎ、自らが優位に立つ、ということが行われている。アメリカが怒っているのも、そのような実態があるからだ」。
イギリスの諜報機関・MI6に7年前まで所属、日本でも活動した経験を持つという男性は「もしイギリス国内でソフトバンク事件のようなことが起きたとしたら、スパイを国外に逃がすことなど絶対にありえないし、殺害する権限もある。そして、そうなったとしてもニュースになることはない」と話す。また、中国のスパイを監視する任務にあたっていた経験から、「いま最も警戒すべきは中国だ。私が東京、大阪で活動していた時、日本企業の技術情報を盗む中国のスパイを数多く確認した」と話した。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「1985年にスパイ防止法案が廃案になってしまったのは、国家の管理が強過ぎるのは良くないとメディアや日弁連などが反対したという背景がある。やはり戦前の特高警察などへの反省があるのだろう。だから特定秘密保護法にも反対意見が根強かった。ただ、スパイが跳梁跋扈しても大丈夫だったのは、アメリカの核の傘の下、自ら安全保障をやらなくても良かったからだ。軍事はアメリカにお任せして、経済だけやっておけばいいという、ある種の呑気さみたいなものが背景にあったと思う」と指摘する。
さらに前出の元MI6職員の男性は「日本で中国のスパイを見たことはあるが、中国で日本のスパイを見たことはない。監視も徹底しているので、スパイなら誰もが無力感を覚える。中国は今後も、日本の技術を盗みどんどん大きくなる」と警告している。実際、中国での日本人拘束は急増しており、スパイ容疑で逮捕された日本人が刑期満了で釈放され、今月2日に帰国していたことも明らかになっている。中国側は容疑の事実などを正式に公表してはいないが、“日本の公安調査庁の協力者だ”として懲役5年の実刑判決を下した。日本政府は公安の協力者であることを否定したが、判決が覆ることはなかった。
江藤氏は「即時解放された人は中国側にとって何の役にも立たなかった人だ。逆に言えば捕まえられた人というのは役に立つ人だし、むしろ工作員として仕込まれて帰ってくるケースもある。例えば香港で捕まった弁護士が、2年後にはほとんど洗脳状態だったということもあった。そういう人については、日本の公安も視察対象としてずっと見ていくだろう」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)