昨秋の埼玉大会を優勝した昌平が、9日開幕の夏の県大会を前に4日、投手として巨人、エンゼルス、メッツなどで活躍した高橋尚成氏(46)を埼玉・杉戸町の同校に招いて投手陣を中心に指導を受けた。
黒坂洋介監督(46)とは、駒大の同期という間柄。2月に学生野球資格を回復した高橋氏が米国から一時帰国したことで、“一日コーチ”が実現した。「自分が熱く語ることで、何かを感じてもらえれば」と真剣勝負で高校球児の初指導に臨んだ同氏は、約3時間に渡ってジェスチャーをまじえながらフォーム修正のアドバイスを行った。その様子を見守っていた黒坂監督は「教わっている時、選手の目が輝いていた。いい経験をさせてもらいました」と話した。
昌平は、高校通算55発の吉野創士外野手(3年)を中心とした強力打線が売り。黒坂監督が「課題が投手陣にあるのは、はっきりしている」と言うチームだけに、この日の指導に寄せる期待は大きかった。高橋氏が繰り返したのは「まずストライクを投げること」。春季埼玉大会準決勝の浦和学院戦では、1回表に6点を先取しながら、繰り出した3投手が11四球を与えて自滅し、延長10回で9―10とサヨナラ負けを喫している。
ブルペンで課されたのは、5球交代でマウンドに立ち、3球以上のストライクを取る練習。最初のうちは、緊張もあってか制球に苦労する場面も見られたが、エースの田村廉投手(3年)は「力強さより質のいい球の方が打ちづらいし、投手も楽な気持ちで投げられると教わり、入るようになりました」。奮起を求められている投手陣にとって、貴重な学びの時間となった。
昌平(当時・東和大昌平)のOBで駒大を経て社会人野球のシダックスに進み、故・野村克也監督から“ノムラの考え”を授かった黒坂監督は、自主性を重んじ、考える野球を実践している。高橋氏も「考えることが大事。野球脳(のレベル)を、もっと上げてほしい」と選手に語りかけた。大会直前に導入された“ヒサノリの教え”が、初の甲子園出場を目指す昌平にどのような進化をもたらすか注目したい。