HOWL GUITARS

Selmer 1959年製 The Stadium TV19T ex-XTC

テーマ: Amplifier
ナマステー

HOWL GUITARSのhiroggyです。

前ブログに続きイントロ文で、インド一人旅の中で起きた事などを面白おかしく文章に表してみようと思います。旅の供に持って行った小説が村上春樹氏の小説だったので、ちょっとハルキノベル風旅行記にトライしています(笑)

いよいよ、インド入国編。

楽器説明文と写真だけ見たい人はサーとスクロールダウンしちゃって下さいヾ( ´ー`)


インド旅行記 (4)「ボンベイサヴァイヴァー」

アブダビからアラビア海を東に飛び越え、いざインド大陸へ。最終目的地はゴア空港だがムンバイでもう一度トランジットをしなければならない。僕は飛行機が着陸するときのタイヤがバウンドする振動で目をさました。ここまでの飛行時間はかれこれ20時間くらいだろうか。さすがに身体中がむくんでいて口の中が嫌にザラザラする。まるで宿酔いの最低な目覚めの朝のようだ。

バックパックと丸くまとめたブランケットを背負い飛行機を降りムンバイ空港の中のアライヴァルヴィザ専用の入国審査に向かう。ようやくインドに入国だ。次のゴア行き飛行機までの時間は2時間を切っているのでそんなに長くない。しかもムンバイの空港は国際線と国内線で空港建物自体が全く別の場所に分かれており、市内の南に位置する国内線空港ターミナルまでシャトルバスで30分ほどかかる。という重要なことをさっき飛行機の中でガイドブックを読んでて気付いたので、内心ハラハラしている。なるべく早め早めに全てがすすむことを祈った。入国審査官のインド訛りの強い英語の質問に何度も聞き返さなくてはならなかったが、比較的スムーズに入国ヴィザが貰えた。いい感じだ。
しかしイミグレーションゲートを出てすぐに警備員に呼び止められてパスポートチェックをされた。なぜだろう。たった数十秒前に入国したばかりだ。こっちはさっさと先に進みたい。彼はパイプ椅子に深く腰をかけ眠そうな目をこすりながら先ほど押されたヴィザのスタンプを指差してまるで聞き取れない英語でしきりに聞いてくる。
和訳すると「なんたゆう。こら。スランプ。なんことば。シャバに」みたいな感じだろうか。
まさか、入国審査官がミスでもしたか?と不安になったが、5分くらいしてようやく僕の耳が慣れたのだろうか、彼が「スタンプ。日本の言葉」的なことを喋っていることに気付き、ただ単に彼はスタンプを日本語でなんて言うのか知りたいだけだった。改めて彼の顔を見てみると顔が好奇心の塊のようになっている。「ハンコ、スタンプ。わかった?急いでるから行くね」と言ってパスポートを返してもらって僕はその場を去った。
やれやれ。僕は全く忘れていた。インド人は度を越して人懐っこいのだ。悪く言うとしつこい。この時の僕の気分で言うと、おとといきやがれ。

Domestic(国内線)の標識を急足で辿り、一度空港の外に出た。
粗悪なインクで印刷された雑な新聞紙を煮詰めてそれを蒸発させ熱気と埃を混ぜ合わせたような空気が僕の鼻腔をついた。僕は14歳の少年になっていた。僕はこの空気の臭いや体にまとわりつく質感を覚えている。ついにインドに戻ってきたんだ。空気がもつ感傷性と記憶性をしっかりと確かめて、僕はまた歩き出した。まずは国内線ターミナルまで行くシャトルバス乗り場まで行かなければだ。特にバス乗り場らしきものもないので近くの道端にいた清掃員のような女性に尋ねてみると、目の前の道にバスが停まるらしい。あと10分で来ると言う。僕は疑り深い性分なので (なにせここはもうインドだ) 他にも数人に同じことを聞いてみたが、だいたい場所は合っていた。
しかし、10分経ってもバスはなかなか来ない。さらに10分が経過した。もうゴア行きの飛行機搭乗までの時間が1時間くらいにせまってきている。
やれやれ、僕は非常に完全に忘れていた。インドの乗り物は時間どおりに来るなんてことは滅多にないのだ。ちゃきちゃきのイタリア人男性がこれまで口説いた女性の数を答えられないように正確性が低い。いよいよ時間的にタフだな、今すぐタクシー乗り場でタクシーを拾おうか、と思った矢先にシャトルバスが大量の黒い煙を排出しながらやってきた。バスが停まってすかさず乗り込むがしばらく発車しない。時間ギリギリまで乗客を多く乗せるためだ 。ようやくバスが出発する。ブリキのおもちゃが走っているのかと思うくらいにサスペンションはガタガタで座席のクッションなど最初からそんなものは存在しないのではないかと思うほどぺしゃんこだ。車窓から外の道路を見れば無数の黒と黄色のボディカラーのリキシャー(トゥクトゥク)がひっきりなしに耳障りなクラクションを鳴らしている。道はまるで大群のスズメバチが無秩序に歩き回っているような光景だ。オーケー、これは明らかに渋滞だ。しかもヘヴィーコンストラクションなね。
まずいな・・・・ずいまーずいまーマイケルズィマリング。と一部の音楽業界人にしか理解されない駄洒落が頭の中にポッと浮かんできた。

次項に続く→

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それでは本題の楽器紹介へ移ります。

今回ご紹介するエクスタシィなアンプは

Selmer 1959年製 Truvoice The Stadium TV19T ex-XTC [Andy Partridge元所有機]



What a surprise.

XTCのAndy Partridge元所有機のSelmer 1959年製 Truvoice The Stadiumが入荷致しました!



おお神よ、と言ってしまいますね。これは奇跡の入荷です。XTCの大ファンなのでこれ以上嬉しいことってないです。

Andy Partridgeが1970年代中期にXTCの前身バンド、The Helium Kidzとして演奏している時から1998年に前オーナーに譲るまでのXTCのレコーディング&ステージで使用していた実際のアンプになります。つまりXTCの作品の最初から最後のほうまで長年使用されてきたアンディのプライヴェート機材のひとつで、XTCの歴史を共に歩んできたアンプと言えます。



上の写真は1978年(ちょうどセカンドアルバムのGO2時期)のフッテージ画像でステージ中央にこのアンプが写り込んでいます。

Andy Partridge元所有というヴァリューを抜いても、このアンプ自体の価値は非常に高く、世間一般的には初期のBeatles Gearとして知られています。

The Beatlesがロッカーズの服装で、レコードデビューする前の1960年~1961年頃ハンブルグ修行にいったり地元LiverpoolのThe Cavern Clubで演奏している頃に使用されていた一台です。ポールがベースアンプとして使用したり、ジョージとジョンがギターアンプとして使用したりしている写真があり、個人的な推測ですがおそらくバンド内で誰のアンプと決めることなくみんなで使いまわしていたと思われます。

セルマーの歴史などは過去ブログを参照していただいて・・・・

外観の特徴としては59年~61年までのBLOOD&CUSTARD期と呼ばれる赤とオフホワイトのツートーンカヴァリングにTRUVOICEをメインにしたフロントプレートロゴ。この時代に流行していたファッション性を取り入れたカヴァリングです。その後の61年からはBLUEYS期と呼ばれるブルーとグレーのツートーンカヴァリングに変更されます。数あるセルマーアンプカヴァリングの中でも存在個体数があまり多くない時期のアンプです。

チャンネルは3つで、最大3つの楽器がインプットできるように設計されています。トライアングル型にチャンネルインプットが設置されていて、メインが1、サブが2と3となっていて、ギターでもベースでも使用できます。

使用している真空管は EF86 x3、ECC82 x1、ECC83 x1、EL84 x2、EZ81 x1となっていて、トレモロにEF86プリ管を使用している珍しいアンプです。12インチ Goodmans Audiom 60を一発搭載。

偏屈で頑固な英国オヤジソングライターとして有名なAndy Partridgeが使用されて・・・・失礼、長年の使用に伴ってしっかりとモデファイ&メンテナンスされており、搭載されているトランスも非常に興味深いスペックの電源トランスになっています、アンプマニアにはたまらないです。

ハンドル、バックパネルは交換されておりますが、オリジナル度も高い一台です。まあなんといってもXTCのAndy Partridge元所有ってだけでお宝扱いしちゃいますが。

それではお写真で公開です。



アンプ前面のパネル。TRUVOICEのロゴが大きく、Selmerが小さいです。この時期の特徴です。



アンプ側面にスプレーペイントされたXTCの文字。キャビネットグリルにVシェイプのバッジが2つ付いており、これが大体紛失するのですが、珍しく残っています。長年のステージ酷使で外観はみごとに年季がはいってます。



XTC!! これが目にはいらぬか!と声を大にして言いたいです。



コントロール部分です。欠品したノブや交換されたノブもAndyが使用していた時のままです。



トレモロのDepth用つまみは欠品しており、ヴォリュームノブが交換されています。



大きなパイロットランプはセルマーならではですね。



back viewです。バックパネルが交換されています。勝手な想像ですがどこかのリハーサルスタジオの吸音壁をひっぺはがして整形して取り付けたんじゃないでしょうか。



バックパネルを外した状態。写真でわかるように、パワー管やトランスなどのパワーアンプ部分をアンプ下部に設置しプリアンプ部分を上部に設置したアンプ内部でセパレート構造を持っているのがSelmerの特徴です。



パワーアンプのシャーシです。真空管は左からECC83(フェイズインバーダー)、EL84 x2 パワー管、EZ81整流管です。



シャーシ左側です。シリアルナンバーのプレートが確認出来ます。その横にはスピーカーアウトが確認できます。左:アース 中:8Ω 右:16Ω となっております。



シャーシ右側です。電源スイッチやヒューズボックス、入力電圧セレクターがあります。



取り出したシャーシの反対側からの画像です。巨大な電源トランスが確認できます。



電源トランスはオリジナルのPartridge製からさらに大きく大容量の電源トランスに交換されています。



オリジナルのPartridge製の出力トランスです。



シャーシ内部です。電源トランスの内側が確認できます。Plexi Marshallに使用されているRadiospars Transformerの様に内部配線で入力電圧を105V~250Vまで変更できるようになっています。



シャーシ内部左側です。シャーシの外側になりますが、かなり大容量の電解コンデンサーを追加するモデファイがされています。



シャーシ内部左右側です。コンデンサー、抵抗、電解コンデンサーなどはオリジナルをキープしております。EROやHUNTSなどのメーカーが使用されています。



取り出した上部のプリアンプ部の全体です。



左からCh.1の初段 EF86, Ch.2&3の初段 EF86, トレモロ用 EF86, Tone用 ECC82が使用されています。EF86が3本も使用されているアンプはとても珍しいですね。



セルマーファクトリーでの検品スタンプです。



プリアンプ部シャーシ内部です。Wimaが使用される前の時代なのでカップリングコンデンサーは全てHUNTS製のコンデンサーが使われています。



プリアンプ部の左側です。Potは4つ交換されています。



プリアンプ部の右側です。ご覧の通りHuntsの黒いコンデンサーがふんだんに使われています。



シャーシ類を全て取り外したキャビネット内の画像です。スピーカーはGoodmansの12インチスピーカーです。



スピーカーのアップ画像です。Goodmans Audiom 12P-G 60W。このスピーカーからXTCのサウンドをアウトプットしてきたと考えると感慨深いものがありますね。



かなり貴重なオリジナルフットスイッチです。




XTCファンには堪らない一台です。

こんなスペシャルなアンプを入荷できて個人的にとても幸せです。

EL84とEF86の組み合わせのまさにブリティッシュサウンドです。

LOWの出方も素晴らしく、かなり音圧があります。

お問い合わせお待ちしております。

hiroggy
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