沖縄県立中部病院で5~6月に起きた51人の新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の発表遅れを巡り、県病院事業局は2日、中部病院に送ったメールを公開した。「公表基準は満たさないと考える」との内容を受け、中部病院が6月11日に予定していた会見を中止したことが明らかになった。我那覇仁局長は会見中止を求めたものではないとした上で「コミュニケーションが不十分だった。県民に心配と迷惑を掛けた」と謝罪した。
県は2日に県立病院の院長会議を開き、県立病院で5人以上の院内感染を認めた場合は速やかに公表し、病院もホームページで発表することなどの公表基準を決めた。
中部病院を巡っては、玉城和光院長が1日に「(予定していた)会見取りやめの連絡があった」と話す一方で、事業局側は「公表は止めていない」と説明し見解が異なっていた。
局の中矢代(なかやしろ)真美医療企画監が病院へ会見の予定日前日に送ったメールでは公表の基準について(1)厚生労働省が定めた基準で地域住民に感染が拡大する可能性がある場合(2)院内クラスターを理由に診療制限をする場合-の2点があるとした上で「今回の状況は公表基準は満たさないと考える」としていた。「過剰にマスコミに取り上げられると、コロナ協力病院の努力が報われないと受け取られる可能性もあり、注意は必要」ともあった。
同時に「取材に対応することを病院として選択するなら尊重する」とも伝えていた。
我那覇局長は2日に県庁で開いた会見で「中部病院が(会見を)するなら一緒に協力するという意味だったが、受け取り方が異なった」との認識を示した。同席した玉城院長は「公表を控えるべきと受け止め院内でも共有した」と述べた。
また、会見では中矢代企画監がメールで「基準を満たさない」とするに当たり助言を受けた専門家が、コロナに関する県専門家会議委員で県立中部病院の高山義浩医師だったことも明らかになった。高山医師は2日の会見に同席した。
中部病院のクラスターは6月30日の県議会質疑で明らかになり、県議から「隠蔽(いんぺい)だ」との指摘が上がっていた。
■「マスコミが過剰に取り上げる」
県立中部病院の新型コロナのクラスター(感染者集団)を巡り、県が病院に「公表基準を満たさない」と送ったメールでは「メディアが一定コントロールされている中で公表によって過剰にマスコミに取り上げられる」との文言が含まれていた。
メールを作成した県病院事業局の中矢代真美医療企画監は 2日の会見で「(マスコミは)病院を責めたいという気持ちはなく、バッシングのために報道するつもりはないということを知らなかった。コントロールというのは私自身の誤りで、深くおわびする」と謝罪した。
一方で、中部病院も1日に会見した際、報道陣に対し「情報の混乱を防止する観点から発症日、患者数などの事前確認をするため記事を発表前に送付してほしい」と文書で要請。県、病院ともに報道に対する警戒感を高めていた。