ワクチン、国内対象者分を9月確保 河野氏
「ファイザーが追加供給」

河野太郎規制改革相は18日、新型コロナウイルスワクチンに関し、9月末までに接種対象者全員分を確保できるとの見通しを示した。同日のフジテレビ番組で米ファイザーから追加供給を受けると明らかにした。
菅義偉首相は米国訪問中の17日、ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)と電話協議し、ワクチンの追加供給を要請した。
河野氏は18日の同番組で米ファイザー社と「実質的に合意した」と述べた。追加分の具体的な数量には言及しなかった。
国内では16歳以上が接種対象となっている。総務省の統計によるとおよそ1億1千万人に上る。
ワクチンで国内で承認されているのはファイザー製のみだ。河野氏は高齢者3600万人分のファイザー製ワクチンを6月末までに供給できるとの見解を示していた。
ファイザー社とは1月、年内に1億4400万回(7200万人分)の供給を受けることで契約を締結している。
このほか英アストラゼネカから1億2千万回分(6000万人分)、米モデルナから5000万回分(2500万人分)の契約も結んでいる。厚生労働省に承認を申請し審査を受けている。
アストラゼネカ製は、海外で接種後に血栓の症状が表れるケースが報告されている。ワクチンの使用開始にメドがつかなければ、16歳以上の対象者のワクチンをまかないきれないおそれがある。
ファイザー製の追加調達に動いたのはワクチンの承認が間に合わない場合やアストラゼネカ製を使いにくい場合も想定したとみられる。
9月末までにワクチン確保にメドがたったとしても全対象者への接種が終わる時期は見えない。
これまでファイザー製は欧州連合(EU)域内の工場から空輸しており、1便ごとに承認を得ている。河野氏は18日のフジテレビ番組で追加供給の分も「EUの承認が取れる限り」と説明した。
接種を受け入れる自治体などの対応も課題だ。厚労省によると3月25日時点の調査では接種の特設会場を設ける自治体の2割で「看護師が不足している」と回答した。供給量に見合った人員を確保できるかどうかが課題となっている。
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- 村上臣リンクトイン日本代表ひとこと解説
在庫の確保はもちろん重要ですが、初期対応で必要なのは接種スピードをいかにあげるか。現在の日本の摂取数は先進国では最下位、余ったワクチンの処理に困った自治体が廃棄してしまうという事態も起きています。縦割り、リスク回避、責任者不明確という困った状況です。 現場での実行を甘くみて兵站を軽視するのはお国柄なのか。在庫の次は接種のための人員、会場などを規模感をもって実施できるかにかかっています。
(更新) - 滝田洋一日本経済新聞社 編集委員分析・考察
同じワクチンでもアストラゼネカ製には、接種後に血栓の問題が報告され、デンマーク、ノルウェーなど使用を中断する国が相次いでいます。オランダ、スペイン、ポルトガルなども使用を60歳以上に制限しています。韓国は30歳以上に使用としていますが、これはアストラゼネカ製への依存度が高いためです。 日本の場合、高齢者から始まった接種にはファイザー製を使用しています。が、一般の人向けにはどこの社のワクチンを接種するかが問題でした。菅首相とファイザーのブーラCEOの電話会談で、ファイザー製のワクチンの追加供給を得られる運びとなったのは、ひとつの安心材料となります。「ワクチン外交」は今回の首相訪米の成果でしょう。
(更新)