フリューが2021年6月24日に発売するPS4/Nintendo Switch用ソフト「Caligula2」のプロデューサー/企画/シナリオの山中拓也氏へ実施したインタビューをお届けする。

本作は2016年に発売したPS Vita向けソフト「Caligula -カリギュラ-」、2018年4月にTVアニメ化、同年6月には追加要素を加えたゲーム「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」を発売するなどで人気を集めた学園ジュブナイルRPGの最新作。ストーリーや登場キャラクターは一新されているため、シリーズを知らないプレイヤーもここから楽しめるものとなっている。

本作の舞台は、謎のバーチャルアイドル「リグレット」の創造した仮想世界「リドゥ」。「あのとき、ああしていれば……」といった後悔を抱えた人間に、選ばなかったifの人生を与える理想の世界となっている。主人公(あなた)もそんな世界に招かれた1人で、現実を思い出しかけていた中、もう1人のバーチャルアイドル「キィ」と遭遇。彼女のパートナーとして現実に気付いた仲間たちと共に、偽りの世界から現実への帰還を目指す「帰宅部」を結成する。

シリーズタイトルの「Caligula -カリギュラ-」は“見てはいけないものほど見たくなる、してはいけないものほどしたくなる”という「カリギュラ効果」が由来。主人公は過去の後悔をやり直し、ifの姿となった彼らがひた隠しにする“踏み込んではならない”現実に触れることができる。覚悟と責任が問われる選択を前にどうするかは自分次第だ。

今回は一足早く「Caligula2」をプレイする機会をいただき、それを踏まえたうえでシナリオ面を中心に気になった部分を山中氏へ伺った。購入を迷っている方こそぜひ、一読いただきたい。

「カリギュラ」の持ち味を損なわない座組でスタート

――本日はよろしくお願いいたします。では、改めて「Caligula2」の構想はどのように進んでいったのでしょうか。

山中氏:当時フリューという会社としては、もちろん最初から「シリーズとして続く作品を作ろう」という考えはありました(編注:当時、山中氏はフリューに所属しており、その後フリーランスに)。「Caligula -カリギュラ-(以下、カリギュラ)」だけでは次回作へ説得力のある数字を作れなかったんですが「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ(以下、カリギュラOD)」の結果と合わせて「2を作ってもいいんじゃないか」というラインに達したので、会社から許可が下りた、という感じです。本当の意味で「カリギュラ」、「カリギュラOD」と愛してくださった方のおかげで作る機会を得たのが「Caligula2」なのでユーザーの方には感謝してもしきれません。

もともと、これまでシナリオをご担当いただいた里見さん(「Caligula2」では世界観協力の里見直氏)と作った「カリギュラOD」は、次回作を見据えていました。なので「2をやるならこういうのがいいかも」というのは「カリギュラOD」の打ち合わせの中でも常々話していたんです。具体的な中身の部分はお話しできませんが「後悔をテーマにしよう」とか、「前作から5年後の世界にしよう」とか、「この出来事を次作の引き金として残そう」とか、そうした部分は里見さんと固めています。

――「Caligula2」の土台の部分には、かなり前から里見さんがしっかり関わっていらっしゃったんですね。

山中氏:いざスタートという時には残念ながら里見さんとタイミングが合わなくなってしまったのですが、こうした事態は作品を生み出す中でままあることです。前回は「こういう世界にしましょう」「こういうお話しで、こういうキャラクターを作りましょう」という発想と設定とキャラクターを僕が考えて、それを里見さんが実際に文字にしてくれるという座組でとてもうまくいっていたので……それが一番よかったんですけどね。

別のライターの方に委ねるという手も勿論あるのですが、シリーズの途中で里見さんから受け継ぐという重責をどなたかに背負わせるよりも、前作からシナリオの原案をしている僕がそのまま担当したほうが「カリギュラ」の持ち味を損なわないだろうと思い、今回の座組となりました。……実際にプレイしてみて、どうでしたか?

――まず単純に「ああ、これは『カリギュラ』だな」と。もちろんシステム面など変化した部分もありますが、キャラクターや物語全体のもつ空気感がとても「カリギュラ」だと感じましたし、今のお話を伺って改めて「カリギュラ」らしさにこだわったからこその座組で取り組まれたのだと納得できました。本作でも引き続き「現代病理」を抱えたキャラクターが登場しますが、どのように作品内へ落とし込んでいるのでしょうか?

山中氏:まず、ストーリーがあってキャラクターが必要になる場合と、キャラクターが先にいてストーリー展開を考えるというやり方があると思うんですが、僕はかなり後者寄りで、キャラクターが決まらないとお話が決まらないタイプなんです。今回であれば主人公以外の8人の帰宅部に、どういった病理と後悔を持たせようというところからスタートします。やりたいテーマとキャラクターが揃ったら、どういう構成にしていこうかと考えます。

そのため「カリギュラ」をやったうえで、じゃあ「Caligula2」はどういう人たちを出すかというのが1番のポイントとなります。そこが固まるまでは何も動けないという状態になってしまいますね。誰がどんな病理を抱えているのかまでは説明できませんがこの時代に感じたことを描いているので、“今っぽい”と感じていただけると思います。

――ゲームは制作期間が長い分、時代の変化も含めて「どのような病理を選択するのか」というバランスが難しそうな印象があります。

山中氏:「皆に共感されないといけない」というのは前作から捨てることができていて、絞ってもユーザーさんはついてきてくれるなというのは実感として持てていました。そこを変わらずやれたのは大きいですね。前作を皆さんがプレイしてくれたおかげで「きっと理解を示してくれる」みたいな信頼の上で「Caligula2」を作り上げることができました。

創作の中で自分の悩みや苦しみが扱われることで、救いを感じる人はきっといると思うんですよ。絞れば絞る分、ほかの作品で救えていない方を「カリギュラ」でリーチできればいいなと思います。

より広がりを見せた仮想世界と、対照的な2人の歌姫

――では、本作の舞台となるリドゥについて伺いたいと思います。こちらは後悔をやり直した後という世界ですね。前作に登場したバーチャルアイドル「μ(ミュウ)」が作りだした、なりたい自分になれる世界「メビウス」と着地点は似ているように思えますが……。

山中氏:そうですね。引き金が現時点より過去の「○○をしてしまった」というところにあって、それをやり直したら自分は理想の人生を送れているはず……といった感じです。難しく考えずメビウスと同じようにリドゥでも理想の姿になっているんだと捉えていただいて大丈夫です。

各々がその姿を選んだ理由は、過去の後悔に準じています。何もせず、ただ何となく「お金持ちになりたい」みたいな願いが叶うような自由なところではなく、実際に「こんなことをやってしまったのが上手くいってない原因なんだ」という、皆さんの人生にもよくあるような過去の出来事が引き金となっています。自分の人生を振り返って「自分だったらここが原因でリドゥに引き寄せられるかも」みたいに思っていただければいいなと思います。

――漠然とした理想ではなく、明確な後悔があるというのが違いといえば違いなんですね。

山中氏:例えば前作に登場したキャラクターのシャドウナイフは、劇中アニメのヒーローになっていました。しかしリドゥでは、そうした妄想のヒーローになるといったことはできません。この場合「あの時、ああいうことをしていれば自分はヒーローだったはず」という出来事が実際にあるというイメージですね。

――この「後悔」というテーマは最初から決まっていたのでしょうか?

山中氏:いくつか案自体はあったんですけど、里見さんとお互いに悩むこともなく決まりました。前作では帰宅部として現実に帰るか、メビウスに軸足を置くかという選択してもらったので、その次のテーマとして「その選択を、5年後のあなたたちはどう思っていますか?」と聞いてあげたい。これが続編としての綺麗なパスかなと思っていたので、ごく自然に決まりました。

――実際にゲーム内でリドゥに降り立つと、上下の空間など奥行きがかなり広がった印象がありました。そしてμの作ったメビウスと比べて街中に生活感があるというか……とても具体的でイメージが精密といいますか。

山中氏:現実的に言えば「カリギュラOD」を手掛けてくれたヒストリアさんが、これまでのフィードバックを受けたうえでの「今作ではこうしたい!」というイメージが反映されています。ただこの世界でいえば、μは漠然と幸せにしたいという気持ち、一方でリグレットは後悔というキーワードもそうなんですけど、やりたいことがもう少し具体的にあるんです。これがヒストリアさんの開発にも出ているかなと思います。

――メビウスは理想の叶う世界ですが、いるのは高校生ばかりですし、どこか焦点がずれたような感覚もあって少し不気味さを感じていました。その点リドゥは、きちんと人間らしくこの世界でやり直しているというのが伝わってきますね。

山中氏:単純にいえば、リグレットのほうが人間への理解が深いんですよね。だからこそ「μよりも良い世界が創れる」とリドゥサイドは考えています。

――なるほど。最初に出会った時点でも底の知れない感じがありましたし、μよりもイマジネーションが強いのも納得です。

山中氏:μの弱点って人間の気持ちが理解できず、額面通りに捉えてしまう部分なんですよね。例えば顔に傷を負ってしまった人に対し、本人の意志とは関係なく治してしまう。ただの足し算引き算でしか考えられない。そこが彼女の素敵なところでもあるんですけど、そのおかげで歪つになってしまう。リグレットは人間のことがよく分かっているし、四則演算使いこなして寄り添う力があります。

――リグレットと最初に出会った時、瞳がかなり印象的でした。

山中氏:リグレットはアップで見る機会も多いので、瞳の見え方は力を入れていますね。

――μは最初から最後まで印象が変わりませんでしたが、リグレットは謎が多い分、ストーリーが進んでいくと印象も変化していきそうですね。

山中氏:そうですね。そういった変化に鋭い人が何か引っかかりを感じて、正解に辿り着けるというのは「カリギュラ」の塩梅として正しいのかなと思います。

――一方、もう一人のバーチャルアイドルのキィはμと同じく、人間のことがあまり分かっていない存在ですね。このリグレットとキィの対比は本作の重要なポイントなりそうですが。

山中氏:キィは不気味なくらい明るくて、すべての物事に対して人間が抱える“空気を読む”みたいなことは発生しません。そんなキィだからこその爽快感もあって「こんなふうに生きられたらいいな」と思うこともともあるんじゃないでしょうか。

――まさに後悔とは無縁の存在ですよね。「そう簡単に割り切れたら苦労はしない!」と思いつつ、スパっと言い切れるところにはある種の憧れのようなものを抱いてしまいます。

山中氏:能登 吟なんかは序盤からキィの言動に振り回されるタイプですね。そういう感情はプレイヤーの皆さんも分かるんじゃないでしょうか。「それはそうなんだけど、そうはいかないでしょう」と。そんな言い訳をする自分も、ちょっと空しくなってしまったり……。

今作はキィが人間と過ごして、変わっていくところにも注目していただきたいですね。本作の旅を終えるころには、皆さんにとってキィが特別な存在になっていてほしいと思います。

――ただ不思議なのが、キィは“未発売の試作品バーチャドール”ということで、世間の人たちから認知されていませんよね。何故、リグレットに対抗できるような力を得られたのでしょうか。

山中氏:キィはリドゥに突入してきた時、ただの光の塊でしかありませんでした。前作でいえば、力を失って小さくなってしまった「アリア」とも違います。それなのにヒトの形を保っていられるのは主人公の体に入り込んで、主人公のリソースのようなものを利用しているからです。それに伴い、主人公としては突然、命を連動させられて「キィが死んだら自分も死ぬ」みたいな状態になってしまいました。だいぶ非人道的ですが、それも考えなしのキィらしさのひとつですね。

前作とは異なるアプローチのキャラクターシナリオや、フィールドトークでより深掘り

――本作はAIのオートバトルもあって、サクサク進みますね。もう1つの大きな特徴はキィがバトルフィールドをジャックする「フロアージャック」ですが、思っていたよりすぐゲージが貯まってボス以外にも利用できそうでした。

山中氏:目玉の機能ですし、キィの歌をたくさん聞いてほしいのでゲージは貯まりやすくなっています。バトルだけでなく、フィールドの「ホコロビ」を回収しても増えていきますしね。もしゲージが貯まりにくくても、プレイヤーとしてはボス前までにMAXまで貯めてから挑もうとしてしまうじゃないですか、そうした煩わしさは排除して、惜しみなくキィの歌でも戦ってほしいです。

――発動すると能力が強化され、設定している歌によって効果も変わるそうですね。どのような局面で使うのがいいのでしょうか。

山中氏:「フロアージャック」は能力が上がるだけでなく、味方の行動を全キャンセルできるんです。攻撃をした後にはクールタイムが発生しますが、敵から強力な攻撃が来る前に「フロアージャック」を発動させて緊急回避したり、相手の行動をキャンセルさせるような強力な攻撃を出したりといった活用ができます。操作感はちょっと難しかった「カリギュラ」と、簡単だった「カリギュラOD」の間を目指していて、楽士の攻撃も強力なものが多くなっています。初見ではあっさり倒されてしまう場合もあると思うので、うまく乗り切ってください。

――ダンジョンを探索していると、仲間同士が会話をする新機能「フィールドトーク」が発生しますね。イベントシーンでは関わっているキャラクター以外はどうしても影が薄くなりがちですが、それ以外のキャラクターが色々と話してくれるのがとても楽しかったです。

山中氏:これは僕の超お気に入りの機能です。RPGってイベントが起きて、ボタンを押してシーンを進めて、終わってという流れがありますけど、僕としては語りたい余談があって。その話がメインで進んでいる間に「このキャラクターは、内心こう思っているだろうな」というのを入れたい気持ちがすごくあるんです。

でも、それをやったらボタンを押す回数が長くなってしまうのでカットせざるを得ない。そこで今まさに起こった出来事に対し「自分はこう思ったけど」みたいなものを表現できたのが「フィールドトーク」なので、実装してみてよかったなと思います。「カリギュラ」の帰宅部くらいの人数の集団だと、お話しとしてはこれが正として進んだけど、このキャラクターはその決断に対してあまり気乗りしていないみたいな状況は存在すると思うので。シナリオはかなり書いたので、キャラクターが増える後半になるにつれてダンジョンを最短で進めていったらずっと喋っているような感覚になるかもしれません。

――バックログで辿れるというのがまたいいですね。

山中氏:そこは、ヒストリアさんを褒めていただきたい部分ですね。僕がシナリオを書きすぎてしまって、ダンジョンを最短で進んだら話をしている間に次のイベントに辿り着いてしまうというケースが起きてしまって。そこをバックログでカバーしていただきました。

――メッセンジャーアプリ「WIRE」でもそうした会話はありますが、チャットとはまた違う雰囲気での会話が楽しめますね。ちなみに、公開されていたスクリーンショットで楽士のムーくんが「フィールドトーク」のような形で話しかけている場面がありましたが、これは楽士との会話でも発生するのでしょうか?

山中氏:これはムーくん特有ですね。帰宅部は楽士にバレないように行動するというのが基本となりますが、ここでのムーくんはまた違うケースです。

――ストーリーを進めていて、個別のキャラクターシナリオが正式に仲間になる前に発生して驚きました。

山中氏:存在自体は認識しているのに触れないというのは、すごくRPGすぎるなと。興味があったら事前にコミュニケーションが取れて、いつ仲間になるんだろうと楽しみにしてもらえるのがやりたかったんです。

――風祭小鳩は取っつきにくそうなイメージありましたけど、意外とすんなり会話ができて面白かったですね。釣巻鐘太は仲間にすらなっていない段階で、どんどんシナリオが進んでいって驚きましたが、これはキャラクターの個性によるものでしょうか?隠すような感じがないというか……。

山中氏:鐘太は少し触れたら色々出てきますね。彼の弱さは近づくだけですぐに分かってしまいますし、自分を飾りたい気持ちもありません。抱えている1つの秘密さえ守れれば、自分が優柔不断であるとか、頼りないとかは頑なに隠しているわけではないので、そういう構成になりました。数いるキャラクターの中でも、とくに心を開きやすいイメージではあります。

――ほかのキャラクターがどんな進み方をするのか楽しみになりました。それと、今回はメインストーリーを追うだけで各キャラクターが何を抱えているのかがある程度分かるようになっている印象でした。これは、あえてそうしたのでしょうか?

山中氏:意図的です。前作のようなメインストーリーでは全部隠れています、踏み込んだら分かりますというのは「カリギュラ」という作品を知ってもらうためには必要なルール作りでした。しかし「カリギュラ」や「カリギュラOD」をプレイした人にとっては、すべてがそういうものだとテンプレートになってしまいますよね。そこを「Caligula2」では崩したいなと。地盤がある分、それぞれの病理と後悔に対して寄り添った表現がしたいという想いもあります。

人によっては前作で楽士がされたように、メインストーリーで強制的にバラされることもあるし、本人が意図しないタイミングで開示されることもあるし、帰宅部の目的のために必要だから言いたくないけど言うといった選択をするキャラクターもいます。なんなら、発売前の事前の情報でわかるように作っているキャラクターもいます。

問題はそこではなくて、分かったあとで何を考えるかが要点のキャラクターもいるし、触れてみるともう一つ深い問題のあるキャラクターもいます。難易度というとゲーム的ですが、プレイヤーの皆さんにはプレイする前にどこまで辿り着いていてほしいとか、プレイしながら辿り着いてほしいとか、登場人物の病理と後悔によって変化をつけています。プレイ前は絶対に分からないようにしている人もいます。もちろん、ほかのキャラクターと同じようなやり方もできたと思うんですけど、プレイする前に心の準備をして出会ってほしい人と、心の準備をしないで出会ってほしい人がいるイメージです。

――なるほど。

山中氏:それとキャラクターシナリオで相手について深く知った後は、隠していた部分について聞ける「WIRE」専用の話題もあります。本性についてもっと聞きたいことはあると思うんですけど、それはその人物と皆さんとの秘密ですので他の部員の前でその話はしません。「気になるから、後でこっそりWIREで聞いてみよう」みたいな感じです。

ほかにも「WIRE」の話題はストーリーを進めていくと増えますし、ゲーム的にいえばダンジョンや街の中に話題が落ちていて拾っていけます。イメージとしては一緒に街の中を歩いていて「これちょっと聞いてみたいな」と思いつくとか、そういう感じで話題が増えていきます。

――今回は帰宅部が地下鉄を拠点にしていますが、前作はあまり拠点というものがなかったですよね。あまりいい思い出もないというか……。

山中氏:ゲーム的なところとお話的な意味の両面で、ちゃんと拠点のようなものを作りたかったんです。「カリギュラ」は敵のいるダンジョンを進んでいく構成なので、ハブになるような場所の必要性もありませんでした。今回は駅前とか、部室とかに一度戻ってから次のダンジョンに行くような意識づけをしたかったというのがあります。

今回はフィールドが学校の外にも広がっていくので、学校の中の部室にするのではなく、変わった場所を使いたいなと。そこで世界の歪みを表現するために「すべての場所に最寄り駅があって、駅直結で、電車で移動できたらいいな」という子供のような発想から、全部の世界を地下鉄で繋げてしまおう、ならいっそ専用の電車を作って部室にしてしまおうみたいな感じです。電車を私物化して寝転がるとか、そういう普通はできないことってしてみたいじゃないですか。

――現実ではできないけど、やってみたい欲求はありますね。ジュークボックスもアジト感がありましたし、それぞれのキャラクターが小物を持ち込んでいたのも部室っぽくて面白いところですね。

山中氏:部活動なので、実際の部室感も出してみたかったところです。「カリギュラ」の登場人物なりの青春ですね。

――今回は因果系譜から派生する「トラウマクエスト」が、特定のグループを追いかけて悩みを解決していく「グループクエスト」となっていますね。

山中氏:「グループクエスト」のサブシナリオなどは、シナリオ制作会社のエレファンテさんにお手伝いしていただきました。前作ですと個人のクエストは、いわゆる“おつかい”でしたが、今回は主軸となるNPCは見た目で区別がつくようにしていますし「Caligula2」での正当な進化点かと思います。

――序盤から、ちょっと感じの悪いバイトリーダーがいるとか、総菜パンを購買へ買いに行くみたいなベタなところから始まる関係性がありますね。

山中氏:本編よりもコメディ色が強いものもあるので、息抜きにもなると思いますよ。

――出会ってすぐNPCたちが築いているグループがどんなものか分かりますし、そこからどう関係性を変化させていくのかクエストのクリアが楽しみになりました。

山中氏:グループクエストのように前作から変化している部分に関しては僕たちは「こうしたほうがずっといい」と思ってこの形にしましたが、前作のようなタイプが好きだった方は変わってしまったことを残念に思うかもしれません。僕たちとしては納得のいく形にしましたので、受け取ってくださる方にも違和感がなければいいなと思います。

前作の存在がもたらした収録での変化

――ここからは楽曲も含めた収録関係について伺っていければと思います。まず、声優陣の収録で印象的だった出来事があればお願いします。

山中氏:「Caligula2」ということで「前作をプレイしてくれている人がいる」というのはこれまでと違うところでした。こういう芝居をやるんだという、ルールのようなものを理解してくれている人が多かったのは大きいですね。作品を続けていくと変わってくるんだなと。

それと、ブラフマン役の子安武人さんのような世代の方って僕らにとってはレジェンドじゃないですか。どうしても緊張しますし、委縮してしまうんですけど「この作品、子供が好きなんだよ」って言ってくださって。そう言われたら「おっ、じゃあお子さんが喜んでくれるような突き抜けたことをやってもらってもいいんだな!」と思えて、気持ちとして楽になれた部分もありました。

――ご子息の子安光樹さんがサブキャストとして出演されていますが、もともと「カリギュラ」をご存じだったんですね。

山中氏:クランケ役の高田憂希さんも前作をプレイしてくれていて、好きだと事前に伝えてくださってくれたんです。声優さんのお芝居でいうと「アニメっぽい」とか「ゲームっぽい」とか、記号的な演出をするお芝居と、映像など作品的に「生っぽい」お芝居をするケースがあるかと思います。「カリギュラ」はゲームだけど感情優先でお芝居をするという方向を選んでいますが、「そういう作品なんです」という説明に時間を取られない。実際にプレイしてくれている人は、そこに最短距離でいけるというのが強いなと。どこを強めて、どこを弱めて、ここは重要なセリフなので……という意志疎通が取りやすくて、全体的にスムーズに収録できたなと思います。

吟を演じてくれた市川蒼くんも、はじめてお仕事をしたんですがTwitterで言ってしまったくらいよかったんです。市川くんがもともと脚本を書いたりする人だと聞いて納得したんですけど、彼のお芝居のプランみたいなものが、僕がテキストを書いて脳内に流れているニュアンスみたいなものをいい意味で裏切ってくれて。お芝居を聞きながらOKやNGを出す前に「こんな方法があるんだ!」と感心してしまいました。

メインキャラクターに関しては、1回目の収録でメインシナリオ、2回目でキャラクターシナリオを録るというスケジュールでした。ただ、吟の時はキャラクターシナリオができあがる前のタイミングでメインシナリオを収録することになったんです。もちろんキャラクターにどんな背景があるのかは事前に分かっていますが、メインシナリオではキャラクターシナリオで開示する部分は明かされません。

そんな形での収録となったんですが、市川くんがキャラクターシナリオの収録時に「台本読んで泣きました」と言ってくれたんです。本を深く読んでお芝居をする役者さんにそう言われると、すごく安心感がありますよね。吟は本当に難しい人物なので2人で色々と話しをしたんですけど、市川くんが吟の深みを出してくれたなと思います。市川くんとのやりとりはあくまで一例で「カリギュラ」をやっていると、そういう面白い役者さんとの出会いがたくさんです。

実は、キィ以外は全員指名なんですよ。色々な作品を拝見していて「この人とお芝居を作りたいな」「この人に、こういうことをやってもらったら面白そうだな」という人を選んでいるので、皆さんいいお芝居をしてくださいまして感謝です。

――楽曲面についても伺っていきたいのですが、まずバトルでのリリック表現がとても面白かったです。まるで楽曲のPVの中で戦っているようで、これは実際に体験してみると「おおっ!」となりますね。

山中氏:これは制作コストも事情も一切考えない“僕が思う最強のカリギュラ”には、もともとあった要素です(笑)。2になってヒストリアさんのご協力で実現できてよかったです。

――ボーカロイドの楽曲といえば、曲のクオリティだけでなく映像もあっての一大ムーブメントだと思います。なので、楽曲をもっとも正しく受け取れる演出だろうなと。

山中氏:きっと楽曲オンリーのメディアでは、ボーカロイドはここまで流行っていなかったんじゃないかなぁと思うので。MVも「っぽいもの」を見様見真似で作ったのではなく、ボーカロイド曲のMVも実際に手掛けているOTOIROさんに作っていただいていますから「そうそう、こういうのだよね」という芯を捉えたものになっていると思います。もともと「カリギュラ」の曲はゲームで作っている曲というか「世の中で流行するレベルのボカロ楽曲を作る」というのがポイントなので、映像に関してもしっかり成立するように作っています。

――バトルのシステムが変わったとかだけではなく、バトルとしての体験や手応えが違うなと思いました。楽士が曲に込めた想いとか、何を考えて今ここで戦うことになっているのかとか色々と考えさせられて。ただ映像を眺めているといった感じではなく、自身でコマンドを選択している時に一瞬だけ視界に入るフレーズがすごく刺さるんですよ。

山中氏:単純にMVを作ったというだけではなく、体験が変わったと感じていただけるのであれば苦労して入れてよかったなと思います。MV自体はすごく派手なんですけど、地味な部分でいえばヒストリアさんが音同期で周りのオブジェクトを動かすようにしてくれていて、自然な没入感を助けてくれているのかなと思います。

――本作のコンポーザーも、また豪華な顔ぶれとなりましたね。

山中氏:時代性が変わってきていて、ここ5年くらいで主戦場となるプラットフォームがニコニコ動画からYouTubeへと移ってきていますよね。そんな中で時代を象徴した人たちにぜひお願いしたいなと。ただ、時代を象徴するにはゲームの製作期間って長すぎるんですよ。今まさに流行の人を入れてもゲームが発売される頃とピークが重ならない可能性もあるので……そこの先読みはかなりギャンブルですね。

――かなり反響も大きかったAyaseさんのご参加は、その読みがぴったり当たったケースですね。

山中氏:誰も予想できませんよね、こんなことになるなんて……。たまに聞かれるのでこの流れで改めてお話ししておきたいんですが「すごい人に楽曲を作ってもらったら、開発費が足りなくなるんじゃ?」みたいな心配って、結構ありますよね。でも実際のところ楽曲を作っていただく費用って、ゲームの開発費全体から見たら本当にわずかなんです。比率でいえば、例えば3Dモデルを1体作るのとそう変わらないレベルです。

とはいえ今これからAyaseさんにお願いしようとしたら、まったく状況は変わると思いますが……。どちらにせよコンポーザーの起用で開発費を圧迫しているということはありませんので、そこは心配しないでください。

――前作から「えっ、この人が参加するの?!」という驚きは多くありましたが、めぐり合わせですね。

山中氏:一度は忙しくて断られたkemu(堀江晶太)くんなんかも、「カリギュラOD」の時に主題歌をお願いした頃から親交を深めていたのも大きいですね。マキナというキャラクターが出来上がっていくうえで「これはkemuくんしかないんだ!」ともう1回お話しをしたら、やるしかないと受けていただけたんです。

もともと「歌詞をこうしてください」みたいな指定もまったくしていなくて、キャラクターの背景の資料を渡して「こんな人間が作りそうな楽曲をお願いします」とだけ言えば、とくにリテイクが必要のない精度で作ってくださる。なんてすごい人たちなんだろうなと思います。

――今回は同じ曲をキィとリグレットがそれぞれ歌っていますが、それぞれどのような表現を目指したのでしょうか?

山中氏:まず「Caligula2」の発展性として「曲を作っている人間によって表現をするものは違う」というのが前作だとしたら、「Caligula2」はそのうえで「歌い手によっても歌って聞こえ方が違う」ということをやりたくて、歌姫を2人出しました。

リグレットへのオーダーはμと同じです。μの発展形として、リグレットという土台は持ちつつも歌詞を作った人間に寄り添って、その人を憑依させるような、その人の気持ちになって歌ってほしいというやり方です。

キィに関しては、逆に歌詞を作った人へ寄り添わなくていいと。「この歌詞の出来事がキィに起きたらどう思う?」という気持ちでお願いしました。だから同じ出来事が起きている歌詞に対しても、リグレットは相手に寄り添って悲しんだり喜んだりするかもしれませんが、キィは「これは腹が立つ!」と思う場合もあります。ひどいことをされたから悲しむというのと、ひどいことをされたから怒りを覚えるみたいな、歌詞の解釈によって歌が変わっています。

キィ役の峯田茉優さんも前作をプレイしてくれていたので、μのようにとても書き込んで準備をしてくれていたんですけど……初回の収録時に「それ全部いりません」という形になってしまい申し訳なかったです。キィがどう思うかで悲しい歌でも力強い歌になるとか、聞こえ方が変わってくるので僕自身も収録していて楽しかったです。楽士を倒してキィが自分の曲にすると、キィのシンプルさとかストレートさがバトルで後押ししてくれるイメージにも繋がると思うので、そこは楽しみにしてほしいです。限定版についている前作の楽曲も、キィが歌うとまた違って面白いですよ。

――今回は本編でリグレットとキィそれぞれが歌う同じ曲を聴けますが、前作で発売された楽士本人が歌うCDアルバム「セルフカバーコレクション」でもμと楽士では全然違っていて面白かったですね。

山中氏:僕もあれ大好きな企画なので最終的にはセルフカバーまで出したいですね。

――そこはやはり「Caligula2」の売り上げ次第というところですか。

山中氏:売れれば出していいってフリューさんも仰ってくださると思います(笑)。

――楽しみにしておきます。そろそろインタビューも終了となりますので、いちおう伺っておきたいのですが……前作のキャラクターによく似たあの人とか、ブラフマンのコンポーザーが前作のあの人と同じとか……。

山中氏:……。

――完全に黙り込まれてしまいました。

山中氏:うーん、1つだけ言うなら、コンポーザーは「僕が気に入ったから続投してもらいました」とか、そういう理由ではないです。

――あとは2ndトレーラーに“もうひとつの「選択」”といった気になるキーワードが含まれていましたが、前作プレイヤーとしては「楽士ルートか?!」と思ってしまいますが……。

山中氏:前作に楽士ルートがあったのは、そちらに行く必然性があったからこそだと思います。「選択」は前作のようなものではないとだけ……。

――やはりプレイヤーがこうかなと思ったところを裏切っていくのは「カリギュラ」らしいところですね

山中氏:これも難しいところで、プレイヤーの皆さんが求めるものをやると「カリギュラ」ではなくなるようなジレンマもありますよね。何を求めていらっしゃるのかは理解しているんですが、それをせずに別のものを作ったおかげで愛していただけたのが「カリギュラ」なので。

――いわゆる商売的とか、一般大衆向けの正解じゃないところを進んできた結果が本作の今ですからね。でも改めて、自分はそうした「カリギュラ」シリーズのプレイヤーなんだなと思いました。

山中氏:今回はメインのシナリオライターが変わったことで、不安に思っている方もいらっしゃると思います。実際に触った方が「カリギュラ」だと思っていただけたら嬉しいです。

――それでは、最後に発売を楽しみに待つファンの方へメッセージをお願いします。

山中氏:僕の中では「Caligula2」がひとつの区切りだと思っています。ここ5年での時代の変化をキャッチアップしましたが、そこから先の時代についてはまだ作品で写し取るほどの変化はないかなと。もし仮に「Caligula3」を作ってと言われても、単なる焼き直しになってしまい、前作から今作のような、新たに生まれた病理を取り入れて……というのは簡単にはできないと思います。なので、この「Caligula2」をぜひ楽しんでプレイしていただきたいと思います。

――ありがとうございました。

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(C) FURYU Corporation.

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機種
PS4Switch
プラットフォーム
パッケージダウンロード
会社
フリューヒストリア
シリーズ
Caligula
ジャンル
RPG
公式サイト
https://www.cs.furyu.jp/caligula2/
  • セガ特集ページ
  • プリコネR特集
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