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【パンデミックと東京五輪】教師の訴え「学校連携観戦は無謀だ」 看護師の願い「五輪中止して命と暮らしに税金使って」~第4回女性たちの抗議リレー

来月に開会が迫った東京オリンピック・パラリンピックに反対する女性たちの抗議リレー「私たちが止めるしかない東京オリパラ」の第4回が22日夜、行われた。教諭や看護師のほか、弁護士や政治アイドルなど13人がリモート参加。児童生徒が競技観戦に動員される「学校連携観戦プログラム」の問題点や、日々戦場のような状態で奮闘している看護師の実態などを通して五輪反対を訴えた。次回配信は29日20時。開会式まで1カ月を切ったが「開催されてしまっても会期中も、終わった後も責任追及をする」と声をあげ続ける。



【「感染症対策に全力注いで」】

 都内の小学校で特別支援学級の担任をしている長野みゆきさん(東京都教職員組合)は、児童生徒が競技観戦に動員される「学校連携観戦プログラム」の問題点について語った。新国立競技場を下見した教諭からは感染症対策はもちろん、酷暑下での引率に不安の声が寄せられているという。

 「全員の手荷物検査や検温のために秩父宮ラグビー場に行きますが、東京メトロ外苑前駅に教職員と子どもたちが集中します。点呼をするスペースがない、トイレに行かれない、ドアにはさまれたりホームから落ちたり、下車できないということも想定しておく必要があります。また、外苑前駅のひとつ手前の駅でおりて一駅歩かせる学校が出てくる可能性もあります。暑さの厳しい中で15分以上歩き、着いたら全員の手荷物検査や検温にどのくらい待たされるのか」

 「仮に体温が37・5度を上回った児童は誰がどう対応するのでしょうか。熱中症かも感染かもしれない子どもたちを、どこの病院にどうやって連れて行ったら良いのか。公共交通機関で連れて帰ることはできないと考えると、保護者に車で迎えに来てもらうよう頼むしかないと思います」

 酷暑が想定されるが、競技場内には水筒を持ち込めないという。

 「その代わりに、常温のペットボトルの水と遮光板が配られるそうです。座席によっては直射日光が当たるので、かなりの暑さになります。熱中症対策としては全く不十分だと思います」

 「しかも、競技場内には子どもたちが集合して点呼できる場所がありません。競技場外に出た時点で子どもがいないと気付いた場合、誰がどのように対応してくれるのか全く分かりません」

 幼稚園やこども園の幼児、障害がある子どもたちの動員も計画されている。

 「昨年度から、公共交通機関を利用する校外学習は全て禁止されていまして、電車の乗り降り、階段やホームの歩き方に関する学習が全くできていません。初めてのことに不安を感じやすい子どもたちが多いので、ていねいな配慮や事前指導が必要なんです」

 長野さんが都職員に電話で確認したところ、担当者の回答は「学校ごとのキャンセルは随時、受け付けています。決して学校連携観戦を強制しているわけではありません」だった。

 「どう考えても学校連携観戦は無謀であり、中止しか考えられません。感染症対策に全力を注いで欲しいです。自治体に中止を決断させるためには、もっと声をあげる必要があります」

「女性たちの抗議リレー」は4回目。滋賀県のさんは中小路「命を守ることが仕事である看護師として、オリパラは絶対に中止して欲しい」と語気を強めた

【「医療現場は既に戦場」】

 「新型コロナウイルスは、今まで人命を軽く扱ってきた政治の矛盾を明らかにさせたと思っています」
 そう話したのは、滋賀県で看護師をしている中小路貴子さん。まさに「五輪どころではない」とも言うべき医療現場の現状を語った。

 「昨年の今ごろ、私たちの職場は既に戦場でした。マスクが無い、消毒薬が無い、ゴーグルが無い、ガウンが無い。救急外来では雨がっぱを使用して、終わったら消毒して使い回ししていました。まさに『欲しがりません勝つまでは』という状況でした」

 滋賀県からの要請で、今年3月に新しくコロナ病棟を開設。軽症から中等症の患者を受け入れている。看護師の負担も当然、重くなった。

 「そこの病棟は2人で2交代夜勤。13時間半の夜勤です。1人が仮眠休憩すると、その間は1人夜勤です。仮眠する時もPHSを持っているので十分には休めていません。第4波が始まってからは若い患者さんも増えて症状の重い患者さんもいましたし、スタッフの感染リスクは日々高まっています。療養中のストレスからトイレに患者さんが立てこもるということが起こり、その対応に人手が取られることもあったそうです。心身ともにストレスフルなコロナ病棟での勤務です。このままだとコロナ離職につながるのではないかと心配です」

 中小路さんは「五輪に多額のお金を使うのではなく、命を守ることや暮らしを守ることに私たちの税金を使って欲しいです。命を守ることが仕事である看護師として、オリパラは絶対に中止して欲しいです」と強調する。

 「IOCの偉いさんが『五輪を中止するのはアルマゲドン(最終戦争)がやって来た時だ』と言っていました。コロナ禍の医療職場、介護職場は既に戦場ですし、第4波以降の状況はアルマゲドンなんじゃないかと思います。政府もIOCも、感染症よりも五輪、命よりも五輪。ほんまにそれで良いのかと言いたいです。オリパラ強行で今以上に国民の命が危険にさらされようとしています。このことが十分に予測されるのに黙っていて良いのか。いま一番困っている人たちがいて暮らしや命が危険に脅かされています。そのことを放っておいてオリパラ開催で本当にいいのでしょうか」

23日夜、都庁周辺で行われた五輪中止を求めるデモ行進でも、子どもたちを動員する「学校連携観戦プログラム」に反対するプラカードを掲げる人がいた

【「意見するのは大人の責任」】

 弁護士の太田啓子さん(神奈川県在住)は「小学生と中学生の息子がいますので、学校が子どもたちを五輪観戦に動員しようとしていることに一番怒りを感じています」と語った。

 「原発事故で私も子どもも被曝してしまったんだという想いで、原発事故のことをずっと調べてきたので、東京での五輪開催など決まるはずがないと考えていました。『アンダーコントロール』なんて世界の人々が信じるのだろうかという想いがありました。原発汚染水だって今も日々増えていて、当時、生まれていなかった子どもたちに『廃炉』というとてつもなく巨大な負債を負わせるような状況下で、原発事故の収束以外にやることなどないでしょう。そんな状況でお祭り騒ぎをし、しかも子どもをだしにすることに本当に怒っています」

 太田さんは電話やメール、FAXで地元の教育委員会に働きかける必要性を強く訴えた。

 「意見を伝えるのは主権者としての権利だし、責任であり、義務だと思います。子どもに対して、こんなに理不尽でおかしいことがまかり通ることに大人は黙っていないんだと。ギリギリまで声をあげるし、開催されてしまっても、会期中も、今日からでもやるべきだと思います。終わった後も責任追及をするという大人の背中を子どもに見せるということが責任だと思います。小さいことで良いと思うんです。特に今の局面で大事なのは都議選だと思います。五輪に問題意識を持って中止や延期を真剣に掲げている候補者を選ぶことが大きいと思います。できることはまだまだあります」

 政治アイドルの町田彩夏さんは、こんな表現で「言うべき事を言う大切さ」を口にした。

「五輪のように国をあげたイベントを目の当たりにしたときに、『今はやらない方が良いんじゃないか』とか『延期する方が良いんじゃないか』とか『いっそのことやめてしまったら』と思ったとしても、口に出して言うと『せっかく盛り上がっているのに水を差すようなことを言わないで』と白い目で見られるんじゃないかとか、昔風に言えば非国民扱いされてしまうというような空気感があります。みんな心の中ではそう思っていて言えないまま大変なことが起きるよりは、多少白い目で見られたとしても言うべきことは言って行こうと思います」

(了)

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