言い訳はすまい……スミマセンデシタ
それでは本編をどうぞ!
□■<慶都・大闘技場>観客席 【賢者】ジェーン・ドゥ
私は今何をやっているのだろうか…………?
「かーっ! やっぱり姐さんの戦装束は最高ですよねぇっ! カシミヤ君のあの凛々しい立ち姿もうん、イケますね!」
「…………」
天地の初期スタート地点である慶都。
中立都市でもあるこの都はこの天地の国でも色々と例外要素の塊でもあり――今私が観戦しようとしている決闘に使われる大闘技場が複数あるのもその一つだ。
他の国とは違い、興行としての側面はあまり大きくなく、武芸者達が互いに切磋琢磨し、己の武威を極め合い高め合う場所であり、観に来ている観客達も娯楽と言うよりは見稽古や知り合いの武芸者や
「あー私も参加したかったなー! でもやっぱりあの域の戦いになるとシナジーがないと厳しいんですよねー」
「…………」
……本来であれば私には殆ど縁のない場所だ。
戦闘と言う物にまるで興味がない、という訳ではあまりないが、それでも私の戦術からすると決闘での戦闘模様は余りにも参考にならないからだ。
私は普通に後衛なのだ、何故モンスターに囲まれる様な戦闘を何度もしなければ……というのはさておき。
「あ、それでもこの【ムラマサ】も好きなんですけどね? でもこんな名前なのにアームズでもキャッスルでもないってちょっと不思議ですよねー?」
「…………」
さて、それでも、そんな天地の決闘場であっても勿論試合の内容や時期によっては娯楽として観に来る客や試合内容の取材に来る【記者】達が来る場合だって当然ある。
祭りに乗じて行われる決闘試合や大会等では観客も入りきらない程にやってくるし、そうでなくても様々な意味での人気者達や、決闘ランカー等の有名人が出る試合であればその知名度に応じて相応の観客がやってくる物だ。
特に、<マスター>が急増した今となってはエンブリオにより上位の武芸者でも手を焼く相手も増えてきており、更に試合の内容も映える事から各種新聞社なんかはこの天地であっても多くの試合に顔を出すようになってきているのだとか。
――そう、例えば今まさに行われようとしている、天地でも珍しい
「そういえば今思ったんですけどやっぱりあの二人と組んでたんですからジェーンさんも結構やれるんですかね? 前回はすぐやられちゃいましたけどもし良かったら今度――」
「――ええい、五月蠅いぞ君!? 少しは声量を落とせ。観戦のマナーも守れんのかっ!?」
「あっ……す、すみませんー……」
横で喧しく絡んできていた娘に一喝をして黙らせる。
多少は罪悪感が湧かないでもないが、だからと言って軽々に絡んで来られても面倒なのでこれで良いだろう。
……そもそも、金に困っているからと関係者席を選んだのが運の尽きだったか。
周囲はかの野盗クランの者達が勢揃いしている。
野盗クランと言えど、流石に闘技場で騒ぎを起こす気はないのか――という訳でもなく、皆夢中になって決闘場の方に被りつきになっているだけであった。
これだから天地の<マスター>は……!
「や、でもほら。もう始まりますし、そりゃテンション上がりますよって……」
「……それはそうだが。だが、限度と言う物はあるだろう」
そう返しながらも、決闘場の方を見やる。
そこには、試合に纏わるアナウンスと解説を聞き流しながら戦闘開始の合図を待つ、8人の<マスター>の姿があった。
決闘場の東に立つのは、かの野盗クランの一パーティ6人組――半透明な車に天井を開けて乗り込む4人の女傑と、更にその車の前方に左右に分かれて仁王立ちする2人の前衛と思しき女傑。
空中には数体の【陰陽師】系統の物と思われる怨霊型のモンスター。
確かあれは呪怨系状態異常や闇属性魔法を得手とするモンスターだ。援護火力として分かりやすい的だ。
車外に居る2人が前衛であるならば、残りの4人を後方火力や支援と考えれば実に理想的なパーティ構成である。
AGIの低くなりがちな後衛達をチャリオッツと思しき車に乗せる事で機動力も確保しているのだろう。
……先日の戦闘の時点で理解していた事だが、野盗クランというと野蛮に思える物だが、そのイメージとは裏腹に彼女達の戦術能力は普通に高い水準にあると見て取れる。
その上で、彼女達は常日頃から決闘に精を出している者達と比べても遜色のない対人戦闘経験を有しているのだ。
エンブリオの特性もあり、その総合的な戦闘能力は如何程の物か――
そして、対する2人組の少年――ジーニアスとカシミヤに関しては――全く気負った様子がない。
むしろ、合図を今か今かと楽しそうに待っている様は、確かに年相応の少年らしさではあるが……
戦闘準備すらもあの従属モンスターの【ルミナスエレメンタル】を空中に待機させておくのみで、隊列すら整えようとしないのは……まぁ、彼らにとってはいつもの事だ。非常に残念ながら。
相手は全員、合計レベル500のカンストにして、上級エンブリオ持ちの上級<マスター>で、更にパーティ構成もシナジーも考え抜かれた、この世界で見ても一流の武芸者が相手なのに。
通常の決闘試合とは違い、人数にも圧倒的に差がついている不利な状況であるというのに。
その上で彼らは、その程度の逆境は
――これだから天災児は!
内心で何かに罵倒しつつもその時が――試合開始の合図が、紡がれる。
――前に。
「――それでも、流石に今回は勝てます。なんたって新開発した作戦があるんですからっ」
「……ほーう?」
作戦、作戦。作戦か……
既にあのフルパーティは中々にバランスが良い様に見えるが――
「……それは、あの二人に通用するのか?」
「ええ、勿論ですっ! いいですか、対人戦や〈UBM〉等と戦う時はですね――」
『――それでは、尋常に――――試合、始めェ!!』
「――初手が一番肝心なんですよね」
◇◆
そして、彼女の言葉を肯定する様に、
野盗クランの前衛二人が己の必殺スキルを――強靭な竜の骨格を纏う《
二人の少年は自身の足元と眼前に魔法陣を浮かべ己のスキルを発動させ、今まで通り速攻で戦いを終わらそうとし。
野盗クランの後衛達は弓を、クロスボウを構え発進しようとする
――――そして。
「――《
同じ様に車に乗っていた最後の一人の
それにより、戦いの
◆◇
「あれは……戦闘型のキャッスルか?」
自身のエンブリオにもキャッスルのTYPEは入ってはいるが――それでも、他者のTYPE:キャッスルのエンブリオをそうと意識して見る事はそう多くない。
その多くは生産型、拠点型であり、街中で展開されている為、普通の家屋との区別が付きにくいのもその理由の一つだろう。
……そして、最も他者のエンブリオを見る機会が多い戦闘においても尚、TYPE:キャッスルのエンブリオを見る事は多くない。
基本的に展開に時間を要するTYPE:キャッスルのエンブリオであるが、その展開時間は戦闘において致命的な隙となる為、やはりそのままではどうしても戦闘時には使い辛いからだ。
その為、戦闘型のキャッスルは《高速展開》《即時展開》《瞬間転換》等のスキルを習得するのだが……おそらく、今発動されたのもその類の効果が付いたスキルなのだろう。
「はいっ。ただ、ちょっとあれは敵味方お構いなしなのでいつもの狩りでは使いにくいんですが、こういう場なら覿面なんですよね」
「ほう、それは何よりだ。…………だが――」
そう。
この時、この場面で使ったのならまず間違いなくあの野盗クランが有利になる様な物であろう事は想像付くのだが……
「――中が全く見えないのは、一応興行としてどうなんだろうな?」
……展開された巨大な漆黒の石塔は決闘場のほぼ全てを覆っており、勿論その参加者達は漏れなくあの塔の内部だ。
当然ながら、観客であり、結界の外から決闘を観戦していた私達には……内部の出来事が全くと言って良い程に見えないのだ。
――これがあるから決闘でもキャッスルは嫌われているのだったな。
「い、いや。戦略上はとても有効なんですよ? 有効ではあるんです……」
「エンブリオである以上、それは間違いないだろうが――」
『結界内の特殊視界を実施致します!』
司会のその
その内部は、塔の外観と同じくした黒と石で――否、
「
内部に漂う陰の気に無数に突き出た石碑。
一部を除けば、戦闘型のカンスト以上の実力者である彼ら、彼女らの動きがAGIなんて三桁しかない私よりも遅くなっている程に――
「あれは速度低下、だけではないな?」
「ソラさんのエンブリオ、【ニルヴァーナ】の能力特性は、
なるほど、と思いながら、かのエンブリオの無制御であるが故の出力の高さについて感心する。
彼らの
そして、その想像通りに――あのキャッスルの中で尚、十分な発揮速度で以て動いている者が居る。
……それも、複数。
一人は――知っての通り、カシミヤだ。
発揮速度を数十分の一にしてなお、足元の魔法陣を駆使し亜音速域で動き回りながら包囲してくる二人の前衛を切り崩そうとしている。
そして、カシミヤと対峙している二人の前衛もまた、あの中にありながら高速戦闘を行っており、そう易々と突破させてはくれていない様だ。
一人は、かの野盗クランの
必殺スキルを発動し、全身を鋭き骨で包み込みながらも手に持った骨槍で、頭部の角で、両腕、両脚の骨棘で亜音速に至らぬ程度の速度でありながらも迂闊にカシミヤを近付けない様に牽制している。
あの骨は……伝説級のモンスターである【
決闘の仕様上アイテムも元通りになるとは言え、あれは恐らく切り札級であろう。よく衆人環視の中で使える物だ。
そして、もう一人の前衛――ある意味では、こちらの方が
あのキャッスルの内部であって尚、通常通り亜音速域の高速戦闘をカシミヤと繰り広げられる、その絡繰り。
間違いなく、あの金色のオーラが状態異常無効か、あるいはそうでなくとも何らかの方法であのキャッスルの影響を受けなくなる類のスキル―ー!
そして、まともな速度で動いているのはその三人だけではない。
チャリオッツ系統と思われるあの車や、野盗クランが使役している怨霊型のモンスターもまた、かのキャッスルの影響を受けずにその乗せた仲間の攻撃や魔法攻撃によって二人に反撃の隙間を与えぬ様に牽制を続けていた。
……能力特性が走馬灯、であると言うのであれば非生物であれば効果を受けないのもまた然り、と言った所だろうか。
残りは総じて、あの【ニルヴァーナ】の影響を受け、行動が超鈍足化しているのが見て取れる。
しかし、そうであっても――
『《
『《
『ハッハァ! 今日こそはその首取らせて貰うよ、カシミヤァ!!』
『ははっ! 届いてる、今の私はあのカシミヤに届いてる――!!』
『『――――ッ!』』
状況を制しているのは――彼女が言う通り、明らかに野盗クランの方であった。
確かに、初手――あの【ニルヴァーナ】の必殺スキルを発動された時点で、彼ら二人は圧倒的に不利な状況へと追いやられる事となった。
カシミヤは自身の全速力であってもその影響により相手の前衛と数段先と同等程度の速さにまで追い落とされている。
そして、その彼の速度もスキルによる賜物。少しでも気を抜けばスキルが切れ速度が落ちた一瞬を狙われ切り崩されるであろう事は言うまでもないだろう。
本来であれば前衛であるカシミヤを援護する筈のジーニアスは――速度を落とされた状態でありながら超高速の矢と超威力の矢、そして怨霊達の闇属性魔法を防御結界で防ぎ、適度に反撃するので手一杯な現状だ。
「……ふむ」
「このまま勝てるんでしょうか? どうなんでしょうか!?」
一目見れば確かに少年達を上手く詰ませたかの様な構図だ。
――だが多少なりとも不本意ながらあの二人と共にモンスター狩りに精を出してきた私から言わせれば、今の二人は、“機を待っている”様に見える。
基本的にあの二人は速度型であり、戦法も速攻の瞬殺を得意としているが、その実二人共年齢に全く見合わず非常にクレバーな面を持ち合わせている。
必要とあれば躊躇いなく搦め手を行使するし、その速度を、身体捌きを活かした耐久戦だって十分に出来る。
……若さ故か、あるいは彼らの気質故か、あの二人に
そして、転じて冷静に戦局を見てみると――むしろ、野盗クランの方が攻め焦っている様にも見えるのは果たして気のせいだろうか。
防御を固めたジーニアスと、回避に専念するカシミヤを捉えられずに攻めあぐねており……それが殊更焦りに転じている、その様な印象を受ける。
もしかしたら、あの【ニルヴァーナ】の強力な必殺スキルに持続時間か、継続的なコストの消費等、それらに類する時間制限があるのかもしれない。
まだ必殺スキルに関する研究は進んでいないが、あれほど強力な効果なのだ。
そういった事も十分にあり得るだろう。
そして――
「……動いた!」
「えっあっ、本当だっ!?」
二人の射手の内、片方――神速の射を行っていた方が、【矢筒】内の矢が切れた為《瞬間装着》により【矢筒】を交換した、その瞬間。
いつの間に用意していたのか、ジーニアスが数百本の鉄杭を――【棒手裏剣】を中空に浮かべ、それが激しい風の魔力を帯びる。
――ここで《
あの数は確かに制圧力こそ高かろうが――下級の攻撃魔法にして、その特性上相手の物理防御力によってもろに軽減される、高位の【翠風術師】であればまず使わない様な攻撃魔法だ。
相手も防御力が高い面子であり、後衛であっても急所に直撃しない限り致命傷は狙えそうにないが――
『――リン!』
――そして、今まで戦闘開始してずっと光魔法による光学迷彩で姿を隠していた【ルミナスエレメンタル】、従属モンスターのリンが動く。
それも光線の魔法による攻撃ではなく、激しい閃光によって戦場全体をそれこそ何も見えないくらい激しく照らし出したのだ――!
『ちぃっ! 目晦ましかい!?』
『じ、《自動回避運行》です!』
『――シィッ!!』
一瞬のホワイトアウト。
ドリフト音、複数回に渡る金属音、何か硬い物を貫く音に、地面に沢山の物が突き刺さる音が鳴り響く。
その後に、視界が晴れた先には――
『な、にいぃぃッ!!??』
『わ、私の【オボログルマ】がぁっ!?』
頭部を二刀を握るカシミヤに貫かれ、首を刎ねられ光の塵となって消えていく野盗クランの前衛の片方と――地面に突き刺さった数百の【棒手裏剣】によって、
――そうか、《影縫い》は《シュートアロー》でも……いや、確か出来なかった筈だが――?
私が内心で疑問を呈している、その一瞬の間に。
前衛の片方を崩された野盗クランのオーナーの首も流れる様に切り離され、動きを止めた
「あぁー…………今回はイケると思ったんですけどねぇー……」
「戦術は非常に良かったと、思うんだが――」
結局。
その後は劣勢を覆せずに、時間も掛からずに全員が光の塵へと変わり――勝者は、圧倒的少数だった二人の少年であった。
敗北した野盗クランであったが、その戦法のシナジーや地力、戦闘経験に関しては十分目を見張る物があったと、私は思う。
だが――
「何というか――相手が悪かった、としか……」
「……いえ、いえ! だからこそ、挑戦し甲斐がある、って物ですよっ!」
――これは、懲りそうにないな。
その感想と共に、今回の試合観戦は終わるのだった――――
◆◇
◇
◇
◇◇◇
1月10日(日)
今日は日曜日っ! ……冬休み最後の日曜日!
長期休暇の休み明けが近くなってくると少しだけ憂鬱な気分になるのは夏も冬も変わらないね……!
明後日までにちゃんとやる気を充填しておかないと、むむむ…………
……そういえば、今日は勝にまた暫く慶都に居るからー、って伝えたら心配そうに少しは落ち着いた方がいいんじゃ? って言われたなぁ。そんなに落ち着いてなかったかな?
……うん、まぁ、落ち着いてなかったね!
でもダンジョン巡りもかなり楽しかったし、他の国行った時も暇があればまたやりたいなぁ、とは未だに思っているよ、うん。
僕はほら、割と何処でもやれると自負しているからね、えっへん。
……いや、それでも頻度的に暫くは良いかなー、とも思っているんだけども。
自然ダンジョンも神造ダンジョンも、やっぱり攻略するには結構気を張らなきゃいけないからね。
そうそう、そんな事もありカシミヤと一緒に行ってた狩りも、明日の約束もあるし、後はちょっとした仕上げくらいで一段落付けよう、という話になったんだよね。
僕もカシミヤも冬休みがもう終わりなのは同じだし、ログイン時間を取れるボーナスタイムはもう終了。ここらが潮時だと言う話になったのだ。
学校はちゃんと行かないとね!
さて、そんな小話はともかく、今日も今日とてデンドロにログイン!
今日は明日の約束に向けて慶都に移動して、久しぶりに野試合――は、負けてデスペナになっちゃったら流石に狼桜さん達に凄く悪いからやめておくとして。
慶都に到着してからは明日に向けての準備、という事で一先ずカシミヤとは分かれて別行動する事になった。
前みたいにカシミヤと一緒に模擬戦したり、決闘に参戦してみても良かったんだけど……
まぁ、たまには一人で練習したりしたい事くらいいくらでもあると思う。必殺技の練習とかね。僕もよくやってるからね!
カシミヤがどんな必殺剣を編み出して来るのか――! それは後の楽しみと言う事にしておくとして。
……僕の方は若干手持ち無沙汰になっちゃったから、一緒に行動していたジェーンさんに何か希望はあるか聞いてみた所、時間があるなら買い物か、あるいは
ジェーンさんの【クローン】の特性上、リソースを溜め込めば溜め込んでおくだけ何時であろうと状況に合わせた【ジェム】を複製量産するだけで実質上の【ジェム】生成貯蔵連打理論に近い事が出来るし、それがジェーンさんの戦闘上での主力だからね。
……普通の戦闘にもリソースを使うのは不便だなぁ、と少しだけ思ったのは秘密。そういうエンブリオも結構あるらしいからね。
それでも、様々なアイテムを鑑定して複製できるアイテムを増やせば増やすだけどんなアイテムも即座に用意できる、ってのはちょっと凄いよねぇ……
まぁ、複製する際は変換したリソースと比べて多少劣るみたいだし膨大な複製可能アイテムの中から必要な物を選ぶのはジェーンさん本人の即断の判断力が問われるんだけども。
……ちなみに、僕が持っているアイテムも鑑定して貰って複製のレパートリー増加に協力しようと思ったんだけど、やっぱりと言うべきか、【ラスリルビウム】は無理だった。
まぁ、特典武具だしそりゃあね。多分、アームズ系統のエンブリオもほぼ間違いなく無理だろうとの事。
後は、意外だったのは【水晶之賢鏡】もダメだった所。保有リソース量の問題……かな?
もしかしたらコテツに渡してある【霊樹の械枝】とかも駄目かもしれない。
……進化とか、新たな固有スキル、必殺スキルでの解決に期待したい所だね!
その後は慶都周辺での素材採取やちょっとしたモンスター狩りに終始した一日だったかなー……
……珍しく、まったりと、何の事件も起こらなかった日だったねー。
ガチャ:
E 【ショートスピア】
E 【ポイズンポーションLv2】
D 【火竜酒】
ガチャでくらい何か事件が起こっても良かったのに……
◇
1月11日(月)
今日は冬休み最終日。そして――成人の日の祝日!
成人の日……成人かぁ。
僕が成人になる頃にはどんな風になっているのかなぁ……正直、全く想像ができないや。
……本当、何やってるんだろうねー?
さて、それはともかく――今日は狼桜さん達との再戦対人決闘の日だね!
折角慶都に居るのだからと当然の様に結界施設を使って決闘をする事になったんだけど――顔なじみの闘技場の管理人さんに施設のレンタルに行った所、もし良ければ興行として観客が居る中で戦ってみないか――と、提案されたのだ。
……まぁ正直僕もカシミヤもそれは全く問題なかったんだけど、一応野盗クランである狼桜さん達は手の内を晒すのは嫌いそうだからどうかなー、って思ったんだけど向こうもそれで構わないってさ。凄い自信だ!
――そんな感じで始まったVS狼桜さん達の野盗クランパーティとの決闘!
久しぶりの決闘で僕もカシミヤもテンション上がってたのもあって、気合の入り様は尋常ではなかったかもしれない。
……内容を全て書くにはちょっと長くなると思うから割愛するけど、良い試合だった…………
相手側も数の利があったとは言え、常の様に10人20人と言った規模で優位に立てる訳ではなく、そうであったとしてもその数の中からメンバーを厳選して個々のエンブリオとその
しかも、恐らくは僕やカシミヤが得手とする高機動戦法の
……ちょっと嬉しい物だね、挑戦される側ってのも。
僕は基本的に決闘ランカーに挑戦するか、或いは対等の位同士の決闘が主だったから、こういう経験は地味に初めてなんだよねっ。
結果としては僕達が勝ったのだけど、それでも全く気が抜けない良い勝負だったのは間違いないね!
これは、僕らも経験値稼ぎの狩りが一段落付いたと言ってものんびりしていられない……漲ってくるね!
カシミヤとの合同の経験値稼ぎの狩りは今日のその後の狩りで一旦終える事になったんだけど――うーん、さてどうした物か悩ましい所だね。
今回の一連の決闘やお礼にと観戦チケットも貰って観戦して、また決闘周りの知り合いの<マスター>も増えたし、手合せして貰って自分を高めるのもありかもしれない……かな?
ともあれ、今回の決闘はファイトマネーとかだけじゃなく実りの多い試合だった、狼桜さん達ありがとうー!
……ところで、なんで狼桜さん達は負けた筈なのにあんなに満足そうだったんだろう……?
追記:
観戦して貰ってたジェーンさんに決闘の感想を聞いてみたら「全員私とやっているゲームのジャンルが違い過ぎる……」って言われた。
そんな事ないと思うんだけどなー!?
ガチャ:
D 【ヘビィシールド】
F 【ロープ】
E 【地図:中央大陸北部】
マップはウィンドウであるんですけどー!?
◇
1月12日(火)
今日は冬休み明け。今年初の学校の始業式!
久しぶりの学校で僕も感慨が……ない訳じゃ、ないんだけど。
うん、何というか……冬休み、って言っても僕は家でゆっくり年越ししたり、少し買い物に付き合ったりちょっと知り合いの人に挨拶回りに行ったくらいで後はずーっとデンドロやってた様な気がする!
……冬休みの過ごし方って、あんな感じで良かったのかな、というのはともかくっ。
冬休み中は
夏休み明けの時よりは知り合い……友達の子も増えているしねっ。
今日の学校も始業式とHRで幾つかの連絡事項と明日からの予定を言い渡されて午前中で終わり、という拍子抜けする物だったし。
ともあれ、同級生、同学年、同校の皆はこの長期休暇中も特に何事も大きな事件とかもなく平和で何より。
すべて世は事も無し、だね!
学校から帰ってきた後は三人で一日遅れの鏡開きをする事に。
……あのお餅、ただのそれっぽい飾りじゃなかったんだ……何か謂れとかもあるらしいけど美味しかったからそれでいいよねって思う。食べ物はそれが一番だよ!
それにしても、正月前後はやけに行事が多いなぁ。これでも僕達の家は少ない方らしいんだけど。
……家が結構大きいらしいカシミヤの家とかはもっともっと大変なのかな? そういえば、リアルの用事も多目だったしね。
お汁粉に舌鼓を打った後は少し休んでまた今日もデンドロにログインする事に。
僕が学校に行っている間はジェーンさんを待たせちゃってたけど……ジェーンさんもジェーンさんで、一人でも今までやっていた様に街周辺でのクエストなら一人で達成できるんだよね。
ジョブもエンブリオも相まって手札の豊富さは凄い物だからね!
さて、冬休みも明けてカシミヤとの経験値稼ぎの狩りも終えた今日この頃だけど――ちゃんとこの後の予定はしっかり立てておいたんだよね。
というか昨日夜に通信魔法貰って予定が出来たと言うか……
泰央さんに春香への手紙の受け渡しについてちょっと依頼を請けるついでにそれを聞いたんだけど――それは難易度:10の
ズバリ、それは――功刀領と霧影領それぞれの復興支援のクエストだ。
……戦禍により壊滅的な被害を受けた土地の、回復。
それは復興支援と一言で言い切るには足りない程の余りにも大掛かりな
戦禍の元となった元凶の排除、人の気配が無くなった事で住み心地が良い場所を狙って住み着こうとするモンスターや動物の排除、戦禍によって倒壊した家屋や瓦礫の撤去。
住人を呼び戻すならそれだけじゃなく周辺や最寄の都市に繋がる道のモンスターの間引きも徹底しなきゃいけないし、復興支援が続いている間その間引きと警戒は怠れず、仮住まいに炊き出しの協力や復興に使用するアイテムの調達、土木仕事なんかも手伝う必要がある事だってあると思う。
そして、それらはどの様な復興支援のクエストでも共通して行われる事であり、更にその上で被害状況や復興させる都市特有の物何かも含めれば、大人数大規模長期間の一大クエストになるのだ――!
その分の
……僕も別に善意でとか、人助けがしたいとかそんな高尚な理由は全くないんだけど。
ないったらないんだけど。
霧影領には【隠密】や【影】の就職の際に結構世話になってたし、泰央さんにも出来れば、と頼まれちゃったし、僕もジェーンさんも割と出来る事は万能気味で色んな仕事をこなせるし、最近は戦闘ばっかりだったからたまにはそういうクエストも良いんじゃないかなって思ったり思わなかったりするし。
――ともかく、そういう訳で僕らは総合高難易度クエスト【復興支援――霧影領 難易度:10】に参加する事に決定!
戦闘の際に参考に出来そうな練達の剣士が凄い多い――いや、多かったっていう功刀領の方も気にならないという訳ではないんだけど。うん、まぁね。
とりあえず、今日は慶都で僕でも買える分の資材を買ってアイテムボックスに詰め込んで、コテツを迎えにイグニスで将都まで飛んでから霧影領に飛んでいく空の旅路。
イグニスに三人乗るのはちょっと厳しそうだったんだけど、コテツはいつの間にか飛行用の従属モンスターも買ってたみたいだったから大丈夫だった。
本当にお金持ちで羨ましいよねっ。
僕らの本格参陣は明日から。
もう作業を始めている人達も居るみたいだし、出来る事をやっていきたい所――頑張るぞー!
ガチャ;
C 【黄金色の染料】
F 【おにぎり】
B 【ブーストロッド】
これは幸先が良いかも!
魔法スキルの威力を向上させる効果を持った杖みたい。
一級品、ではないけど普通に良品と言った所なのかな?
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
名称:【皇金生命 ニライカナイ】
<マスター>:ラムダ
TYPE:ルール
能力特性:完全無欠
到達形態:Ⅴ
スキル:《
モチーフ:日本のとある地域で信仰されている異界、理想郷の伝説、“ニライカナイ”
紋章:天上より降り頻る祝福の光
備考:自身に黄金のオーラを纏うTYPE:ルールのエンブリオ。
身体的ステータス強化と言う副次的な固有スキルも持っているが、メインは必殺スキルにより今までのスキルよりも上位互換スキルになった“無欠”たる象徴。
即ち自身のあらゆる状態異常に対する完全耐性である。
また、必殺スキルになった事で出力も急上昇し、更にこのスキルに対する解除・軽減・無効化・封印等あらゆる干渉をも跳ねのける事が出来る様になった。
だが、そういった事が出来る相手が特殊過ぎて少なすぎて特に必殺スキルになってから強化された実感というのはないらしい。
名称:【死降庭園 ニルヴァーナ】
<マスター>:ソラ・レムリス
TYPE:ラビリンス
能力特性:走馬灯
到達形態:Ⅴ
スキル:《
モチーフ:涅槃を意味する仏教用語、“ニルヴァーナ”
紋章:地下より伸びる幾本もの死者の手
備考:カタコンベ型のTYPE:ラビリンスのエンブリオ。
その内部に入っている者に無差別に【走馬灯】の状態異常を与える。
【走馬灯】は特殊系統の複合的な効果を持った状態異常。
具体的には精神系状態異常の【恐怖】と同効果に、呪怨系状態異常である【死呪先刻】(カウントは対象の合計レベルに等しい。モンスターの場合5倍する)と同効果。
更には行動する際の発揮速度を数十分の一にまで鈍化させる。
が、思考速度・知覚速度は変わらない為非常にゆっくりとした視界を体感できるだろう。
更にダメ押しとして死の予感が纏わりつき、感知系のパッシブスキルを無効化すると言う、中々に豪華な効果のエンブリオである――無制御故、<マスター>やその仲間も等しく効果を喰らう事を除けば。
無制御故の出力の増大により、通常の手段では状態異常に対する抵抗が不可能となっているので悪い事ばかりではないが。
――この様なエンブリオが孵化するパーソナリティの持ち主が、今も変わらず<Infinite Dendrogram>を続けているというだけできっと何らかの価値があるかもしれない。