青酸連続殺人、筧被告の死刑確定へ　最高裁判決

近畿3府県で夫や内縁関係にあった男性など計4人に青酸化合物を飲ませ、うち3人を殺害したとして殺人と強盗殺人未遂罪に問われ、一、二審で死刑とされた筧千佐子被告（74）の上告審判決で、最高裁第3小法廷（宮崎裕子裁判長）は29日、被告側の上告を棄却した。死刑が確定する。

判決理由で第3小法廷は、被害者の財産を得るための殺害だったとして「動機に酌むべき点はない」と指摘した。「将来を共にする相手という信頼に乗じ、青酸化合物を入れたカプセルを服用させる態様は計画的かつ巧妙。強固な殺意に基づく冷酷なものだ」と述べた。

その上で「同種の犯行を約6年の間に4回にわたって繰り返し、人命軽視の態度が顕著というほかない」と非難。筧被告が高齢であることなどを考慮しても、死刑はやむを得ないと結論づけた。裁判官5人全員一致の意見。

判決によると、筧被告は2012年3月～13年12月、遺産取得のために京都府向日市の夫、筧勇夫さん（当時75）、内縁関係だった大阪府貝塚市の本田正徳さん（同71）、兵庫県伊丹市の日置稔さん（同75）に青酸化合物が入ったカプセルを飲ませて殺害した。

07年12月には、約4千万円の返済を免れる目的で神戸市の知人、末広利明さんの殺害を試みた。末広さんは重い障害を抱え、09年に79歳で亡くなった。

事件は目撃証言や物証といった直接証拠が乏しく、弁護側は無罪を主張していた。筧被告は公判前に軽度の認知症と診断されており、犯行時の刑事責任能力や、裁判内容を理解する「訴訟能力」などについても争われた。

裁判員裁判で審理された17年11月の一審・京都地裁判決は、「犯行時間帯に一緒にいた」「死亡後に遺産の取得手続きをした」などの状況証拠に基づき、筧被告の犯行だったと判断した。

犯行時に近い13年12月ごろのメールのやりとりなどを検討し「犯行時点では完全責任能力が認められる」と指摘。自らに不利益な内容は否定する公判中の態度などを考慮し、訴訟能力も認めた。19年5月の二審・大阪高裁判決も、一審判決を支持し、筧被告側の控訴を棄却した。