食物本草本大成 全12巻

上野益三 監修・吉井始子 編

解題/吉井始子・上野益三・島田勇雄

A5判上製・平均540頁
本体95,000円+税 *分売不可
ISBN978-4-653-00301-4


  食品161種の「宜禁(ぎきん)」について平易に詳述された、曲直瀬道三(まなせどうさん)の『宜禁本草』(江戸初期刊)や、我が国で最初の本格的な食物本草書『閲甫食物本
草』(寛文11年刊)など、江戸期に刊行され、広く普及した著名な食物本草書30点を集成、影印して、詳細な解題を付す。

書目編成表

第一巻  著者未詳

宜禁本草集要歌

江戸初期刊

『和歌食物本草』は歌本草、本書は本草歌と呼ばれ早くから書籍目録に記載されている。『和歌食物本草』にくらべ、専門語がいたるところで詠み込まれ、食品数・歌の数も多い。両書は互いにかかわりなく成立し、前後して出版された。
 曲直瀬道三著

宜禁本草

江戸初期刊

著者は安土桃山時代の名医、著書も多い。本書は薬草を中心に、五穀・五菜・五菓・薬中草類・木類玉石全土水類・獣・諸禽・虫魚・月禁・合食禁等、宜禁をといたもの。漢文。
 著者未詳

宜禁本草

寛永六年刊

曲直瀬道三著の同名の書とは異本である。食品
161種について平易に宜禁を述べている。振り仮
名付きの平仮名交り文。巻末の毎月之禁物、病者つねに食すべき物以下血忌日までの部分は、和歌食物本草再版の際に附録として付けられ、広く流布されている。
 曲直瀬玄朔編

日用食性

寛永十年刊

日用食品を撰び、食性と能毒にわけ、簡潔に記した二巻の書に、梅寿撰の諸疾禁好集を加え、最後に日用灸法を付したもの。小型本であるが、短期間に異版も加え十四回出版された。この組合せは、内容の訂正と増補また詳記と簡略化を繰返しつゝ踏襲されている。
 福田松珀編著

増補日用食性

貞享元年刊

玄朔著の日用食性に、季時珍の本草網目等により、121品目の増補を行い、前書の食性と能毒とを一つにまとめ、食品名の上に出典を挙げ、上・中・下品を示し、多識編 和名鈔により、和名を訂し、そのあとに諸疾宜禁集と日用灸法が付く。初版は万治二年以前の刊。
第二巻  著者未詳

和歌食物本草

寛永七年刊

日常良く使われる食品約240を撰び、和歌の形式
をかり、食性能毒・食べ合わせの禁物、また食する
時期、分量等について述べたもの。いろは順に分けた後、更に草・木・鳥・魚虫菓之部の順にならべてある。歌の数787首。江戸中期にかけ、版をかえ
繰返し出版された。
 山岡元隣編

食物和歌本草増補

寛文七年刊

医者であり、また北村季吟の門人である著者が、『和歌食物本草』と『宜禁本草集要歌』の二書より2170首撰び、品目ごとに『本草綱目』『増補日用食性』等の諸説をあげ、自説を加え出版したもの。
巻末に「世間流布之常剤」がある。後に『袖珍増補食物和歌本草』が出版されている。
第三巻  古呉薛巳編

薬性本草約言

和刻版・萬治三年刊

序文によると、陶弘景の別録の中から日用に欠くべ
からざるものを二種に分類し、別に簡約にまとめたとある。それらが「薬性本草約言」と「食物本草約言」とであろう。本書はその二書を併せ納めて和刻したもので、中国本草学を真剣に学習していた頃の我が本草学に深い影響を与えた。
第四巻  李杲・呉瑞編

食物本草

和刻版・慶安四年刊

本書は、明末の偽托の書と推定されているが、時珍の『本草綱目』とともに、江戸時代における食物本草学に深い影響を与えたものとして知られている。通常『東垣食物本草』と呼ばれている。巻八より巻十までは日用本草である。
 奥村久正著

料理食道記

寛文九年刊

正しい食生活を送るための道しるべとして書かれた
もの。食物を中心に、家庭医学・家庭衛生・食養生の分野まで筆をすすめ、その対処法をといている。上巻に食物差合、下巻に食養生、料理の部がある。食品別に分けられた国々の名物は文献として重宝である。
 名古屋玄医著

閲甫食物本草

寛文十一年刊

本邦での最初の本格的な食物本草と言われている。漢人と邦人とでは、風俗の異るように食生活も異るとし、日常の食品290種を撰び、穀・菜・菌・水草・菓・草・魚・介・禽・獣部にわけ、従来の諸家の説を吟味し撰び、閲甫曰と自説を加えている。校訂は野村玄敬があたっている。
 元政著

食医要編

延宝三年刊

京の瑞光寺の高僧元政上人は、身心の二病は暫くも相離れず、心病むときは身も病むとし仏道を学ぶものは医道を学ぶことをすすめ、蒐集した諸家の説をもって、実用を考え日用食品107種をえらびまと
めたものである。
第五巻  新井玄圭編

食物摘要

延宝六年刊

食品二百数十種について、本草関係書より、食品ごとに諸説を抜書し、名義・気味・禁忌主治等にわけ集録したもの。版を改め、『食物摘要大全』『食物本草大成』と改題し再度刊行されている。門人の木村了古・町田了仙が校訂を行っている。
第六巻  中山三柳著

遂生雑記

天和二年刊

著者は長沢道寿の門人、医書のほかに飛鳥川等の随筆も書いている。本書は、食品三四四品について、水・穀・菜・水草・菌・蔬菜・果・魚・介・禽・獣部にわけ諸家の説を集録し分類ごとに附録をつけ、巻末に「逐月飲冝忌」がある。校訂は田中柳軒・雨宮柳仙が行っている。
 蘆桂洲編

食用簡便

貞享四年自序

日用食品を、草菜・穀水・菓糖・鱗介・禽獣にわけ、食性能毒を記しているが編集に特徴があり、煮・和(アエル)・炙・焼・膾・温煮生などの見出しを付け、簡単な料理法を示し宜禁を述べている。実用書としては実に便利に出来ている。
第七・八巻  向井元升著

庖厨備用倭名本草

貞享元年刊

加賀藩の前田対馬守の依頼により執筆された名著。食品460種を撰び、倭名・形状・食性能毒等を述べる。凡例に『東垣食物本草』、時珍の『本草綱目』を基にし、源順の倭名鈔、林氏の多識篇により和名を訂し、不明なものは山老漁翁、俗間にききとあり、本邦の古実も伝えている。首巻に質疑・合食禁・◊部調飪・妊娠保養等をおいている。
第九・十巻  人見必大著

本朝食鑑

元禄十年刊

江戸時代に刊行された食物本草関係書中、もっとも豊富な内容を持ち、食物史・料理史・食礼・物産学・民間行事等々、多方面にわたる貴重な資料である。『本草綱目』を基にし、記述もそれによっているが、自らたしかめたもののみ記したとある。動物食品の数が多いのも特徴の一つである。
第十一巻  馬場幽閑編

食物和解大成

元禄十一年刊

別名を『広益日用食性大全』と言う。上巻に食物食合・毎月禁好物・寿保按摩図解・灸法(等)・諸病禁好物・中巻いろは順、下巻には水・酒・粥・飲食果子・糕(モチ)・野菜干物・鮑魚(ヒモノ)・塩漬魚・鱛酢菌・小鳥等。上巻には挿図15図がある。総振り仮名で片仮名交り文。
 著者未詳

広益日用食性能毒

元禄十四年刊

日用食性能毒・諸疾宜禁・灸法という従来からの構成を踏んでいるが、出典は広範囲に集録され、益々詳しくなり充実した内容となっている。巻頭に丁付の入った詳細な目録があり、必要により検索し使われた書物であることを示している。何故か撰者は書かれていない。
 (中野崇庵編)

懐中食鑑

宝暦十二年刊

中野崇庵編の平仮名で書かれた『掌中しよくかゞみ』は宝暦12年に堅長判で刊行された。底本として使える初版がないのでやむをえず、再刻本嘉永二年版を取り上げた。撰者名をとったまやかし本であるこの種の小形本は、日常生活に重宝に使われたものである。
 松岡玄達編

食療正要

明和六年刊

著者の歿後、嗣子定菴が遺稿を校訂し、これを刊行
したもの。433品目。まず、達曰と自説をあげ、『本
草綱目』を基に諸家の説を加え、気味・主治を簡潔
に述べている。巻末に、合食禁、救急捷方、治諸畜
病方がある。
第十二巻
 
 香月啓益著

巻懐食鏡

明和三年刊

京の儒医・香月牛山著、松岡恕庵序。薄い紙を使っ
た小型本で柳枝軒より刊行された。食品ごとに気味・主治・禁忌の順序で諸家の説を挙げ、啓益曰と自説を述べている。漢文。巻末に灸法が付く。簡潔で見易い様にとの工夫があり、参考書として便利である。初版は正徳六年に刊行された。
 大津賀仲安著

食品国歌

天明七年刊

著者は、京都長生院の僧侶である。水・穀・造醸・菜・木・果・獣・禽・魚・介・菌等にわけ、食品の禁忌能毒を和歌に詠じたもの。江戸初期の『和歌食物本草』『宜禁本草集要歌』は、『重宝記』等にも取り上げられ流布しているが、それらと比較すると面白い。
 小野蘭山著

飲膳摘要

文化三年刊

著者は、大著『本草綱目啓蒙』の口授者小野蘭山である。日用食品を穀類・諸肉・菓肉・野菜にわけ、俗称によりいろは順に配列し、巻末に合食禁などがある。初版は文化元年。度たび版木を焼き新刻の際僅かに増補を行っている。啓蒙書。
 山本世孺著

懐中食性

文化八年刊

菜・穀・造醸・魚・鳥・獣・果部の七類にわけ食性能毒を簡略に記す。本文のあとに、食傷備急方・諸病禁宜がある。丁付の入ったいろは順の目録は振り仮名が付けられ検索に便利。
 石川元混編

日養食鑑

文政二年刊

日用食性を通俗的な呼称で、いろは順にわけ平仮名で示し、その下に漢字を置き、能毒・禁忌を簡潔に記している。例言に「常に座右に置ば医に問ふの煩なく飲食の能毒を知こと自ら分明なり」とある。啓
蒙書。
 阿部櫟齋著

救挙要

天保四年序

別名を『豊年教種』という。草木の能毒・救慌の薬方・有毒の草木を挿絵で示す等、かてもの・平時の貯え方・救急法と饑饉に生きのびるために必要な事柄を広範囲に撰び分かりやすくといている。
 羽倉用九著

饌書

弘化二年跋

凡例に「此編唯載邦出而不及海外異産、其分以四叙尚時食也」「我邦海鮮尤饒尤美」とあり、主として魚鳥を四季にわけ、その形状・産地・料理法を述べたもの。外編・附録に魚鳥以外の食品101品を加
えている。漢文。
 大蔵永常著

食物能毒編

嘉永元年刊

『巻懐食鏡』と『食物本草』(閲甫)を基にし大蔵永常が撰し、高宮倍Ÿが「山家の女子」にも分るようにとやさしくまとめたものでいろは順。本書は当初、田舎薬方集の附録として作られた。初版は弘化五年(嘉永元年)、嘉永二年版には「諸病禁宜」「食物備急方」が増補されている。
 青苔園著
 高嶋春松画

魚貝能毒品物図考

嘉永二年刊

大阪の雑喉場鮮魚市(ざこばなまうをいち)に出入する人々を対象に、魚貝の食性能毒・形状・味の良し悪し・喰合せ・産地等を記した図入の通俗書。初版は天保八年に「海川諸魚掌中市鑑」という書名で出版された。巻頭に『魚貝能毒品物図考』を置く珍しい資料なので付載する。

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