January 15, 2017

謎のウィザードリィ版権団体「FRP Assets」を追う

年末年始にNHKで放送された特別番組、
ドラゴンクエスト30th そして新たな伝説へ』。
筆者もゲームファンの端くれとして、しっかり観ました。

番組の前半パートは堀井雄二氏やすぎやまこういち氏、
そして鳥山明先生へのインタビューがメイン、
後半はFCの『ドラゴンクエスト』が誕生するまでの経緯を、
インタビューと映像資料で振り返ってみる…という構成。
DQ誕生の経緯については漫画『ドラゴンクエストへの道』をなぞっていて、
その中でやはり『ウィザードリィ』と『ウルティマ』について触れられていたのですが、
筆者が注目してしまったのは、その前者の版権表記。

frpassets

(出典:『ドラゴンクエスト30th そして新たな伝説へ』)

そこにあったのは、「FRP Assets / Robert Woodhead」という文字でした。
表記の後半はお馴染み"狂王トレボー"こと、
ウィザードリィの原作者のひとりであるロバート・ウッドヘッド氏ですが、
前者の「FRP Assets」は全く見慣れない表記。
どんな団体なんだ…?と思い、とりあえずgoogle検索にかけてみるも、
引っかかるのは強化プラスチック(FRP)関連の英語ページばかり。
後ろに"wizardry"を付けて検索しても、まったくそれらしい団体は見つかりませんでした。

ここで改めて、ウィザードリィの権利関係の流れを簡単におさらいしてみますと…

最初は原作者であるアンドリュー・グリーンバーグ氏とロバート・ウッドヘッド氏、
そして販売を手掛けたsir-tech社の3氏がウィザードリィの権利を有していた。

3作目の制作後、アンドリュー氏とsir-tech社の間でトラブル発生。
アンドリュー氏、ウィザードリィの制作から手を引く。

4作目制作後、「見解の相違」と「新しいことをやりたくなった」という理由で、
ロバート氏がウィザードリィの制作から離れる。
(ロバート氏はその後AnimEigo社設立)

1992年ごろからsir-tech社とアンドリュー氏の間で訴訟が発生する。
内容はアンドリュー氏が部分的に権利を持つウィザードリィを使って
sir-tech社がライセンス提供等で利益を得ていることについて、
その利益の一部をsir-tech社はアンドリュー氏に支払う義務があるが、
それが一時期から未払いになっている…というもの。
ウィザードリィ6作目(BCF)から呪文名や根本的なシステムが変更されたのも、
アンドリュー氏が権利を持つ部分をゲームから排除することで、
この訴訟から逃れる狙いが少なからずあったものと思われる。

その後2000年前後に、sir-tech社は所持しているウィザードリィの版権を
sir-tech Canada社、および1259190 Ontario社に委譲し、
そこからライセンスを受ける形でウィザードリィ8の制作、
そして日本の多くの企業へのライセンス提供を行う。
(但しこの2社、訴訟問題を有耶無耶にするためのダミー企業という見方が有力。
2社の代表もSir-tech社の代表と同じ)


2006年、日本の企業アエリア社が前述の2社の持っていたウィザードリィの権利を取得。
その後、版権管理会社IPMに委譲→再び親会社に委譲…という流れを経て、
2017年現在も6以降のウィザードリィの権利は、
GMOゲームポット社(アエリアから改称)にある。

※2020/10/29追記:
2020年現在、6以降のウィザードリィの権利はドリコム社にあるようです。

こういった流れで、ウィザードリィの版権には諸問題こそあるものの、
この流れに「FRP Assets」なる団体はどこにも出てこないのです。

いったい、この団体は何なんだ!?
そう思って、ダメ元でNHKのメールフォームから問い合わせをしてみたところ、
なんと、番組スタッフの方から回答を頂けました。
直接の回答の転載は行えないため、要点を絞って紹介しますと…

「FRP Assets」は『ウィザードリィ』の開発者から著作権を買い取り、現在所有している法人。
・この法人の詳細については、番組制作側も把握していない。

…どうやら、本当に権利を持っている法人であることについては間違いなさそうです。
となると、誰から権利を買い取ったのでしょう?

考えられるのは3つ。
(1)原作者の1人、アンドリュー・グリーンバーグ氏。
(2)原作者の1人、ロバート・ウッドヘッド氏。
(3)2017年当時6以降の権利を所持していた、GMOゲームポット社。

まずは(1)の可能性ですが、筆者が調べてみたところでは、
全くそれを伺わせる情報についてめぐり合っておりません。
訴訟問題が解決した…という話も聞いていないので、
ここから権利を得た、という可能性は低いかと思います。

(2)については、2016年にロバート氏が来日した時のインタビューで、
同氏は「現在は権利を所有していない」と明言しています。
これが「ウィザードリィの制作を離れたときから権利を保有していない」のか、
「誰かに売却してしまって権利を所有していない」のかは不明ですが、
もし後者なら、話題の「FRP Assets」がその売却先である可能性はあります。
冒頭の版権表記に氏の名前が併記されているのも、
その関係が絡んでいる…と考えるとある程度納得がいきますし。
(それにしては、Web上にそれを伺わせる情報が一切ないのが謎ですが…)

最後は、(3)の可能性。
2016年にウィザードリィオンラインが終了し、
同社が手掛けていた「ウィザードリィルネサンス」は一段落という形になりましたが、
実は、同社は「水面下で次のWizardry Onlineを制作している」ことを明言しており、
権利を手放している可能性は低いと考えられます。
ただ、現状「ウィザードリィの著作権を買い取り、現在所有している」ことが
明らかになっている唯一の法人がGMOゲームポット社であるため、
「FRP Assets」が同社の別名義である可能性も捨てきれません。


…という訳で、筆者の推測では「FRP Assets」とは、
ロバート・ウッドヘッド氏から権利を買い取った団体か、
あるいは現在権利を明確に保有しているGMOゲームポット社の別名義か、
どちらかの可能性が高い…とは思っていますが、
現状、全く裏付けが取れていません。

この問題については引き続き調査を行い、
真相が判明しだい追って報告する!
(何故か特命リサーチ風に締める)

※2017/01/21追記:
この記事の続編となる記事を公開しました。

この記事へのコメント

1. Posted by 匿名処理班   January 16, 2017 01:51
興味深く読ませて頂きました。
謎は深まりますね…。

ちょっと無理があるかもしれませんが、
「このFantasy Role Playing (Game)の画面素材はRobert woodhead氏によるものですよ」という表記を番組制作が勝手に法人と勘違いした、というだけだったり…。
2. Posted by Pin   January 16, 2017 21:44
どうも、はじめまして。
サークルゆずもデザインのPinと申します。

FC版30周年を祝してウィザードリィの同人誌を製作中なのですが、こちらのエントリーがとても興味深かったので、ぜひともずんこ様にもご参加願いたいと思っておりますがいかがでしょうか?

なお、本の内容はインタビュー中心となる予定で、参加者は須田PIN氏・手塚一郎氏・元ゲームスタジオの方・忍者増田氏、あと未公表の大物ゲストも数名います。

いかがでしょうか?
是非ともご一考下さいませ。
よろしくお願いします。
3. Posted by ずんこ。(jzunkodj4y)   January 16, 2017 22:49
>匿名処理班様
コメントありがとうございます。
同番組のウルティマの紹介における表記は「Ultima I footage used with permission of Electronic Arts Inc.」
(ウルティマ1の映像はEA社の許可のもと使用しています)となっているので、
そういった意味の解釈であれば、同様のもう少し分かりやすい表記になるのでは?と思うんですよね。
資産の所属がロバート氏にあるという表記としては、頭に「FRP」をつける意味も不明ですし…w

>Pin様
コメントありがとうございます。
同人誌の件については、Twitterで知って注目しておりました!
前向きに検討したく、後でメールを送らせて頂きます!
4. Posted by 名無しさん   June 26, 2018 23:44
×××の利権買いで無ければいいのだが。という不安。
5. Posted by ずんこ。(jzunkodj4y)   June 27, 2018 01:15
差しさわりのある表現だったので一部伏字にさせて頂きました。
現在の旧作ウィザードリィの権利者についてはおそらく北米在住であろうと思われます。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔