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「生まれ育ちは東京だけど、根無し草の感覚があった」 『ふしぎの国のバード』の作者が明治を舞台に選んだ“意外な”ワケ

佐々大河さんインタビュー #1

バードのバディ・伊藤鶴吉はクールで寡黙なキャラ

――一方バードの通訳である伊藤鶴吉は、クールで寡黙なキャラで、バードとは真逆の性格となっています。

佐々 主人公のバディですから、物語の展開を生んでいくために、バードとは対照的なキャラとして描いています。やはり娯楽作品において、陽と陰の対照的なコンビというのはセオリーとしてありますから。元気でいつもポジティブなバードに対して、伊藤は後ろ向きでネガティブなキャラになっていますが、対照的なのはそれだけではありません。何でも聞きたがるバードに対して、何でも教えてくれる伊藤。行動を起こし頻繁に失敗するバードに対して、何でもそつなくこなす伊藤。主要キャラのそういった対比はエンタメとして大事です。

 ただ、伊藤もまったくのフィクションというわけではなく、史実をもとに膨らませたキャラなんです。実際の伊藤も非常に優秀でありながら、普段は無愛想で、バードに対して失礼な言動をすることもあったようです。

風物の資料に囲まれた佐々さんの仕事机

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 まあそもそも、実在のバードも作家ですから、ノンフィクションである旅行記を書くにしても、面白く読めるような工夫をしていた可能性はあると思うんですよ。例えば、伊藤の言動の描写に嘘はなかったと思いますが、伊藤のどういう部分を抽出して書くか、逆にどういう部分をカットするかで、読み物としての面白さは変わってきますよね。そういうところはバードも意識して書いていたと思うし、そんな『日本奥地紀行』を漫画の視点からまた脚色し直したのが、『ふしぎの国のバード』であるとも言えます。

 【後編に続く 「ネームには3か月もかかりました(笑)」 デビュー第1作・佐々大河が決めた『ふしぎの国のバード』で‟嘘をつく”ためのルール

(文=二階堂銀河/A4studio)

ふしぎの国のバード 1巻 (ビームコミックス)

佐々 大河

KADOKAWA/エンターブレイン

2015年5月15日 発売

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