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三浦俊彦:東大教授の「眠り姫問題」のトンチン解答

眠り姫問題

実験の参加者であるあなたは、実験の内容を全て説明されたのち、薬を投与され日曜日に眠りにつく。あなたが眠っている間に、一度だけコインがトスされる。
 コインが表であった場合、あなたは月曜日に目覚めさせられ、質問されたのち、再び薬を投与され眠りにつく。コインが裏であった場合も、あなたは月曜日に目覚めさせられ、質問されたのち、再び薬を投与され眠りにつく。そして翌日の火曜日にも目覚めさせられ、質問されたのち、再び薬を投与され眠りにつく。
 この実験で投与される薬は一日分の記憶を完全に忘却させる記憶消去薬で、他人に起こされるまで絶対に目覚めないという作用がある。あなたが目覚め、質問を受ける際、その日が何日であるか、以前に目覚めたことがあるかどうかは決して知ることができないとする。
 また、起こされた時にされる質問とは「コインが表だった確率は幾らか?」というものである。
 コインが表/裏、どちらの場合でも、水曜日になれば眠り姫は目覚めさせられる。水曜日は質問を行わず、実験はそこで終了する。



※「実験」をイメージしやすくする為に原文中の「眠り姫」を「あなた」に置き換えています。また、若干表現の変更を行っています。


この「眠り姫問題」に対する 三浦俊彦:東京大学人文社会系研究科美学藝術学専攻教授 の答えは次のものです。
(※自分に都合のいい部分だけ抜き出して反論してる、などの誹りを受けたくありませんので、引用が長くなりますが、どうか御了承下さい。尚、引用元はここで閲覧できます
また、引用文中の"①"は 上にご紹介したオリジナルの「眠り姫問題」のことです)

答え◎これはかなり難しい問題で、「確率」という概念が数理哲学者の間でも一致していない好例である。大まかに言って、2つの説がある。

 理論Aはこう答える。もし実験開始前に、コインが表である確率を問われたら、1/2だと答えるべきだろう。そして実験開始後に少なくとも一度は起こされることが初めからわかっていたのだから、実験開始後にいざ起こされてみたときになって、コインが表である確率について何ら新たな知識は付け加わっていない。したがって、実験開始前に問われたときと同じ答えをするのが合理的だ。答えを変えるための手掛かりがないのだから。従って正解は、1/2である。

 理論Bはこう答える。起こされて質問される解答者は、可能性として3つのステージがある。それぞれのステージが同じ問いを問われる。かりに、この実験を多数回繰り返したとしよう。そして全部のステージが「表」と答えたとする。すると全ステージのうち1/3だけが正解となる。ということは、1つのステージである<今おこされたあなた>が「表」と答えたら正解である確率が1/3ということだ。言い換えれば。「表である確率は1/3」と答えるのが合理的である。
 さあ、どちらの理論が正しいのだろう?
―答えにくければ、ちょっと質問を変えてみよう。

②あなたに課せられた仕事は①ではなく、実は次のようなものだという。
「月曜日に覚醒したとき、『きょうは月曜日です』と教えられ、『さて、コインは表だったと思いますか』と問われるので、それに合理的な答えをする」
 表である確率がいくつと答えたら「合理的な答え」になるだろうか?

答え◎理論A(①の1/2説)によれば、「今が月曜日である」という情報は、実験前にはなかった新たな情報である。もし表であるならば、起こされるのは月曜日でしかありえないのだが、裏ならば、火曜日でもよかったはずだ。なのに月曜日だったというのだから、裏である可能性は減ったはずだ。計算すると、月曜日だと告げられる確率(1/2 + 1/4 = 3/4)の中の、表である確率(1/2)の占める割合こそが、「月曜日だと告げられたときの、表である確率」である。その確率は、2/3。
 理論B(①の1/3説)によれば、やはり月曜という情報は表である確率を高める。計算すると、月曜だと告げられたときの、表である確率(2/3)の中の、表である確率(1/3)の占める割合こそが、「月曜日だと告げられたときの、表である確率」である。その確率は、1/2。
③さあ、どちらが正しいだろう?

答え◎これは、問題の条件の詳細がもっと整わないと、正確な確率が定まらない好例であろう。あなた1人だけについてこの実験がなされることがわかっているならば、理論Aが正しいだろう。あるいは他の多数の人についても同じ実験がなされているにせよ、あなたの自意識がハッキリしていて自分が誰だかわかっているような場合にも、理論Aが正しいだろう。他の多数の人についてもこの実験が繰り返され、そのうちの1人であるあなたが、他の人と主観的に区別がつかない心理状態にあるならば、理論Bが正しいだろう。つまり、あなたでありうる存在がひとりだけ(明晰シナリオ)なのか、それともあなたでありうる存在が多数実在する(茫漠シナリオ)なのかという判定によって、確率判断が異なってくるのだ。この仕組みは、次の【分離脳】と問81【森の射手】で舞台設定を改めつつ確認しよう。

三浦俊彦「論理パラドクス・勝ち残り編 議論力を鍛える88問」より


にわかには信じがたいと思いますが、コレ↑、どこぞの中学生が書いた「答え」ではなく、
東大のキョ~ジュの、しかも商業出版されている本に書かれている「答え」です。
で、
初っ端からホント脱力してしまうのですが、

「これは、問題の条件の詳細がもっと整わないと、正確な確率が定まらない好例であろう」

いいえ
オリジナルの「眠り姫問題」では ある「正確な確率が定まり」ます。
なぜなら、「眠り姫問題」の「実験」は、問題文中の仮定が実現できたとしたら、
問題文中の条件設定だけに従って実行可能だからです。
つまり、「眠り姫問題」の「実験」は、実験仕様として なんらの不備もありません。
つまり、「眠り姫問題」は 数学の確率の問題として なんらの不備もありません
よって、「眠り姫問題」では コインが表である「正確な確率が定まり」ます。
どうも 三浦キョ~ジュ、

この問題、
オレの理解していない複雑な数式を駆使しなくても、
単純な論理の積み重ねで解けそうだし、
オレの論理思考は完璧だ(なにせ「論理」ナンタラって本、いっぱい出してるし)。
  ↓
あれ?…はっきりした答えが出せない……
  ↓
ならば、問題の方に不備があるのだ!

と いった おめでたい”頭”をお持ちのようです。

それで、

「あなた1人だけについてこの実験がなされることがわかっているならば、理論Aが正しいだろう。
あるいは他の多数の人についても同じ実験がなされているにせよ、あなたの自意識がハッキリしていて自分が誰だかわかっているような場合にも、理論Aが正しいだろう」

で?
「あなた1人だけについてこの実験がなされることがわかっているならば」、
なぜ「理論Aが正しい」んでしょうか?
「あるいは、
他の多数の人についても同じ実験がなされているにせよ、あなたの自意識がハッキリしていて自分が誰だかわかっているような場合にも」、
なぜ「理論Aが正しい」んでしょうか?

さらに、

「他の多数の人についてもこの実験が繰り返され、そのうちの1人であるあなたが、他の人と主観的に区別がつかない心理状態にあるならば、理論Bが正しいだろう。つまり、あなたでありうる存在がひとりだけ(明晰シナリオ)なのか、それともあなたでありうる存在が多数実在する(茫漠シナリオ)なのかという判定によって、確率判断が異なってくるのだ」

「他の多数の人についてもこの実験が繰り返され、そのうちの1人であるあなたが、
他の人と主観的に区別がつかない心理状態にある」
って、
はぁ? なんじゃ、そりゃ~!
私、もちろん意識が朦朧となったことは ありますが、
「他の人と主観的に区別がつかない心理状態」になったことは、
生まれてこのかた 一度もありません。
でも、三浦キョ~ジュは もちろん こんな「心理状態」になったことがあるんでしょう。
そして 
この「他の人と主観的に区別がつかない心理状態」においても、三浦キョ~ジュ、
「さて、コインが表である確率は?」
と問われれば、
「1/2です」
と はっきり答えられるんでしょう。
凄すぎます、三浦キョ~ジュ!!

しかも、
仮に、そんな「他の人と主観的に区別がつかない心理状態」なんてもんが実際にあるとしても、
あなたでありうる存在が多数実在する(茫漠シナリオ)の場合、
なぜ「理論Bが正しい」んですかね。

結局 三浦キョ~ジュの「答え」とやら、
まったく答えになっておらず、
ただの中学生の思いつきレベルの戯言にすぎません。

こんなんで、
「論理」? 「勝ち残り」? 「議論力を鍛える」?
…ホント 呆れたもんです。

ところで、
手前味噌ですが、私の「眠り姫問題」の解答はコチラです。
少なくとも、三浦キョ~ジュよりはマシなこと書いてます。

こうして 眠り姫問題 は解決しましたとさ、めでたし、めで…Zzz… Kindle版

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遅読猫(著)
尚、
コチラ↓の記事
「眠り姫問題 ~ 数式なしで「茨の森」を抜ける」
で本書の一部を公開しています。


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