ゴメンナサイ……
それでは本編をどうぞ!
第三十八話 プロローグと・突然の〈UBM〉
■<千踏山脈>
「はっはぁ! 遅いのう遅いのう! その様な体たらくで何時になったら儂を倒せるんじゃ!?」
『それはそっちも同じだろうがぁ!!GRYUUUWWWWWWAAAAAA!!!!』
――超重量同士がぶつかり合った様な激突音が。
――弩級の爆弾を爆発させたかの様な炸裂音が。
――とてつもなく硬く重い物を殴り飛ばした様な打撃音が。
――オリハルコンの如き堅硬な物体を砕いた時の様な破砕音が、戦場に――<千踏山脈>の山肌に鳴り響く。
それを成している、超越者同士の戦場の中心に居るのは一人の人間――否、人間範疇生物である
黒龍――【黒竜王 ドラグシュバルツ】が少し魔力を込めれば大地は崩れ、岩山が隆起し、石礫が爆散し敵に飛翔する。
そして、その巨大にして長大な肉体全てを彼自身の《竜王気》で覆い防護を万全とし、その長躯を活かし敵手を圧死せしめんと迫る。
その
そして、敵手である鬼――人間における超越者の証である超級職、【
ステータスこそ【ドラグシュバルツ】に劣り、地の利も、体格差による不利も、《竜王気》にも苦しめさせられてはいても、その戦いは伯仲しているのだった。
【ドラグシュバルツ】が山脈を利用し攻撃しようとすれば、地を蹴り空を蹴り、神通力にて中空からその発動の隙を突き。
その長躯で直接叩き潰そうとすれば、唯一勝っているAGIと彼本人の見切りにより容易く回避される。
それどころか、下手な攻撃をしたら途端に攻撃スキルも交えた鋭い一撃で《竜王気》すらも諸共に鱗を切り裂かれる始末だ。
むしろ、【ドラグシュバルツ】の攻撃は一発も僅かにすら命中しておらず、【鬼神武者】の斬撃が幾度となくその鱗を切り裂いているという現状を見れば、殆どの人は勝利の天秤は【鬼神武者】の方に傾いていると考えるだろう。
尤も、一撃も食らっておらず、逆に何度も有効打を与えている――
『そら! そらそらそらそらどうしたぁ!』
「ぬぅ……!」
山を削り、大地が爆ぜ、草木は荒れ果てながらも――戦いは終わらない。
既に戦闘開始から数時間を越える長い時間が経っていながらも、その戦いの趨勢は一見どちらかに傾いている様には見えない。
何故なら――未だに双方が
『動きが鈍って来たんじゃねぇか!? そんなんで俺を斃せると思ってんのかよぉ!』
「うるさいのう……儂はまだまだ三日は戦えるんじゃが?」
幾度となく交錯し、攻防を重ねていく一人と一匹の超越者。
しかし、何度も直撃を受けて血を流している筈の【ドラグシュバルツ】の姿には――一切の消耗が見られない。
それどころか、戦闘が長引くに連れて……少しずつ、少しずつではあるが彼の黒龍の攻撃の頻度が増してきているのが見て取れる。
それを成すのが――《暗黒螺旋》。古代伝説級の〈UBM〉たる【黒竜王 ドラグシュバルツ】が持つ固有スキルの一つだった。
戦闘時に自身が接する大地から
エネルギーを汲み上げる事で一時的に
更に、このスキルの副次的な作用として汲み上げたエネルギーを自身の栄養とする事や、循環させたエネルギーを利用する事で彼は数か月……いや、数年であろうと休まずに戦い続ける事すらも可能としている。
その様なスキルを有する【ドラグシュバルツ】を破る為の手段はそう多くはない。
多数で入れ替わり立ち代わり継続戦闘を行う? それとも《暗黒螺旋》を越える超経戦能力を手に入れる?
それは非常に難しい。彼の黒龍は古代伝説級の〈UBM〉。リソース的にも、それを越えた経戦能力と言うのは世界中を見回して、神話級の〈UBM〉を含めたとしても両手の数にも満たないだろう。
ならば、どうするか。
当然、選択肢は一つとなるだろう――そう、切り札、極大の超火力によって、回復も再生もされる前に殺し尽くす。
それしかないのだが――
(こいつの大技――《
その
だがそれも当然の事だ。
【ドラグシュバルツ】は修羅の国とも呼ばれるこの天地の国の、その中でも高位の武芸者達の修行場としても名高いこの<千踏山脈>でずっと生き永らえてきた
天地の武芸者達の大まかな戦術は既に殆ど把握しているし、一度でも戦った
その記憶が言っているのだ――これならば、負けないと。
そう、眼前に居る【鬼神武者】が――
『ぐぅっ!?』
打撃、衝撃。
見えず、感知もできなかった不可視の鉄槌――圧縮空気による弾丸、風の魔法による物だ。
《竜王気》の減衰もあり、ダメージこそ微小に留まっているがその物理的な衝撃により僅かに体勢が崩れ、【鬼神武者】による追撃を防ぐ事は適わない。
故に――
『オオオォォォォッ!!!』
――全力の石礫の散弾を、空気弾が来た方向へと出鱈目にでも乱射する。
石礫とは言っても、その礫の一発一発が直径1メテルを超える巨大な物だ。
着弾した大地は抉れ、木々は薙ぎ倒され、不本意ながらも更に周囲が荒れ果てていく。
だが――だが、相手に命中した手応えは今回もまるで得られなかった。
(不味い――不味い不味い不味い。《荒魂》の一撃だけならなんとかなるが……こいつはどうだ? こいつの
【ドラグシュバルツ】は、外面では今も威嚇を続けながらも内心では酷く葛藤していた。
何せ、この牽制のダメージだって――間違いなく熟練の魔法職のそれそのもの。
それでは、その不可視の術者の最大の切り札の威力は――どれほどになる?
【鬼神武者】の様子から見ても、どう考えても――――――による、自身の討伐。
今は、その隙を作る為の準備期間と言った所だろう。
どうする? どうやってあの術者を見つける? どうやって相手の大技を耐え切る? どうやって――――
だが、そうやって【ドラグシュバルツ】が葛藤していた頃。
件の不可視の術者――ジーニアスもまた、途方に暮れていたのであった。
◇◆◇
□【風術師】ジーニアス
【アナウンス 尿意】
『うーん、やっぱり効いてないのう。坊、もうちょっと火力上げられんか?』
『無茶言わないでくれないかなー!? 今のアレだって割と全力だったんだけど!?』
ちょっとちょっと。
現在僕は<千踏山脈>の上空でイグニスに乗りながら――不動さんの誘いに安易に乗った事を後悔しまくっていた。
いや、そりゃ僕だって一人の少年、一人の<マスター>だもの。そりゃ〈UBM〉に挑戦できるとなれば一も二もなく飛びつくというものだけど……
正直ここまで厄介な相手だったというのは予想外だった。
僕は古代伝説級の〈UBM〉なんて戦った事はない。しかし、実力ではそれを上回るであろう
だが、相手はその予想を容易く裏切り、今となっても決着が着く気配は全くない。
それは一重に相手――【黒竜王 ドラグシュバルツ】の総合防御能力の賜物だった。
あの巨体とステータスで大地を好き勝手不規則にのたうち回られては僕は勿論、不動さんだって迂闊に攻撃する事はできはしない。
だと言うのに、まるで息をするように自然に地属性魔法を発動させて僕や不動さんへの攻撃も欠かさず、岩塊による甲殻まで携えて更に防御力を上げて来る。
下手な攻撃だと全周を覆う程の岩壁で防がれちゃうから不可視の風属性魔法に頼るしかないのも厳しい。
その上で、話には聞いていた物の初体験であるあらゆる攻撃が大幅に減衰させられる《竜王気》とあの竜特有の超再生能力。
不動さん曰く、一ヵ月間武芸者と戦い続けていた記録もあるんだとか。ちょっと意味が分からないよね……
そんな事を考えている間にも攻撃間隔をズラしながらも射程距離を延長した《ウインドハンマー》で攻撃を継続している。
自身を中心とした《隠匿結界》を展開して動き回りながら、攻撃魔法には《魔法隠蔽》――はMPの消費が厳しいからSPを使って【隠密】系統の《隠蔽》で代用。
僅かにでも痛打を与えながら不動さんを援護し、隙を見せれば風魔法の連打を叩き込みつつも【MP回復ポーション】の予備を消耗し続ける。
イグニスには不規則に旋回して貰いながらも熱感欺瞞して貰っている。正に盤石の体制だよね!
盤石の体制――なのだけど……うん。僕の《看破》じゃ相手のステータスは見破れないけど、全然相手のHPが減っていないのはまぁ分かるよね。
これでも《極光剣》を乗せて攻撃力を嵩増ししている筈なんだけど……おっと、大きな岩槍。方向は見当違いだけど。
――相手の攻撃には当たらないようにしている……けれど、こちらの攻撃も決定打にはまるでなっていない現状。
この状態は不味い。ひじょーに、不味い。何故なら――
『不動さん不動さん! ちょっとこの流れは不味いと具申させて貰うよ!』
『ふむう? 簡単に説明せよ』
『そろそろAFKの時間!』
『詳細に説明せよ』
『そろそろ僕の都合で向こうの世界に戻らなくちゃ行けないかも! ……こっちで3時間くらい!』
『それはいかんのぅ……』
そう。
何が不味いって、もうそろそろ僕がログアウトしないとヤバいって事なのだ!
何て言ったって10分くらい前から尿意のアナウンス出ちゃってるからね! 遅くてもリアルで10分……
そうでなくとも、リアルではもう直ぐ夕食の時間になりそうだからログアウトしなければならないというのに……
もう戦闘開始してから
<マスター>の弱点をこんな形で突いてくるなんて……恐るべし、【ドラグシュバルツ】!!
だから――
『刻限は何時頃じゃ?』
『――後20分で』
『では、次の……次の次の次の次の儂の攻撃で行くとするかの』
『合点承知!』
つまり、そういう事になった。
◆◇◆
■<千踏山脈>
先程から、更に幾度か攻防を重ねていた。
【鬼神武者】が与える傷は数秒で完全に治癒され、砕かれた極小の石礫の乱舞も、神通力による守護によって防がれた。
全力で尾で薙ぎ払い、上空に飛ばれるのを見越して巨岩の腕で握り潰そうとしても、逆に巨岩を斬り裂かれて足場にされた為後退した。
相手の神通力による衝撃波を岩壁で防ぎ、地中に潜り振動を頼りに攻撃しても――それすらも
全く自分の思う様に行かない事にイライラしていたのだが――――
(――――来る!)
一瞬。ほんの一瞬で……【鬼神武者】から感じられる覇気が激増した。
空気が震える。鱗がひり付く。音が遠くなる。すべての感覚が――目の前の【鬼神武者】に集中せざるを得なくさせられる。
それはただの気迫、プレッシャーの仕業なのか――いや、違う。
それは宣言だ。
【鬼神武者】が持つ奥義――己の心身を
それは、【鬼神武者】が行う……「お前を殺す」という殺戮宣言に他ならない。
ざっ。
ざっ。
ざっ。
この極限状況に適応したのか……やけにスローモーションで迫ってくる様に見える【鬼神武者】を相手に視線を外せずに居ながらも――黒龍の意識は、奇跡的にも別の所へ向ける事に成功していた。
(来る、来るんだ――間違いなく! あの術師もだ! あれなら、
そう、経験からか、彼は――二人の人間の思惑を看破していた。
一人で足りないなら二人での同時攻撃による撃破を狙う。それが相手の唯一の勝機であるのだと。
その目利きも、己と相手の実力を、過不足なく把握できる眼力があってのこそであり――そして、かの黒龍はその目利きにおいて強い自信を持っているのだった。
――尾や鱗程度ならいくらでもくれてやる。
――だが、この
発動させられようとしていた魔力が束ねられるのを感じた。
『そこDAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
即座に、自身の周囲の大地を隆起、そして
更に、【鬼神武者】の迫る眼前のそれを除き、即座に感知できた魔力の出所に向けて――今までは僅かに抑えていた全速力で射出する。
狙うは――――自身の直上!
渾身の力を込めたその力を込めたその一撃。
それは、超音速を越える速度で飛翔し、確かに彼の頭上数百メテルの位置を浮遊していた人影を完全に貫いた。
――そして、その姿が一瞬だけブれて、そのまま掻き消えた。
(――がっ、これは、【忍――)
その人影の斜め右後方から。
莫大な魔力を込めた人影――少年が姿を現した。
――――
『GURUOOOOOOOOOOOOO!!!!!』
全力防御。
《暗黒螺旋》によるエネルギー循環からの《竜王気》、可能な限りの大地を集めての岩壁、硬化土甲殻。
自身の持ち得る全てを使用しての完全防御態勢。
それによって、耐えきる事が出来れば勝機はまだあるのだと――――信じて。
そして、魔法まで使用したそれは確かにギリギリで防御態勢の構築に成功した。
おそらくは術師側の不手際。流石に超級職に合わせられる速度を持ち合わせては居なかったのであろうが――今はそれすらも天の助けと思う。
その結果は――――
◇◆◇◆◇
「――《■■■》」
爆撃を思わせる暴威の踏み込みから来る、斬撃に鱗と土甲殻ごと深く断ち割られ。
「――《グリ■■・ヴォーテック■》!」
幾重にも束ねられた名刀の如き竜巻に貫かれ、鱗の下まで切り刻まれ。
耐えきっ
『『――《
何倍にも増幅させられた収束熱線によってその身体を貫かれ――身体の内側から燃え上がった。
そうして、彼の龍は声を出す事も出来ないままに絶命し……10時間以上にも渡るこの戦いは決着する事となった。
◇◆◇
□<千踏山脈>【風術師】ジーニアス
勝った! 【黒竜王】編完!
……って、なってたら良かったんだけどなぁ。
実際、僕と不動さん、そして――リンとイグニスによる三方位同時攻撃は完璧に決まったのだけど。
『不動さん不動さん? 〈UBM〉討伐のアナウンスが流れないんですけど……
そう、最後のリンとイグニスの合わせ技が直撃したのは良かったけど……その後の【黒竜王】は力尽きたようにその身を大地に横たえて――まるで普通のモンスターであるかのように
サイズだけ小さくした蛇みたいな【全身遺骸】、じゃなくて【圧縮遺骸】っぽいのはあるけど、これは……
残されたのは戦利品とちょっと理解が追いつきたくない僕と不動さんだけ。そして――
「うむ……実は坊には言っていなかったのじゃが――あやつには実はもう一つ固有スキルがあったんじゃよ」
「……く、詳しく教えて?」
「一言で言えば脱皮――高速で自らの皮を脱ぎ捨て、更にその自身の抜け殻にも力を与える事で確立された自身の分け身を作るかなり厄介な能力じゃ。まぁ、こうして与えられた力の分だけ戦利品は手に入るのは幸いかの?」
「……つまり、簡単に言うと」
「本体にはとっくのとうに逃げられていたという事じゃな!」
…………
10時間も頑張った結果がこれとか、あんまりだ――っ!?
◇
◇
◇
◇
◇◇◇
11月21日(土)
今日から待ちに待った三連休! やったー!
この期間も思いっきりデンドロするぞー!
……って思っていたんだけど、今日は午前中は明日香にハードを渡しているから、デンドロは夕食後から。
先週の一周年の時は大体僕が占有しちゃってたから、代わりにはならないけどもっ。
そんな訳で、それまでの時間は勝にストレッチを教えて貰ったり、攻略Wikiを見て<千踏山脈>について多少なりとも予習したり、掲示板を見回ってみたり、後はモンス〇ーハン〇ーとかで暇を潰す事に。
連休用の宿題とかは、昨日の内に終わってるからねー。
さて、それでデンドロにログインしてからは予定通り<千踏山脈>へ行く……んだけど、それもそう簡単じゃないんだよね。
大白宮の南から<群白森林>を経て、更に南へ南へ南へ南へ……天地の最南端の大山脈地帯、それが<千踏山脈>。
その近辺にはかなりの広い範囲で強力なドラゴンや怪鳥種、魔獣種等が跋扈している危険地帯にも指定されているのだ!
……だからこそ、僕も含めて天地の武芸者達の修行場として使われているのだけど。
そして、そこで特に厄介なのが空――見晴らしの良い天空を舞う天竜達や怪鳥種の存在だ。
遠距離攻撃手段や対空攻撃手段さえ持っていれば、適性の実力さえあれば普通のモンスターと変わらないけども……それでも、イグニスに乗ったまま向かうには危険過ぎるよね。
勿論、危険が迫ったら直ぐに《送還》するつもりだし、僕自身のデスペナを覚悟しながら行く事も出来るけど、どうやらあの山には【黒竜王 ドラグシュバルツ】、【緑竜王 ドラググリューン】、【超速翔鳥 マッファイペルー】等の複数の〈UBM〉が住み着いているみたいだから、万が一も結構ありそうな気がするからあまり無理したくないんだよね。
一応従属モンスター用の身代わりアクセサリーも用意はしてあるけど、ここは横着する場面では、ないよね?
と、そんな訳で<群白森林>を抜けてからはイグニスから降りて僕の足で行く事になったんだけど、別にそんなに悲観する事もないんだよね。
何と言ったって僕だって既に合計レベルにして400……にはちょっと届かない程度のレベルはあるし、AGIだってあの世界の常人の20倍近い発揮速度で高速移動する事だってできるんだから。
<群白森林>を出た辺りのモンスターで好戦的な種は少ないし、後はながーいながーい平原と草原と谷ともう一つ森林を突っ切ればもう<千踏山脈>はすぐそこだからね!
そういう所で不意に〈UBM〉とか野生の純竜級モンスターに遭遇したりしなきゃ全く問題はないのだ! うん、一回しかなかった!
……まぁ、しかも可能な限りモンスターは避けて行動していたにも関わらず亜竜級のモンスターは結構な頻度で遭遇したし、中々時間は掛かったけど、時間的には想定内の範疇だから無問題!
よーし。明日からまた頑張ろう!
メモ:
とりあえず、この<千踏山脈>に生息しているモンスターはもう大体(
【
亜竜級。今日戦ったモンスターの中で一番面倒だった……
物理特化型の典型的な魔獣種。一度狙った獲物を凄まじい執念で突進しながら追い回す奴!
亜竜級の中でもステータスも高くなくて大柄でもないけど、結構数が居るから避けている内に複数に追い回されたり……
匂いで獲物を追っている事に気付くのが遅れちゃったよ。匂い消し重点!
【カラフル・ベア】
亜竜級。多分ステータスはSTR特化? 【グレイト・ベア】の変異個体らしい。
通常の【グレイト・ベア】もでっかいし、ワンパンで岩をも粉砕するし、瞬発力はあるしで迫力あったんだけど……
保護色使ってくるんだから厄介ってもんじゃないよね。僕には通用しなかったけどね!
【
亜竜級。亜竜級の癖に亜音速で空を駆ける殺し屋。
《剣速徹し》に似た効果のスキルを持っているらしい。何度か会ったけど直線速度だけじゃなくて旋回性能とかもかなり優秀そう。
的も小さいし、Wikiにあった通りにこっちに向かってきてたら即撃墜推奨かも。
【グレイト・ロック】
純竜級。すっごいでかい鳥!
……いや、うん。直上を通ったのを見ただけで別に戦ってないんだけど。
あんなのに連れ去られたら一溜りもないだろうなぁ……やっぱりデンドロの空は凄い。
◇
11月22日(日)
昨日の日記にも書いた通り、今日から本格的な狩りの始まり、わーい!
リンとイグニスだけを連れての気ままなソロ(?)狩りも割と好きなんだよね。
そういえば、今日一日狩っててちょっと思ったのだけど、水と火をなんとかできれば、後はアイテムボックスに調味料や料理を入れておけば美味しい物が遠慮なく食べられるのは嬉しいよね、何となく遠足気分。
僕は大白宮と慶都のお店以外はあまり詳しくはないんだけど(将都に居た時は大体修羅ってたし)、掲示板とかネット上にはデンドロの世界での食べ歩き・食べ比べ専用サイト専用スレ専用クランまであるんだって!
リンクを貼られてたの見た事あるからね。 ……中にはゲテモノっぽいのもあったけどね!
そういうのとか今回みたいなのを体感するともっと高性能なアイテムボックスが複数欲しくなるんだよねー……その為にも、もっと稼がないとね?
ちなみに、余談だけどデンドロの世界での料理――いや、《料理》は所謂センススキルという奴で、元々リアルで料理ができなくても【料理人】やその類型ジョブに就けばスキルに従って料理が出来る様になるのだ! リアルと同じ方法でも普通に作れるけどね。
まぁ、センススキルとは言っても、《料理》の場合スキルがサポートしてくれるのは料理に関する技術だけだから、作り方が間違っていたり、本人のセンスが壊滅的だったり、味覚が変だったりすると美味しい料理にはならないんだけどね……君の事だよマリー!
ジョブとしての【料理人】系統による料理の
と、前置きがちょっと長くなっちゃったけど、今日は探査魔法なども用いて僕の方から積極的にモンスター狩りをしてみたよ。
成果はまぁまぁ良かったんだけど……三連休だから、っていうのは日本だけだから違うと思うけど、まぁ普通に土日だからか競合と言うべきか、僕と同じように狩りをしている他の<マスター>やティアンをそこそこ見掛ける事になった。
この<千踏山脈>は未だにどの大名の領地にもなっていない、空白地に近い状態だから、もしかしたら天地の南側に領地を持っている大名の差し金なのか、それとも手頃な実力のモンスター達の根城だからか――うん、まぁ大体後者だろうね。
天地の武芸者なら<マスター>に頼らずともその気になればここを開拓くらいできそうな物だし。話に聞く<境界山脈>とか<厳冬山脈>程でもないしね。
それで、今日の所は見掛けた<マスター>の中には特に知り合いは居なかったから軽く挨拶だけしていたんだけど、なんとティアンの武芸者の中には居たのだ。
というか、不動さんだった。
客分だから大白宮から動かないとばかり思ってたからびっくりしたよー。
どうやら、最近は<マスター>が増えてその働きのお陰で随分と暇が増えたから、時期を見て
もしかして、先日野試合した竜胆さんもそれだったのかな?
どちらにせよ、その向上精神は見習いたいね!
大白宮でまた会ったら、前回のお礼も兼ねて全力で野試合でも挑んでみようかな……?
メモ:
【黒土亜竜】
亜竜級の地竜種。でもなんかドラゴンって言うより龍! って感じ。
局所的な地震を起こしたり、後は大体
イグニスに見慣れてるとああいう龍にはちょっとびっくりするよね。
【赤炎純竜】
純竜級の天竜種。噂をすれば影のイグニスとは違う部類の【炎竜】じゃない炎龍。
でもインテリジェンスはうちのイグニスが圧勝だったね!
自分のスペックの押し付けしかできないんじゃ楽勝だよ!
……まぁ、うちのイグニスみたいな事を野良の【赤炎純竜】がやってきたら凄くビビるけど。陽炎で回避とか覚えたからね最近。
【
亜竜級の地竜種。見た目はかなり小さい上に白い【黒土亜竜】だった。
特徴的なのは自然回復力と生存能力。真っ二つにしたのに双方が分かれて逃げるとかちょっと意味が分からないよね。
斬撃、打撃、刺突は一応効くには効くけど微妙。イグニスの炎か、僕とリンの光魔法で。
【ツインヘッドサーペント】
亜竜級の……海竜種? Wikiに載ってなかった奴。
双頭の蛇! ……って一瞬テンション上がったけど、一瞬だけだったね。
見つけた段階で既にかなり酷い状態で、それでも尚襲い掛かって来た。
変異個体、というより奇形って言った方が近いのかな。余程の事がなければ、僕が何もしなくても長くは持たなかっただろうね。
あそこまで敵対的でなければ《従属契約》して【従魔師】ギルドに任せる手もあったんだけど……
◇
11月23日(月)
今日は祝日、勤労感謝の日!
うん、今日はかなり感謝したくなったね……
今日は三連休の最終日、なので割といつも通りの戦意を漲らせて昨日に引き続いて今日も狩りに励んでいたんだけど。
何処からその戦意を察したのか、ログインして少しして不動さんに補足されちゃったんだよね。
それで、何か用事でもあったのかなと思っていたら――「ここの〈UBM〉に挑戦してみないか」と……
その対象は、【黒竜王 ドラグシュバルツ】。<千踏山脈>に住まう二体の【竜王】の片割れ。
うん、三連休でテンション上がっていたのもあって二つ返事で承諾!
対象に関するある程度の情報は不動さんが知っているらしいし教えて貰ったから、これはいける!
……って思っていたんだけどなー。いや実際かなり有利に戦えてたと思うんだけどね?
やっぱり、流石は古代伝説級の〈UBM〉と言うべきか……うん、一筋縄では行かないなぁ。
僕のステータスじゃまともに白兵戦をやるのも危険だし、攻撃魔法もろくに通らないとか……なにあのタフさ!
あと、あの《竜王気》も。初めて見たけどどうなってるんだろうアレ、うーらーやーまーしーいー!
【竜王】を狩るなんて、掲示板とかでも全然報告ないから、気分は一応知っていた筈なのに初見殺しを食らった気分だね……
イグニスもいつかあれを――無理かー。残念。
うーん、【竜王】って奴は皆あんなにヤバいのかなぁ……そりゃ討伐されない筈だよ。
さて、そんな【ドラグシュバルツ】戦だけど――結果としては勝利……勝利? という結果に! いぇーい!
……本体には逃げられて、倒したのは
ちなみに、あれは不動さんでもいつ本体が逃げ出したか分からないくらいだったんだって。うーん、最初は流石に本体だった……よねぇ? 僕も気付けなかった、不覚っ。
まぁ、分身相手ですら僕と不動さん、そしてリンとイグニスの全力攻撃で漸く仕留められたというレベルだったから、もしかしたら本体だとかなーり危なかったかもしれないけどね!
あの攻撃、虎の子だったんだけどなぁ……やっぱり【風術師】のレベルももっと上げなきゃね。
――ところであれ、【黒竜王】とか言っておいてあたかも【黒土純竜】の進化系でございーって顔してるけどあの自己再生能力とか分身とか【再誕亜竜】系統の特徴まで持ってるよね!?
汚いなさすが竜王きたない……
まぁ、分身を倒しただけの価値があるお土産は手に入ったから良いんだけどね。うん、良いんだよ……!
デンドロ内で数か月以上掛けて貯めこんでいた手持ちの【ポーション】と【符】が相当露と消えたけど、収穫は十分だったんだからね……!
でも、やっぱり10時間越えはつーかーれーたーっ!
危ない所だった……
メモ:
【黒竜王の抜け殻】
『素材』
【黒竜王 ドラグシュバルツ】の残した抜け殻が縮小された物。
その総身を彼の竜の力で満たされており、《竜王気》のみならず、魔力、生命力あらゆる力を複合した非常に高純度なエネルギーを有している。
且つてはその身に宿したエネルギーを使用して彷徨っていたが、今はもうただの抜け殻である。
その身に残されている物は、彼の竜より分け与えられし力と、仮初の魂の残骸だけ。
【黒竜王 ドラグシュバルツ】
古代伝説級の〈UBM〉。
その能力特性は……再生、かな?
〈竜王気〉や多彩な地属性魔法も行使して来たけど、特に特徴的なのはやっぱりそれだよね。
高速再生、自動回復の類、それもかなり高度な物で不動さんがばっさり斬り裂いたと思っても数秒後にはもう血も流れないからなぁ。
創部の治癒だけでなくてHPも……抜け殻を見るに、もしかしたらMPやSP、そして疲労的な物まで回復してるかもしれない。
それに加えて脱皮(?)して分身だけ残して逃げたりするんだから始末に負えないよね……あの分身、ぶっちゃけ他の〈UBM〉と遜色ないレベルだったし、連携して掛かって来られたら普通にヤバかった気もするしね。
……あれ? 血、出てたよね? 割と最初から最後まで赤黒い血がどばーって出てたよね?
直ぐ地面に溶ける様に消えて行ってたけど間違いなく幾度となく斬り裂かれて血を流してたはずなんだけど――
血を流す抜け殻って何さ……!?
ま、まぁそれはともかく! 弱点と言えるレベルではないけど気になった事として……防御・生存能力の高さと比べて攻撃能力の低さが狙い目かなとは思う。
【ドラグシュバルツ】の攻撃手段は終始その巨体とステータスを活かした物理的な攻撃と地属性魔法だけだったからね。
勿論、脱皮と同じ様な隠し札がある可能性も否定できないのだけども! ……あるかな? ないかな?
どちらにせよ、流石に今の僕の実力じゃちょーっと無理っぽいね。修行あるのみ!
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
《
【鬼神武者】の奥義。1日1回の自己強化型スキル。
自身のMPとSPの現在地と最大値、そしてSTRとAGIを3倍にする。
その代償として、その身体、その精神は鬼神の如く荒れ狂う事になるだろう。
【黒竜王 ドラグシュバルツ】
種族:ドラゴン
主な能力:循環・竜王気
最終到達レベル:現在82→78
発生:認定型
作成者:
備考:<千踏山脈>に住まう古代伝説級上位の【竜王】の〈UBM〉。
元は【黒土亜竜】系統から順当に進化していき、【竜王】に至った努力家。
嗜みとして【地神】に及ばない程度の地属性魔法も使用する。
区分するのならば純粋性能型。ステータスは神話級モンスターの域まで行かなくともHPは100万を優に超え、STRは2万に届き、AGIは超音速に至り、ENDに至っては5万近くもある。
その固有スキル、《暗黒螺旋》は自身を中心としたエネルギーの循環・増幅。
本編では大地からエネルギーを吸い上げる事も行っていたが実は他にも接触した対象からドレインする事も出来る。
その回収・徴収したエネルギーは【黒竜王】の体内で循環増幅され、彼の龍の鱗から体液から排泄物に至るまでエネルギーが凝縮されたリソースの塊となっている為最終的に大地に還元される所も含めて自然に優しい〈UBM〉。
ちなみに、実は本体ならば最終手段として《暗黒螺旋》を臨界起動させ、増幅しまくったエネルギーで全力で全周に超出力の《竜王気》を放出展開させる攻防一体の荒業が使用できた。
前隙も後隙も大きくて一時的にでも自身の体内のエネルギーが空に近くなるしちょっとだけ自分も食らうから本当に最終手段としてしか使わないけども。
もう一つの、ある意味真の切り札としての固有スキルは《
しかしそれはあらゆる意味で他のモンスターが使用する脱皮とは違う。
脱皮して脱ぎ捨てた抜け殻は且つて【黒竜王 ドラグシュバルツ】だった抜け殻なのである。
それはつまりその中に固有スキルとしての核を……《暗黒螺旋》により増幅されたリソースと《黒き再臨》による■■■■が注ぎ込まれればそれもまた【ドラグシュバルツ】なのだ。
これにより生まれた【ドラグシュバルツ】は本来はただの抜け殻である筈なのに動くし喋るし考えるし疑似的な魂まで持っている。それどころか固有スキルである筈の《暗黒螺旋》まで使用できる。【ドラグシュバルツ】なのだから使用できても全く問題ないね!
ただし、所有リソースの関係上ステータスは本体の7割程度しかないし、どれだけ長生きしても数十年程度で寿命になってしまう儚い存在でもある……
なお、《黒き再臨》は【黒竜王 ドラグシュバルツ】の総リソースの1割強を使用する
正真正銘の最後の切り札である。
にも関わらず、少しでも危ないと感じたら直ぐに使用してしまうのは彼が外面に反して内心では凄くヘタレだという事ではなく、生存本能が優れているという事に違いないであろう。多分。
ちなみに、本編では戦闘開始後1時間経過する前にはもう逃げだしていた模様。
本人以外誰にも知られていないが、《黒き再臨》は使用する毎に自身の成長限界を僅かずつ拡張する能力もある。
だって脱皮だから。
まさかこんなに間が空いて見てくれる人が居るとは……! ありがとうございます!
そんな訳で予定より一ヵ月くらい遅れての新章開幕です。
今回はいつも以上にプロットに苦戦したりスマブラに嵌ったりしてました。すみません……
今章も何とか週1ペースで更新出来たらなと考えつつ、また付き合って貰えれば幸いです。
……そして、拙作の更新なんかよりも何倍も重要な事がつい先日にありましたね。
そう、原作であるInfinite Dendrogramのアニメ化決定です! めでたい、本当にめでたいです……!
割烹の告知報告ではコメントする前にもう100件埋まってしまっていたので、ここで祝辞とさせて頂きます。
アニメ化、やったー! これでデンドロ人口がもっと増えると、いいなぁ……!
それでは、アニメ三章までは、とか天地の情報もっと増えろ増えろとか祈りつつ今回はここまで。
ありがとうございました!