無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:一周年ですよ、一周年!

ようやく間章エピローグに漕ぎ着けました。
やっぱり一話日記四日分はその、きついですね!
それでは本編をどうぞ!


第三十七話 一周年と・エピローグ

11月16日(月)

 お祭りの後、少し浮ついた気分で行く学校というのもなんとなく悪くないよね。

 ……とか言うと勝とかに怒られるかな?

 でも、学校でも共通の話題とかあったりするとそれで話が盛り上がるから多少は御目溢しして貰いたいなって!

 うん、グランバロアのお祭りも話に聞くだけでも面白そうだったね。

 

 ……まぁ、僕達はアルハラ(お酒)に弱いからそれをどうにかしないといけないっぽいけどね!

 

 学校から帰って来てからは今日もデンドロにログイン!

 三倍時間なのも相まって僕がログインした時にはもうお祭りの後片付けも結構進んでいたみたいだけど、まぁ手伝える所は手伝わないとね!

 ……とは言っても、あの世界の人達ってジョブを修めている人は非戦闘職とかでも合計レベルが300もあればSTRやAGIが300~500くらいはあったりするから、割と皆超人じみた身体能力持ってたりするんだよね。

 おかげで余程専門的な仕事でもなければ力仕事はすぐ終わらせちゃうんだよね……

 

 そんな訳で今日は【陰陽師】ギルドで片付けのお手伝い――という名目のジョブクエストを頑張っていく事になった!

 お祭りを見て【陰陽師】や東洋の術師系統に興味を持った<マスター>に対する対応や、演出でふんだんに使った【符】の補充や使用したマジックアイテムに魔力(MP)を充填、他にもお祭りで販売されたアイテムの中で【陰陽師】ギルドが協力して出していたお店のアイテムの再販希望に対する生産等々、やっぱり都の頭である泰央さんが属する【陰陽師】ギルドではやらなきゃいけない仕事が沢山あるらしい。

 僕みたいな<マスター>が手伝えるのはその中でも一部だけだけど、それでも戦力は戦力として有難がられるのは悪くないよね!

 ちなみに、僕は【符】や販売していたアイテムの補充の方を手伝う事になって、仕事自体は恙なく勧められたんだけど……流石【陰陽師】ギルドと言うべきか、占術関連のアイテムとかもちょっと触る機会があったものだから、折角なので雑談のネタとして昨日の《易占》の事を聞いてみる事にしてみた。

 最初は泰央さんに聞こうと思ってたけど、下級職でやる《易占》なんだから多分専門の人なら普通に分かるだろうと思ったのだけど、どうやらそれは正解だったようで詳しく教えて貰う事が出来た!

 ……のだけど、内容がちょっと問題(?)で、どうやら未来に起こる災厄について出来事に関する占いだったみたいなんだけど――それが何時の事か全く分からないんだって!

 それが数ヶ月以内に起こるモノかもしれないし、数年以上掛かる事もあるんだとか。

 下級職の、しかも専門職でない【陰陽師】の《易占》なら占いに関する精度はそんなものだ、って言われたけど、これ占っても多分どうしようもない奴じゃないかな!?

 辛うじて竜が関係する災厄だという事は理解できたんだけど……とりあえず、イグニスの様子にでも注意しておけば良いのかな?

 占いについてはそこまで深く考えなくても良い気がするけど――うん、やっぱり気になるよね。

 どうやって未来を占っているのかも術者である僕にすらよく分からないしね。まさか、(管理AI)だって遥か先の未来を演算するなんて芸当はできない……と思うんだけど。

 

 まぁ、占いに関しては多分今考えても良く分からないから放置で! 話の種にはなるから続けてはみるけどね。

 もしかしたらデンドロでの調査の助けになるかもしれないし、スキルレベルは上げておいて損はない筈。

 

 あと、今日は特筆すべき事として――なんと、春香からの初めてのお手紙が届いていたのだ!

 どうやら、実際に届いたのは昨日の内、お祭りの後だったみたいで、手紙の内容も僕達<マスター>増加の一周年についてのお祝いの言葉がメインで、後は出会ってからの事を懐かしむ文言と、一周年のお祭りと大体同時期に授業が始まると言う春香の学園の、学園寮生活についての近況等が綴られていた。

 一先ずはこの文通がちゃんと機能した事は喜ばしい限り――春香も元気でやっている様だしね。

 返事は……ちょっと考えて書かなきゃ。手紙とか書くの初めてだから、やっぱり緊張するなぁ!

 全く、僕ってばこうなる事は分かってた筈なのになんで手紙の書き方とか調べておかなかったのか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

11月17日(火)

 11月も半ばになってもうすっかり朝、登校する時寒くなって来た……という事を朝食の席で言ってみたら勝がすっごくショックを受けていた。

 どうやら最近あんまり外出してなかったから季節感が大分おかしな事になっていた事を自覚しちゃったみたい。そんなつもりはなかったのだけど……

 割と本気で筋力維持の為のトレーニングに毎朝のランニングを加える事を検討し出してたよ。

 まぁ、健康に配慮する事は良い事だと僕も思うよ、うん!

 

 あ、それとコテツは今日、ようやくドライフでアスカ(明日香のアバターネーム。本名と同じだとアレだと思うんだけど、リアルでもアバターネームでもそこそこありふれてるから大丈夫なのかな?)と合流できたらしい。

 デンドロ内時間で約二ヵ月……移動手段はあるんだから、戦闘を避けて移動しているとはいえ遅くない? って突っ込んだら、カルディナを通る際に色々あってカルディナで抗争に巻き込まれかけていたらしい。

 どういう事なの……!?

 詳しい話は天地に戻ってきてから話してくれるらしいけど、凄く気になる……!

 

 ま、まぁそれはそれとして今日もデンドロへログイン!

 流石に三倍時間もあって、今日にまでなればお祭りの名残りは都から殆ど無くなっている様だった。

 昨日ログアウトした時点で片付けもほぼ終わりかけていたからね。

 そういう訳で、今日は自分の用事を果たす為に――今日も【陰陽師】ギルドへと顔を出す事に。

 でも、今日の用事はいつもみたいにジョブクエストではなく……そう、転職をする為に来たんだよね。

 

 そんな訳で、早速《全主恩寵》の二つ目の枠を使って、陰陽師系統派生下級職、【結界術師】に転職!

 派生職とは言え下級職だし、僕のレベルも十分だったから就職条件については問題なく無事転職出来たね。

 これでカシミヤをぎゃふんと言わせられる……というのはともかく、総合的に戦力を強化出来る様になる筈。

 補助的な使い方が多くなるかもしれないけど、僕にはイグニスとリンも居るから防御能力は幾らあっても悪いという事はないだろう。

 ……まぁ、何日も掛けて幾つもの候補の中から悩みに悩んだ末の決定だから、そう思って自分を納得させたいという面も否定はできないけどね!

 【冒険家(アドベンチャラー)】や【猟兵(レンジャー)】、【開拓者(フロンティア)】と言った冒険家系統のジョブも最後まで悩んだ魅力的なジョブだったんだけどねー。

 まぁ、候補に挙げた他のジョブだって【アダムカドモン】が進化してまた《全主恩寵》のレベルが上がったらまたその時の第一候補になるから良いんだけどねっ!

 やっぱりあっちもあっちで良い所が……というのはさておき、とりあえずは【結界術師】のスキルを頑張って鍛えないとね。

 その為にもまずはまたジョブクエストを請けてレベル上げ――なのだけど。

 今日はその前に、手紙の御返事考えないと……!

 

 

 

 

 

 

 

 

11月20日(金)

 最初の予定からかなり遅れちゃったけど、少しずつ打ち解けていたのもあって桑木さんにお願いして別のクラスでデンドロを続けている子達を仲介して貰った!

 ……そして、仲介して貰った三人の中の一人がデンドロ内での知り合いだった。なんでさ!?

 ……ちょっと言葉が乱れちゃったけど、あの時の僕の衝撃は多分日記じゃ表現しきれないと思うんだ。

 デンドロで知っている相手だと思うと、色々とギャップが……ね?

 それでも、エンブリオについてもある程度知っている相手だったから、あのエンブリオ――【メギンギョルズ】を形作るのに参照されたパーソナリティも想像しちゃって余計にね。

 ……まぁ、それだけでちょっと面白かったけど。

 別のクラスだから桑木さんと違ってそこまで頻繁に話をしたりは出来ないけど、これからもデンドロについて色々と話せたらいいなぁ。

 ヤマト――敷島君とはデンドロ内でまた直ぐ会えるだろうし、何ならまた決闘とか狩りのお誘いをしてみるのも良いかもしれない。

 僕もどちらかと言うとデンドロ内での方が話しやすいしね!

 

 そういえば、今日敷島君との話で知ったんだけど、僕のエンブリオは天地での決闘界隈でのマスター達の間ではTYPE:ルールのエンブリオだと思われているらしいんだよね。

 TYPE:ボディに関する情報は掲示板等では全然見ないし、仕方ない事だよねぇ。

 僕も僕以外のTYPE:ボディの人と会った事もないし、デンドロ全体で果たしてどれだけ居る事やら……

 

 学校から帰って、今日もデンドロにログイン!

 昨日までに引き続き今日も【魔術師】ギルドや【陰陽師】ギルドでのジョブクエストに勤しむ日々……ではない。

 折角の週末だから時間を使ってー……というのもあるけど、まぁ、はっきり言ってしまうと。

 ジョブクエストはそれ単体だとたまーにある様な難関依頼(クエスト)以外、時間に対する実入りがあまり相応しくない事の方が多いんだよね……!

 いや、別にこれはジョブクエストを貶しているとかそういう訳ではない。

 各種専門ギルドでのジョブクエストで得られる実績や技術と言った“経験値”ではない経験はお金に代えられない物なのは間違いないし、他の面から見ても重要なのは事実なんだよね。

 でも……正直に言って、合計レベルが300を越える様な戦闘型の<マスター>は、エンブリオの力もあって大抵はソロでも亜竜級のモンスターを安定して狩れる様になっているし、ジョブとエンブリオのシナジーや<マスター>本人の技量次第では純竜級のモンスターだって狩れる範疇なのだ。

 モョモトとかあそこら辺のエンブリオが戦闘に特化している様なのは間違いなくいけるだろうね……というのはともかく。

 亜竜級のモンスターを倒せる<マスター>の実力だと、どう取り繕っても同じ時間を使ってジョブクエストをするのと比べて得られる経験値も金銭(リル)も、討伐クエストをすら介さないモンスターの戦利品(ドロップアイテム)だけで圧倒的に上回っちゃうんだよね……

 そんなバランスだからそれこそモンスターを狩り尽くせる様な上位の<マスター>程ジョブクエストを軽視するし、その結果モンスター狩りに傾倒して乱獲されてまた生態系が崩れたりするんだよ運営(管理AI)ー!

 

 ……という、ちょっと長めの愚痴はともかく!

 つまりは僕もそろそろモンスター狩りでジョブレベル上げて鍛えてカシミヤにリベンジしに行きたいって事だよ!

 ジョブクエストだけだとリンとイグニスのレベルも殆ど上がらないしね。

 そんな訳で今日からまた遠出してモンスター狩りの日々!

 今回の目標は南――<群白森林>から続く森林地帯を越えた先、天地の最南端の山岳地帯、修業場として名高い、そこそこ高レベルのモンスターが多く出没する<千踏山脈>!

 そういえば今まで狩りにしてたのは森が多かったなって思ったから気分を変えて山かなってね。

 <修羅の奈落>もあってモンスターの数も多くて多様性がある北部でも良かったんだけど、ここは折角だから新鮮な風景を眺めてみたいと思っての事だった。

 山とか、先月の遠足でほんとちょっと登っただけだったしね。

 

 山登りの準備を整えて、それではいざ、山頂の絶景へ!

 ……というのはまだまだだけどね。イグニスに頼れるとは言えイグニスで飛んでも山脈地帯まで一日は掛かるし、そもそもあの<千踏山脈>の山頂とか間違いなく〈UBM〉の縄張りになってるだろうし。

 機があれば挑戦するのも吝かではないけど、それは今ではないからね……多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

□■???

 

 

 世界中が、世界中の人々が、ティアンも<マスター>も分け隔てなく一周年の祝祭を楽しんでいた、記念すべき日。

 その素晴らしき日の翌日、多くの人々が祭囃子を惜しみながらも祭りの後片付けに奔走していた、その時。

 その世界から切り離された、それでいて何処よりもその世界に近しきその場所、その空間――まるで奇妙な亜空間の様にも思える場所。

 

 そこに、“それ”らは集まっていた。

 “それ”らを表す言葉は幾らでもある。

 

 天上に住まう大いなる神々。

 世界の行く末を見守る、()()()管理者。

 長い、永い間<マスター>と呼ばれていた存在にして、今は<マスター>をこの世界に導く者。

 

 あるいは――遥か昔、先々期文明時代を滅ぼした最悪の怪物にして最大の怨敵なる化身。

 もしくは、()()<マスター>達にとっては、運営の代行たる管理AI。

 そして――彼らの本質である、<無限エンブリオ>。

 

 かの世界――<Infinite Dendrogram>の世界において、超級職にも、今は未だ現れぬ<超級エンブリオ>にも、<SUBM>にも勝る絶対にして絶大なる力を振るうその者達が、そこに集結していた。

 

 

 自らの思惑で世界の行く末すら左右する事のできる影響力と実力を持った彼らが、次は一体どんな企みを持ってその場に集まっているのか。

 それは――

 

 

 

「皆、グラスはもう渡ってるよね~? それじゃ、行くよ~。せ~のっ!」

「「「「一年間、お疲れさまでしたー!」」」」

 

 少女――トゥイードルディー(緩い方の管理AI11号)の唱和に、ノリが良い方の管理AI達(チェシャ、アリス、マッドハッター)が声を重ね、始められる……ちょっとしたパーティ。

 

 そう。

 何を隠そう、彼らが此処に集まっていたのは、世界中の人々と同じ……一周年を記念したものだったのだから。

 一周年に際して何らかのトラブルが出ない様に、少しだけ日程をズラして行われる、身内(管理AI)だけで行われる、管理AI11号(イベント担当)が主催した、本当にちょっとした催し物。

 もっとも、世界中の人々が開いていたお祭りの様に祝事としてのお祭りではなく、慰労としての面が強い物となっているのだが。

 ちなみに、この場に集まっている管理AIは九体。

 ダッチェスやバンダースナッチ、ハンプティダンティやラビットは仕事が忙し過ぎたり自身がやりたい事を優先していた為欠席する事と相成っていたりと様々なようだ。

 

 

 

 

「さて、まずは大きな節目である<マスター>達の来訪から大過なく一年が過ぎた事を喜ぶべきか惜しむべきか……」

「いやいや、まだ第六に進化した子だって殆ど居ないんだからそれが当たり前なんだけどねー? それは事前に予想されていた事でもあるんだし」

「そうだぞ、ジャバウォック。それに、兼ねてからの懸念であった【邪神】について等、喜ばしい事もあったのだ。ここは素直に喜べば良いのではないか?」

「フム。確かにな。ある程度の猶予が出来た事は喜ばしい事だ。より手間を掛けて、力を入れて作品を創り上げる事ができる」

 

 

 ……ジャバウォック(〈UBM〉担当)は何時だって過剰なくらい自分の作品(〈UBM〉)創りに力を入れているんじゃないか、と言いたい()も居たが、それをこの場で言う程空気が読めない訳でもなかった。

 それに、実際【邪神】の居所の発見と確保はこの一年で一番の吉事だったのも確かだった。

 <マスター>の急増によるリソースの莫大化、リソース移動の頻度も活発となる事が事前に想定されていた為、確実に計画の障害になる【邪神】の発見と確保は急務だったのだが、【邪神】自体の特性故にエンブリオである彼ら(管理AI)ではそれは困難だったからだ。

 ……最も、その発見の際にも<マスター>を交えたちょっとした事件があったのだが、件の<マスター>達も現時点では他に漏らすつもりはない様なのでそれで良しという事にしてある。

 

 彼らには<マスター>の行動を縛るつもりはないし……そして何より、<マスター>の行動を縛るなんて簡単にできる訳がないと理解しているから。

 ……特にこの一年で<マスター>の無軌道ぶりに振り回されてきた特定の管理AI達(チェシャやキャラピラー)は深くそう思う。

 何せ、彼らにとってこの<Infinite Dendrogram>を開始してからの一年という期間は……そのまま彼らと<マスター>との激闘にして奮闘の期間でもあったのだから。

 

 

「いやー。本当に。……この一年間、色々あったねー。うん、二人が言う通り公式イベントは少なめにしておいて正解だったかもね」

「当然だ。特異なイベント(催し物)はエンブリオの進化の刺激になり得るが、今はまだその時期ではないし、この世界の広さやティアンとの関わりもあるのだから、各々が自らの足で世界を切り拓く充足感も十分だろうからな」

「もう数ヶ月もすれば、第六形態に進化したエンブリオも増えると推測できるから~その後は少しの間、イベントラッシュ~!」

「できれば我々に損害の少ない様なイベントを頼みたいのだが……」

「色々と期待薄じゃないかなー? それは……」

 

 戦闘に関する公式イベントがある度に、各地の広域殲滅能力を持った<マスター>の被害を一身に受ける管理AI5号(自然環境担当)、キャタピラーがそう言うが、双子は軽くそれをスルーする。

 ……どの道、イベントがあろうとなかろうと<マスター>達は殲滅していくし、そういったイベントが最も効果的であるのだから、改善の必要性は低いと判断したのだ。

 

 そうして、管理AI達はそれぞれが思い思いに一年間の苦労を分かち合ったり、苦労話を語っていたりしたのだが――

 

 

「――そういえば十一号、そのイベントの事で少し頼みたい事があるのだが」

「ふむ。要件を聞こう、四号」

 

 話を切り出したのは管理AI4号、〈UBM〉担当のジャバウォック。

 公式イベントで〈UBM〉を扱う事は珍しくない為、今回もその件に関する事柄だと、そう思っていたのだが。

 

 

「ああ、ちょっとしたセッティングを依頼したくてな。――今から半年後に『()()()()()()()()()()』イベントをやろうと思ってな」

「ちょっ、どういう事さ、ジャバウォックっ!? ハーフアニバーサリーイベントとか初耳なんだけどっ!?」

「十三号に同意だ。説明を要求する」

 

 

 何時も以上に唐突なジャバウォックの発言に驚く管理AI達。

 それもその筈。ハーフアニバーサリー……つまり、半周年の時期に特にイベントを行う予定なんて元々ない。

 それどころか、その時期――リアルの時節で言うと一月近辺はクリスマスイベント、年越しイベント、正月イベント、節分イベント、バレンタインイベントと予定されているイベントが目白押しの、先程のトゥイードルディーの言葉を借りれば“イベントラッシュ”の時期にドンピシャなのだ。

 当然、イベントとクエスト担当の管理AIであるトゥイードルダムとトゥイードルディーに余裕のある時期ではなく、新たなイベントを組み込むのは……不可能ではないが、厳しい物があるのも事実だった。

 

「ああ、言葉が足りなかったな。イベントと言ってもこれは非公式イベントとしてやる予定なのだ。来るアニバーサリー――超級進化誘発干渉の先駆けとして、<マスター>達を測る為にな。その時期ならば第六形態へ進化している者もそれなりの数に増えていると予測されているし、実際に〈SUBM〉を放つ前に()()をしておく事は大事だろう」

「超級進化誘発干渉――()()の先駆けとして放つのであれば、それなりの格のモノが必要となるだろうが、選定は済んでいるのか?」

「勿論だ。〈SUBM〉の代替として出すのに相応しい――〈SUBM〉の()()、あるいは()()と言うに相応しくデザインされた神話級の〈UBM〉を出すつもりだ。その性質上、準備時間が必要な為既に投下されているが、契約で行動を縛っているから行動を起こさせる時期を選ぶ余裕もある」

 

「……もう投下されてるならその時点で事後承諾にならないー?」

「そこはぁ、ジャバウォックの権限の内ですから、よろしいのではぁ?」

「ふむ、そういう事であれば問題はないだろう。確かに満を持して〈SUBM〉を投下しての失敗は避けたいからな」

「でも~、準備時間が必要って~……チャージ? それとも――」

「――後者だ。何せ、あれはジョブで言う所の()()()が最も近いからな。配下を揃えなければまともな力は発揮できまい」

 

 

 ジャバウォックのその言葉に、口にこそ出さないがそれは珍しい……とチェシャは考えた。

 何故なら、〈UBM〉とは絶大なる個と我を持つ唯一のモンスター。

 殆どの〈UBM〉はその一個体で完結している者ばかりで、周囲の環境を利用する様な固有スキルや自身の眷属を生成、強化する〈UBM〉はあれど、自分(〈UBM〉)以外に戦力を依存する形の〈UBM〉というのは殆ど存在していなかったからだ。

 

 だが、その珍しいタイプの〈UBM〉がここで放たれる……と言うのは決してあの世界に住む人々にとっての吉報ではありえない。

 何故なら、それは間違いなくジャバウォックが〈SUBM〉の代替に相応しいと判断した極悪な〈UBM〉に違いないのだから。

 それも、大量の配下を従える将軍タイプの〈UBM〉ともなれば……考えられる未来は唯一つ、その最後は〈UBM〉が準備時間で作り上げた軍隊と、マスターとティアン(人型範疇生物)の軍隊とのぶつかり合いとなるだろう。

 果たして、その被害は一体どれ程の物になるというのか……

 

 

「不規則に現れ、固有の能力を持つ〈UBM〉による影響も進化には必要ですからね――ところで、一番大事な事を聞いていないと思うのですが?」

「何だ?」

「場所――その小型“災害”(神話級〈UBM〉)とその軍勢が踊る舞台ですよ。その目的と能力特性からすればか相応しい場所はかなり限定されると思いますが、如何されるのでしょうか?」

「ああ、その事か。それは既に決まっている」

 

 そう、既にその〈UBM〉が投下され、近い未来に猛威を振るう場所の選定は終わっている。

 <マスター>の活動の大きさ、各国上位<マスター>達のエンブリオの進化の速さ、想定される戦場の選択肢。

 <マスター>と肩を並べるティアンの精強さやその〈UBM〉の能力特性等を鑑みれば……選択肢は一つしか残っていないのだから。

 

「――『ハーフアニバーサリー』イベントは()()で行なう事とする。他に何か質問があれば後でまた聞くとしよう」

 

 その言葉を最後に、その話題はそこで終了となった。

 他の管理AI達も……それこそ、人々の被害について気にしていたチェシャだって、そうなってしまったら流石に再度追及する事などできよう筈がない。

 そもそも、他の管理AI達にとってはジャバウォックが太鼓判を押す特別性だとは言え、神話級〈UBM〉自体はそこまで注視する様な存在ではないし、今回はトゥイードルダムとトゥイードルディーに話こそ通したが、非公式イベントだというのもあってその内容は殆どがジャバウォック一体の手で行われる物だったから追及する必要も感じなかったという事情もある。

 

 そして、それこそチェシャだって、諦観染みた事を考えている途中だったのだから。

 何故なら。

 

 

「(……まぁ、天地ならば最終的に何とでもなる……かな?)」

 

 

 ――投下される場所が、<マスター>もティアンも、()()()()他とは違う、極東の島国だったからに、他ならなかった。

 ジャバウォックが自信を持って投下する、神話級の〈UBM〉と天地に跋扈する修羅達との戦争。

 それに一抹の不安を思いながらも、彼もまたパーティを楽しむ事を再開するのであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be Next Episode…………

 




ステータスが更新されました――――

【結界術師】:陰陽師系統派生下級職。
 結界系統の魔法スキルの使用に特化した魔法職。
 地味に《生体探査陣》等を含む探査系のスキルも職分として扱っている。
 結界系スキルを強化する《結界強化》や純粋に強度や範囲を増している《守護結界》、長時間に渡って内外を隔離する《封鎖結界》等と言ったスキルを習得する。
 各種結界系スキルは魔法スキルなので基本的には《簡易結界》やクールタイムの長い《瞬間結界》でもなければ即座に発動する事は出来ないが、戦闘時には【符】に用意してあったスキルを発動させる事で強固で強力な結界系スキルを即座に発動する事も出来るとか。

猟兵(レンジャー)】:冒険者系統複合派生下級職。
 【冒険者】と【狩人】の特性を併せ持つ複合下級職。
 通常の【冒険者】と比べて探索能力等一部の能力が劣るが、《看破》《罠作成》《罠設置》等の一部の【狩人】由来のスキルを習得する。
 上級職の【大猟兵(グレイト・レンジャー)】では猟犬等の魔獣を使役するスキル等が習得できる。

開拓者(フロンティア)】:冒険者系統複合派生下級職。
 【冒険者】と【戦士】の特性を併せ持つ複合下級職。
 人が足を踏み入れぬ未踏の領域を冒険するには相応の戦闘能力が必要とされる……故かどうかは分からないが、その特性はある程度の戦闘能力を保有した【冒険者】である。
 通常の【冒険者】と比べて各種汎用スキルの最大レベルが多少低かったり、《持久力強化》を習得しないが、代わりに物理ステータスが高く、低レベルながらも戦闘系センススキルや最下級の戦闘系アクティブスキルを習得する。




 ……はい、間章を最後までご覧いただき、ありがとうございました!
 天地の一般()マスターな日常をお送りする間章でしたね!
 事件も殆ど無く展開が遅くて申し訳ないです……が、次章からは多少は何か事件が起こる! ……と思います。
 次章こそは一話分の文字数を控えめにしたいですねぇ。

 そんな次章は一か月後に開始、……したいと思っています!
 その前に間章までの登場人物紹介みたいなものを挟んだりするかもしれませんが。

 それでは、今話はここまで。もしよろしければ次章も付き合っていただければ幸いです。
 
 

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