東京都交通局によりますと、都営地下鉄大江戸線では今月15日以降、江東区にある清澄乗務区に所属する運転士15人が新型コロナウイルスに感染していることが相次いで確認されました。
現在、出勤できなくなっている運転士は、清澄乗務区所属のおよそ1割にあたる21人となっています。
対策を取っていても感染してしまうのが新型コロナの恐ろしさ。
感染してしまった方の一日も早い回復を願うばかり…。。
ついに鉄道の減便まで発生してしまった今回の事象について今日は書きたいと思います。
・他の路線から運転士を持ってこれないのか?
・免許を持っている社員は多数いる
・運転士不足への備えは?
都営地下鉄の簡単な概要
まずは都営地下鉄について簡単にご紹介します。
都営地下鉄はその名の通り東京都が経営する地下鉄で、以下の4路線があります。
浅草線
区間:西馬込~押上
直通:京浜急行、京成電鉄、北総鉄道、芝山鉄道
三田線
区間:目黒~西高島平
直通:東急電鉄
新宿線
区間:新宿~本八幡
直通:京王電鉄
大江戸線
区間:光が丘~新宿(放射部)、新宿~都庁前(環状部)
直通:なし
ここ、他社との直通運転が無い路線であることが不幸中の幸い。
直通先があった場合、他社との調整が極めて困難ですからね。
他から運転士を持ってこれないのか?
皆さんはこのニュースで、疑問に感じることはなかったでしょうか?
他の三田線とかの運転士を大江戸線に乗務させられないの?と。
運転士には所属箇所ごとの担当線区があるからです。
鉄道運転士の免許(動力車操縦者免許)は全国で共通のものです。
しかし、使用車両や保安装置等の運行システム、運転のルールは鉄道会社によって異なります。
それどころか、同一の社局でも路線によって仕様が異なることは普通です。
こっちは線路脇に信号機が立ってる路線
あっちは速度計に車内信号が表示される路線
といった具合に。
そのために、運転士は免許の他に担当線区用の教育を受け、線区車両について熟知してからでないと単独での乗務はできません。
つまり、大江戸線には大江戸線の教育を受けた運転士しか乗務できません。
三田線の教育しか受けたことのない運転士では乗務できないのです。
もちろん、複数の路線を担当したことのある運転士もいるはずですが、多くはないと思われます。
仮に多数いたとしても、彼らを引き抜いてしまうと、今度は引き抜かれた側の路線が苦しくなる。。
今回の減便ダイヤに繋がったのには、このような事情があります。
免許を持っている社員は多い
人手不足による減便
これはやむを得ないとはいえ利用者に迷惑のかかる最終手段。
可能であれば、控え選手のように運転できる人を確保しておきたいところです。
実は、鉄道会社内部には「免許はあるけど他の仕事をしている」社員はたくさんいます。
その中から、身体条件や適性検査などをクリアできている社員を集めて、言ってしまえば
「控え運転士」としての復職するための教育を施しておく…。
こうしておけば急な人手不足に陥った際にも対応ができるかもしれません。
ただ、この方法もそう簡単にいかないのも事実。
・誰にやらせる?
・復職の教育はどのくらいかかる?
・元職場の人員の穴埋めは?
・復職教育のコストは?
入念な準備をしておかないと、そう簡単にできる話でもありません。
しかし、次に紹介するような取り組みをしている会社もあるのです。
運転士不足への備え
運転士から事務職へ異動した社員を対象に、時々乗務させる制度です。
一言でいえば「兼務」と表現すればよいでしょうか。
どうしてこんな制度があるのか?
デスクワークばかりしていると、現場感覚を忘れてしまいますよね。
現場の感覚が分からないがために、現場とうまく連携できなかったり、現場からの要望が理解できなかったり、お客様目線が分からなくなったり…というマイナスを防ぐ目的の施策です。
「本社の連中は現場のことを分かってねぇな!!」
なんてことのないようにするわけです。
この施策、「事務職にも現場感覚を持たせる」ということが目的ですが、
副産物として「いざというときの控え運転士を確保する」という効果もあります。
今回の大江戸線のような事態が発生した時でも
スタメンで欠場者が出ても控え選手が穴埋めをできるようになるわけです。
ただし、この施策は社員管理が恐ろしく面倒なのも事実。
運転職場と事務方の職場との間で勤務を作るのも一苦労。
運転士としての技能知識をキープしつつ、必要な身体条件をクリアするための管理・教育の手間もかかります。
運転している間は事務方の職場に欠員が出るので、その仕事を回すのも大変でしょう。
それでも何とか苦労しながら「兼務」制度を運用している会社があるのも事実です。
まとめ
・運転士は担当線区用の教育を受けないと乗務はできない
・免許を持っている社員は多い
・兼務で運転士不足へ備える方法
というわけで、今回の大江戸線の件について考察してみました。
簡単に他から回してしまえ!というのができないので、最終手段として減便ということになってしまう事情があります。
各鉄道会社は、コロナで運転士不足が起きることを想定して準備しているのか?
上記のように控え選手を確保するにも事前に大変な準備が必要となるだけに…。。
それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました。