門田隆将(ノンフィクション作家)
日本の野党とマスコミはこのままでいいのだろうか。籠池泰典という詐欺で収監されている御仁に、ここまで国政を壟断(ろうだん)され、そして、その籠池氏と大阪拘置所で面会し、彼が語る中身があたかも「真実」であるかのごとく話す野党の面々を見て、私はそう感じている。
いよいよ佐川宣寿・前財務省理財局長の証人喚問がおこなわれる。どこの世界にも、籠池氏のような人間はいる。著名人の名前を出したり、政治家の名前をひけらかしたり、訴訟を起こすことをチラつかせたり、ありとあらゆることをやって、自己の「願望」を実現すべく“ゴリ押し”する人間だ。
日本は今、「クレーマー国家」と化しつつある。たとえば教育界を混乱させているモンスター・ペアレントと呼ばれるクレーマーたちや、また、飲食店や小売店で、あれやこれやと文句をつけて、従業員や経営者を困惑させている人間……籠池氏はそんな日本の“代表”とも言える人物である。
資金がショートしたまま、学校を建てようと企てたこの人は、国有地を安く取得するために、自分が近づいていった政治家や著名人の名前を出し、嘘を並べ立てた。
こんな御仁のために「安倍首相が国有財産を8億円も値下げさせた」ということが本当なら、私は一刻も早く「総理の職」を辞して欲しいと思う。
しかし、明らかになった財務省の改竄(かいざん)前の公文書を見ても、安倍夫妻が当該の土地を8億円値下げさせるべく動いたことなど、どこにも出てこない。
いや、それどころか、改竄前の文書には、鴻池祥肇、鳩山邦夫、平沼赳夫、北川イッセイという四人の政治家が近畿財務局へ働きかけをおこなっていたことが記述されていた。
安倍昭恵氏に関しては、籠池氏が近畿財務局に対して、「いい土地ですから、前に進めてください」と言ったと、改竄前の公文書には記述されていた。私は呆れてしまった。1年前の証人喚問(2017年3月23日)で、当の籠池氏は昭恵氏のこのときの発言を「いい田んぼができそうですね」と言ったと証言していたからだ。
国会ではそう証言し、しかし、近畿財務局へは、まったく違うことを言っている。つまり、言うことがコロコロ変わるし、自分に都合よくいくらでも言い換える人物なのである。
しかし、野党は、詐欺罪で収監されているこの人物を、あたかも「真実を語っている」かのようにマスコミとタッグを組んで“持ち上げる”のである。
いったい籠池という人物のデタラメに、国民はいつまでつき合わなければいけないのだろうか。それは、安倍政権を倒すためには、どんなことでもやる日本の野党とマスコミに、いつまで国民はつき合わなければいけないのか、という意味である。